Chance Des Infinitude〜ムゲンの可能性〜 - Chapitre Neuf Des Light 〜龍翼の跡〜
Soixante et huit 新たな情報
  Sideライト



 『…ライトさん、大丈夫です? 』
 『うん…、さっきよりは、マシになった、かな…』
 そこそこ時間経ってるから、何とか、ね…。フスベでの予備試験を何とか突破したわたしは、すぐにメガ進化を解除…。…したかったんだけど、ラフが言う通り、わたしも出来なかった。一応知ってはいたけど、やっぱり実際に自分がするとなると、やっぱり違うね…。一応キーストーンは、ホウエンの支部から支給されたものを持ってはいるけど、わたしはラティアスだから使えない。メガ進化する方法が違うから、その分好きな時に解除する事ができない。…だけどラフがして効果時間が終わった時、わりと楽そうにしていたから、てっきり何も起きないんだと思い込んでた。だけどいざ自分がなってみると、終わった時、尋常じゃないぐらいの疲労感が襲ってきた。こんな風になるのに、ラフ、よく耐えれるよね…、って言う感じで、ラフの凄さを身をもって感じた。
 そんな感じで、観客席の方で体を休めていると、いつの間にか次のバトルが始まっていたらしい。今も戦っている最中だけど、ここから見た感じだと、戦っているのはカナちゃんのメンバーのネージュちゃんらしい。一応元の姿のままで観戦してはいるけど、…やっぱり疲れてるせいかな? 全然頭に入って来ない。そんなわたしを心配して、アーシアちゃんが優しく声をかけてくれた。
 「初めて見たけど、メガ進化…? ってそんなに疲れるんだね。強かったライトさんでもこうなってるから、あたしにはやっぱり無理かな…」
 『わたしはまだ弱い方だよ…。わたしとヒイラギを入れて六にんなんだけど、わたしの実力は四番目だから』
 「姉さんでもソウルさんには勝てないから…」
 「えっ? ヒイラギさんとライトさんって、兄弟じゃなかったの? 」
 そうだよね。ソウルさんがラティオスナイトを持ってるけど、メガ進化…、使える技が三つでも、わたし達の中では一番強いからね。興味津々って言う感じだったアイラさんは、わたしの試験が終わって以来、呆気にとられたような感じになっていた。ラティアスナイトはアイラさんから預かった物だけど、それがそうだって事は知らなかったらしい。このバトルでアイラさんはラティアスとしての戦い方を初めて知ったみたいだけど、わたしの実力はまだまだ…。わたしとヒイラギでこう言ったけど、アイラさんはそれとは別の事に驚いたような感じだった。
 『うん。わたしとヒイラギは幼馴染み。ホウエンの南の孤島で育ったけど、わたし達には別に兄弟がいるから』
 「そうだね。自分とライトは同い年。ライトにはスクールで先生をしてるお兄さん、自分にはキュウコン…」
 『ライト、シアちゃん、お待たせ! 』
 お兄ちゃんは今ではカナズミのスクールの人気講師だし、アオイさんは伝説の当事者で、人間に変えれない代わりにキュウコンに姿を変えれるからね。大分疲れも抜けてきたから、ヒイラギだけに任せるんじゃなくて、自分でもアイラさんに説明してあげる。名前を挙げるたびにそのひとの事を思い浮かべながら、順番に話していく。だけどヒイラギがアオイさんの事を話そうとした丁度その時、フィールドの方からわたし達を呼ぶ声が聞こえてきた。
 『テトちゃん、という事は、カナさん達も終わったのですね? 』
 『うん』
 「ネージュが一気に逆転しましたから」
 『…でもまさか、あのタイミングで吹雪が使える様になるとは思わなかったね』
 声をかけてきたのは、カナちゃんの傍…、最前線で観戦していたテトラ。彼女はカナちゃんとコット君、それからいつから居たのかは分からないけど、フライと一緒にこっちに来てくれた。わたし達が観戦していた席は一番下だから、水嵩が上がった水面から上陸したネージュちゃんは、フィールドがあるフロアにいるけど…。真っ先に気付いたアーシアちゃんがこう訊くと、テトラはそうだよ、って大きく頷く。それに続いてサンダースのコット君が、呟き、続いてフライが決め手になったと思われる事を話し始めていた。
 『わっ、私も、ちょっとびっくりしてます…』
 『って事は、ネージュちゃんはさっきのバトルで、初めて使えるようになったんだね? 』
 『うん…』
 「ネージュ? このひとの事、知ってるの? 」
 あっ、そっか。そういえばコット君とは、元の姿で会うのは初めてだったよね。さっきまで戦っていたネージュちゃんは、まだバトルの興奮が冷めきってないらしい。言われてみれば話している途中、冷たい風が吹いてたような気がするけど、多分その事を言ってるのかもしれない。彼女と話すのは久しぶりだけど、とりあえずわたしは、こう訊いてみる。すると彼女は頷き、何かを言おうといてたけど、不思議そうに視線を送ってきているコット君に遮られてしまっていた。
 『えっ、誰って…、ライトさんだけど…』
 「らっ、ライトさん? ライトさんって、テトラさん達のトレーナーのはずだよね? 」
 『あれ? 言ってなかったっけ? ライトはラティアス、っていう種族のポケモンってこと』
 「えっ、ライトさんが、僕達と同じ…? それに、ラティアスって…」
 コット君が知らないって事は、ティルとシルク、ネージュちゃんとカナちゃんも言ってなかったのかな? 大人しいネージュちゃんも、コット君がわたしの事を知ってるって思い込んでいたらしい。ちょっとオドオドしてるけど、意外そうに彼に教えてくれる。するとコット君は、あり得ない、って言う感じで驚きながら声を荒らげる。当然と言えば当然だけど…。
 『うん、ホウエンの伝説の種族だよ。ライトはボクと同じドラゴンタイプで、シルクと同じエスパータイプでもあるんだよ』
 「フィフさんと、フライさんと…? 」
 『そう。ここのジムと同じ、ドラゴンタイプ。だからわたし達は通ってないけど、氷の抜け道みたいな寒い場所は、ちょっと苦手かな…』
 噂では聴いてるけど、氷の抜け道って、床に氷が張るぐらい寒い場所らしいもんね…。こう言うわたしも、冷凍ビームを使うんだけど…。わたしの口から直接言おうとしたけど、ほんの少しの差でフライに先を越されてしまう。有難いのはありがたいけど、ここはやっぱり、自分で言いたかったかなぁ…。慌てて口を噤んだから変な声を出さずに済んだけど、代わりに心の中でこう呟いた。コット君がわたしとフライの間で視線を行き来させていたから、今度こそ、この間に直接言ってあげる事ができた。
 「っていう事は、ライトさんが戦ったんですか? 」
 『うん。濡れたらいけない、っていう条件付きだったけど、何とかなったかな』
 『冷凍ビームで凍らせた、のかな? 』
 『そうだよ。もし冷凍ビームが使えなかったら、ここの試験は合格してなかったかもしれないなぁー』
 いつも通りなら何とかなったかもしれないけど、メガ進化してたからね。翼の感覚、いつもと凄く違ったし…。
 「フライさんから難しいって聴いてたけど、クリアできたんですね。…あっ、そうだ。ライトさんって、ラティアスだ、って言ってましたよね? 」
 『言ったけど? 』
 「そっか。それなら…、プライズの幹部から聴いたんですけど、その人がラティアスとルギアとスイクンを探してるみたいなんです」
 『ぷっ、プライズの幹部が? 』
 「はい。何で教えてくれたのかは分からないんですけど、ボスの目論みを阻止するため、って言ってました」
 わっ、わたしが? コット君とジム戦の事について話していると、彼は突然何かを思い出したらしい。短く声をあげたかと思うと、体勢を起こして腰かけているわたしを真っすぐ見上げながらこう話し始める。わたしのことを確認してきたから、何なんだろう、こう思いながら聴いていると、彼の口からまさかの単語…。思わず変な声を出しちゃったけど、それでも彼は安心したように話を続けていた。
 …プライズのボスって事は、アルファの事で間違いなさそう。それにアルファと言えば、囚われたエンテイ…。アーシアちゃんが言うには、心が闇に呑まれている状態らしい。その状態から解放するには、首に巻かれた赤い鎖を切ることだけ、らしい。昨日それを狙ってチカラを使ったけど、弾状だと全く切れた様子が無かった…。だけど、誰かは分からないけど、アルファの目論みを阻止するって事は、囚われたエンテイを解放する事に間違いなさそう。…となると、その幹部がわたしを必要としてるなら、別の対策を考えないといけない…、わたしはこう、いつの間にか強く思いはじめていた。


  Continue……

Lien ( 2017/02/28(火) 22:24 )