Qurtre-vingts-qurtorze 試験結果
Sideライト
『
ミスト…、ボール! 』
多分これで、シルクを倒せるはず…。“絆の従者の証”を直接触ったから頭がボーっとするけど、何とかミストボールを命中させる事はできた。“証”が無い時には本来の守備力に戻るけど、着けた今なら、それが全くないはず…。
『―――っ! 』
本当にそうだったらしく、わたしの攻撃を受けたシルクは、派手に吹き飛ばされる。ここまでの戦い通りなら受け身をとるはずだけど、ダメージが蓄積していたのか、“チカラ”が戻って耐えられなくなったのか…、どっちかは分からないけど、何もできず砂地に叩きつけられる。すぐに起き上がるかと思ったけど、これ以上攻撃を仕掛けてくる事は無かった。
『
はぁ…、はぁ…、これで倒せた…、のかな…? 』
『“チカラ”が戻ってるはずだから…、多分…、大丈夫だよ』
『
ゆっ、ユウキ君…、いつの間に…? 』
『十五分ぐらい前、かな』
きっ、気付かなかった…。“証”を触った影響なのかもしれないけど、まだメガ進化が解除されてないけどもの凄い倦怠感がわたしにのしかかってきた。あまり頭が働かないけど、シルクの様子を見た感じだと、多分そうなんだと思う。だけどそう思いかけた瞬間、別の誰かがわたしに話しかけてくる。すぐにユウキ君だって分かったけど、まさか起きているなんて思ってもいなかったから、思わず変な声をあげてしまった。まだピカチュウの姿のままだけど、切れ切れにこう教えてくれた。
『
そんなに…、前から…?』
『うん。…ライト、この感じだと、“チカラ”を戻す方法、知ってたの? 』
『
一応…、ね…。それならユウキ君…、シルクは、どうなの? 助かったの? 』
『最初から見てた訳じゃないけど、ギリギリ間に合ったよ、あの一発で倒れたみたいだから』
そっか、なら良かった。ユウキ君はその場に座り込みながら、わたしに問いかけてくる。何年か前に教えてもらった方法だけど、知ってたからわたしはすぐに頷く。あの時は今回とは少し違って、シルクは別の原因で“証”を外されたみたいだけど、その時に“証”を身に着け直せば、元通りになるって教えてもらった。
…だけど今回は正直言って時間的に際どかったから、もし遅かったらどうしよう、そう思いながら彼に問いかける。すると彼は、心配しないで、とでも言いたそうに、若干表情を緩めてこう言ってくれた。
『…だけどライト? ライトは何ともない? “証”を直接触ってたけど…』
『
まだ頭がボーっとして体が重いけど、それ以外は大丈夫だよ』
『そっか…、それなら、良かった』
だけどユウキ君自身もわたしの事が心配だったらしく、同じ質問を返してきた。だからありのままの事を、彼に教えてあげる。すると彼は今度こそ、やっと安心できたらしくホッと一息。まるで重くのしかかっていた何かが肩から降りる、そんな感じで、安堵の表情を浮かべていた。
『…それで、試験結果だけど…、ひとまず合格、っていう事にするよ』
『
合格…? 』
『正式には退院後にリーグを勝ち抜いてからになるから、暫定的に、ね』
そう、だよね。今回は特例が採用されて、特別に前倒しで本試験を受けることになったから…。
『
暫定的に…? 』
『そう。これで、あとは必要な手続きをすれば…』
「退院後に、再開できるよ。…さぁ、ライト、無事試験も終わったから、皆を回復しに行こうか。ライトも、戦い抜いたばかりだしね」
『
あっ、うん』
退院後に再開できるなら、治療に専念できそうだね。試験の結果を伝えてくれたユウキ君は、一通り話してから姿を歪ませる。元の姿に戻してから、わたしにこう提案する。わたし自身はメガ進化が解かれるまで姿を変えれないから、多分ユウキ君にテトラたちの事は任せることになると思う。…だけどアーシアちゃんだけはボールには登録されていないから、ユウキ君に手伝ってもらってわたしの背中に乗せる。わたし自身はいつ解かれるか分からないから、少しだけ急いでタンバのセンターの方へと向かう事にした。
Chapitre Douze Des Light 〜立ちはだかる壁〜 Finit……