Chance Des Infinitude〜ムゲンの可能性〜 - Chapitre Neuf Des Light 〜龍翼の跡〜
Soixante et cinq 三筋の夢現
  Sideライト



 「フルロ、お疲れ様」
 『お疲れ様ですっ! 』
 『ありがとう。んだけど、あんな感じでホンマに良かったん? 』
 『俺達のジム戦はあんな感じだからね。やっぱり、フルロには物足りなかったかな…』
 だよね…。一応予備試験は無事合格できたけど、フルロはやっぱり不完全燃焼、といった様子。勝ったことには変わりないけど、少し経った今でも微妙な表情をしている。…だけどわたしが傍から見た感じでは、いい感じに戦えていたと思う。今回は初めて指示無して行ってみたけど、それでも十分、味方のバクフーンのサポートを出来ていたと思う。フルロはどちらかというと自分メインで戦いたがる傾向にあるけど、…やっぱり昨日の任務が影響してるのかな? 補助技の光の壁を中心に発動してた。それに多分フルロ自身は気づいていないと思うけど、エネルギーの分量の調整がしっかり出来ていたと思う。その証拠に、上級技のハイドロポンプを何回か軽減しても、壁のムラがすぐに修正されていた。
 それで話を今に戻すと、試験でフルロはダメージを食らってはいたけど、大丈夫だって言ってたから、すぐに出発していた。その頃にはわたしも動けるようになっていたから、問題なく先に進むことが出来ている。フルロは試験開始と同時に意図的に進化していたけど、これは予め言ってくれてたからあまり驚かなかった。…何しろラグナのお墨付きだからね。
 『そのようだな。…だがフルロ、お前は昨日の任務で思う存分戦えたから、良いんだよな? 』
 『そうやね。色んな戦法も試せた訳やし、何より光の壁を使えるようになったでな! 』
 『ティル兄から聞いたよ。他にもマジカルリーフも使えるようになったんだよね? 』
 『そういえばそう言ってたね。必中技だし、フルロの友達と戦う時も役に立つんじゃないかな? 』
 必中技って、何かと便利だもんね。…そういえばフルロの友達って、カナちゃんのメンバーにいるあの子だったっけ? 和気藹々とした空気の中で、次第にフルロの事で話題が膨らみ始める。わたしも昨日の事はティル達から聞いた事した知らないけど、フルロはかなり活躍していたらしい。先に使えるようになったのが光の壁らしく、長期戦、かつ多人数戦だったからかなり重宝したんだとか。皆の技構成を考えると、一応変化技はあるにはあるけど、テトラのフラッシュ以外、全部個人にしか効果が無い。そういう意味では、これから先フルロに助けられることが出てくるかもしれないね。
 「そうだね。壁…」
 「あっ、ライト! 探したよ」
 「ええっと、この人が例の?」
 あれ、何でここに? みんなと話していると、ちょうどチョウジタウンの方から二つの足音が聞こえてくる。人通りが疎らだからすぐに気付けたけど、誰かまでは分からなかった。だけどその足音のうち、左の方がすぐにわたしに話しかけてきた。その声の主は、今ここに居るはずのない人だったから、わたしは思わず頓狂な声をあげてしまった。もう一人は初めて会うけど…、その彼からわたしの事を予め聴いていたらしかった。
 「ヒイラギ? 今日も潜入してるんじゃなかったの? 」
 「昨日とは状況が変わってね」
 『それでも、十分すぎるぐらいの情報は仕入れれたな』
 その彼とは、昨日から連続でプライズのアジトに潜入しているはずの、ヒイラギ。彼はパートナーのギャロップ、フレアから跳び下りると、さらっと手短に呟く。補足って言う感じで、フレアもそんな彼に続いてこおう教えてくれた。
 『本当に? 』
 『おぅ! んだけど、今はそれよりも、アイラの事だな』
 「アイラ…、この子の、こと? 」
 ヘイス、この子と潜入に、なんの関係があるの? 例の女の子を乗せているもうひとりのギャロップ…、多分メタモンのヘイスだと思うけど、彼はラフの問いかけに、大きく頷く。そのまま彼は、背中に乗る彼女を目線で示す。名前的に、この子の事だと思うけど…。
 「そうそう。単刀直入に言うと…」
 「密猟者に捕まったんだけど、潜入してたヒイラギさんに助けてもらってね。傷の手当てもしてもらったから、本当に助かったんだよ。…あっ、ごめん。自己紹介がまだだったね。あたしはフスベシティ出身のアイラ。ライトさんの同族、って言えば分かる? 」
 「えっ、どっ、同族? 」
 わたしと同族って事は、そうなるよね? 例の女の子についてヒイラギが説明しようとしていたけど、それは当の本人に遮られてしまっていた。その彼女、アイラさんは、ヘイスから跳び下りながらこう語り始める。お喋り好きなのかもしれないけど、彼女はその時の事を話してくれる。時々ヒイラギの方をチラチラ見ながら、纏めて話してくれたから凄く分かりやすかった。だけどあまりの勢いの良さに、その後の事を危うく聴き逃してしまいそうになった。何とか聴けたけど、その安心感よりも驚きの方が勝ってしまう。その度合いが強すぎて、肩から提げているバッグを思わず落としてしまいそうになってしまった。
 『同族って…、ラティアスって事だよね? 』
 「要はそういう事だよ。自分もまさか、潜入中に会えるとは思わなかったからね」
 「あたしも、ヒイラギさんが居なかったら、どうなってたか分からないし…。カソード…、パートナーのニャオニクスとゴリ押して逃げる事も考えたけど、捕まる前にバトルしたばかりで、戦えない状態だったからなぁー」
 ニャオニクス…、ウィルさんと同じかぁー。わたしはすぐに意味が分かったけど、ティルは自身が無かったのか、彼女に直接確認していた。そこへヒイラギが、ははは、と軽く笑いを浮かべながら答える。本当に偶然だったね、と付け加えてから、視線でアイラさんに話をふっていた。
 その彼女はヒイラギの意図にすぐ気付き、昨日会った事を語り始める。内容的には少し暗めだけど、彼女の気質なのかな? 明るく、朗らかに語っていた。この事はヒイラギも聴いていなかったらしく、そうだったんだね、と短く呟いていた。
 「あっ、そうだ! ヒイラギさん、一応あたしのも、ライトさんに預けておいた方が、いいですよね? 」
 「うーん、直接関係なかったから、そこはアイラさんに任せるよ。…寧ろ預けるべきだったのは、自分の方だったからね」
 『預ける? ヒイラギからライトが預かってると言えば、“心の雫”だけど…』
 『それも含めて、後で話すよ』
 確かに、そうだよね? ヒイラギは変装して潜入するのを得意としてるから、万が一の事があったら、大変だもんね。ここでアイラさんは何かを思い出したらしく、手を軽くポンと叩きながら、短く声をあげる。そのまま目線をヒイラギの方に移し、彼に同意を求める。このやり取りに、わたしもたまに忘れそうになっちゃうけど、ティルはその事を思い出したらしく、彼にとって親友のヒイラギにこう尋ねる。だけど、代わりに答えたのは、フレア。彼は何故か含みを持たせ、こう答えていた。
 「うん。あたし達のは兄貴が持ってるけど…。…じゃあ、ちょっと待ってて! 姿、元に戻すから! 」
 「…うん、人気(ひとけ)も無いみたいだし、良さそうだね」
 そうだね。それに、もう一つの“心の雫”はウィルさんが持ってるんだね? アイラさんは一度キョロキョロと辺りを見渡してから、安心したようにこう声をあげる。一応わたしも確認たけど、昼前の微妙な時間、風光明媚な田舎、っていう事もあって、人通りは全く無かった。わたしと同じ事を思ったのか、幼なじみの彼も、周囲に意識を向けていた。
 ここまでチェックしてようやく、アイラさんはゆっくりと目を閉じる。こうして他のひとのを見るのはやっぱり変な感じがするけど、わたし達は、彼女が本来の姿に戻るのを待つことにする。彼女が意識を活性化させると、進化の時とはまた別の激しい光が、彼女から発せられる。五、六秒ぐらいの間に強さを増し、減衰していく。そして、その光が治まると…。
 『お待たせ! はい、あたしには何なのか分からないけど、綺麗だから、珍しい物なんじゃないかな? 』
 …何だろう、この感じ…、何か、凄くドキドキする…。光が治まると、そこには本来の姿のアイラさん…、ラティアスとしての彼女が、低い位置でフワフワと浮いていた。その彼女は何かを所持したまま姿を変えていたらしく、その手には丸い何かが抱えられていた。それが目に入った瞬間、わたしは何とも言えない気持ちに包まれる…。惹かれるような…、逆に求めてるような…、初めて見るけど、随分昔から知っていたような…、そんな感じ。その感情の正体が、わたしにはさっぱり分からなかった。


  Continue……

Lien ( 2017/02/23(木) 23:03 )