Quatre-vingts-quatre 離島の激戦(護りの代償)
Sideコット
「…目覚めるパワー! 」
「ちっ…。ゼータ! とっとと片付けてしまいなさい! 」
「ビビヨン、ペロリーム、アルファ様を死守するのよ! 」
この感じだと、少しは僕達の方に流れか傾いてきてるのかな? フィフさんと戦い続けている僕は、いつしか町の真ん中あたりまで来ていた。ここまで何にん倒したか数えてないけど、結構なにんずうと戦ってきてると思う。心なしか戦ってる敵の数が少なくなってるきがするけど、まだまだ多く残ってる。その途中で僕達は、プライズの代表、アルファの姿を発見していた。見た感じアルファのメンバーらしきひとは、近くに誰もいないけど…。何でかは分からないけど、その代わりに幹部らしき女の人が前に立ち、自身のメンバーを出場させていた。
『そろそろバテてきた頃なんじゃないかな? マジカルシャイン! 』
『暴風っ! 』
僕が水色の弾丸、フィフさんも同じ技を発動させると、相手もこれに抗ってくる。どんな種族なのかは分からないけど、空をひらひらと飛んでいる彼は、羽にありったけのエネルギーを集中させ、すぐに解き放つ。もうひとりは目を覆う様な閃光を放ち、味方の突風に衝撃波も乗せてきていた。
「バテていても、戦い抜くって決めたんです! 」
『―――! 』
僕は咄嗟に目を閉じ、その閃光を何とかやり過ごす。だけどこのままだとダメージを食らうから、全部の感覚を活性化させ、見切りを発動させる。衝撃波の合間を縫うように、それをスレスレ回避。それに対してフィフさんは、能力の影響で使える六つ目の技、ハイドロポンプで迫る連撃に対抗する。雨が降っているっていう事もあって威力が増しているから、荒れ狂う旋風とぶつかっても全然威力が落ちてないと思う。目を閉じているから音でしか判断できないけど、多分フィフさんの水流が勝って押し流していた。
『コットンガード! …っく…! なっ…、何…、この威力…』
相手が相手だから、全力で戦うに決まってるじゃない! チカラで強化されてるけど、あなた達には容赦はしないわ!
「あのガキのエーフィ…。流石に厄介ね。ゼータ、サンダースの相手はいい…。学者のガキが来る前にエーフィだけを狙わせなさい! 」
「そうするのが正解と言えば正解だけど、僕の事も忘れないでくれませんか? アシストパワー! 」
『ぐぅっ…』
こういう判断は正しいけど、正直言ってこう言われるのは凄く悔しい。フィフさんのおまけ、って言われた気がしたから、僕は無性に腹が立ってきた。だから僕はその怒りも込めて、遠距離から弾くように薄紫色の気弾をモルフォンみたいな種族の彼に命中させる。チャージビームで極限まで強化されているから、結構なダメージを与える事が出来た。
『…光の…、壁…。これで…』
『クソガキが…、ナメるな! 蝶の舞…! 』
「チャージビーム! 」
向こうは状況を変えようとしているらしく、揃って補助技を発動させる。白とピンクの相手は透明な壁を出現させ、その後ろに隠れる。僕とフィフさんは特殊技しか使わないから、できれば発動して欲しくなかった。もうひとりも体中の感覚を活性化させ、ふらつきながらも自身を強化していた。
光の壁を張っても、私には通…
『目覚めるパワー、電磁浮遊! 』
「えっ…」
ちょっ、ちょっと待って! どっ、どこから来たの、今? 電気のブレスを放ちながら距離を詰めていると、急にどこからか別の声が割り込んでくる。すぐに誰の声かは分かったけど、あまりの事にビックリして僕は思わず技を中断してしまう。驚きながらそっちに目を向けると、ピリッと痺れる感覚がし、同じタイミングで四つの影が空から降ってきた。
『アルファ…! 』
もうこれ以上は、町の人達に手出しはさせません!
「ユウキさん! コルドさんも…! 」
その四つの影のうち、二つには会った事があるから知っている。一番大きな影は、今朝ヨシノで別れたコバルオンっていう種族のコルドさん。コルドさんとみんなは高い位置から落ちてきていたけど、一番小さくて黄色い彼、ピカチュウの姿のユウキさんが操る磁場の影響で、ふわりと着地する。緑の彼…、ユウキさん達と一緒に来たからフィフさんの仲間だと思うけど、その彼は相手のリーダーに対して声を荒らげ、白い種族のもうひとりは右手をつき、華麗に着地していた。
「ちっ…、もう来やがったか…」
『プライズ、その悪行も…』
「ここまでだ! 」
三にんを磁場から解放したユウキさんは、頭領にこう言いながら姿を歪ませる。左腕に青いスカーフを結んだ、本来の姿に戻ったユウキさんは、途中からだけどこう言い放つ。
「オルト! リーフ! 」
『あぁ! 波動弾! 』
『なっ…! 』
『姉さんの事といい…、今までの事を全部償って貰いたいところだよ! リーフブレード…! 』
白い種族の彼は、ユウキさんの呼びかけにすぐに頷く。かと思うとすぐに、手元にエネルギーを集中させて気弾として撃ちだす。威力が高いのか相手が耐えれなかったのか…、どっちかは分からないけど、それだけで空の敵を撃ち落とす。リーフって呼ばれた彼も、這って距離を詰めて尻尾の剣でピンクの敵を切り裂いていた。
「…うん、すぐにでも発動させた方が良さそうだね」
『そうですね。…“深秘の護り”! 』
「えっ、こっ、コルドさん? 」
ちょっ、ちょっと待って! コルドさん、一体何を考えてるの? 僕には伝わってこなかったから分からないけど、多分フィフさんは、テレパシーでふたりと話していたんだと思う。何かの相談をしていたらしく、ユウキさんとコルドさんは、同意するように揃って頷く。かと思うと急に、コルドさんは口元に真っ白に輝くエネルギーを溜め、すぐに解き放つ。するとすぐに二つに分かれ、対象と思われる方に飛んでいく。その対象は、プライズの方じゃなくて、仲間のはずのフィフさんとユウキさん…。見た感じ何ともなさそうだけど、輝く珠は吸い寄せられるようにふたりに着弾していた。
ユウキ、いくわよ!
「うん! 」
何事も無かったかのように、フィフさんはユウキさんにこう呼びかける。すると彼は大きく頷き、何かを決意したかのように目を閉じた。フィフさんも同じタイミングで目を閉じ、僕が見た感じでは精神を研ぎ澄ましていると思う。するとすぐに、もしフィフさんが喋れたら、声を揃えて…。
「“絆により、我らを護り給へ”…」
『“――――、―――――――”…っ! 』
古風なセリフを唱えあげる。フィフさんは無理をして声を出そうとしてるらしく、ちょっと痛みで顔をしかめていたけ…。
「えっ、なっ、何? この感じ…」
何が起きたのかさっぱり分からないけど、ユウキさんがこう唱え終えると、傍で観ていた僕は、ふと何かに包まれるような感じで満たされる。それに見間違いかもしれないけど、僕、それから他のひとにも、淡い青色の光が纏わりつく。一瞬神秘の護りか何かな気もしたけど、すぐに弾けたそれは、僕が思った技とは明らかに何かが違う気がする。もしそれなら、フィフさんは七つ目の技を使ったことになるし、そもそも今のユウキさんは人間の姿だから、技は使えない…。
コット君、びっくりさせちゃったかもしれないけど、私とユウキが使えるチカラの一つ…。
「“絆の加護”って言ってね、伝説の種族とかメガ進化したひとの攻撃じゃない限り、ダメージを防いでくれるんだよ」
その代り私達が、一度でも攻撃されると解かれるけど…。
「こっ、攻撃を防ぐって…、反則だよね? 」
すぐに説明してくれたけど、正直言って僕は、そんな強い能力はルール違反だと思う。いくらフィフさんとユウキさんの能力って言っても、流石にそれは常識から外れていると思う。攻撃を防ぐって事は、その言葉通り、あらゆるダメージを無効化することになる…。
確かにそうだけど、そもそもこのチカラは、戦うために存在する訳じゃないわ。
「戦うためじゃない、って…」
「本来このチカラは、戦火から一般市民を守るためのもの…」
それに今は完全な状態だけど、“絆の賢者”、“絆の守護者”、そして私の“絆の従者”の一人でも欠けるとその効果は落ちるわ。当然これだけ強力な能力だから、私とユウキもタダでは済まないのよ。完全な状態じゃないのに守る対象が多すぎると、“絆の賢者”と“従者”…、私とユウキは、
命を落とす事になるわ…。
「えっ…」
続けて詳しい事を話してくれたけど、あまりの事に、僕は言葉を失ってしまう。フィフさんから伝わってくる声も、もの凄く重い感じがしたから、嘘じゃないと思う。命を落とすって事は、そういう事だから、フィフさん達はその恐怖と隣り合わせの状態で、この能力を使ってることになる…。
『ユウキさん! シルクさん! 後ろから来ています! 』
『――! 』
コルド、ごめんなさい! …助かったわ!
「いっ、いつの間に? チャージビ…」
だけど僕達が話している間も、周りではバトルが行われている。僕達の意識が逸れていると思ったらしく、相手の何にんかが僕達に不意の一撃を仕掛けてくる。それにいち早く気付いたコルドさんが、僕達に注意を呼び掛けてくれる。それでようやく知ることが出来たから、フィフさんは強力な電撃を、僕も同じ属性のブレ…
『
…グアァぁぁぁぁぁ――っ! 』
「こっ、今度はなに? 」
「すっ、凄い声量…」
『この声は…、フラムさん! 』
不意のピンチを防いだ瞬間、あまり離れていないどこかから、耳を覆う様な爆音が轟く。あまりに急な事だったから、僕、フィフさん、ユウキさん、それからコルドさんも、思わずそっちの方に振りかえった。その声は、ただならない苦痛に悶えるような…、そんな感じ。そんな尋常じゃない声を聴いて、僕はこう思わずにはいられなくなった、僕達が気づかなかったどこかで、何かが起きた、って…。
Continue……