Chance Des Infinitude〜ムゲンの可能性〜










































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Chapitre Neuf Des Light 〜龍翼の跡〜
Soixante et quatre 技を以て技を制す
  Sideライト



 『…ライト、こんな状態で本当に大丈夫? 』
 「このくらい、どうって事無いよ」
 『あまり無理しない方が良いと思うのですけど…』
 時間的にももうすぐのはずだから、何とかなるよ。撤退した後のわたし達は、先にセンターの方へ引き返していた。わたし自身はチカラの代償で身動きがとれなかったから、ラフの背中に乗せてもらって、だけど…。時間が時間なだけに、ティル達のグループも、既に部屋の方に戻ってっ来ていた。任務の前に予め受付の方に伝えておいたから問題無かったけど、そうじゃなくても、ティルなら何とかしてくれたかな。…で、わたしは人間の姿にさえ戻せない状態だったけど、スーナとリーフを交えて情報交換をしていた。わたし達の方は予定通りにはいかなかったけど、その代わりに得たものもあった。エンテイの状態は言わずもがなって言う感じだけど、それ以外に、アルファのメンバーの種族について…。全員ではないと思うけど、ヒヒダルマ以外に、ドラゴンタイプのオノノクスと、シャンデラがいた。…ただ、わたしがチカラを使った、って言ったら、ラグナにこっぴどく叱られたけど…。
 それで、日付が変わった今日は、スーナ達とは別れて予備試験巡りを再開。昨日の任務の報告はリーフ達がしてくれるって言ってくれたから、予定以上に早く行動を開始する事ができていた。…とはいっても、昨日チカラを発動させてからまだ十二時間経ってないから、思い通りに体を動かせないままだけど…。でも、姿を変えれて、支えてもらいながらなら歩けるぐらいまでは回復した。
 「わたしがした事だから、大丈夫だよ」
 で、話に戻ると、ティルに肩を借りながら、わたしはふたりにこう答える。アーシアちゃんの気持ちも分かるけど、わたしにとってはこれは想定内。心配させないためににっこりと笑顔を見せてみたり、小さく笑って見せたりしてみる。これで何か変わるって事も無いと思うけど…。
 「兎に角、今から予備試験だから、何とかするよ。…すみません、エクワイルのライトです。予備試験をお願いします」
 自業自得なんだから、嫌でも頑張らないとね! わたしは自分にこう言い聞かせながら、続けてふたりにこう言う。そうこうしている間に目的地、チョウジタウンのジムに着いたから、自動扉が開いてから大声で呼びかける。一瞬頭がクラッとしたような気がしたけど、気のせいだと自分に暗示をかけてやり過ごす。この時アーシアちゃんが何かを言ったような気がしたけど、自分の声であまり聴きとることが出来なかった。
 「はいはいー! いまいくよー! 」
 すると間髪を開けず、建物奥の方から活発そうな声が響いてくる。ドタドタと足音も聞こえてきたから、こっちに向かってくれているのは、結構若い人なんだと思う。
 「ごめんごめん! ちょっと前に終わったばかりでね、回復してもらってた所なんだよ。…ええっと、お姉ちゃんって、エクワイルの組員さんなんだよね? 」
 「うっ、うん。きみ…」
 「それなら、ちょっと待ってて! すぐ準備するから! 」
 えっ、ちょっ、ちょっと…! わたしに呼ばれて奥から出てきたのは、大体十二歳ぐらいの女の子…。スクールに通っていてもおかしくなさそうな子が、若干息を切らせながら駆けてきた。彼女はわたしが呼びかけた事から判断したのか、確認のために訊き返してくる。頷きはたしけど、わたしはすぐに状況が飲み込めずにいた。何しろ彼女ぐらいの歳頃の子なら、今日は平日だからスクールに行っているはず。わたしの場合、お兄ちゃんがスクールの先生をしているからだと思うけど、どうしても彼女の事が心配になってしまう。きみはスクールに通ってるぐらいと思うんだけど、大丈夫なの、そう訊こうとしたけど、それは叶わなかった。わたしの反応なんか全く気にせず、これだけ言い残すととんぼ返りみたいな感じで引き返してしまう。残されたわたし、多分ティルとアーシアちゃんも、一瞬の事に言葉を失ってしまった。



――――



  Sideフルロ



 「フルロ、頼んだよ! 」
 「アシレーヌ、アローラみたいな感じでいくよ! 」
 「バクフーン、お前の出番だ! 」
 いよいよ僕の出番やな! ボールから跳び出した僕は、前足と後ろ足、同時に着地する。ジム戦はヘクトとティル君ので見たことあるけど、僕自身のは初めて。ワクワクしてきたのと同時に、緊張でドキドキもしてきた。
 『うん、昨日あんだけ戦ったんや、負ける気はしないよ! 』
 んだけど、こう言うのを武者震いって言うんかな? もの凄い高揚感が、僕を満たしてきとる。ライトちゃんに対して、僕は勢いよくこう答えた。
 『そうね、こう言う形式となると、出逢った頃の島巡り以来かしらね』
 『そういえば、レナはアローラに行ってた時期があったな』
 僕の相手になるんは、いかにも大人っぽい感じのバクフーンと、見た事無い種族の彼女…。知りあいっぽい感じやけど、それなら僕でも種族名ぐらいは分かるはず…。…どんだけ考えても、僕には何でか分からなかった。
 「それじゃあ、ここでの試験内容を説明するね! これからお姉ちゃんには、わたしのお兄ちゃんと組んで戦ってもらうね! だけどそのままだと試験にならないから、攻撃していいのはお兄ちゃんのバクフーンだけ。お姉ちゃんのベイリーフの攻撃がわたしのアシレーヌに当たったら、試験は不合格って事にするね」
 「っていう事は、わたし達が直接できるのは、補助技だけ? 」
 「うん! それの他に、相性的に不利なバクフーンをサポートして、勝たせてあげて! そうしたら、試験は合格だよ! 」
 攻撃したら、ダメなん…? 僕達の反対側におる女の子は、挑戦するライトちゃんにこう説明する。この子がジムリーダーって事にもビックリしたけど、それ以上にルールに対して驚いてしまった。今まではバトルといえば、自分中心で戦う、これだけだった。だけど今回のバトルでは、今までと違ったバトルをすることになりそう。上手く言葉に出来んけど、不安…、ドキドキ…。楽しみ…、ワクワク…、色んな感情が、僕ん中で混ざり合っていた。
 『そういう訳だから、よろしくな』
 『うん』
 『フルロ君、頑張って! 』
 となると…、今日が使いどころ、なんかなぁー。組んで戦うことになったバクフーンが僕の方を向き、右手を挙げて会釈。僕は考え事をしてたけど、何とか気付けたから軽く頷いた。この少し後で、後ろの方からアーシアちゃんがこう声をかけてくれる。彼女の声援で、改めて僕の気が引き締まった気がした。
 『アーシアちゃん、今日、アレをしようと思っとるんやけど、どうかな? 』
 『あっあれって…、昨日の夜言ってた事です? 』
 『そうやで! 慣れへんタイプのバトルやし、その方が戦いやすくなるかな、って思って』
 本当はもっと早くに出来たんやけど、折角森での暮らしで身につけた技術やからね、やりたいときにせんと、意味ないもんね! 考えとった事を基に、僕は振り返りながらアーシアちゃんに意見を聞いてみる。彼女にはもちろん、ラフちゃんとかみんなにも昨日のうちに話しといたから、これだけですぐに分かってくれた。逆にこう確認されてまったけど、それでも僕は、首を大きく縦にふる。理由みたいなことを続けて言いながら、僕は変えていた視線を前に戻す。

  そうだね。前からそのつもりだったみたいだし、いいと思うよ。

  フルロ、俺達がサポートするから、思うように戦ってきて!

 『私も、応援してますねっ! 』
 みんなもこう言ってくれたし、後は僕がするだけやな! 言い終えてすぐ、ライトちゃん、ティル君の順番に、テレパシーで僕に話しかけてくれる。まだちょっとビックリしてまうけど、聴き逃さんで済むで、もの凄く有難い。直接は見てないで分からんけど、アーシアちゃんも同じような感じで言ってくれとると思う。みんなの後押しのお蔭で、僕はやっと、それを実行する決心がついた。
 『うん、じゃあ…、いくで!
 そうと決まったら、僕がそれを躊躇う理由なんて何もない。気持ちを静めながら目を閉じ、同時に意識を活性化させていく。何年か前にあった事を思い出しながら、僕は二回目…、いや、今回が最後になる、あのエネルギーを解放する。これをするともう元には戻れないけど、寧ろそれは願ったり叶ったり…。強くなってヘクトに勝つためなら、喜んで僕はする。流石にもうヘクトもしているはずの…、進化の光に、僕は包まれた。
 『…ふぅ…。…ごめん、待たせてまったね! んじゃあ、始めよっか! 』
 光が治まり、溢れ出ていたエネルギーも鎮まっていく…。ゆっくりと目を開け、高くなった視界で辺りを見渡す。メガニウムに進化した僕は、威勢よくこう言い放った。
 『えっ、ええ…。それじゃあ、手始めに…、ハイドロポンプ! 』
 『おぉ、いきなりソレで来たか! なら、噴火! 』
 流石上級技、やっぱ迫力がちゃううね! 戸惑いながらも僕らの相手は、とりあえず、って感じで技を発動させる。口元に大量のエネルギーを集め、水の属性に変換しようとし始めた。味方のバクフーンもほんの少し遅れて、背中の炎を燃え上がらせる彼も同じく、喉に炎を蓄えているんだと思う。隣にいる僕にも、その熱がじんわりと伝わってきたような気がした。
 『そんなら、僕は…』
 このかんじやと多分、バクフーンを狙っとるよな? 相性的にもこう判断した僕も、続けて行動に移る。斜め移動でバクフーンの前に出ながら、技のイメージを膨らませていく。昨日の任務ん時に使えるようになった技やけど、これを使うんと使わんのでは、えらい違いがあった。この事を思い出しながら、僕はエネルギーに念みたいな何かを混ぜ込んでいく。相手とバクフーンの間に完全に入った所で、このエネルギーを解放し…。
 『光の壁! 』
 『すまん、助かった! 』
 『くっ…』
 板状に具現化し、壁としてそびえ立たせる。僕の壁の出現と同時に高圧の水流が放たれ、貫かんと僕を狙う…。だけどその前に透明な壁に当たり、勢いが減退する。最終的に僕に命中したけど、そのお陰で難なく耐え切る事ができた。
 盾となった僕の後ろでも、味方のバクフーンが大技を発動させる。大きなエネルギー塊を打ち上げたかと思うと、それは幾つもの欠片に弾ける。欠片と言っても結構な大きさやけど、それが相手の上に降り注いでいた。
 『アーシアちゃん、サポートって、こういう事やろ? 』
 『あっはい、そうです! 』
 『フルロ、前の相手に集中して! 』
 『ムーンフォース! 』
 そっ、そうやった! 自分なりに考えて行動したから、これで良かったのか、一度アーシアちゃんに確かめてみる。僕の光の壁はアーシアちゃんの守るからヒントもらたで、これについてどうか意見を聞こうとした。すぐに答えてくれたけど、その代わりにティル君に叱られてまった。
 慌ててそっちの方を見てみると、少し前とは配置が全く違ってた。何の技かまでは分からんけど、味方のバクフーンは物理技を命中させたらしい。僕から見て三メートルぐらい離れた場所で、接近している相手から距離をとるため、バックステップで下がろうとしていた。だけど相手も黙って退かそうとはせず、薄ピンクの弾で追撃しようとしていた。
 『一か八かの賭けやな…、蔓の鞭! 』
 ちょっとでも近づけば、届くやろ…。咄嗟に僕は、四肢に力を込めて一気に駆け出す。…というよりは跳び出す、って感じやけど、それと同時に首元から二本の蔓を伸ばす。振りあげる様に滑り込ませ、ムーンフォースの打ち消しを狙う。…やけど気付くのが遅くて、ほんの少し欠けかせるだけしかできなかった。
 『…光の壁が、ここまで響くとはね…。…ハイドロポンプ! 』
 『試験内容に合致する技だ、使ってくる事ぐらい予想できたと思うけどな? ジャイロボール! 』
 『もう一回光の壁! 』
 うーん、何かいつの間にか、追い込んどるみたいやな…。さっきの攻撃が相当効いていたのか、相手はかなり息が上がっていた。やけどそれでも水を溜め、一気に放出する。それに対して味方のバクフーンは、体を丸めてて勢いよく転がり始める。これを見た僕は、透明の壁を広めに出現させる。三メートルの範囲で際どいとこやけど、ギリ届いとるはず…。
 『…っく、壁さえ…、なければ…』
 『まっ、初めての試験監督なんだから、仕方ないんじゃないの? 』
 『あっ…、もう終わってまった感じ? 』
 僕の壁があっても無くても変わらんかったような気がするけど、味方のバクフーンは急激に進路を変えて、相手の水流をかわす。そのまま相手に突っ込み、大ダメージを与える。これが響いたんか、それともダメージが溜まっとったのか…、どっちかは分からんけど、相手は耐え切れず、ドサッと崩れ落ちてしまう。思った以上の呆気無さに、僕は思わずこう呟いてしまった。



  Continue………

■筆者メッセージ
・アシレーヌ

特性:激流
技:ハイドロポンプ、ムーンフォース、うたかたのアリア、自己暗示


・バクフーン

特性:猛炎
技:噴火、ジャイロボール、燃え尽きる、ブレイククロ―
Lien ( 2017/02/20(月) 23:38 )