Chance Des Infinitude〜ムゲンの可能性〜 - Chapitre Neuf De Cot 〜挑龍の儀〜
Soixante et huit 雨との合流
  Sideコット



 「はぁ…、はぁ…。…これで…、全員…、倒せた…、かな…? 」
 …いくら何でも、これは多すぎるよ…。プライズの幹部、ベータとの共闘が終わった後も、僕達はずっと戦い続けていた。ヘクトのお父さん達はどうなったのかは分からないけど、僕が闘っている間に、カナはイグリーとネージュ、ヘクトとヤライさんの回復をしてくれていたらしく、いつの間にか戦線に復帰していた。…とは言っても敵の数が数だったから、もう何にんと戦って倒したのかは分からないけど…。流石に僕はもう慣れたけど、真っ暗だから回避するのも一苦労…。飛行タイプのイグリーは特に、そのせいで思ったように戦えていないみたいだった。逆にネージュとヘクト、ヤライさんは思う存分戦えてたみたいだけど…。
 それと一つ気になるのが、去り際にベータが言い残していった事。何で自分の組織の事を教えてくれたのかは分からないけど、これまで何回か襲ってきた組織だから、対策はしやすくなったと思う。エンテイさんの事はある程度は知ってたけど、何かの道具で操られているっていう事までは知らなかった。“服従の…”、…何だったかな? バトルに必死であまり覚えてないけど、確かそんなような名前だったような気がする。そのエンテイさんを操っている人も、もの凄く危険だって事は分かった。鈴の塔でしか会った事が無かったけど、何というか…、上から目線…? 上手く言葉にできないけど、凄く(おご)ってた。…それと、探してほしい、って言ってた三つの種族。カナ達にはまだ伝えられてないけど、ルギアは、何故かエレン君のメンバーにいたから、すぐに会えると思う。今は一緒にいるけど、ヤライさんも、エレン君のメンバーだしね。…ラティアスってい種族は初めて聞いたから分からないけど、話の流れからすると、同じで伝説の種族、なのかな? 最後のスイクンは、どこにいるかは全く見当もつかないし、当然会った事も無い。だけどスイクンは多分、操られているエンテイさんを止めるため、だと思う。スクールで聴いた事だからうろ覚えだけど、エンテイとスイクン、それからライコウは、同等の存在だったはず…。
 『静かになったから、そう、なのかな…? 』
 『…どうやら、そのようね…』
 『…だな…。…進化したから楽勝かと…、思ってたけど、連戦となると…、流石にキツイな』
 『そう、だね…』
 今までに無いぐらい戦い続けたって言うのもあると思うけど、確かにそうだね…。プロテージとの連戦を戦い抜いて、僕達はようやく緊張を解くことができた。静かになって耳鳴りがしてきたような気がするけど、そんな中、ネージュが恐るおそる、こう呟く。ネージュはあまりダメージを食らってるような様子はなかったけど、凍える風とか歌うでサポートしてくれていたから、エネルギー量が底を尽きそうって五分ぐらい前に言ってた。僕とヤライさんは、追加効果とか補助技で限界まで強化された状態で戦ってたから、後半の方はほぼ一発で敵を倒せていた。日中に進化したヘクトは強化手段が相手依存だから、結構苦労していたらしく、みんなの中では一番息が上がっていた。ちょっと強がって苦笑いを浮かべてるけど、今も結構無理してるんじゃないかな? …中でも一番の功労者は、イグリー、かな。頻繁に追い風で補助してくれていたから、こんなに長い時間戦えたと思う。
 「うん…。イグリー、ネージュ、ヘクト、ヤライさんにカナも、ありがとね」
 「ううん、むしろわたしの方がありがとう、って言いたいくらいだよ。…まさかコットが喋れるようになるなんて思わなかったけど、コットがいなかったら戦い抜けなかったと思うし、そもそもこの世にはいないかもしれなかったから…」
 何かこう…、褒められると照れるけど…。ホッと一息つき、頷いてから、僕は順番にみんなの名前を呼ぶ。その方を見ながら呼んだから、返し方は違うけど、みんなはこくりと首を縦にふったり軽く会釈したりして答えてくれた。カナはカナで、…サンダースの僕が言う事じゃないと思うけど、僕だけでは行き届かないところまで指示を出してくれていたから、本当に助かった。面と向き合ってこう真っ直ぐに言われたから、ちょっと顔が熱くなってきたけど…。
 『だよな』
 『うん。それにコットも、夢が叶った…』
 『…ここなら、一休み…、できそうね』
 ん? 誰? まっ、まさか、まだいたの? ヘクト、イグリーの順に話していたら、そう遠くないどこかから大きな羽音が聞こえてきた。ほんの少し風が強くなって、樹とか草がカサカサ音をあげ始めたから、僕はハッとそっちの方に振りかえる。すると物凄く大きな影が、十メートルぐらい先に降り立ったのが見えた気がした。別の声だとはおも…。
 『ニアロ! 無事だったのね? 』
 『その声は…、ヤライ? 良かった、何とか逃げ切れてたみたいですね』
 『ニアロ君…、彼女は…、…コット君? 』
 えっ、こっ、この声って…。警戒のレベルを上げ直し、僅かに残ったエネルギーを口元に集めようとした丁度その時、ヤライさんが大きな声をあげ、その影の方に振りかえっていた。ちゃんと見てなかったからって言のもあるけど、僕はこの時ようやく、その影の主が誰なのか知ることができた。安堵にも似た感情が声に含まれていた彼女の声に、そのじんぶつ、ルギアさんが気づく。背中に誰かを乗せているらしく、体勢を低くした状態のまま、僕達の方に飛んできてくれた。
 その彼の後ろから、もうひとりがルギアさんに話しかける。その彼女は多分、ヤライさんの事をルギアさんに訊こうとしていたんだと思う。だけどその途中で僕が目に入ったらしく、凄く驚いた様子で声を荒らげていた。まさか一緒にいるとは夢にも思っていなかったから、僕もビックリしちゃったけど…。
 「ふぃっ、フィフさん? 何でフィフさんが、ルギアさんと…」
 『わっ、私も驚いたわ。まさかこんな時間に、コット君と…』
 『僕も、シルクさんと知り合いだとは思いもしませんでしたよ』
 えっ、もしかしてフィフさん、ルギアさんの事、知ってるの? ルギアさんの背中に乗せてもらっていたのは、エーフィのフィフさん…。彼女も僕と同じで、驚きを隠せない様子。それだけじゃなくて、この様子だとルギアさんも、フィフさんの事を知っているらしい。翼…? 手…? どういったらいいのか分からないけど、地面につきながら、こう言っていた。
 『そういえば、言ってなかったわね。コット君は私の従兄弟で、ニアロ君…、ルギアの彼も、三年ぐらい前から知ってるわ』
 『コットの、従兄弟…。…それよりもあんた、エレンとホウオウは? 』
 『ホウオウなら、問題ないわ。私の仲間が保護して、今頃ウバメの森に身を隠している頃だと思うわ。エレン君も、ひとまずは大丈夫よ』
 言われてみれば、姿が見えないよね…? っていう事は、エレン君はルギアさんの背中に乗せてもらっている、のかな? ルギアさんに乗せてもらっていたフィフさんは、降りるとすぐに、こう説明してくれる。どこか疲弊しきったような感じがするけど、ヤライさんの質問にもすぐに答えていた。僕も気になっていたから、これで何とか安心できたような気がする…。今度はフィフさんとルギアさんの関係が気になってきたけど、とりあえずこれは後回し、かな? エレン君が話しかけてこないのが、謎だけど…。


  Continue……

Lien ( 2017/02/14(火) 22:24 )