Chance Des Infinitude〜ムゲンの可能性〜










































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Chapitre Douze De Cot 〜雨上がりの離島〜
Quatre-vingts-six 授かるもの
 Sideコット



 「…ティルさん、入りますよ? 」
 結構経ったけど、起きてるかな…? 僕がフィフさん達と一緒に戦っている間に、囚われていたエンテイは解放されていたらしい。僕が駆けつけた時には既に終わっていたらしく、ティルさん達とスイクンさんが介抱しているところだった。その近くでライトさんが倒れていたけど、ティルさんが言うには、能力を使った反動で動けなくなってただけらしい。また大怪我をしちゃったかもしれない、って心配したけど、杞憂だったみたい。…ただ声は出てなかったけど、フィフさんは尋常じゃないぐらい泣きながらライトさんの方に駆けていったような気がしたけど…。
 それでその後は、僕を含めて戦っていたみんなの回復、それから解放されたエンテイさんを診てもらうために、一旦町のセンターへ行くことになった。その時には昼前になってたから、にんずうが多かった事もあって結構時間がかかった。この間の事は分からないけど、間時間が暇だったと思うから、多分カナはセイジさんと喋ってたんじゃないかな? 回復してもらった後、確保した部屋でセイジさんとカナのお母さんの事を話してくれた。
 そして夕方になった今は、少し離れた部屋に泊まることになっているライトさん達の所に来ている。午後にテトラさん達に会った時に聴いた事だけど、戦い疲れとか、いろんなことが重なって、ライトさんはその時熟睡していたらしい。会ってからあまり経ってないから、カナが扉をノックしたタイミングでこう呼びかける。するとその奥から、微かに物音が聞こえてきた。
 『その声はコット君だね? 今開けるよ』
 「はい! 」
 「ええっと、コット? 何て言ってたの? 」
 「ティルさんが、今開けるから…、あっ、ティルさん。ライトさんはどうですか? 」
 すぐに扉が開くと、そこには予想通りのじんぶつ…。マフォクシーのティルさんが、僕の方に視線を下ろしているところだった。カナに通訳を頼まれてる最中だったけど、開けてくれたから、途中で切り上げて彼に訊ねてみた。
 『あぁライト? ライトなら二、三分ぐらい前に起きたところだよ』

  ライト、もう起きてるから、カナさんも入って。

 「あっ、うん」
 じゃあ、お邪魔します。扉を全開にしてくれたから、僕はすぐに一歩、中に入る。そうなんだ、って呟きながら振り返ると、丁度ティルさんがカナにも語りかけているところだった。一応僕にもテレパシーで語りかけてくれたけど、そうじゃなくても、多分分かったとは思う。カナがちょっとだけ戸惑いながら、僕に続いて部屋に入ってきたからね。
 「ライトさん、寝てるってコットから聞いたけど、起しちゃったかな? 」

  ううん、たまたま起きたところだから、心配しないでいいよ。…ラフはまだ寝てるけ…

 「カナちゃん、コット君。シルクから聴いたよ。一緒に戦ってくれてたんだよね? 」
 「はい! 」
 …うん、見た感じ、大丈夫そうだね。ユニットバスとかがある小部屋に続く通路? を抜けながら、僕達は何気ない事を話し始める。そうこうしている間に部屋に入ったから、それに気づいたライトさんが僕達に話しかけてきた。人の姿に戻…、じゃなくて変えているから、多分多少は体を動かせるようにはなってるんだと思う。ベッドの上に腰かけて、包帯の巻かれていない右目で笑いかけてくれていた。
 「もしかしたら聴いてるかもしれないけど、わたしは何十人も組員を倒せましたよ。…あっ、そうだ。ここにヘクトが来てませんか? 」

  ヘクト君?

 「うん。僕達、これから夜ご飯を食べに行くつもりなんですけど、まだ部屋に帰ってきてないから、もしかしたらこ…」
 ヘクトの事だから、ティルさんの仲間のメガニウムと一緒だと思うけど…。僕とイグリーは別で戦ってたから後で聴いた話だけど、カナ達も遅れて戦ってくれていた。流石にオークスが進化していたのには驚いたけど、ヘクトにネージュも結構なにんずうと戦っていたらしい。そんな訳でみんな疲れていたから、昼からは部屋にいたけど、ヘクトだけは部屋の外に出ていっていた。見た感じティルさん達の方は、ティルさんとライトさん、それから寝てるラフさんしかいな…。
 「…失礼するが、ここにヘルガーが来てないか? 」
 「せっ、セイジさん? 」
 「っていう事は、ヘクトのお父さんも? 」
 ヘクトの事を訊いている途中で、別の誰かが話に割り込んできた。すぐにヘクトのお父さんのトレーナー、プライズを裏切ったセイジさんだって分かったけど、急な事だったから思わず変な声を出してしまった。確かに彼のいう通り、見た時はいつも傍にいたヘルガーがいない。つい忘れそうになるけど、セイジさんは僕達…、じゃなくて僕とテレパシーを使えるひと以外の言葉は分からないから、パートナーがいなくて心配していると思う。…だけどそれは表情には出していないから、本当かはわからないけど…。
 「昼過ぎから姿を見なくてな」

  うーん、ヘクト君とヘルガーさんなら、多分ラグナとフルロ…、グラエナとメガニウムといるはずです。

 「直接出ていくのを見た訳じゃないけど、聴いた話だとセンターの裏にいると思います」
 ラグナさん達も一緒とは思わなかったけど、やっぱりメガニウムと一緒なんだね? 何かどこかで聴いたようなセリフだけど、セイジさんも僕達と同じ事をライトさんに訊ねる。丁度僕達の仲間のヘルガーについての答えもまだだったから、ティルさんはまとめてその返事をしてくれる。結果的に同じ答えになったけど、ライトさんも続けてその場所を教えてくれた。ヘクトとヘルガーさんも、やっぱり親子だから似るんだなぁ、って思ったのは、ここだけの話しだけど…。
 「そうか。…あぁそうだ。昼間に渡し忘れたんだが…」
 ん、昼間に? って事は、僕達が回復してもらってる間に渡すつもりだったのかな…? ティルさん達の言葉に、セイジさんはなるほどな、っていう感じで呟く。あまり表情には出してなかったけど、どこか安心したような…、口元が若干緩んだから、僕にはそう見えた気がした。それからセイジさんは何かを思い出したらしく、カナの事を見るなり、どこかから丸い何かを取り出した。
 「わたしに、ですか? 」
 『あっ、それって…』
 「そうだ。これで済むとは思っていないが、今まで迷惑をかけた詫びだ。…お前のバンギラスなら、使いこなせるはずだ」
 「オークスが? 」
 セイジさんが取り出したのは、黒と土色に輝く丸い物体…。僕には何なのか分からないけど、何か強い力を秘めているような…、何ともいえない感じがする。ただ、貴重な物、っていう事だけは何となく分かった気がした。
 申し訳なさそうに取り出したから、組織の事とはいえ、僕は仕方ない事だと思う。誰だって故郷が狙われる、って分かったら、例えどんな悪い組織の人でも、全力でそれを止めようとするはず。それが今回は、幹部だったセイジさんになっただけ…。
 「そうだ」

  それって、“バンギラスナイト”、ですよね?

 「“バンギラスナイト”…? 何なんですか、それって…」
 「あっ、そっか。ジョウトだから、カナちゃんとコット君は知らないんだよね? 」
 ジョウトが…? ジョウトでは知られてないって事は、他の地方では知られている、ってことなのかな? 頷きながらそれを持つセイジさんに、ティルさんがテレパシーで問いかける。ティルさんが知っているという事は、もしかするとホウエン地方では知られているのかもしれない。ライトさんも知ってそうな感じだから、確実だと思う。うっかりしてたよ、っていう感じで、ライトさんは僕達にこう訊いてきた。
 「はい」

  それなら…、ラフとライトが出来る、メガ進化をするために必要な道具、って言えば分かる?

 「らっ、ラフさんの? メガ進化って、姿も変わって凄く強くなる、あれですよね? 」
 「そうだよ。種族ごとに色が違うんだけど、メガ進化するためには、それが必要なんだよ。…あっ、そうだ。それなら、わたしからもコレを渡しておかないとね」
 『…えっ? うん、そうだね。メガストーンだけだと、どうする事も出来ないしね』
 そっ、そんな凄いものをもらっちゃってもいいの? 丸い物体の事は知らなかったけど、メガ進化なら、僕は何回か見た事がある。初めて見たのは、マダツボミの塔で、チルタリスのラフさんが。二回目が、怒りの湖でヘクトのお父さんが。そして三回目が、戦った後だったけどフスベのジムで、ライトさんがしていた時…。ユウキさんみたいに、能力か何かでしているかと思ってたから、僕はもちろん、多分カナも、驚きで声を荒らげてしまった。
 そんな僕達に気付いてないのか、それとも左側に立ってるから見えてないだけなのか…、どっちかは分からないけど、ライトさんはこのタイミングで何かを思い出したらしい。言葉が伝わってこなかったから、多分ティルさんにだけ言葉を伝えると、彼は一瞬驚いた表情を見せる。だけどすぐに納得したらしく、部屋の端の方に置いてあるらしい荷物の方に何かを取りにいった。

  名目上は、エクワイルの事に巻き込んじゃったから、っていう風になるけど、カナさんはこれを着けて。

 「このブレスレットを…? 普通のブレスレットに見えるけど…」
 ティルさんが鞄の中に仕舞っていたらしい箱から取り出したのは、紺を基調としたブレスレット。どこにでも売ってそうな気がするけど、それをティルさんはカナに手渡す。何の説明もされていないから、カナは言われるまま、半信半疑でそれを受けとる。いまいちパッとしない表情のまま、左腕に身につけていた。
 「“キーストーン”って言ってね、デボン社製の非売品だよ。一言で言うなら、メガ進化するために、トレーナーが身につける道具。本当はエクワイルで支給されたものだけど、わたしは人間じゃなくてラティアスだから、使えないんだよ」
 「えっ、でもライトさん? 使えないのにライトさんのチルタリス、それにライトさんも、メガ進化、出来てますよね? 」

  うん。だけど、もう一つ方法があるから、大丈夫だよ。本当は“キーストーン”を使った方がいいんだけど、ライトが言うには、効果が切れた後で疲れるだけだから。

 非売品…。セイジさんもだけど、本当に、僕達が貰っても、良かったのかな? ティルさんとライトさんが丁寧に教えてくれたけど、僕はそのモノの事が頭から離れず、あまり内容が入ってこなかった。何かのアクセサリーとかだったからここまでは思わなかったと思うけど、非売品、それも支給されたものだから、尚更…。ライトさんはどうやって…、それにどうするつもりなのかは分からないけど、少なくとも、思いつきで渡してくれたのではないのは確かだと思う。しっかりしているティルさんも納得してるみたいだけど、僕はそのモノの事で何も言う事が出来なかった。


  Continue……

Lien ( 2017/06/10(土) 00:19 )