Chance Des Infinitude〜ムゲンの可能性〜 - Chapitre Treize de Cot 〜灯台が示すその先へ〜
Quatre-vingts-seize 最後のジム戦(醒岩の陣)
 Sideコット



 「…ジム戦、お願いします! 」
 …いよいよ、ここで最後なんだね。ジムの前でカナの同級生のミヅキちゃんと再会した僕達は、揃ってその建屋の中に呼びかける。ミヅキちゃんに僕の事を説明するのには苦労したけど、ひとまずは何とかなったと思う。
 「はっ、はい! …うん、三人とも、ですね? 」
 「はい。さんにんいっしょにたたかうってきいたんだけどだいじょうぶですよね? 」
 「大丈夫ですよ。寧ろ三人で来てくれてありがたいぐらいですよ」
 だってアサギのジムって、そういうルールだからね。呼びかけたらすぐに、奥の方から一人の女の人が駆けてきた。その人…、多分ジムリーダーだと思うけど、彼女はカナ達三人に目を向け、こう続ける。カナは僕が傍にいるからすぐに分かったと思うけど、エレン君とミヅキちゃんには、少し時間差があった。その彼女にエレン君は、さっきカナから聴いた事をそのままジムリーダーに訊いてみる。もちろんその通りだから、願ったり叶ったり、っていう感じで頷いていた。
 「よかった。じゃあ私達の前に待ってる人とかは…、いますか? 」
 「いえ、いないですよ。ですから、すぐに始められますよ」
 「やった! 」
 「ルールはあまり知られていないバトルロワイヤルですけど…、大丈夫ですか? 」
 「うんだいじょうぶですよ」
 確か…、アローラ地方、っていう所の発祥ってフィフさんが言ってたっけ? 続けてミヅキちゃんが先客について尋ねていたけど、彼女の心配は杞憂に終わってしまう。ジムリーダーはすぐに首を横にふって、彼女の問いかけを否定する。だけどすぐに明るめの声に変えて、僕達にルールの事を訊き返す。僕はフィフさん達から聴くまで知らなかったけど、二人には話してあるから、エレン君にミヅキちゃんも揃って頷いていた。
 「でしたら安心しました。…それでは、中に案内しますね」
 「うん! 」
 「はい! 」
 その二人にジムリーダーは、一度にっこり笑いかけてから背を向ける。そのままジムの奥の方に歩き始めたから、僕達はすぐにその彼女の後を追いかけた。



――――



 Sideオークス



 「オークス、いつも通りいくよ! 」
 「ユリンたのんだよ! 」
 「オーダイル、絶対に勝つよ! 」
 『おぅ! 』
 『うん、絶対に負けないんだから! 』
 『当然だぁっ! ここまでの成果、見せつけてやるぜぇっ! 』
 相手がふたりだろうと三にんだろうと、ブッ潰しちまえば同じだ! ボールから飛び出した俺は、カナの呼びかけに威勢よく答える。今回のルールは何か俺が知った話じゃねぇーが、暴れればどんなルールだろうと関係ない。パッと見一対一じゃなさそうだから、いつもより長く暴れれる、俺は横目で同時に飛び出したコイツ等をチラッと見た瞬間、こう察した。
 『ほぉ、そんな小さいのに俺に挑もうとは、いい度胸じゃねぇーかぁっ! 』
 『体の大きさなんて関係ないよ! 私だって、やればできるんだから! 』
 『見た目だけじゃない、ってとこか』
 まぁネージュみたいに、気が小さくても実力がある奴は沢山いるからなぁ。きっとコイツもその類だろう。…だがそういうの、俺は嫌いじゃねぇぜ? 俺と同時に出場したオオダイルは、見下ろすほど小さいパチリスにこう話しかける。体格差のある相手だが、ソイツは一切臆することなくそれに抗う。威勢では負けていないコイツは力強く言い切り、蒼いアイツを思いっきり睨み返していた。
 「バンギラスにパチリス、それからオーダイルですか。…でしたら、ルカリオ、いきますよ! 」
 『あぁ。ここまで来た貴方方に敬意を表して、正々堂々お相手致しましょう』
 …ん? 確かこの種族、格闘タイプじゃなかったか? ジムリーダーらしきトレーナーもメンバーを出場させ、出たアイツにこう呼びかける。それに小さく頷いたアイツは、すぐ俺達に向き直り、深々とお辞儀する。俺とは正反対な態度のアイツは、堅苦しい敬語で語り通す。その途中でひとりひとりに目を向け、素性をを探っているように俺には見えた気がした。
 「はい! …オークス、最初から全力でいくよ! 」
 『最初からそのつもりだぁッ! …』
 カナ、そんな事、愚問だぜ? カナも威勢よく俺に対して言い放っていたが、そもそも俺はそうするもんだと思っていた。だから躊躇なく頷き、カナの方をチラッと見る。すぐに視線を前に戻し、俺はその準備に入る。いつも通りならカナは左腕を高く掲げているはずだから、俺もそれに合わせて目を閉じる。体の奥の方から湧いてくる力に身を委ね、それを思いっきり解き放つ…。
 『…相手が悪かったなぁ! メガ進化した俺の前では、誰がどれだけ来ようと関係ねぇ! だからこの俺がまとめて相手してやるよ!
 すると黒と土色の光に包まれ、すぐに弾け飛ぶ。メガ進化して背が高くなった俺は、力任せにこう言い放った。
 『…品の無い方ですね』
 『なっ、何なの? 姿が変わるなんて、聴いてないよ! 』
 『…面白い! どんなタネがあるのかしらねぇーけど、それなら気が済むまでつき合ってやるよぉっ! 』
 そう来ないと、俺も暴れ甲斐が無いってもんだろぅ? 言い放った俺に対して、コイツらはそれぞれ違う反応を示す。最初のアイツは軽蔑するような目つきで俺に目を向け、小さいソイツは信じられない、という感じで取り乱す。だが青いコイツだけは俺の挑発を買い、自信満々に言い返してきた。
 「…オークス、今回のバトルはメンバーふたりのバトルロワイヤル。誰か一人のメンバーが全滅したところで中断して、その状態で結…」
 『要はコイツらをブッ潰して勝ち残ればいいんだろぅ?
 回りくどい事は嫌いだが、纏めるとそういう事だろぅ? カナの傍で控えているコットは、俺にすぐルールを説明してくれる。だが俺にとっては関係ない話なので、途中で高解釈して彼の説明を遮る。ルールがどうだろうと勝てばいい話だから、俺は最初からそんな事を気にせず戦うつもりでいる。
 『…品が無いですが、物分かりは良いようですね。…その頭の中は空ではない、と言う事ですか』
 『私もよく分からないけど、そうなのかな? 』
 『…結局はいつもと変わらない、そうだよなぁ? ジムリーダーさんよぉ? 』
 …一言多いな。
 『その通りですよ。…それでは、始めましょうか。…神速! 』
 『エレキネット! 』
 『岩雪崩!
 なるほどな。コイツらは俺から先に潰す作戦か! …面白い! 皮肉をかましてきたソイツの一言で、俺の乱戦が幕を開けた。ソイツは真っ先に俺に向けて駆けてきて、八メートルはあった距離を一気に詰めてきた。青いコイツはその場で士気を高めてるが、小さいソイツは一歩遅れて技を発動させる。電気で創りだした網を広範囲に広げ、駆け抜けるアイツ諸共捕えようとしていた。
 それならと言う事で、俺は岩属性のエネルギーで体中を満たす。すぐに開放する事で、相手の頭上に大量の岩石を出現させる。そこから降らせることでまんべんなく攻撃、そして行く手を阻もうとする…。
 『っ…、素早さを下げる作戦ですか。ですがこの技には、あまり効果はありませんよ! 』
 『そんな事知ってるよ! だけど何の考えもなしに発動したんじゃないんだから! 』
 『…ならそれを無意味にしてやるぁっ! 地震!
 『…きゃぁっ! 』
 『…っく。…やはり、使えましたか…』
 ここが鋼タイプのジムなら、この技は身に堪えるだろう? アイツは俺の岩石の雨に、一瞬たじろく。瞬間的に踏みとどまり、直前で左に跳び退く。そのまま狙いを小さいソイツに狙いを変えたらしく、技の効果が続くうちにその方へと駆けていく。だが狙われたソイツは瞬時に反応し、真上に跳ぶことでそれを回避していた。
 結果的に狙いは外れたが、ここで諦める俺じゃない。立て続けに右足に力を溜め、思いっきり踏み抜く事で技を発動させる。するとフィールドが唸りを上げて揺れはじめ、無差別に大ダメージを与えようと襲いかかる。丁度ソイツが着地、コイツは技を解除して向き直ったところだったから、かわし切れずまともに攻撃を食らっていた。
 『ですが、このくらいで私(わたくし)は倒せませんよ! 』
 『それと俺の存在も忘れるなぁっ! アクアテール! 』
 『なっ…くぅっ…!
 いっ、いつの間に? 流石にこの一撃では倒す事ができず、耐えられてしまう。コイツは何事も無くこう言い放ち、また別の技を俺に向けて仕掛けてくる。…だがその間にもう一人のソイツが割り込み、不意を突いて俺に尻尾を振りかざしてくる。気を抜いていた俺はその襲撃に気付かず、水を纏った重撃をまともに食らってしまった。
 『…雷! 』
 『ぐぁっ…! 』
 『君だって、私がいる事を忘れてるんじゃないの…? 』
 『確かにパチリスの貴女の仰る通りですね。ラスターカノン! 』
 更にそこへ小さいソイツが迫り、俺に攻撃した直後のコイツに高電圧の一撃をお見舞いする。幸い俺は弾き飛ばされていた事もあって直撃は避けれたが、あまりの威力にほんの少しだけ、巻き添えを食らってしまった。弱点族点を食らったコイツは思わず膝をついてしまい、俺達三にんに対して無防備な姿を晒す。それをチャンスと見たのか、群がる俺達に向けて、一歩離れた場所にいるアイツは銀色の光線を手元から撃ちだしてきた。
 『ちっ…。…だが、まずはお前からだぁ! 暴れる!
 『…っ! …馬鹿力…! 』
 『波動弾! 』
 まずはひとり…。これで少し有利になったな。水の重撃は身に堪えたが、距離をとっていたと言う事もあり、俺は鉄の光線をかわすことができた。だが俺側から小さいソイツ側に向けて薙ぎ払っていたと言う事もあり、オーダイルとパチリスはその攻撃を食らってしまう。その隙に俺は光線を追うように駆け出し、虫の息のコイツに容赦なく襲いかかる。それに気づいたのか、俺に狙われたコイツは瞬時に力を溜め、最大のパワーで俺に殴りかかってきた。
 『…ぐぅっ…! 限界とはいえ…、中々やるなぁ?
 『ただミヅキのパートナーとして…、旅を続けてきた訳じゃ…、無いからなぁ…! ぅっ! 』
 『っく…!
 …流石にこれは…、堪えるな…。右手、左手、尻尾…、という感じで力任せに殴りかかる俺は、確実にコイツにダメージを与えていく。…だが俺も無傷という訳にはいかず、弱点属性と言う事もあってじわじわと蓄積していく。俺の四発目で向こうの効果時間が終わり、右から左に振り抜いた尻尾がまともに左足に命中する。怯んだところへ更に一撃を加え…、ようとしたが、それはルカリオのソイツに阻まれてしまう。またしても俺の弱点属性で、コイツ諸共トドメを刺そうとしてきた。
 『…っ! 』
 「オーダイル! 」
 『これで最後…! 草結び…! 』
 『そうは…、させるかぁっ! 地震…! ぐぅっ…っ!
 『…っく…! 』
 …!! 何とかコイツを倒せたが、今度は俺自身が追い込まれてしまう。小さいソイツが俺の方にチョコチョコと駆けてきて、一瞬エネルギーを解放する。この技は俺に向けて発動させた、そう感じた俺は、即行で右足に力を溜め、そこにありったけのエネルギーも混ぜ込んでいく。その状態で地面を割るつもりで、俺は思いっきり踏み抜いた。
 …だが発動させることはできたが、その右足に蔦が絡みついてきた。重心をその足に移していたと言う事もあって、俺はバランスを崩して転んでしまった。
 『これは…、やられたな…
 『あんたこそ…』
 そのまま俺は、意識が暗闇に沈んでしまった。おそらく、小さいソイツもだと思うが…。


 Continue……

■筆者メッセージ
・ルカリオ

特性:不屈の心
技:神速、波動弾、ラスターカノン、???


・オーダイル

特性:激流
技:馬鹿力、剣の舞、アクアテール、冷凍パンチ


Lien ( 2017/08/06(日) 17:46 )