Quatre-vingts-sept 深緑に咲く一輪の花(第弐戦)
Sideフルロ
「フルロ、このままの流れでいくよ! 」
『うん、任せて! 』
「ライトがフルロ君なら、リーフ、ここで勝つよ」
『このまま押し切られても困るしね。うん、じゃあいってくるよ』
そっか、僕の相手はリーフさんなんやな? 話の流れからすると、アーシアちゃんはバトルに勝てっぽい。どんな戦いをしたのかは分からへんけど、ひとまず僕はボールから跳び出す。この感じやとライト側に形勢が傾いとると思うで、僕もそのまま勝てるはず…。後ろをチラッと見て頷き、僕は対戦相手を見るために視線を前に戻した。
そんでユウキさん側のメンバーはというと、僕とヘクトにとっての師匠のひとりで、ジャローダのリーフさん。野生ん時に何回か戦った事はあるけど、あん時は絶対に手を抜いとったと思う。今まで見た事無い薄黄色のスカーフを首元に巻いとるで、本当にリーフさんは本気で戦うつもりなんやと思う。やから僕は、本気のリーフさんと戦うんがこれが初めて…。せやけど僕は、昨日まであんだけ戦い抜いたんやから、負ける気がせぇへん。
『フルロ君、まさか君とこんな形で戦うことになるとは思わなかったよ』
『僕もやで! …せやけどリーフさん、絶対に負けへんで! 』
『その意気だよ。…さぁフルロ君、どこからでもかかってきて! 』
最初からそのつもりやで! 僕に遅れて出場したリーフさんは、すぐ僕に向けてこう話しかけてくる。当然僕は、いつも通り勢いよくこう返事する。何の根拠も無いけど、なんか今日は勝てそう、今そんな気がしとる…。せやから、自信満々に言い放った。
『そんじゃあいくで! 自然の力…、大地の力! 』
『…! リーフブレード! 』
流石リーフさんやな。リーフさんの一声で、僕らの戦闘が幕を開ける。真っ先に僕はエネルギーレベルを高め、それを両前足に集中させる。一瞬だけ後ろ足だけで立って、すぐ前足をその場で降り下ろす。前足が砂につくタイミングで解放すると、僕の技が即座に発動する。フィールドの効果で、リーフさんの足元? の地面が一気に隆起した。
せやけどリーフさんは、一瞬驚いとったけど、すぐに対処する。尻尾の先端にエネルギーを集め、その状態で地面に思いっきり叩きつける。するとその部分から木の葉が散り、リーフさんの方はその反動で空中に跳び上がる。一秒もせぇへんうちに砂が隆起したで、僕の技は不発に終わってまった。
『自然の力かー。中々考えたね! …でもこれならどうかな? リーフブレード! 』
へぇー、リーフさんって、こんな戦い方するんやな! 空中に跳び上がったリーフさんは、長い躰を器用にくねらせて僕の方に向かってくる。ちょうど真ん中ぐらいの距離、僕から二メートルぐらいのところで、リーフさんはもう一回同じ技を発動させる。今度は僕に向けて発動させたっぽく、頭を振り下げるような感じで縦回転する。
『そんなら、こうするで! 』
それに対して僕は、タイミングを見計らって首元から二本の蔓を伸ばす。んでもこのままやとダメージを食らうで、僕はテトラちゃんみたいな感じで、腕の様にそれを操る。僕の頭から切り下すような感じで体を撓らせてきたで、僕は二本の蔓を斜め上の方向に伸ばす。
『っ! どうや! 』
左右の蔓でリーフさんの尻尾を挟みこみ、その攻撃を受け止めた。…攻撃技やから、ちょっと痛かったけど…。
『なるほどね。…ソーラービーム! 』
『いきなり? 光の壁! っく…! 』
ちょっ、ちょと待って! この技って、溜めが必要な技やんね? 僕に受けとめられたリーフさんは、一瞬尻尾に力を入れて圧し込んでくる。また攻撃してくるんかと思ったけど、そうやなかった。僕の蔓で固定されとるんを利用して、後ろに跳び下がる。…やけどその最中、最高点に達したとこで、瞬時にエネルギーを凝縮させ、光のブレスとして解き放ってきた。
いきなりやったでめっちゃ驚いたけど、僕は咄嗟に応戦する。初めに右に跳んでかわそうとしたけど、リーフさんが移動を修正してきたで、無駄やった。…せやから僕は一瞬でエネルギーを溜め、障壁を創るイメージでそれを解放する。すると僕と光線の間に透明の壁が出現し、フィルターっぽく立ちはだかる。そのお陰で、結局かわせんかったけど、威力を軽減する事に成功した。
『光の壁…ちょっと厄介だね』
『バトルは攻撃だけやない、って前に言っとったやろ? これでヘクトの火炎放射も耐えれたで、すんごい便利なんよ! 』
『確かにね。…だけど、流石にこれは対処できないよね? リーフストーム! 』
『範囲攻撃やろ? 僕も使えるで! 花吹雪! 』
この事、リーフさんから教わったんやから、実践するのは当然やろ? 五メートルぐらい下がったリーフさんは、透明な壁越しに呟く。バトルでこの技発動すると絶対こう言われるで、本当に厄介な技なんやと思う。物理技には効かへんけど、僕の体感では半分くらいは軽減出来とると思う。
パッと見た感じ予想外、って思っとるっぽかったけど、リーフさんはすぐに体勢を立て直す。僕の方に這って距離を詰めながら、結構な量のエネルギーを集める。それを解放すると、リーフさんの後ろの方から風が吹きはじめ、それに乗って木の葉も飛んでくる。せやから僕も、同じ系統の技で、これに対抗する事にする。居城の方から強い風が吹いて、桜色の花びらも舞ってきたで、僕も発動に成功する。緑と桜がぶつかり合い、互いが互いを抑え込もうとする…。
『リーフさんってやっぱ強いね。僕の最高威力の技やけ…』
『横がガラ空きだよ? 逆鱗…! 』
『えっ…』
うっ、嘘やろ? リーフストーム発動させとるんとちゃうかったん? 桜と緑は拮抗しとったけど、僕はこれに気ぃ取られて全然気づけへんかった。リーフさんの緑の嵐は目くらましやったっぽく、僕は完全にこの罠に引っかかってまってた。気付いた時には右側一メートルんとこにおったで、僕は思わず驚きで変な声をあげてまう…。こんな近距離でリーフさんは膨大なエネルギーを解放してきたで、その重圧がビリビリく…。
『っあぁっ! 』
『フルロ君は昔からそうだけど…』
目つきが鋭く変わったリーフさんは、獲物を捕らえるヨルノズクっぽく僕を睨む。瞬きをするかせぇへんかの短い時間で、僕と完全に密着する。かと思うと、リーフさんはこれでもかというくらいの威力で、僕に頭突きを食らわせてくる…。左に吹っ飛ばされたけど、それでもリーフさんは追撃してくる…。
『っく…』
『目の前の事に集中し過ぎて』
急接近して、僕の背中に尻尾を振り下ろす。
『ぐぅっ…』
『周りへの注意が』
その場で胴で体当たりし…。
『…っ! 』
『散漫になりがちなんだよ』
『ぐぁぁっ…っ! 』
尻尾を思いっきり振り上げる。僕は為す術無く全部の重撃を食らってしまい、上に飛ばされたことで宙を舞ってまう…。
『光…、合…、せ…』
『リーフストーム! 』
『ぅぅっく…! っ! 』
このままじゃやられる、本能的にそう感じた僕は、急に薄れてきた意識の中でこう感じる。何とかエネルギーをかき集め、空に祈って光を取り込…、もうとしたんやけど、間に合わへんかった…。僕が光に包まれるより早く、リーフさんの木の葉交じりの突風が襲いかかる。空中に投げ出された、技の発動途中やった、こんな訳で僕はそれをまともに食らってしまった。
『…くっ…、リーフさん、やっぱ…、強い…』
『技自体は良かったけど、もうちょっと状き…』
砂地やったからまだマシやけど、僕は受け身を取る事が出来ず、思いっきり地面に叩きつけられる。すぐに立ち上がろうとしたけど、…体力の限界なんかな…? 全然体に力が入らへん…。そのままぼくの視界は、スーッと波が引くように暗転していく。リーフさんが何か言っとる気ぃしたけど、それを聞ききる前に意識を手放してまった。
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