Chance Des Infinitude〜ムゲンの可能性〜










































小説トップ
Chapitre Onze de Cot 〜終息に向けて〜
Quatre-vingts-trois 離島の激戦(岩壁の信念)
 Sideオークス



 「ヘクト、オークス、出てきて! ネージュも、いくよ! 」
 『おぅよ! この島にはオヤジもいるんだ、やってやるぁ! 』
 『うん…! 』
 『当ったり前だ! 』
 今の俺は全然動けねぇけど、やってやる! この島に来るまでに何があったのかはしらねぇけど、俺達は予定通りに島へ辿り着く。俺とヘクトはボールの中だったから、俺達は投げられたそこから勢いよく跳び出す。サナギラスの俺はここから一歩も動けねぇけど、そこはヘクトとネージュがカバーしてくれるはずだ。イグリーの奴の姿が見えないのが気に食わねぇけど、あいつがいないなら思う存分暴れられる。雨が降ってるせいで体中が痺れるが、炎タイプのヘクトも同じなはず…。
 『おぅおぅ、俺達プライズに盾突…』
 『岩雪崩! オークス、ネージュ、こんな奴らなんか、一気にフッ飛ばしちまおうぜ! 』
 『だっ、だけど、あまり無理し過ぎないようにね。水の波動! 』
 『毒々! 』
 やっぱこんだけの数だからな、早速お出ましという訳か! 声を聴きつけたのだと思うが、早速島の中の方から敵の一匹が駆けつけてくる。種族はしらねぇが、俺は真っ先に攻撃を仕掛ける。動けないなら動けないなりに、遠距離から仕掛けるだけ…。溜めたエネルギーを解放し、相手との間に岩石の雨を降らせた。
 俺の先制攻撃に合わせて、ヘクトとネージュも行動を開始する。ネージュは濡れた砂浜を這いながらエネルギーを溜め、水のリングとして撃ちだす。ヘクトはネージュの反対側に移動し、俺の技で足止めされている敵の足元を紫色に染め上げていた。
 『くっ…』
 『この子だけだって思わないでよね! マッハパンチ! 』
 『なっ…、だが…、しっぺ返し! 』
 『うそ…、くぅっ…! 』
 格闘技か…、面白い! その挑戦、受けてたとうじゃねぇか! 足止めした相手以外にもいたらしく、別の敵が俺との距離を詰めてくる。緑色で二足の種族、確かキノガッサだと思うが、五メートルぐらいある距離から、種族上伸びる腕で俺に殴りかかってくる。俺にとっては脅威になる属性だが、尻尾を巻いて逃げるほど俺も臆病者じゃねぇ。正々堂々拳を受けとめ、すぐにヘディングで返り討ちに遭わせる。弱点属性で体に堪えるが、ひとまずダメージを与える事に成功した。
 『どうだ! 俺のしっぺ返し、効いただろう? 』
 『うん、ちょっと痛かったけど、こんな技では私は倒せないよ? 種マシンガン! 』
 『ちっ…、岩雪崩! 』
 そっちがその気なら、正面から受け止めてやるよ! 後手で発動できたので、普通よりは多めのダメージを与えれたはず…。だけど俺が見た感じでは、あまり堪えてなさそうだった。それどころか、相手は時計回りに走り、迂回しながら俺に沢山の種を飛ばしてくる。一応岩石で防ごうとはしたが、俺とは違って相手は普通に動ける…。俺自身、奥の手として進化を促す方法があるが、それじゃあ雄として格好悪い…。時が来ればするつもりだが、今はその時じゃない。
 『もしかしてキミって、動けないんじゃないの? 』
 『うるせぇ! 岩雪崩! 』
 『マッハパンチ! ほら、こうして動かないと当たらないよ? 』
 『ぐぅっ…! 』
 おいおい、俺に喧嘩吹っ掛けるとか、いい度胸してるじゃねぇか! 見かけに反し、相手のキノガッサは言葉でも俺に攻めてくる。技だけでなく口でおちょくってくる辺り、中々なやり手…。しかもこの俺を相手にしているのだから、大したものだと思う。なので俺は、相性的には不利でも、売られた喧嘩を買わない訳にはいかねぇ。結果的にかわされたが、岩石の雨でそれに対抗した。
 『ほらほら、私はここだよー? 岩石封じ! 』
 『おまっ…、卑怯だぞ! 』
 『卑怯? それなら、さっさとそこから這い出してみたら? 』
 コイツ…、まさかとは思うが、ここまで根性ねじ曲がってたのかよ…。俺が動けない事を良い事に、敵のキノガッサは更に調子に乗った行動をしてくる。俺の周りを囲うように走り、その状態で技を発動させる。俺を完全に閉じ込めるように大岩を落とし、完全に視界を奪ってくる。高さも俺以上にあるので、完全に周りが見えなくなってしまっ…。
 『だけど、そんな事させる気なんて、さらさら無いけどね? 馬鹿力…! 』
 『なっ…、ぐぁっ…! くっ…』
 …流石に俺でも、奴には腹が立ってきた…! 完全に視界を奪ってきた奴は、このチャンスにまた何かを仕掛けてくる。岩石に囲まれた俺の真上まで跳び上がり、そのまま跳び下りてくる。かわさなければ大ダメージを食らう、当然俺はこう感づいてはいたが、何しろ俺は自力では動けない種族に進化してしまっている。分かってはいたが、俺は為す術無く弱点属性の重撃を食らうしかなかった。
 『くっ…、そっ…』
 『あれれー? さっきの威勢はどうしちゃったのかなー? 私を楽しませてくれるって期待したのに、がっかりだよ』
 これは流石に…、マズいな…。まともに攻撃を食らってしまったので、俺は崩れた体制を元に戻せなくなってしまう…。こんな俺の事が相当可笑しいのか、奴は無力な俺を嘲笑う…。
 『だけど一瞬でも私にそう思わせてくれたんだから…』
 これは…、くだらん事に拘ってる(こだわってる)場合じゃ…、ねぇよな…。意識も朦朧としてきたので、俺はこう強く感じ始める…。地元じゃ敵無しの俺が、無様な姿を見せているなんて、許せねぇ…。
 『この一撃で…』
 


 許せねぇ…。


 『楽にして…』


 許せん許せん許せん許せん…



 『あげるよ! 』



 絶対に許していられるかぁっ!


 『…黙れ! 俺に恥をかかせるなんて…、絶対に許さんからなぁっ!
 ちっ…、性に合わねぇが、腹癒せだ! いっそのこと思う存分暴れてやるぁ!
 『馬鹿ぢ…っ? 』
 自分、それから散々罵ってくる奴への怒りに身を任せ、俺は体の奥底にある何かに意識を向ける。ここまで抑えてきたそれを活性化させ、それの発動を躊躇なく促していく…。するとどこからともなく力が溢れ出し、同時に俺を激しい光が包み込む…。それは急激に膨れ上がっていき、ある程度すると雲散する。
 『この俺を怒らせた事を…、今に後悔させてやるぁっ! 』
 噴火するように様々なものが溢れ出る俺は、背が高くなった…、バンギラスに進化した事で、散々言い散らしてきた奴に対して怒鳴り散らす。更に俺の怒りに天が答えたのか、急に砂交じりの突風が雨に混ざって吹いてきた。
 『なっ、なんだよ! そんな力が残ってるなら、最初から使えばよかったじゃん! マッハパン…』
 『そんな事、知った事かぁっ! 』
 『いっ…! 』
 『久々の暴れる…! 』
 俺が進化した事で狼狽えていたが、それを奴は苦し紛れに誤魔化している。俺は筋を通さない事が嫌いだが、相手を罵るような事はそれ以上に嫌い…、大嫌いだ! 地元じゃあ不良と言われてきた俺だが、そんな俺にも譲れないものがある。なので俺は殴り掛かってきた奴の腕をひっ掴み、手前に力任せに引っ張る。引かれた奴が俺の方に来たので、届く範囲に来たタイミングで左足で蹴り上げる。掴んだ左手を解放し、逆の右手の拳を思いっきり振りかざした。
 『かはッ…! 』
 『これだけで済むとは思うなよ! 』
 口だけの奴を砂浜に叩き落としても、俺は攻撃の手を止めない。右足を軸に横回転する事で、地面のキノガッサに尻尾を叩きつける。
 『っ…! ごっ、ごめん、そこまで…、怒るなん…』
 『ひとの事を考えねぇ奴に、語る資格はねぇ! 』
 『っあぁーっ! 』
 コイツの様な手の平を返す奴に、俺は罵られていたのか! 俺の気迫に怖気づいたのか、弾き飛ばされた奴は急に態度を一変させる。そんな奴に無性に腹が立った俺は、すぐにその後を追う。技の効果が切れねぇうちに奴に追いつき、力を溜めて右足を上げる。時間切れのギリギリのタイミングで、俺は奴もろとも踏み抜いた。
 『一度決めた事を貫き通すのが、ひとってもんだろぅ! 』
 この一撃が効いたらしく、奴はこれ以降口を開く事は無かった。意識を手放したのは分かっているが、俺はこう言わずにはいられなくなる。だから俺は喉に力を込め、高らかに言い放った。


  Continue……

■筆者メッセージ
・キノガッサ

特性:テクニシャン
技:マッハパンチ、種マシンガン、岩石封じ、馬鹿力
Lien ( 2017/05/21(日) 22:54 )