Chance Des Infinitude〜ムゲンの可能性〜










































小説トップ
Chapitre Six De Cot 〜一難去って〜
Cinquante et deux 突発的なダブルバトル(影歌)
Sideネージュ



 『あんたにゃ悪いけど、ここで倒れてもらうわね。ナイトバースト! 』
 『なっ、しまった! 』
 『イグリー君! 水の波動! 』
 えっ、なっ、何が起こったの? 凍える風でふたりにダメージを与える事はできたけど、私はそのタイミングで、思わず言葉を失ってしまう。なぜなら、ずっとニドリーノだと思っていた相手のひとりが、急に別の種族に…。別の姿に変わるのを何回か見た事があるけど、それでも私はこんな風になってしまった。
 その間にも、ニドリーノから黒くて小さい種族になった彼女は、空中で旋回しているイグリー君に狙いを定める。使い慣れているらしく、殆ど時間をかけずに黒い波紋を飛ばしていた。ここまで私は呆気に取られていたけど、イグリー君のお蔭で我に返ることが出来た。すぐにイグリー君がピンチだって分かったから、私は咄嗟に、口元に水のエネルギーをかき集める。そして…。
 『間に合って! 』
 斜め上、イグリー君がいる位置に向けて進む黒い刃を狙って、音波を乗せた水のリングを撃ちだした。
 『イグリー! 急降下し…』
 『ぐゎぁ…っ』
 カナさんの傍で見守ってくれているコット君も気づいたらしく、私とほぼ同じタイミングで声をあげていた。この感じだと多分、コット君は急降下してかわして、そう言おうとしてたのかもしれない。だけど、私の技と同じで間に合わなかった。私のリングは、もう少し早かったら間に合ったのかもしれない。緩い角度で撃ったから、イグリー君の目の前ぐらいであたるようにしたけど、その位置を黒が命中してから通り過ぎた。そのせいでイグリー君は、まともにダメージを食らって撃ち落とされてしまっていた。
 「ユリンはスパークヤライはイカサマでいっきに…」
 「エレン君、そうはさせないよ! イグリーはそのままユリンに燕返し、ネー…」
 『ネージュ! このままだとイグリーが集中攻撃されるから、凍える風で足止めできる? 』
 『うっ、うん。やってみるよ』
 コット君、近かったら間に合うと思うけど、この距離だと間に合わないよ! でっ、でも、やるしか、ないよね? まだ意識はあるみたいだけど、イグリー君は見た感じかなり辛そう。歯を食いしばって、何とか痛みに耐えているような状態だった。イグリー君に技が命中した事で状況が変わったから、相手のトレーナーはチャンスって言いたそうにふたりに指示を出す。このままだとただやられるだけだから、カナさん、そしてコット君も、揃って私達に迎え撃つための指示を出してくれた。
 『ヤライ、…これで私達の…、優勢になったよね。スパーク! 』
 『大分予定が狂ったけど、これも…』
 『凍える…』
 コット君の判断が一番いいとは思わなかったけど、とりあえず私は、彼の言う通りに技を準備する。エネルギーの一部を体中に行き渡らせ、それに冷たい氷のイメージを添える。その状態で、発動させた時のこ…
 「エレン、あんたはこんな所にまで来ていたのね」
 「…せめてぇっ? 」
 発動させた時の光景を思い描こうとしたけど、予想外の事が起きたから思わずやめてしまった。私だけじゃなくて、イグリーに攻撃しようとしていたふたり、それから多分、カナさんもその方にハッと目を向けていた。イグリー君だけは、このチャンスに翼を広げて体勢を立て直していたけど…。
 私が急な事にビックリしながら見たその先では、ふたりのトレーナーの男の子が、その後ろから迫ってきた大人の女の人に右腕を掴まれていた。バトル中ならだれでもこうなると思うけど、彼は指示している途中だったから最後の方に変な声が混ざってしまっていた。
 「さぁ、こんな所で油を売ってないで、早く帰る…」
 「いやだよ! 」
 『…コット君、これって…』
 えっ、なっ、何、これ…? 全く状況が呑み込めない私、コット君、それからたぶんイグリー君とカナさんも、唖然として立ち尽くすことしかできなかった。何かを言い争ってるみたいだけど…。どういう関係なのかは私には分からないけど、トレーナーの男の子は、捕まれた女の人の腕を思いっきり振り払う。見た感じかなり怒った様子で、女に人に対してこう声を荒らげていた。
 「私がどれだけ心配したと思ってるのよ。エレン、あんたは特別…」
 「とくべつ? とくべつってただポケモンのことばがわかるだけじゃん! かあさんはとくべつだっておもってるかもしれないけどオイラいがいにもなんにんもいるよそもそもかあさんはなんでいつもオイラをいえのなかにとじこめようとするのだからかあさんはきらいなんだよ! 」
 『コット君、何て言ったか、分かった? 』
 『ううん。エレン君が喋るスピードはには慣れたつもりだったけど…』
 『コットも…? おれも…、分からなかったよ…』
 あっ、やっぱり、コット君とイグリー君も分からなかったんだね? 女の人が言った事の何かがNGワードだったらしく、コット君にエレン、って呼ばれてた男の子は急に怒り始める。元々早口で聞き取りにくかったけど、それ以上にこの子が言った事が聴きとれなかった。この間にイグリー君も私達の方に戻ってきていたけど、彼もコット君と同じで首を傾げていた。
 「あんたが怪我でもしたら大変じゃない。いいから、クチバに…」
 「ぜったいにかえらないよ! そんなにつれてかえりたかったらオイラたちをたおしてからにしてよカナちゃん! 」
 「はっ、はい?」
 「けっちゃくはまたこんどあったときでいまからいっしょにたたかってくれる? 」
 何が何だかか分からないけど、エレンって呼ばれた男の子は、私達が話している間にも言い争っていたらしい。気が済んだのかどうかは分からないけど、男の子は流すようにカナさんを見て、こう話しかける。戦う、それだけは聴きとれたから、少なくともバトルの事だっていうことは分かった気がした。
 「えっ、いいけ…」
 「ならラプラスのきみはたしかネージュっていうなまえだよね」
 『わっ、私? 』
 えっ?
 「きみはあのふたついがいにどんなわざがつかえる? 」
 『ネージュにって事は…、やっぱり気のせいじゃなかったんだ』
 カナさんが頷きかけたから、エレンさんは早々とその意味を勝手に察したらしい。カナさんはそのつもりだったと思うけど、それでも少し、あたふたしていた。それからエレンさんは、カナさんじゃなくて、私に声をかけてきた。まさかラプラスの私に声をかけてくるなんて思ってもいなかったから、私は今日一番の頓狂な声を出してしまった。彼は私が使える技を知りたいみたいだけど、それなら普通、トレーナーのカナさんに訊くはず…。だけどこの事が、コット君の中では何かが繋がるきっかけになったらしい。パッと明るい声で、こう言っていた。
 『エレン君、ネージュはさっきの二つと、歌うと超音波が使えるよ』
 「ありがとう。ヤライいってくれる? 」
 『アタイは構わないわ。それにエレンを無理やり連れて帰ろうだなんて、許しちゃぁおけないね』
 えっ、こっ、コット君? 私の訳が分からない間に、話がどんどん進んでいく…。何故かコット君が言った事に、エレンさんは頷いていた。それはまるで、本当にコット君の言葉を聴きとれているような、そんな感じ。その彼は黒くて小さい彼女に目を向け、こう尋ねていた。
 「そこまで言うなら、仕方ないわね。ニドクイン、ペルシアン、頼んだわよ」
 『はいはい』
 『また始まったわね…』
 ばっ、バトルって事は分かったけど…。あれからそこそこ時間が経っていたけど、女の人はまだ食い下がっていないらしい。実力行使、って言いたそうに腰二つのボールを手に取る。だけど出場したふたりは、トレーナーとは正反対で冷めた様子だった。
 『あんた、ニドクインって事は…』
 『と言う事は、貴女がエレンのメンバーだね? 』
 『元気そうで安心したわ。うちのニドが世話になってるわね』
 もしかしてこのひと達、エレンさんたちの事、知ってるのかな…? 黒い彼女は、相手の種族を見るなり、何かを悟ったらしい。思った事を言おうとしていたけど、その前にペルシアンさん達に先を越されていた。それによく考えたら、何でかは分からないけど、黒い彼女が姿を変えていた種族はニドリーノで、相手の方はニドクイン…。っていうことはもしかすると、もしかするかもしれない。私は何となく、この人達の関係が分かったような気がした。
 『私達はエレンがトレーナーになる事には賛成なんだけどねぇ…』
 「ぺルシアンはラプラスにシャドークロー、ニドクインはゾロアにヘドロ爆弾」
 『はぁ…、これはエレン経由で伝えても無理そうだね』
 『エレンから聴いてるよ、あんたらも大変なのね』
 うーん、聴いた感じ、身内の話しみたいだけど、私達が入っても、いいのかな…? ヤライって呼ばれた彼女と話していたふたりに、トレーナーが構わずに指示を出す。だけど当の本人は戦う気が無いらしく、ペルシアンさんは盛大なため息を一つつく。それから彼は渋々走りだし、ボソッと何かを呟いていた。
 「それならネージュ、凍える風で威力を弱めて! 」
 『うん』
 私が入らない方が良いような気がするけど…。
 『ネージュ、多分軽くでいいと思うよ』
 『えっ、何で? 』
 軽くって…、それだとヤライさんも、私も攻撃を食らうことになるよ?
 『見ればすぐに分かると思うよ』
 『見れば、って…』
 『サンダース君、その通り。シャドークロー』
 私の方に走ってきたペルシアンさんは、私の四メートルぐらい手前で、右の前足だけに黒いオーラを纏わせる。この間にもカナさんが指示をくれたけど、その後のコット君の補足が、全く意味が解らなかった。分からないけどやっぱり、このままだと攻撃を食らってしまう。一応動けなくはないけど、私は地上での移動はあまり得意じゃない。コット君の言う事を聴かないことになっちゃうけど、そういう訳で私は普通に技を発動させることにした。
 『こっ、凍える風…えっ? 』
 氷のイメージを膨らませて技を発動しようとしたけど、それよりも先に、ペルシアンさんが技の間合いに入っってしまった。彼は後ろ足で思いっきり地面を蹴り、私めがけて跳びかかってくる。その勢いを乗せて、右の爪で思いっきり引き裂く…。そうするかと思ったけど、彼は自然な動きで、私の目の前…、私にじゃなくて地面のアスファルトに爪を立てた。その効果が反映されたのか、私と彼の間に、一瞬だけ黒いモヤみたいなものがかかったような気がした。
 『さぁ、そのまま思いっきり発動させて。後は俺達が何とかするから』
 『うっ、うん。凍える風! 』
 『くっ…』
 これって、バトルって、言えるのかな…? 技を外したペルシアンさんは、後ろに跳び下がりながらこう頼んできた。さっきの彼の行動もそうだけど、私にはこの意味が全く分からなかった。分からないけど、このままカナさん達の指示を無視する訳にもいかないから、発動仕掛けた技をもう一回準備する。白い粒混しりの風を吹かせると、彼はわざとらしく、私から見て前の方に飛ばされていった。
 『ネージュ、あんたぁ敵だと厄介だけど、味方だとこんなにも頼もしいんだね』
 『たっ、頼もしいって…』
 やっ、ヤライさん、私はまだまだバトル初心者なのに、よく見すぎだよ。ペルシアンさんとのやりとりの間に、ヤライさんも相手の技の対処をしていたらしい。彼女は私の方にチラッと振り返り、こう言ってくれた。私の事を高く評価しすぎな気がするけど、コット君とかイグリー君達以外にこう言ってもらうのは初めてだから、嬉しくもあり恥ずかしくもあった。心なしか、街の気温が少しだけ上がったような気がした。
 『ネージュ、エレン君が歌うを発動させて、って言ってたよ』
 『うっ、歌う…? 』
 『うん。ふたりに向けて歌ったら、あとはニドクインさん達が演じてくれると思うよ』
 えっ、演じる…? ほんの少し時間的な間が空いたから、その間にコット君が話しかけてきた。コット君はいつも適格な指示を出してくれるけど、今回だけは何故か曖昧…。ここまでくると、もしかして私だけが取り残されているんじゃないか、こう思えてきてしまう。コット君の言い回しが、更に私にそう思わせることになった。
 『演…、じる…? 』
 『そうだよ。騙されたと思って、歌ってみて! 』
 『こっ、コット君が、そこまで言うなら…』
 こうなったら、歌うしか、ないのかな? コット君もこう言ってるし…。頭の中がモヤモヤして気持ち悪かったけど、コット君が言うなら、そうなのかもしれない。私は自分にこう言い聞かせ、無理やり納得する。あまり気分は乗らないけど、私は喉に少しだけエネルギーを送り、同時に相手のふたりを意識する。その状態で声に出し、即興で詩歌を奏でることにした。


  Continue……

Lien ( 2016/10/25(火) 23:33 )