Chance Des Infinitude〜ムゲンの可能性〜










































小説トップ
Chapitre Onze des Light 〜譲れない想い〜
Soixante et seize それぞれの想い
  Sideライト



 『…みんな、起きてる…? 』
 もし起きてたら、話したいことがあるんだけど…。左目に大火傷を負い、ワカバの研究所に運ばれた私…。シルクとウツギ博士? に手当をしてもらったけど、火傷の程度が酷くてわたしは左目の視力を失ってしまった。片目が見えなくなっちゃったけど、そもそもわたしはアルファに襲われて命を諦めてたから、それだけでも十分。だけどみんなにとっては、もの凄くショックな事なんだとわたしは思う。上手く言葉に出来ないけど、テトラはわたしの傍にいれなかった事を後悔しているみたいだし、ラフに至ってはいつもの明るさが全くない…。ラグナは何かを思い悩んでいるような感じだし、ティルは責任を感じているのか、口数が殆どない…。今この場にはいないけど、シルクももっと早く着けたら良かったのに、って泣きながら自分を責めてた。わたしからしてみれば、もしシルクが来てくれなかったら、わたしはこの世にはいなかったと思う。だからわたしは、助けてくれただけで十分だ、って言ったんだけど…。…いや、寧ろ申し訳ないって思っているのは、わたしの方。わたしを守るために無理をさせちゃって、そのせいでシルクは一生喋れなくなっちゃったから…。
 『…うん、俺は起きてる、けど…』
 あれから何時間か経って、わたしの無事が確認できたみたいだから、夜遅くって事もあって一旦解散になった。わたしの事、それからヨシノの事で頑張ってくれたカナちゃんとコット君達、それからフライ達にはまだお礼は言えてないけど…。本棚に囲まれた窓際のスペースに寝かされているわたしは、色んなことが頭の中を過ぎって全然眠れない…。だから小さい声でダメ元で訊いてみたら、暗い声でティルが返事してくれた。
 『ライ姉達も、眠れないの…? 』
 『フルロとアーシアもだな? 』
 『…はい。私も、色んなことが気になって…』
 『…やはりな。俺も、目を瞑ってみてはいるが、結局な…』
 そっか。何やかんや言って、みんな寝れてなかったんだね…? わたしには見えないけど、左の方からラフのささやく声が聞こえてくる。これがある意味合図になったのか、ラグナとアーシアちゃんも答えてくれた。白熱灯の小さい明かりだからハッキリとは見えないけど、わたしから見て右側にいるテトラとフルロも、目を開けて体勢を起こそうとしていた。
 『やっぱり、寝れないよね…』
 『うん。僕も疲れとるはずやけど…』
 『…それでライト、どうしたの? 左目が痛くなっ…』
 『ううん、シルクのお蔭で痛みは大分治まったよ』
 やっぱりみんな、いろんな事を考えてて、寝れてないのかな…? 浮かない顔をして起き上がったテトラも、このスペースにいるみんなを見渡しながら呟く。フルロも同じような感じで、テトラに続いていた。その後テトラが、心配そうにわたしを見、訊ねてくる。多分テトラは、わたしが痛みの影響で寝れてないんだと思っていると思う。だけどそうじゃないから、わたしは小さな声で彼女の言葉を遮る。研究所にはわたし達以外にも、ヨシノから避難してきた人、わたしほどではないけど怪我をした人が眠っている。
 『痛みじゃなくて、みんなに話したい事があるから…、わたしから見える右の方に来て』
 『ライ姉の? 』
 『…アルファと、エンテイの事だな? 』
 ラグナ、そうだよ。ずっとこの事を考えてたから、寝れなかったってのもあるけど…。シルク達がカナちゃんの家に戻ってからの数時間考えていた事を伝えるため、わたしは間髪を入れずに語る。みんなの顔を見て話したいから、できれば無事な右側に来てほしい。ラグナ、ラフ、それからティルもわたしの表情は巻かれている包帯で見えないと思うから、こう提案した。するとこれだけで察したのか、…それとも似たようなことを考えてたのか、どっちかは分からないけど、ラグナが多分首を傾げながらわたしに訊き返してきた。
 『うん。いままでずっと考えてたんだけど…、やっぱり…、すぐにでもアルファを止めないといけない、って思ってるんだけど、みんなはどう思う? わたしはまだ動けないけど、“チカラ”の代償だから…。…だけど、安静にしてないといけない…。…そう分かってはいるけど、けど…』
 『抜け出してエンテイを助けたい、ていう事です? 』
 本音を言うと、すぐにでも捜してエンテイを解放したいけど、ウツギ博士には絶対安静だって言われてるからなぁ…。だけど、やっぱり…。考え抜いて出した結論だけど、わたしの中での議論が終結してないのも事実。葛藤した状態で、わたしはみんなにこの事を伝える。だけどこの事を伝えたら、またラグナに反対されるかもしれない。ただでさえ大怪我を負って死にかけた直後だから、尚更…。頭の中がモヤモヤして、思い切って言い出せないでいると、視界の端にいるアーシアちゃんが、代わりにハッキリと言ってくれた。
 『うん』
 『ライトならそう言うと思ったけど…、今回はいつもとは違うから…』
 『テトラ、そんな事は分かってるよ。…でも、それでもすぐに探さないと、大変なことになるよ。折角止めれる“チカラ”があるの…』
 『俺も同感だ』
 えっ、ラグナ?
 『そもそもこの事件の発端は、俺とアイツが組織を追放された時、ライト…、ラティアスに関する情報の始末をしなかったためだ。…それに加えて、エンテイをしたがさせているアルファなら、リーグ襲撃も十分考えられる。…だから俺は、俺が向かってどうかなるとは思えないが…。先に逃げた先、タンバに向かったエクサ…、ヘルガーとベータの後を俺だけで追うつもりだ』
 『ラグナ…』
 『ラグナさんも、ですか…。私も、エンテイさんを助けたいです。タイミングを逃して今まで話せてなかったのですけど、向こうの世界で、私は今のエンテイさんみたいな人を何十人も見てきました。…あまり思い出したくはないけど、意識が残ったまま、体の自由を奪われて、敵に操られた事があります。…あの時は一緒に戦ってた仲間…、シルクさんに対しても、無理やり攻撃させられ…、戦わせられた…。…あの時は、…兎に角恐ろしくて、怖かった。…助けてもらったから、何とかなったのですけど…。…だから、今度は私が助けたいんです! 助ける方法も知っています! だから私も、ラグナさんについていきます!
 『シアさん…』
 『ライ姉とラグ兄の考えが合うのも珍しいけど、シア姉に、そんな事が…』
 向こうの世界って事は、七千年代で…? わたしもシルクに連れてってもらった事があるけど、そんな事があったなんて…、知らなかったよ…。
 『ラグナ…、アーシアちゃん…。…うん、ありがとう。お蔭で決心がついたよ! ラグナとアーシアちゃんが行くつもりなら、飛べる誰かも一緒に行かないといけないよね? …わたしがこんな状態だから、ラグナは賛成してくれてるけど、シルクとフライなら、絶対に反対してくる…。だから、飛ぶよ、わたしが。まだ完ぺきに動ける訳じゃないけど、頑張れば、飛ぶぐらいな
らできると思う。…そういう訳で、わたしは暗いうちにここから抜け出すつもりだけど…、ティルとテトラ、ラフとフルロはどうする? 』
 ラグナはああ言ってくれたけど、今日はテトラに反対されそうだなぁ…。テトラって、慎重だから…。わたしの予想に反して、いつも対立しているラグナが賛成してくれた。アーシアちゃんも、理由は違えど賛同してくれた。内心ホッとしながら、わたしは残りの四にんに右目を向ける。その視線を含めて、彼らに訊ねてみた。
 『…ラグナさんが言っとるヘルガーって、ヘクトの父さんやんね? そんなら、僕もついてこっかな』
 『フッ君は相変わらずだね。私はライ姉の事を考えると反対だけど…、そうも言ってられないからなぁ…。だけど、リーフお兄ちゃんを苦しめたクズを止めれるなら、いいよ、私も』
 そういえばリーフのお姉さんも、アルファの被害に遭ってたんだっけ? そもそもリーフ自身も、アルファのせいで故郷を失ってたっけ?
 『今思い出したけど、ラフはリーフ達と一時的に旅をした事があると言ってたね。…俺はライトが決めたならそれでいいけど、テトラは? 』
 『うーん…。…私はやめた方がいいと思う。今戦いに行くと、今度は本当にライトが逝っちゃうかもしれない…。…けど、ライトは前から、一度決めたらテコでも動かないから…。…うん、分かったよ。ライトがそう決めたなら、私も行くよ。ライトが戦わなくてもいいように、ね! 』
 みんな…。賛否両論あったけど、わたしの心配を余所に話がまとまったらしい。それぞれ動機は違うけど、今回は珍しく考えが同じ方向を向いていたらしい。一応テトラとラフは反対してたみたいだけど、この様子だともしかすると、自分の中で何かの決心がついたのかもしれない。
 『みんな…、ありがとう…』
 だからわたしは、無事な右目だけでひとりひとりを見て、色んな想いに満たされながらこう呟いた。絶対にアルファを止める、そう自分に強く言い聞かせながら…。


  Continue……

Lien ( 2017/04/28(金) 23:10 )