Chance Des Infinitude〜ムゲンの可能性〜










































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Chapitre Douze De Cot 〜雨上がりの離島〜
Quatre-vingts-dix 渦巻島の決戦(待ち伏せ)
 Sideコット



 
 『ふぅこれでコットくんとははなせるかな』
 「うん。だっ、だけどエレン君…」
 聞きたい事が多すぎて、何から聴いたらいいか分からないよ…。ブイゼルに姿を変えてるエレン君に抱えられている僕は、されるがままに水中を突き進んでいる。エレン君の能力かルギアさんの能力か…、どっちかは分からないけど、顔の所に気泡を作ってくれているから、息はちゃんとできる。水中を泳いでもらって進んでるから、辺りの景色は一面の蒼。音も殆どなくて、静まりかえっている…。全然変わらないからあまり実感はないけど、海水がすごい勢いで僕の体毛を払いのけていくから、進んではいるんだと思う。…とこんな事を考えていると、何かの力が働いているのか、僕の顔の所にある気泡が大きくなり、エレン君の方まで広がる。同じ気泡の中に彼も入ることになったから、その状態で呟いていた。
 「エレン君達って、何で追われてたの? 」
 まずは、これからかな…? 色々と訊きたい事があるけど、やっぱり何でこんな風になってるのか、これから聴いたほうが良いのかもしれない。そう思った僕は、早口な彼にこう訊ねてみる。
 『あれからいろいろあってはなしがややこしくなるんだけどきょうのこのことだけだとおとといぐらいからはじまったことかな』
 「一昨日? 」
 一昨日って言ったら、僕達はタンバでプライズと戦ってる時、だよね?
 『うん。オイラはしばらくチョウジタウンにいたんだけどそこでみつかってずっとおわれてるんだよ…。きのうはヨシノでかくれようかとおもってたけどやけのはらになっててすぐみつかったから…。それできょうはそこでこうせんしてたんだけどニドにユリンもやられてこっちににげてきたんだよ』
 「ニド達が…? それなら、ヤライさんは? 」
 『ヤライはなんかいもニアロにばけてたたかってくれてたけどタンバのところでせんとうふのうになって…あとはコットくんたちがしってるとおりだよ』
 ええっとつまり…、チョウジからずっと逃げてきて、ヨシノで戦ったけど、撤退して海の方に来た…。それで、ルギアさんに化けたヤライさんに乗せてもらってたけど、ヤライさんも倒されちゃったから、エレン君は高い所から落ちてたんだね? 相変わらず早口で聞き取りにくいけど、僕は何とか聴いた事を頭の中で要約したから何とか理解する事はできた。ヨシノの事は心当たりがあるけど、エレン君はエレン君で大変だったんだなぁー、僕は率直にこう感じた。何日も執拗に追いかけてくる事を考えると、プライズ…、この組織を思い出すけど、それは同じ日、一昨日にボスがユウキさん達に捕まって事実上の解散をしたはず…。となると残りは、リーヴェルさんが言ってた、もう一つの組織。あまり関わりが無くて印象が薄いけど、確かネージュを捕まえようとしていたはず…。
 「そう、だったんだ…。僕達も色々あったけど、エレン君達も大変だったんだね」
 『うん』
 「それと…、エレン君って人間かポケモン、どっちなの? 何かの伝説に関わってるみたいだけど…」
 さっき言ってた気がするけど、それどころじゃなかったからなぁ…。立て続けに僕は、ブイゼルの彼にこう訊ねてみる。ポケモンになれる人間、僕は二人に会ったけど、僕が知ってるのは二パターン…。一つはライトさんみたいに、元々そういう能力を持ってる種族で、ポケモンが人に姿を変えているパターン。そしてもう一つは、ユウキさんみたいに元々人で、能力を発動させてポケモンに変身してる、っていうパターン。ユウキさんから聴いた事だけど、ユウキさんのパターンなら何かしらの“証”を身につけてるはず…。まだちゃんと見た事がないから分からないけど、もしそうなら、エレン君も何かしらのソレを身につけていると思う。
 『オイラはひとだよ。オイラいがいにさんにんにあったことがあるけどそのなかでもオイラはレアなケースみたいなんだよ』
 「エレン君が? 」
 『うん。ほかのひとはひとつのしゅぞくだけだけどオイラはふたつだからね。さんにんのうちふたりはつかえるわざのかずもすくないみたいだね。そのひと…オイラもだけどそのしゅぞくがおぼえれないわざをつかえるけど』
 「覚えられない技…? そういえば、僕の従兄弟も伝説に関わってて、六つも技を使えるけど、それも能力の一つなんだよね? 」
 フィフさんがそうだから、エレン君もそうなのかな? エレン君みたいな人があと三人もいるって事には驚いたけど、もしかするとそのうちの一人はユウキさんかもしれない。よく考えたら、怒りの湖でフィフさん達と会った時、ルギアさんも一緒だった。その時フィフさんは、ルギアさんとは三年来の知り合いだ、って言ってた。それに能力を持ってるなら、僕達ポケモンの言葉を理解できるのも納得がいく。技云々も、そのうちの一つだと思うし…。
 『そうだよ。オイラはニアロがひこうエスパータイプだからブイゼルのときはぼうふうをつかえてシキジカのときはサイコキネシスがつかえるよ』
 「フィフさんとは…、ちょっと違うのかな? 」
 『わからないけど…。…とにかくしまのいりぐちがみえてきたからつづきはあとではなすよ』
 「あれだよね? …だけど、ルギアさん、通れるの? 」
 多分あの洞窟? の入り口だと思うけど、大丈夫なのかな…? エレン君は能力の一つとして使える技を教えてくれたけど、彼はこの話を適当に流していた。本当はもう少し詳しく訊きたいところだけど、エレン君の言う通り、進む先に大きな物陰が見えてきた。少し深めのところを泳いでくれているから分かりにくかったけど、どこかに通じていそうな入り口がぽっかりと口を開けていた。…だけどまだ距離があるからなのかもしれないけど、僕には後ろを羽ばたくように泳いでいるルギアさんが通れるとは思えなかった。
 『だいじょうぶだよ。うずまきじまはニアロのこきょうだからね』
 「そうなんだ…」
 それなら、大丈夫なのかな? 今さっきその入り口を通り抜けたけど、パッと見た感じ八メートルぐらいはありそうだから何とかなるのかもしれない。そもそもここが故郷なら、ルギアさんが通れないはずがない。通れなかったら島の外にいないはずだから、僕の心配は杞憂だったのかもしれない。
 『そうだよ。このさきにでたところならニアロでもじゅうぶんたたかえるぐらいひろいからそこでむかえうつつもりだよ』
 「ルギアさんでも? 」
 『うん。ちょうどみえてきたよ』
 ルギアさんでも戦えるって事は、相当広い洞窟なんだね、渦巻島って。水中の入り口をくぐって以来、エレン君は泳ぐ方向を上の方にずらしていた。通路の壁もさっきより広くなってる気がするから、案外この先は広い空間が広がってるのかもしれない、僕は率直にそう感じた。それに気のせいかもしれないけど、エレン君が泳ぐスピードが遅くなってきてるから、多分水の流れに逆らってると思う。エレン君によるともうすぐ水路を抜けるみたいだから、僕はそれに向けて心の準備を…。
 「うん。本当に、ひ…」
 「今だ、撃ち落とせ! 」
 『十万ボルト! 』
 「…! 見切り! 」
 『まさかノコノコとやってくるとは、つくづく馬鹿な奴らだねぇー』
 えっ、まっ、まさか、待ち伏せされてた? 水面が迫ってたから、エレン君はそこから勢いよく跳び出す。泳いだ勢いを利用して、二メートルぐらいの高さまで跳びあがる。その間に僕は、抱えられたままの状態で洞窟の中に一通り目を向ける。エレン君が言った通り、確かにもの凄く広くて天井も高い。端の方に大きな滝? があるから、水の流れが強かったのも多分この滝の影響だと思う。本当に広いね、そう言おうとしたけど、その途中で待ちかまえていた誰かに遮られてしまった。
 僕達の事を待ち伏せしていたらしく、あまり離れていない岸の方から電撃が飛んでくる。気付いた時には三メートルぐらいしか余裕がなかったから、僕は咄嗟に運動能力を極限まで高める。体の捻りを効かせてくるんっ、って回転し、すぐに後ろ足でエレン君を思いっきり蹴る。するとエレン君は滝の方へ、僕自身は陸地の方へと弾かれる。そうした事で、僕達は間一髪のところで回避する事が出来た。
 「えっ…、コット! エレン君! 大丈夫? 」
 「うん、僕達は平気だよ」
 『そっ、それなら良かった』

  だけどまさか待ち伏せされてたなんて…。

 「ふっ、ルギアのみならず喋るサンダースまで付いてくるとはな、いい誤算だ」
 遅れて水面から跳び出したルギアさん達は、何事も無く近くの陸地に降り立つ。水中から見ていたのか、それとも跳び出してから見たのか…、どっちかは分からないけど、カナはルギアさんの背中から降りながら、心配そうに声をかけてくれる。だから僕は、こんな風に返事し、何とか自力で泳いで陸に上がる。ネージュも安心してくれたらしく、ひとまずホッと肩を撫で下ろしていた。
 『うそでしょ…? まさかかんぶがさきにいたなんて…』
 『当然じゃなーい。ルギアの事は何年も前から調べていたのよ。そのための陽動作戦、部下にさせた甲斐があったわねー』
 「部下に、って…」
 って事は、僕達はその作戦にハマってたって事だよね? 陸に上がったエレン君は、信じられないっていう感じで呟く。僕達も待ち伏せして返り討ちにしよう、そう思ってた。だけどその先まで読まれていたから、僕達の作戦は失敗…。唖然と呟くエレン君に対して、ブニャットが嘲笑うように言い放っていた。
 「今思い出したけど、その制服…、怒りの湖の時の…! 」
 「誰かと思えば、そのラプラスを奪い、ベータの奴と刃向かったガキか…。丁度いい、貴様には頭にきていたところだ…」
 『えっコットくん? もしかしてプロテージのことしってるの? 』
 「うん。プライズほど関わりは無いけど、二回ぐらい戦った事はあるよ」
 一回目は初めてネージュと会った時で、二回目はセイジさんと共闘した時だったね。あの時はニトルさん達がいたし、怒りの湖の時も僕達だけじゃなかったから…。カナも思い出したらしく、あっ! っていう感じで声を荒らげる。これで逢うのは三回目だけど、向こう側からしても僕達の印象は強く残っていたらしい。ネージュの事を根に持ってる事には流石にうんざりするけど…。で、僕達が知ってるって事に驚いたらしく、エレン君は嘘でしょ? っていう感じで頓狂な声をあげてしまっていた。

  ヤライから聴いてはいたけど、まさか本当だったとはね。

 「…まぁいい、千載一遇のチャンスだ、アルファの奴は察に捕まったと聞いているが…」

  …カナさん、僕達に力を貸してくれますか?

 「うん、最初からそのつもりだよ! 」
 「僕だって! …それに僕達は、今までプライズを相手に戦ってきた…。だから、絶対に負けはしないよ! 」
 前は助けてもらってばかりだったけど、あれだけ戦い抜いてきたんだ…。だから今度は、僕達が守る番だ! ルギアさんはテレパシーで話しかけてきたけど、そもそも僕達はそのつもりでエレン君達についてきている。だから決心は、とうの昔についている。カナも心に決めているみたいだから、僕達は揃って高らかに言い放つ。旅立ったばかりの頃の僕達なら逃げてるかもしれないけど、ここまでの旅で、僕達は色んなことを経験してきた。普通に旅をしてきてたらこういう事は思わなかったかもしれないけど、今の僕達なら、戦い抜ける! そう、確信している。おまけにパッと見た感じだと、幹部とはいえ相手は一人。手早く倒せば、追いかけてきている部下達を迎え撃つ事だってできる。ライトさんにフィフさん達はいないけど、倒せる自信は、ある!
 『わっ、私も! あの時は非力で泣き虫だったけど、コット君達のお蔭て変われた…。だから…、いっ、今の私は、あの時とは違うよ! 』
 『それなら私達に見せつけることねー? 負ける気なんて更々ないけどー』
 ネージュも、やる気みたいだね? ネージュも力強く、正面のブニャットに言い放つ。ネージュにとってプロテージは因縁の相手だから、決着をつけたい、そう思ってるのかもしれない。出逢った時の事を考えると内面的に一番変わったのが、もしかすると彼女なのかもしれない。
 『コットくん…みんなもありがとう』
 「うん。…じゃあ、いくよ! 」
 兎に角、今は戦わないとね! エレン君の言葉を聴きながら、僕は一気に警戒のレベルを高める。高らかにこう言い放ちながら、これから始まる戦闘に備えて身構えた。


  Continue……

Lien ( 2017/07/09(日) 16:31 )