Chance Des Infinitude〜ムゲンの可能性〜










































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Chapitre Douze De Cot 〜雨上がりの離島〜
Quatre-vingts-qurtorze 島からの脱出
 Sideコット



 『オイラたちもだっしゅつしよう! アクアジェット! 』
 「うっ、うん…! 」
 エレン君はシキジカからブイゼルの姿に変えて、すぐに水を纏う。そのまま戸惑う僕を抱えると、すぐにニアロさんがいるらしい滝の方へと突き進み始めた。
 「だっ、だけどエレン君、もう結構水が深くなってきてるけど、大丈夫なの? 」
 僕達はエレン君達がいるけど、いくら向こうが密猟者でも、さすがにこれはやりすぎな気がするけど…。相手が相手だからちょっと戸惑うけど、僕はエレン君の秘策は過剰防衛、そんな気がしてる。倒しきれてないガブリアスは蔓で縛って動けなくしてるし、そもそも戦う前にチラッと見た感じだと、幹部のメンバーに泳げる種族は誰ひとりいない。もしいたとしても、向こうバトルの結果はまだ分からないけど、何にんかは戦ったり動いたりできる状態じゃないとは思う。そんな状態なのにこの洞窟を浸水させる、この事は行き過ぎた方法なんじゃないか、こういう理由で僕はそう思っていた。
 『そうでもしないとああいうひとははんせいしないでしょ? 』
 「そっ、そう思うけど、エクワイルとか警察に知らせて捕まえてもらった方が良かったと…」
 『オイラもさいしょはそうかんがえたけどこのしまってタンバからもアサギからもはなれてるでしょ? それにまってたらそのあいだにむこうのくみいんがだくさんきておいらたちがあぶなくなるよ』
 たっ、確かに…。エレン君の考えには一理あるけど、それでも僕は主張を変えるつもりは無い。セイジさんみたいに考え直す人も中にはいるけど、ユウキさん達に捕まったアルファは絶対にそうじゃない。実際に伝説の種族を捕えて操ってたし、ヨシノシティを欲望のために燃やし尽くしてたぐらいだから…。
 だけどそれでも、僕はもっと良い方法がある、そう思っていた。だからすぐに反論し、逃げるなら相談してほしかった、彼にこう訴えようとする。だけどそれよりも早く、彼は僕の訴えに反駁してきた。しかもそれが凄く理にかなっていて、僕はそれ以降反論出来なくなってしまった。
 「うっ、うん…」
 『そうでしょ? …ニアロカナちゃんもおまたせ』
 水しぶきをあげて突き進むエレン君は、一旦海水に潜り、勢いをつけて跳び出す。僕も慌てて息を止めたけど、いきなりだったから目を閉じるのが間に合わなかった。そのせいで目がすごくしみてきたけど、それでもエレン君は構わずに湿った空気をかき分ける。水面から五メートの最高点に達したところで技を解除し、その高さを維持しているニアロさんにこう呼びかけていた。
 『エレン、待ってたよ』
 「…あれ? カナ、みんなは? 」
 「ヘクトはやられちゃったけど、ボールの中だよ」
 そっか、なら良かった。いち早く気付いたルギアのニアロさんは、すぐに跳び出した僕達の方に飛んできてくれる。背中にカナを乗せた状態だったけど、元々大きな種族だから、大して気にしてなさそう。着地点に先回りして受け止めてくれると、ニアロさんはエレン君にこう答える。僕もまだモヤモヤしてるけど、一足先に乗せてもらっていたカナにこう訊ねた。
 「ヘクトが? 」
 「相討ちだったけど…。…それとコット? コットの方は大丈夫だったの? 」
 「うん。水が増えてきたから最後までは戦えなかったけど、ドンカラスは倒せ…」

  カナさん、コット君、水の流れが強いので、しっかり掴まっていてください!

 「うっ、うん」
 「あっ、はい! 」
 相討ち、かぁ…。僕達の方も、何回か強化しないと倒せないくらいだったからなぁ…。オークスとかの近くで指示を出していたカナは、手短に戦況を教えてくれる。あのヘクトでも相討ちだったのには驚いたけど、それでも何とか納得できた気がする。カナの後ろに乗せてもらったから表情は見えないけど、カナは今度は僕に対して質問してくる。だから僕も教えてあげ…、たけどその途中で頭の中にニアロさんの声が響いてきたから、中断せざるを得なくなってしまった。
 掴まって、って事は、すぐにでも水にとびこむ。そう察した僕は、促されるとすぐに前足に力を込める。種族上指は短いけど、それでも何とか、ニアロさんの羽? を強く掴む。
 『ニアロそのままアサギまでたのんだよ』
 『うん! 』
 「アサギ…、あっ、そっか。タンバの方から逃げてきたから…」
 そっちの方だと、鉢合わせになるかもしれないからだね? 揃って頷くと、エレン君はすぐにニアロさんにこう頼む。彼も首を縦に大きくふると、すぐに急降下して、派手な水しぶきと共に海水にとびこむ。その瞬間に来た時の気泡を作りだし、僕とカナの呼吸を確保してくれた。
 『そうなるね』
 行き先が決まったからなのか、水の流れが速いからなのか…、どっちかは分からないけど、ニアロさんは泳ぐスピードを早める。気のせいかもしれないけど、島に入った時よりも早いような…、そんな気がした。
 …兎に角、取り残された幹部は知らないけど、ひとまず僕達は渦に囲まれた海上の洞窟を後にした。



 Chapitre Douze De Cot 〜雨上がりの離島〜 Finit……

Lien ( 2017/07/23(日) 12:06 )