Chance Des Infinitude〜ムゲンの可能性〜










































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Chapitre Six De Cot 〜一難去って〜
Cinquante et cinq 知力を以てして…
  Sideコット



 『…火の粉』
 『うわぁっ…! まさか、ぼくのじゃくてんをしってて…』
 『うっ、嘘だろ? 』
 『えっ、こんな事って、あるの? 』
 ヘクトの火の粉の威力は高いけど、流石にここまで強いはずはないんだけど? 相手のキルテグマの突進をスレスレでかわしたヘクトは、すれ違い際に炎の粒を放出…。この作戦が成功して、返り討ちにする事に成功。ここまでは普通だったけど、この時の相手の反応がかなり過剰だった。
 見た感じ相手は少なくともノーマルタイプで、草とか氷の属性を持っているとは思えない。なのに相手は、もの凄く熱がっていた。
 「あぁー、これはやられたなぁー。キルテグマ、指示が追いつかんですまへんね」
 『おいおい、まさかこれで終わりっつぅー事はねぇーよな? 』
 『…何か、あっさりすぎるけど…』
 ジムリーダーのメンバーなのに、こんなに簡単に倒せちゃって良かったのかな? たった一発だったのに、相手はそのまま倒れてしまう。僕も信じられなかったけど、実際に戦っていたヘクトはもっと驚いていると思う。その証拠、なのかな? 全然勝った実感がないらしいヘクトは、僕の方に振りかえるなりこう訴えかけてきた。だけど僕も同じような感じだから、そんな彼に何も言ってあげることが出来なかった。
 「…コット、気を取り直していくよ! 」
 『えっ、あっ、うん』
 だっ、だけど、まだ決着が着いたわけじゃあ…。戦っていた相手が控えに戻ったから、それを横目で見たらしいヘクトは、僕達の方に戻ってくる。そんな彼に、ぼくは一旦交代するつもりなんじゃないの、って言おうとした。だけどそれは、不意に話しかけてきたカナに遮られてしまう。他事を考えていたから、僕はこんな風に中途半端な返事しか出来なかった。
 『何かスッキリしねぇーけど、コットが行くしかねぇーんじゃねぇの? 』
 『そう、だよね。…うん! 』
 「ミルタンク、ここから逆転するで! 」
 『まぁ、うちに任せときな! 』
 カナに指名された以上、闘わざるを得ないもんね。ヘクトに諭されて? 僕はようやく、自分にこう言い聞かせる。ヘクトの言う通り、僕もモヤモヤしたままだけど、無理やり自分を説き伏せる。大きく頷いてから、ついさっきまでヘクトが闘っていたフィールドに躍り出た。
 『それにしても、うちのメンバーの、特性の弱点を知っとったなんて、大したもんやな』
 『とっ、特性…』
 『そう。もふもふという特性でね、物理技を軽減できる代わりに、炎技のダメージが倍になってまうんよ』
 『そんな特性が、あったの…? 』
 スクールである程度は習ったつもりだったけど、そんなのがあったなんて、知らなかったよ…。僕と同じタイミングで出場した相手、ミルタンクの彼女は、僕を見るなり感心したようにこう語り始める。親切心なのか、口が軽いのか…、僕には分からないけど、彼女は敵の僕にわざわざ味方の特性について教えてくれた。
 「コット、このまま勢いで押しきるよ! 電光石火で先制攻撃! 」
 「まるくなって守りを固めるんや! 」
 『まっ、そういう訳や』
 『知らなかったです…。…電光石火! 』
 とにかく、カナからの指示ももらってるし、そろそろ始めないといけないよね? 新しい知識を得て少し賢くなった? 僕は、適当なタイミングで話を切り上げて一気に駆け出す。瞬発的に力を込め、解放させたから、この一歩だけで二メートルぐらい進むことが出来た。自然な流れで四肢を運び、相手との間合いを計りながら出方を伺う。風を切りながら、僅かな変化も見逃さないために相手を凝視…。
 『真っ直ぐ進む…』
 『考えもなしに正面から攻めてる訳じゃないです! 』
 「攻撃に耐えるんや! 」
 やっぱり、僕に対してもこの指示を出してきたね。見た感じまるくなるで守備力を高めている相手まで四メートルまで迫ったところで、ジムリーダーの彼女は声をあげる。彼女はたぶん、遠まわしに自分のメンバーに指示を出す。敢えて技名を言わない作戦みたいだけど、そんな事は僕は分かりきっている。ヘクトの時で研究していた僕は、予想通りの結果に満足しながら次なる行動に移った。
 『電光石火は攻めるために発動させた訳じゃないですから! 』
 僕は相手の三メートル手前で、ほんの一瞬前足で踏ん張る。後ろ足が追いついたタイミングで僕は溜めた力で左後ろに地面を押し込む。そうする事で、僕は瞬時に右に進路を逸らす。後ろ足でも地面を蹴って、ひねりを利かせながら大きく跳躍した。
 『きみ達の作戦を引き出すための作戦です、スピードスター』
 前足と後ろ足の両方が地面から離れている間に、僕は相手の方に向き直る。同時進行で口元にエネルギーを集中させ、遠距離技の準備をする。前後同時に着地し、すぐに後ろに跳び下がる。ここでエネルギーを丸く形成し、解き放つ。すると一秒も経たないうちに弾け、五つの星になって空気をかき分け始めた。
 『くっ…、なかなかのスピードやね』
 『ここまで色んな状況で戦ってきたんだから、当然です! もう一発! 』
 これだけ攻撃しても反撃してこないって事は、あの技を発動させたに違いないね。正面を覆うように迫る流星を目の当たりにしても、相手は微動だにしない…。この相手の反応が、僕が立てた仮説を思い通りの結論に導いてくれた。
 ジムリーダーが出した指示と相手のミルタンクの行動から考察すると、発動させているのは我慢って言う技。ノーマルタイプだから、ここのジムで使っていても何の違和感もない。そもそも少しの間ダメージに耐えて、それに応じて相手に反撃するのがこの技の特徴。だから僕は、五メートルぐらいをバックステップで移動しながら、立て続けに流星を放ち続けた。
 「距離があるけど、解放して一気に攻めるで! 」
 「同じ作戦は通用しませんよ! 目覚めるパワーで牽制して」
 『なるほどね。…せやけどそう簡単に逃げさせへんで! 』
 『それでも逃げ切ってみせます。目覚めるパワー! 』
 やっと動き始めたね…。わざと僕の連撃を受け続けた相手は、その痛みを倍返しにするべく行動を開始する。彼女は重い体を無理やり動かし、僕との距離をのしのしと詰めはじめる。
 十分に距離をとっていた僕は、その彼女を近づかせないために別の技を発動させる。さっきと同じようにエネルギーを蓄え、丸く形成しながら狙いを定める。技の効果で氷の属性を帯びてから、相手のお腹の辺りを狙って撃ちだした。
 『っく…』
 『これで我慢の効果は発揮できないですよね? 電光石火! 』
 僕の狙い通りのポイントに、十センチぐらいの大きさで水色の弾が着弾する。技を発動させてたから打ち消されたけど、それでもほんの少しだけダメージを与えられたと思う。おまけに我慢が弾丸に対して使われたから、これで僕が大ダメージを食らう可能性が少なくなったはず…。だからこのチャンスを生かすために、カナの指示を待たずに駆けだした。
 「そんなら転がっで迎え撃つで! 」
 『これでやられちゃあ、うちらもジムリーダとして失格になってまうしな! 転がる』
 『えっ、転が…、くっ…』
 転がるって確か…。結果的に作戦が失敗することになったけど、流石はジムリーダー。全く動じずに次の技を指示する。僕の弾で減速してはいたけど走り続けていたミルタンクさんは、勢いをそのままに新たな技を発動させる。転んだのかな、一瞬そう思ったけど、そうではなかった。転がったまま勢いを増し、目の前まで迫っていた僕と正面衝突した。
 『まだまだいくで! 』
 「避けて! 」
 五分の力でぶつかり合ったから、互いに反対方向に弾かれる。僕はその反動でのけ反テしまったけど、相手はそれでもなお絶えず転がってきた。
 『うわっ…。でっ…、電光石火』
 この展開、絶対にマズいよね? 僅かに出遅れてしまったから、僕は相手に一瞬のうちに距離を詰められてしまう。そのまま接触し、技の効果で威力の増した重撃をまともに食らってしまった。
 七メートルぐらい弾き飛ばされた僕は、その衝撃で一瞬視界がぼやけてしまう。それでも何とか体勢を立て直し、慌てて先制技を発動させる。捨て身で左に跳び退いた事で、辛うじて回避に成功した。
 『一回かわしただけで、終わりやと思わんでくれんかな? 』
 『うそ…。ぐぅっ…』
 そうだった…。この技はしばらく効果が続くんだった…。回避したのも束の間、轟音をあげて爆走する相手は、勢いをそのまま…、いや、更に加速しながら旋回する。そのまま振り向いた僕を気にも留めず、軽々と跳ね飛ばしていった。
 『こっ…、このままだと…』
 あっけなく、やられる、よね…? だけど…、カナのためにも、ここでやられる訳には、いかないんだ…! だから、何か、良い方法を考えないと…!
 僕を跳ね飛ばした相手は、凄い勢いで僕から離れていく…。
 『昨日あんなに戦かったのに…』
 進化したのに、その意味が無くなっちゃう…。…これでも僕は、あのフィフさんの従兄弟なんだ…。こういう時こそ、落ち着いて考えないと…。
 『そういえば…』
 試した事ないけど、あの技、僕にも使えるかな…? 出来たら、この状況を何とかできる、よね?
 『…とにかく、ダメ元でも…』
 やらないと、やられる! 相手が再び旋回し、僕の方に進路を変える間に、必死に打開策を探る。その結果僕は、ある方法を思いつく。それは一回も試した事が無い技だけど、そうしないとこの状況は変わらなさそう。発動の方法は知ってるけど、ちゃんとできるかは五分五分だと思う。だけどこう考えてる間にも、刻一刻と相手が迫ってきてるから、すがるような気持ちでこの技に賭けてみることにした。
 まず初めに、相手の動きへ最大限に注意を向ける…。相手への警戒レベルを維持しながら、全身への意識を最大まで高める。最大まで高めたら、その状態で四肢にありったけの力を溜める。
 『これで最後や! 』
 この感じなら…、いける! ギリギリまで相手を引きつけ…。
 『見えたっ! 』
 『えっ…』
 爆発的にその力を解放する。すると僕は目にも留まらぬ速さで回避、相手に向き直る。そして…。
 『目覚めるパワー…、連射! 』
 瞬時に技を切り替えて、水色の弾二発に、戸惑う相手の背中を追わせた。
 『くっ…。見切られ…』
 『電光…、石火! 』
 その結果、技の効果が切れて減速しつつある相手の背中を捉える。相手は何かを言おうとしていたけど、僕は気にせず一気に駆けだした。
 「嘘やろ? あの距離で…」
 『っく…』
 思わぬ二撃をくらった相手は、予想外の事に狼狽える。不意を突いたって事で、かなりのダメージが通ったらしい。その影響で、相手はかなりふらついていた。
 このチャンスに僕は、駆ける四肢に更に力を込める。若干視界はぼやけてるけど、そんな事は気にせずに加速していく。一メートル半まで迫ったところで、僕は一瞬のうちに地面を蹴り弧を描く様に跳躍…。無防備な相手の懐を狙い、捨て身でそこに突っ込んだ。
 「ミルタンク、しっかり…」
 『これはやられ…、たね…』
 渾身の一撃を食らった相手は、僕に押されたままに倒れる。相当効いたらしく、そのまま彼女は意識を手放した。


  Continue……

Lien ( 2016/12/03(土) 23:47 )