Chance Des Infinitude〜ムゲンの可能性〜










































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Autre Onze
De Lien Onzieme 離島の激戦(空撃)
 Sideユウキ



 『…だから、もうすぐウチらも合流できるよ♪ 』
 本当はもっと早く着きたかったけど、立場上そうはいかなかったからなぁ…。フライとコルドからの一方を受けた僕達は、大至急その現場へと向かう。…そうしたかったけど、僕はそうは出来なかった。何しろ今日に限って、大学で講義に出なければならない日だったから…。そのため僕は、朝早い時間だったけど、講義を休みにするための手続きに追われていた。その間にコルド、スーナ、リーフ、オルトの全員が揃っていたから、待たせてしまったけど…。
 それで手続きが完了してすぐに、僕は戦場となっているタンバシティへと向かう。フライがいたらそのまま行けるけど、出来なくはないけどスワンナという種族上、人を運ぶのは難しい。だから僕は、スーナ以外の全員には控えに戻ってもらって、僕自身はピカチュウとしての姿に変える。これならスーナの背中にも乗れるから、その状態で任務に挑む事にした。
 そしてコガネを発って一時間弱経った今、水平線の先に目的地が見え始めている。僕以外の全員には無線の通信機を身につけてもらっているから、スーナはそれ越しに状況を伝えてくれる。本当は僕自身が直接話すのが良いけど、“絆のチカラ”ではそこまではする事が出来ない…。本来の姿でもみんなの言葉は分かるけど、通信機越しでは鳴き声にしか聞こえない。心を共有しているコルドは別だけど、そういう訳で僕への連絡は、一緒にいる誰かに頼むことにしている。
 『…うん、分かったよ。じゃあユウキに伝えておくよ♪ 』
 『スーナ、何て言ってた? 』
 『ライトの姿は見えないけど、それ以外のみんなはそれぞれで戦ってる、って。それにフライは、一緒に来ているピジョットと戦ってるみたいだよ♪ 』
 っていう事は、ライトは“ステルス”した状態、かな? それにピジョットって事は、現地の人、それからシジマさん達も戦ってるのかもしれないね。スーナから聴いた事を基にこう思ったけど、それでも僕はあまり良い状況じゃないと思った。フライとシルクは既について戦闘を始めているとはいえ、聞いたところによるとライトは左目が見えていない…。大怪我を負ってまともに動けないはずなのに、囚われているエンテイと戦っている。万全な体制じゃないはずだから、それだけが僕にとっての懸念要因。おまけに一般市民をも戦闘に巻き込んでしまっているから、尚更…。
 『そっか…。それならスーナ、フライに僕達が突入する進路を確保するよう伝えてくれる? 』
 『うん! フライ、戦ってる最中だと思うけど―――』
 そうしてもらえば、僕達が突入して参戦しやすくなる。その間に、僕がアルファの身柄を確保すれば…。激戦区となっている目的地を見据えながら、僕は彼女にこう頼む。現地の様子はスーナ伝いにフライから聴いた事しか分からないけど、少なくとも町全体で戦闘が行われているはず。幸いまだ火災は起きてないみたいだけど、状況的には予断を許さない事には変わりない…。だからその原因となっているプライズのトップ、アルファの身柄を抑える事でそれを打破できる。先に潜入しているシルクも特例でオーリックの地位に就いているけど、エーフィだからって事で、全ての権限を持っているわけではない。バトルで戦力を削いだり、メンバーに任務を与える事はできても、ターゲットを拘束する権利までは与えられてはいない…。だから、一刻も早く僕が向かわなけれ…。
 「まさかこんな島にノコノコと野生が来るとは…。ドデカバシ、ロックブラストで撃ち落としてやりなさい! 」
 『所詮野生…、その辺は能無しって訳か。ロックブラスト! 』
 『スーナ! 』
 『うん♪ 』
 流石にここまで近くなると、見張りがいるかぁ…。スーナが伝え終わったところで、僕達の進路に一つの影が立ちはだかる。まだ百メートル以上島まであるけど、プライズの団員と思われるトレーナーがバトルを仕掛けてくる。海上二十メートルの高さを滑空してきたドデカバシは、トレーナーを乗せたまま嘴にエネルギーを蓄える。そこから連続で岩を撃ちだし、空をかけるスーナを狙ってきていた。
 『生憎僕達には立場というものがあるからね、そこをどいてもらうよ! 』
 『ブレイブバード! 』
 一発目が放たれたところで、僕は背中の上で助走をつけ、一気に跳び出す。弧を描く様に大ジャンプし、放たれた岩に狙いを定める。タイミングを測りながら横方向に回転し、ピカチュウとしてのギザギザの尻尾を振りかざす。想定した位置で岩に打ちつける事が出来、それを叩き落とす事に成功。その反動で跳ぶ軌道を上に変え、次々に迫る岩にも狙いを定めた。
 その間にスーナは、身軽になった事で一気に加速する。岩群を迂回するように旋回し、発動者との距離を一気に詰めていく…。
 『飛行タイプとドラゴンタイプだけが、空中で戦えると思わないでほしいね』
 『くっ…』
 『気合いパンチ! 』
 そのままスーナは相手に激突し、大きな隙を作ってくれる。その間に僕は、飛ばされてきている四つの岩を跳び移り、テンポよくそれを回避していく…。五つ目に着地した瞬間、思いっきり岩を蹴り、今まで以上に大きく跳躍する。最高点に達したところで右手に力を溜め、その拳をドデカバシの脳天に振りかざした。
 『…っぐ…! 』
 「ドデカバ…」
 真下に向けて殴り飛ばしたから、トレーナーを乗せたドデカバシはその方向に吹っ飛ばされる。僕自身は殴った反動を利用できなかったけど、それまでにスーナが宙返りして戻ってきてくれる。僕が降下し始めたところで受け止めてくれたから、僕は海への落下を免れる事が出来た。
 『アクアリング…。ユウキ、やっぱり見張りがいたね♪ 』
 『うん。こっちの姿になっておいて正解だったよ。…スーナ、タンバも近づいてきた事だし、気を引き締めていくよ! 』
 『うん♪ 』
 少し時間をロスしたから、急いで遅れを取り戻さないと…! 僕を受けとめてくれたスーナは、反動で負ったダメージを回復すべく、水のベールを纏う。あまり食らってはいないと思うけど、これからが任務の本番。この先何が起こるか分からない。だから僕は、自分に言い聞かせる意味も込めて、彼女にこう言い放つ。すると彼女はすぐに頷き、より一層両翼を素早く羽ばたかせてくれた。戦場となっているタンバに、一秒でも早く潜入するために…。


 Continue……

Lien ( 2017/05/21(日) 18:14 )