Chance Des Infinitude〜ムゲンの可能性〜










































小説トップ
Chapitre Douze Des Light 〜立ちはだかる壁〜
Quatre-vingts-treize 青下に輝く光浄の絆(第漆戦)
 Sideライト



 『――、―――! 』

  ライト、最初から全力でいくわよ!

 『うっ、うん! 』
 とっ、とにかく、こうなった以上は勝たないと! 試験結果は引き分けで判定不能になっちゃったから、シルクの提案で追加で課題を課されることになった。シルクもエク
ワイルのオーリックだから、たまに忘れそうになるけどそういう権限も持っている。だからって事で戦う事になったけど、その内容にわたしはあまり納得できていない。…だけど試験監督のシルクが先に動きはじめたから、やむを得ず…。テレパシーで威勢が良い言葉を伝えてきたから、わたしも仕方なく風を切り始めた。
 『――』
 『竜の波動! 』

  アーシアちゃん、ボールからの出し方は分かる?

 『ぼっボールから? ライトさんを見てたから、分かる、けど…』

  なら、テトラを出してくれる? どれかは分かるよね?

 ジムとかリーグなら何とかなると思うけど、相手はシルクだからなぁ…。声は出てないけど、シルクは真っ先にサイコキネシスを発動させる。他に技を発動させていないけど、彼女は代わりに地面の砂を周りに浮かせる。
 わたしも同じタイミングで喉元にエネルギーを集め、竜の属性に変換する。シルクはまだその場にいるから、わたしは彼女を右目で正面に捉える。力を込めてエネルギーを解放し、暗青色のブレスとして吹き出した。
 それと並行して、わたしは荷物と時計を見てくれているアーシアちゃんに語りかける。手短に言ったから多分首を傾げていると思うけど、それでも彼女はすぐに答えてくれる。だからすぐにアーシアちゃん以外で戦える状態の仲間の名前を挙げ、こう頼んだ。

  ライト! 左目が見えないからって、容赦はしないわよ!

 『はっはい! 』
 『わたしも負ける訳にはいかないから、そのつもりだよ! 冷凍ビーム! 』
 やっぱり、そうきたかぁ…。わたしが放ったブレスを、シルクは浮かせていた砂でガードする。わたしのブレスが達する一点に集中させ、足りない分は足元から補充して、盾のように砂を使っていた。
 それに対してわたしは、こうなる事が予想出来ていたから一気に浮上し、氷のエネルギーを喉元に準備する。五メートルの高さから、シルクの周りを囲うように解き放った。
 『――! ―――! 』

  甘いわ!

 『…! 』
 えっ、この状態でも? シルクは“チカラ”を封印した状態のはずだけど、わたしの氷のブレスを容易く受け止める。まだ始まったばかりだから変わった様子は無いけど、それでもシルクは薄い水色のブレスの軌道をねじ曲げる。そのままわたしの方に向かわせ、弱点属性として対抗してきた。
 予想外の行動だったから、わたしは慌てて技を中断する。シルクの方に向けて滑空し、四メートル真上を陣取る。
 『…ライト! シアちゃんか話は聴いたよ。私は何をすればいい? 』
 『ミストボール! 』
 『――っ! 』

  わたしを強く意識して!

 『シルクさん、ライトさん! 五分です! 』
 アーシアちゃん、ありがとう! テトラの声が下の方から聞こえてきたから、アーシアちゃんが出場させてくれたんだと思う。直接大声で聴いてくれたけど、わたしに流暢に答える時間を与えてもらえなかった。
 シルクがわたしがいる方を見上げ、十五発の目覚めるパワーを放ってきたから、慌ててその場から退避する。時計回りに旋回しながら浮上し、手元にエネルギを凝縮させていく。最初は狙いのつけやすいブレス系の技にしようかと思ったけど、シルクの目覚めるパワーはドラゴンタイプ…。冷凍ビームなら相性的に有利だけど、シルクの技を打ち消すには短時間の為だと間に合わない…。だから即行で放てる専用技を乱射し、少しでも数を減らそうとしてみる。だけど右目だけで狙いを定め慣れてないから、その殆どが外れてしまった。
 『うん! 』
 『――? 』

  メガ進化するツもりね?

 『そのつもりだよ!
 でないと、シルク勝てないよ! テトラはこれだけですぐに分かってくれたから、その通りに動いてくれる。その間わたしは無防備になるけど、少しなら多分大丈夫だと思う。右目を閉じて意識を集中させ、彼女の返事にも大きく頷く。そして…。
 『…シルク、ここからが本番だよ!
 紺と薄紫色の光に包まれ、ガラスが割れるような音と共にそれが弾ける。メガ進化したわたしは、対峙する親友に高らかに言い放った。

  そウ来ないと、戦い甲斐がないわ!

 『―ッ! 』
 『冷凍ビーム!
 シルクは見上げたままわたしを狙い、漆黒の球体を連続で撃ちだしてくる。大きな一つに小さな一発をぶつけ、その影響で前者が弾け飛ぶ。その破片が一瞬空中で止まり、すぐに風をかき分けてわたしに向かってくる。全部は把握しきれないけど、サイコキネシスの影響下にあるらしく、無数にあるそれらは不規則な動きをしている。だからわたしは、彼女に向けて垂直に急降下しながら、漂う黒球もろとも氷のブレスで凪払…。
 『くっ!
 『―…っ! 』
 シルクのシャドーボール、素の状態でもここまで威力があるんだ…。完全には打ち消すことができず、わたしに四発の漆黒球が被弾する。“チカラ”を封じているから倒れる事はなかったけど、それでも弱点属性だから結構身に堪える…。だけどシルクもかわす事が出来ず、わたしのブレスが尻尾の先を掠めていた。十分に溜めたから、二股に分かれているその部分が凍りついてしまっていた。
 『ミストボール! この距離なら…!
 『…―! 』

  そうはサセないわよ!

 『――! 』
 『くっ…
 今度は、空中戦を仕掛けてくる気だね? 十メートル降下するわたしは、四メートルの高さになるまで純白の弾丸を真正面に向けて連射する。正面を狙って五発を撃ちだしたから、狙い通りにその場所を捕えてくれる。…だけどそのうちの三つはシルクの見えざる力に捉えられ、彼女に達する前に動きを止める。その間にわたしは弧を描く様に進路を変え、すれ違い様に手元に移動した翼を彼女に打ちつける。命中させる事はできたけど、彼女が捕らえたエネルギー体を分解し、発生させた突風に吹き飛ばされてしまった。その気流に乗り、シルクはわたしの後を追いかけてきて…
 『うぅ…、シルクが、物理技を…?

  “チカラ”を封じたかラ、出来テ当然じゃない?

 『シルクさん、十分経ちました! 』
 えっ、もう十分? メガ進化したわたしを吹き飛ばす強さだから、あっという間に彼女はわたしに追いつく。空中で体を捻り、わたしの背中を狙って尻尾を叩きつけてきた。シルクが物理攻撃を仕掛けてきたからっていうのもそうだけど、わたしはその威力に対しても驚きで狼狽えてしまう。尻尾の先が凍っていたからだと思うけど、思わず顔をしかめてしまった。
 『もうそんな時間? ミスト…
 『――ゥ…! 』

  案外、短イわね…。

 『くぅっ…、ミストボール…!
 …あれ、こんなに威力、高かったっけ…? 咄嗟に身を翻し、わたしは彼女に向き直る。一度地面に着地して跳びかかってきたから、わたしはすぐに技の準備をし始める。だけどシルクの方が一歩早く、一メートルっていう至近距離でシャドーボールを撃ちだしてきた。当然反応できなくてダメージを被ったけど、何とか耐えて準備しかけた技で反撃した。
 …だけどわたしはどこか、この攻撃が気になってしまう。ちょっと前にもシルクのシャドーボールを食らったけど、その時はわたしの技を中断させられる程じゃなかった。だけど今回は、寸前まで溜めれていたのにそれが解除されてしまった。それにちょっと前から、頭の中に響くシルクの声がおかしい気がする。少なくとも十分は経ってる、アーシアちゃんが知らせてくれたから、その影き…
 『っあぁッ…!

  こレなら、防ギようが無いわよネ? …ッ!

 『――ァッ! 』
 『じゅっ、十五分です! ライトさん…! 』
 やっぱりシルク、変だよね? わたしがふと思った事は気のせいじゃなく、本当だった。立て続けに攻撃してきたけど、普段のシルクなら、絶対にサイコキネシスでは攻撃して来ない。だけど今は、彼女の念波に捉えられて身動きがとれない…。微かに唸り声みたいなものも聞こえた様な気がするし、何よりエネルギーの状態が乱れ始めてきている。
 『…ライト! ムーンフォース! 』
 『――ッ! 』
 『…テトラ! …そっか、十五分経ったから…
 シルクは何かを必死に抑え込んでいるらしく、全身に力を込め、思いっきり歯を食いしばっていた。そういう事もあって意識が逸れているみたいだから、この隙に拘束を振り解こう…。こう思ってエネルギーを活性化させようとしたけど、シルクを挟んだ反対側から薄桃色の球体が四発飛んで来た。荒れ始めている彼女に着弾したところで、わたしはようやくテトラの技という事に気がついた。

  十五分…、どうりデ、抑えガ効かなくなり始メた訳ね…。…ライト! ここからは私モ何をしでデカか分カらない…。だから、十分ニ注意して、急いで倒シテ!

 『はいです! そのために、共闘する事を許可してくれているのですよね? 』
 『そうだと思うよ? フラッシュ! 』
 抑えが、効かない? って事は…。語りかけてくるシルクも辛そうだから、言っていることは本当なのかもしれない。明らかに力んでいる彼女は、顔を歪めながらもこう伝えてくる。ただならない様子の親友が心配だけど、心配する時間さえ無さそう…。伝わってくる言葉に、切羽詰まったような感情も含まれていた。
 言われなくても様子だけで分かるから、わたし達もすぐに戦闘を再開する。シルクの右側を陣取ってくれているテトラは、二発の光球のうち、左側のそれを解き放つ。この瞬間にわたは右目を閉じ、閃光に備えた。
 『――ぅゥ…ッ! 』
 『冷凍ビーム!
 『ムーンフォース! 』

  …ライト! そっちに行クワ! 注意シテ!

 『えっ…
 いっ、いつの間に? 右目を閉じているわたしは、勘を頼りに凍てつくブレスを放出する。目を閉じる前にテトラとシルクがいる位置は覚えたから、後者だけを狙う。この感じだと多分、テトラも目を瞑った状態で薄桃色の球体を連射。地上と空から挟みこむような感じで、一斉に攻撃を仕掛けた。
 だけどその途中に、わたしの頭の中にシルクの声が響き渡る。わたしの方に来る、つまりわたしを狙って攻撃したって事だから、わたしは思い切って右目を開けてそれを確認する。だけどその時には、既に彼女のシャドーボールが目の前に…。わたしの左目を狙うように、カーブを効かせて…
 『アシストパワーっ! 』
 『ァッ―ゥ―! 』
 『五分前です! そろそろ決着を着けないと、シルクさんが…! 』
 『シアちゃん…、うん! 』
 あと五分しかないの? これはやられた、大ダメージを覚悟したけど、わたしにとてつもない痛みが襲いかかる事は無かった。その代わりに、ここまで時間を伝えてくれていたアーシアちゃんが、自身の気柱で黒球を突き上げ、軌道を逸らしてくれた。予定通りにステータスを最大まで強化してくれていたらしく、この一本だけじゃなくて時間差でシルクの足元にも出現させる。ダメージが通ったのか、彼女は断裂した声帯で言葉にならない声をあげてしまっていた。

  五分…、ライト、テトラちゃん、アーシアチャン…、イソいデ…!

 じゃないと、シルクが…!
 『…テトラ、アーシアちゃん、わたしがあわせるから、一気に攻めるよ! だからふたりは、いつもの戦法で攻撃して!
 『ゥ――ァ―ッ! 』
 『はいです! 』
 『言われなくても! 』
 『冷凍ビーム!
 五分、か…。となると、チャンスはあと…。もう殆ど時間が残されていない、嫌でもそう感じざるを得なくなったわたしは、一緒に戦ってくれているふたりに作戦を伝える。作戦というよりは、テトラとアーシアちゃんにわたしが加わるだけだから、素とは言えないかもしれないけど…。だけど、もう五分も無いとなったら、手段は選んでいられない。そうなると攻守ともにバランスのとれた連携の方が、成功率は上がるとわたしは思う。だからわたしは、一メートルの高さまで降下し、親友の足元を狙って氷の光線を放出した。
 『シアちゃん! 』
 『テトちゃん! 全力のシャドーボールっ! 』
 『フラッシュ! 』
 ほんの一瞬遅れて、ふたりも一斉に行動を開始する。アーシアちゃんを先頭に駆けだし、彼女は四十センチぐらいの大きな黒球を手元から撃ちだす。それを周りこんで追い越すような軌道で、テトラは先攻を放つ光球を二発放つ。アーシアちゃんのそれと並んだ位置で、二つ同時に弾けさせた。

  …ソウヨ…、その調子ヨ…!

 『シルク! ギガインパクト! 』
 『――ッ―! 』
 体の自由さえ失いはじめているのか、シルクは必死にその場に踏みとどまる。表情までは分からないけど、アーシアちゃんがシャドーボールを発動させる直前に見た感じだと、目が虚ろになり始めていた。制御が効かない中でシルクは、辛うじて退避せずにアーシアちゃんの一発を受ける。一応バトルの前にシルクが頼んでいたものだけど、それでは彼女を倒すまでには至らなかった。
 巨大なシャドーボールに隠れるように走り抜けていたテトラは、全身に力を溜めて技を準備する。限界まで温存し、数十センチの距離から思いっきり跳びかかった。
 『――ァァ――! 』
 『っく…! 』
 『テトちゃん! 守る! 』
 命中したけど、それでもシルクはテトラの重撃を耐え抜く。ここまでくるとあまり痛みを感じてないのか、構わずにシャドーボールを解き放つ。攻撃の反動、それから超至近距離にいるって事もあって、テトラはその攻撃をまともにうけてしまう。二発被弾し、それだけで意識を手放してしまった。
 本当は倒れたテトラを介抱したいところだけど、そうしているとシルクの方が手遅れになってしまう。この想いを無理やり心の奥の方に追いやり、わたしは先を走るアーシアちゃんに続いて滑空する。テトラを倒した黒球群がまだ残っているから、アーシアちゃんは四足で走りながら緑色のシールド展開した。だけど…。
 『くっ…、っあぁッ…! 』
 一気に亀裂が広がり、ものの数秒でシールドが弾け飛んだ。その影響でアーシアちゃんはのけ反ってしまい、残った三発の黒弾をまともにうけてしまう。直接は見てないけど、視界の端で派手に吹っ飛ばされるのだけは確認する事が出来た。
 『これで、終わらせる…! ミストボール連射!
 シルクの攻撃が止んだから、その隙にわたしも一気に仕掛ける。手元にありったけのエネルギーをかき集め、そのすべてをエスパータイプに変換する。左右両方の手に分けて凝縮し、いつものように丸く形成する。二メートルの距離まで詰めてから、右左右…、立て続けにそれらを撃ちだす。

  ライト、アト少シダカラ…、そのまま続ケテ…!

 『うん! 今、倒すから!
 シルクも抗おうとしたけど、それを辛うじて、理性で抑え込む。
 『冷凍ビーム!
 『――…! 』
 一瞬で技を切り替え、冷気で彼女の四肢を凍りつかせる。それだけで止めず、わたしは更に彼女を氷漬けにしていく。彼女の口に重点的に光線を当て、これ以上彼女が技を使えないようにした。それからわたしは、一旦注意を彼女から逸らす。半ば賭けだけど、彼女の元から離れ、あるモノの元へと急行する。そのモノとは、邪魔にならないところに置いてある、彼女の鞄…。
 『これを結べば…
 予め取り出しやすいところに仕舞ってくれていた事もあって、わたしは例のモノ、“絆の従者の証”をすぐに引っ張り出すことができた。わたしは一回だけ見た事があるけど、この“証”は適合者、つまり“絆の従者”以外が身につけると、その瞬間から自我が喪失する。触るだけでも徐々に侵されていくらしいから、わたしはそのスカーフの端を、つまむように持つ。
 『シルクを…、止めラレル…! だかラ…!
 うぅ…、話には聴いてたけど、ここまで、影響力が強かったなんて…。使用者を選ぶソレを直接持ってるから、凄い速さでわたしを侵食してくる…。上手く言葉に出来ないけど、白い紙の上に墨汁が数滴落ちて、そこから一気に染みこんでいくような…、そんな感じ。このままだトシルクはもチロん、ワたし自身も危ナイカラ、大急ギデ彼女のモトへとイソグ…。
 『―! 』
 『コレデ…! 』
 スグニ彼女ノ元ニツキ、急イデ首元ニソレヲ結ブ。何トカ身ニツケテアゲル事ガ出来、数十センチ離レテ大急ギでエネルギーを溜め…。
 『ミスト…、ボール! 』
 純白の球弾を一発、彼女に命中させた。その結果は…。


  Continue……

Lien ( 2017/06/25(日) 13:23 )