Chance Des Infinitude〜ムゲンの可能性〜 - Chapitre Onze des Light 〜譲れない想い〜
Quatre-vingts-une 離島の激戦(偏光の真流)
 Sideライト



 「ガぁっ! 」
 『流石に…、キツイか…。アイアンテール! 』
 どういう状況か分からないけど、あまり良くないのは確かかな…。作戦を遂行し始めて、もう二、三十分ぐらいは経ったかな、その時にはわたしは、密かに行動を開始していた。アルファ自身の相手はセイジさんに頼んで、わたしは気が逸れている間に姿を元に戻す。光を纏った流れでステルスも発動させたから、攻撃を食らったりしない限りは誰にも見られないはず。だけどそれでも細心の注意を払って、セイジさんの傍を離れる。それからわたしが向かったのは、最初から戦っていると思う、スイクンとエンテイの所。ラグナから聴いただけだから分からないけど、スイクンは少なくとも三時間以上は戦い続けているはず…。互いに伝説同士だけど、エンテイはアルファに操られて諸々の制御が出来ていない状態。足元がふらつき、肩で息をしているスイクンに対して、わたしが見た感じではエンテイには疲労の色が全く見られない…。今発動させたアイアンテールも、エンテイの下顎に命中させる前に効果が切れていたから、エネルギーも底をついてると思う。
 「ぐォォォッ、ガあァッ! 」
 『なっ…! 』
 あっ、危ない! ダメージが全く入らなかったのか、それとも痛みというものを感じてないのか…、どっちかは分からないけど、自我が無いエンテイは一切気にすることなく技を発動させる。結構な回数見てるから分かるけど、たぶんエンテイは、この技で決着を着けるつもりなんだと思う。羽毛がピリピリするぐらいエネルギーを凝縮し、それを熱と炎に変換する。もの凄く温度が高く、水分蒸発して水蒸気が上がっているから、視界が悪くなってきた。だけどこれでわたしは、エンテイが何の技を発動させたのか分かる事が出来た。エンテイの正面、四メートルの位置にスイクンがいるけど、この距離だと絶対に回避が追いつかない…。こう率直に感じたから、私は手元に純白のエネルギー体、ミストボールを溜め、エンテイを狙って二発撃ちだした。
 「ッ? 」
 『何…、だ…? 』
 これでひとまず、気は退けたかな? 右目しか見えない影響で距離感が掴めないから、わたしの白球は狙い通りの位置に着弾しなかった。多分エンテイの手前、一メートルぐらいの地面に命中し、湿った砂が舞い上がる。だけど逆にこれが、エンテイの集中を途切れさす事に繋がったらしい。技を中断し、わたしを見つけるべく辺りの様子を探っていた。
 『…? これは、回復技、か? 』
 この隙に、少しでもスイクンの補助をした方がいいよね? 結果を見届けず、わたしは右の方にいる、スイクンの方へ一メートルの高さで接近する。雨風を切りながら手元に意識を向け、そこへエネルギーを集中させていく。一応技の準備が出来たから、光球を維持させている両手を下に伸ばす。距離感が分からないから、そうしていれば、確実にこの技を命中させれるはず…。見えない左側の気配が怖いから、更に加速。一秒も経たないうちにスイクンの斜め左上に来れたから、広めに両手を広げて癒しの光球、癒しの波動を彼にくぐらせた。何も言わずに発動させたからビックリさせることになったけど、それでもすぐに、わたしがしたことを察してくれたみたいだった。

  癒しの波動です!

 『この声はまさか…、ラティアスか? 』

  はい。スイクンさんには見えないと思いますけど、真上にいます。

 『噂には聞いていたが、チカラ、か。…だがラティアス、お前は戦えな…』

  わたしの事はいいから、今は目の前の事をどうにかしましょう!

 「ガァッ…」
 ある程度は回復できたけど、そろそろ戦わないと! 驚きで声を荒らげていたけど、わたしは構わず彼にこう伝える。本当はここまで来た経緯を話すべきだと思うけど、紅い鎖でつながれたエンテイが許してくれなさそう。だからわたしは彼にテレパシーで語りかけ、同時にエンテイに注意を向け直す。すると丁度向こうが走ってきたから、喉元にエネルギーを集中させ始めた。
 「ガあァァッ! 」

  上手くいくかは分からないけど、考えがあります!

 それまでは待ちになるけど、多分それさえ終われば必ずいけるはず! 多分五メートルぐらい先にいるエンテイは、わたしと同じで技の準備をしていたらしく、口元にエネルギーを具現化させていく。二歩ぐらい走ったところで発動させ、光の熱を帯びた光線、ソーラービームを正面に向けて放ってきた。光線の方向からすると、狙いはおそらく目視できるスイクン…。わたしの技で回復したとはいえヘトヘトな彼めがけ、一直線に進んでくる。
 だけどスイクンも、何もせず待ちかまえるなんて事はしない。反応が遅れたけど四肢に力を込め、すぐに右斜め前に駆けだす。その空いたスペースにわたしが降り、準備していたエネルギーに氷の属性に変換する。スイクンが三歩目を踏みだしたところで喉に力を込め、氷のブレス、冷凍ビームとして光線に対抗する。それと同時に体勢を上げ、相手との距離を維持するように後退した。
 『考え…』

 しばらくの間、わたしがスイクンさんの代わりに攻撃します。その間、逃げ回ってください。しばらくしたらわたしの仲間のマフォクシーが来てくれるはずなので、そこから一気に攻めます。

  つまり、俺のエネルギーの回復を待つ、という事だな?

  はい!

 「がぁッ! 」
 この作戦が成功すれば、“服従の鎖”で捕まったエンテイを解放できるはず。そのためには、ティルが来てくれるまで耐えないと! 大分説明を端折ったけど、とりあえずは伝わったと思う。エンテイの背後をとったスイクンは、多分頷いてくれた。自分なりに考えたことを言ってくれたから、大丈夫なはず…。頭の中に響いてきた言葉が、わたしの意図とは少し違ったけど、それもいいかもしれない。だから頷きながらこう返事した。
 だけどこの間に、わたしとの位置関係がエンテイにバレてしまったらしい。発動させていたソーラービームを中断し、更に走る速度を増してきた。牙が赤味を帯びてきたのがチラッと見えたから、多分炎の牙でわたしの正体を暴こうとしているんだと思う。だからわたしも慌ててエネルギーの供給を止め、そのままのスピードで上方向に退避した。
 「っ? ガぁっ? 」
 正面にいると思い込んでいる相手は、その場所を狙って大口を開く。思いっきり力を込めて閉じていたけど、噛み砕けたのは湿気の帯びた朝の空気だけ…。技が外れて、訳が分からないと言った様子で唖然としていた。
 この隙にわたしは、少しでもダメージを与えるために攻勢に移る。エンテイの右側に移動したスイクンと挟み込むような場所を陣取り、わたし真正面に来るように右目の視界にいれる。その位置で技を発動させ、暗青色のブレスとして放出する。隙だらけの左脇腹を狙ったから、少しのけ反っていた。
 『フラム! 俺はここだ! 』
 『ガアッ? グおォォッ? 』
 スイクンさん、この隙、利用させてもらいます! エンテイの動きが止まったから、わたしは正面に向けて滑空する。いつもならこのタイミングで発動させるところだけど、そうしたらさっき命中しなかった。だから今度は真上に移動し、その地点で十メートルぐらいの高さまで浮上する。そのまま手元にエスパータイプのエネルギーを集中させ、丸く形成。丁度そのタイミングで気を引いてくれたから、ミストボールを左右連続で、十二発、一点に集中して降らせる。極力エンテイを狙ったけど、…やっぱり左目が見えないからかな? 半分以上湿った砂地を捉えてしまっていた。
 『お前は昔からそうだよな? 対戦相手を見失…』

  ライト、ごめん、遅くなって!

 『マジカル、シャイン! 』
 ティル! 次の攻撃に移ろうとしたその時、わたしの頭の中に待ち望んだ彼の声が響き渡る。その彼、マフォクシーのティルが、予定より早く駆けつけてくれた。高度を落としていて左側からだったから見えないけど、強い光が見えたから、ステッキを高く掲げてフェアリータイプの広範囲技を発動させたと思う。

  ティル!

 『マフォクシー…、彼だな? 』
 …とにかくティルが来てくれたから、これで作戦のメインに移れるよ。スイクンさんは目が眩んで目を閉じてしまってたけど、その直前の一瞬でティルの事に気付いてくれたと思う。目を瞑った状態で、納得したように呟いていた。これで作戦の最終段階に移れるから、わたしは改めて気を引き締め直した。


  Continue……

Lien ( 2017/05/14(日) 16:28 )