Chance Des Infinitude〜ムゲンの可能性〜 - Chapitre Cinq Des Light 〜親友の拠点〜
Quarante et huit 親友との共闘
  Sideフルロ



 『ムーンフォース! フッ君、私達もいくよ!
 『うん! 葉っぱカッター! 』
 ラフちゃん、僕は最初からそのつもりやで! ライトさん達と別れた僕らは、知り合ったカナさん達を逃がすために路地裏へ…。最初のうちは何事も無く奥に進めたんやけど、五分ぐらい前から、何か沢山トレーナーが出てきた。それもここまでに何回か戦ってきた人たちとは違って、どの人も同じ服を着とった。これはメガ進化っていう状態のラフちゃんから聴いた事やけど、プラ…何とかっていう組織の団員やって言っとった。…まぁ戦えるんなら、相手がなんでも構わんのやけどね。
 そういう訳で僕らは、何か建物と建物が道みたいなので繋がっとる場所に着いていた。そこでは前からバトルが始まっとったみたいで、見た感じ炎タイプのふたりとイーブイ、それからピカチュウが睨みあってた。そこのパトルはヘルガーだけが敵っぽかったんやけど、ピカチュウの方が競り負けとるらしい。ヘルガー以外にも沢山敵がおったから、とりあえず僕らも加勢する事にした。何かもこもこになっとるラフちゃんは嘴にピンクのエネルギーを集め、それをすぐに撃ちだす。やから僕も頭の葉っぱに集中させ、それを草の属性に変換して、首を思いっきり振り下ろしながら解放する。すると何枚もの鋭い葉っぱが出現し、沢山おる敵の方に飛んでった。
 『よしっ、まずはひとりやな。次は種マシンガン』
 『くっ…』
 『組織のメンバーにしちゃああまり手応えがねぇーな、火の粉! 』
 『確かにそうや…っ? 』
 ほんまにそうやな。正直言って、期待外れやな。僕が放った葉っぱは、上の方で飛んどるズバットとかに当たった。何かここまでにダメージ食らっとったみたいで、僕の葉っぱだけで地面に落ちてきた。この調子なら連勝できるんちゃうか、そう思ったから、今度はエネルギーを口元に凝縮させる。その状態で咳をやるみたいな感じで力を入れ、それを撃ちだす。すると小っさい粒みたいなのに変わって、近くにおったアリアドスに飛んでった。すると似たようなタイミングで、小さな火の破片が飛んできた。その火を出した声と同じことを思っとったから、僕はそうやね、って言いながらそっちをチラッと見た。やけどその先におったのは、予想外のじんぶつ…。
 『へっ、ヘクト? 何でこんなとこにおるん? 』
 『フルロこそ、今日は池の方で特訓するんじゃなかったのかよ』
 僕が良く知っとる小っさい頃からの親友、デルビルのヘクトやった。彼には何も言わずに森を出たから、何かのタイミングで戻った時に謝るつもりやった。やから僕は、彼はいつも通り森におるのかと思っとった。それはヘクトもそうやったらしく、僕と同じように驚きで声を荒らげとる…。まさかこんなとこ…、しかも森とは真逆の環境での再会やったから、嬉しさよりも驚きの方が勝ってまった。
 『そのつもりやったけど、ラフちゃん…、チルタリスっていうそこで戦っとるフワフワの子に誘ってもらったんよ。やから僕は、トレーナー就きとしてここに来とるんよ。ヘクトは? 』
 『俺? 俺もフルロと似たような感じだな。俺は向こうでヘルガーと戦ってるコットっていうイー…、いや、サンダースと同じトレーナーのメンバーになる事になっているんだ。んだけどまだそのトレーナーとは会えてねぇーからな、まだ野生だな』
 えっ? って事は、ヘクトもトレーナー就きになるんやな? あちこちでバトルが起こっとるからそんな暇はないんやけど、僕らは思わず自分の事を話し始める。何となくそんな気はしとったけど、僕はまさか本当にそうだとは思っとらんかった。僕らはあまりの事に目を合わせ合い、口々にこう確かめ合う。バトルではヘクトにはたまにしか勝てんけど、それ以外の事ならほぼ同じ…。んでもまさかここまでタイミングが重なるとは…。フィフさんが前に言っとった気がするけど、これが腐れ縁って言うんかもしれない。就くトレーナーはちゃうけど、まぁ、そう言えるよね?
 『へぇー。んなら、僕が先…』
 『おい貴様、散々攻撃しといて、何様のつもりだ? エレキネット! 』
 『あんまりよそ見して話し込むもんじゃないよ? マッドショット』
 『なっ…! 火の粉』
 『葉っぱカッター! 』
 えっ、ごっ、ごめん! 完全に忘れとったよ。僕が先やね、そう言おうとしたんやけど、それはヘクト以外の誰かに遮られたで言い切れんかった。何か知らん間に怒らせてまったっぽくて、僕らはその気迫で思わずそっちに振り返ってまう。僕が起こらせてあったのは、さっき僕の種マシンガンをくらったアリアドス。彼は感情に身を任せて黄色い糸を放ってくる。バチバチと音をたてて、僕らの方に真っ直ぐ向かってきた。
 そのアリアドスに続いて、その仲間っぽいヌオーも技を発動させる。性別はどっちか分からんけど、多分彼は、口から泥みたいなブレスを撃ってきた。
 急に攻撃をされたから、僕らはほぼ反射的に得意技を発動させる。僕は泥の直線を狙って草の刃を、ヘクトは痺れそうな糸に向けて熱い欠片を、それぞれ撃ちだした。  『ほぅ、油売ってた割には反応が早いじゃないか』
 『当ったり前だろぅ。これでもバトルの特訓はしてたんだ、そう簡単にはやられねぇーよ』
 結果は、相撃ち。僕らが立つ真ん中ぐらいの位置でぶつかって、ちょっとした衝撃とともに消滅した。僕らの対応が期待以上やったらしく、アリアドスは感心したように呟く。それにヘクトが答え、次の行動が待ちきれんとでも言いたげに前に一歩出た。
 『これは期待できそうだね、水の波動』
 『君たちも、そんな技使っとるってことは、それなりに戦っとるんやな? 蔓の鞭』
 そうやなくても僕は戦うつもりやったから、関係ないか。ヌオーはこれだけ言うと水を貯め、リング状に形成して撃ちだしてくる。この距離と時間やとあまり貯めれてないはずやから、技で打ち消す事ができそう。そう言うわけで僕は、首元から蔓を伸ばし、身構える。タイミングを見計らって振り上げ、僕の三十センチぐらい手前で打ちつけた。
 『フルロ? 蔓の鞭の威力、強くなってねぇーか? 』
 『そんなの決まってるやろ、森からここまで、何回も戦って鍛えたからやな』
そんなすぐに違いが出るとは思わへんけど、そうなんかな…? 僕が振り上げた鞭は狙い通り、相手の水で出来たリングを捉える。そのせいでちょっとけダメージを食らってまったけど、とりあえずは打ち消せた。飛び散った水に濡れながら駆けだそうとしたら、後ろの方からヘクトがこう訊いてきた。僕自身あんま自覚は無いけど、ヘクトから見たらそうだったんかもしれへん…。やから僕は、強いて言うならって感じで言っておいた。
 『やっぱフルロもそうだよな! スモッグ! なぁフルロ? 』
 『もう一発! …ん、どうしたん? 』
 『折角森の外で会えたんだし、アレ、試してみねぇーか? 』
 『ええね! 』
 そうやね! これまで実践で試したことなかったから、ええ機会かもしれへんね! 僕を追い抜いたヘクトは、喉元に技を溜めながら相手を狙う。ちょうどアリアドスが距離を詰めてきたで、目晦まし代わりにそれを放出する。目の前に紫色の霧が出来たから、僕はまわり込むようにそこを迂回する。するとちょうど視界が開けたタイミングで、同じことを考えとったっぽいヌオーと鉢合わせ…。二本の蔓を出したままにしとったから、ほぼ反射的に叩きつけた。
 そんな最中、ヘクトはこんな事を聴いてきた。ちょうどヘクトはシザークロスを発動させようとしとった相手に噛みついたところやったから、ちょっと声が籠っとったけど…。やけどそれだけで僕は、何のことを言っとるのかすぐに分かった。やから僕は、三メートルぐらい離れとったけど、大きく頷いた。
 『じゃあフルロ、いくぜ! 』
 『うん! 』
 『袋叩き! 』
 前からバトルでやってみたかったんだよねー! 結果的に相手に背を見せてまう事になるけど、ヘクトは僕に大声で呼びかける。それにすぐ答えると、ヘクトは即行で技のエネルギーを解放した。
 『おいおい、貴様の相手はお…』
 『技の効果やからね、悪く思わんといてな! 』
 『ぼっ、ぼ…、くぅっ…』
 『二発目! フルロ! 』
 ヘクトがこっちに向けて走り始めたで、僕もそれに合わせて相手との距離を詰める。狙う相手は、ヘクトの相手やなくて、僕が闘っているヌオー。十歩ぐらいで距離が詰まったから、僕は首を低くし、突っ込みながら大きくふりあげる。そうすることで、頭の葉っぱで思いっきり切り上げた。
 ヘクトの技は、まだ終わらない。僕の悪タイプの斬撃で若干圧されたヌオーに、背後からヘクトが迫る。僕が急ブレーキをかけて止まっとる間に、ヘクトは背中に頭から突っ込んだ。
 『これで決めるで! 自然の力…、トライアタック! 』
 へぇー、森以外やと、こんな技になるんやな! ヘクトから合図をもらった僕は、後ろに跳び下がりながら技のイメージを膨らませる。想像するというより、周りの状態に耳を傾ける。この状態でエネルギーを解放し、技を発動させる。するとすぐに別の技のイメージが流れ込んでくる。それ通りに、体のほぼ全体にエネルギーを行き渡らせた。
 『一発目! 』
 まずはじめに、右の蔓の先に集中し始めたから、それを投げる様なイメージで撃ちだす。すると白い玉がそこから出て、すぐに紅く変色した。
 『炎…? 』
 『二発目』
 あまり距離が離れてなかったから、それはすぐにヌオーにぶつかる。それと同時に、赤い炎が辺りに弾けた。だけどその結果を見届けずに、今度は左で、同じように発射。今度は黄色くなって、ぶつかると黄色い稲光が辺りを照らす。
 『最後、三発目! 』
 二つ目は効果が無かったけど、めげずに残りを解き放つ。最後はありったけのエネルギーを玉に込め、至近距離で解放する。水色に変わった瞬間に命中し、氷の結晶がいくつも散らばった。
 『くっ…、流石に連続で…、ここまで食らうと…、厳しいね…。のし…かかり』
 『まっ…、まだ立っとれるん? くっ…。…蔓の鞭…! 』
 うそやろ? あんだけダメージ与えたはずやのに、まだ倒れんの? 僕はてっきりさっきの技で倒せると思っとったから、ほんの一瞬だけ気を抜いてまった。それのせいで僕は、ギリギリ耐えたヌオーの接近を許してまった。ふらつきながらも駆けてきた相手は、ほんの少しだけ上に跳ぶ。斜めの位置から、覆い被さる様に突っ込んできた。
 油断したせいで、僕は大ダメージを食らってまった。けど負ける訳にはいかんから、そこは何とか堪える。上に乗られたで、僕は首を大きく横にふって無理やり落とす。そして相手が立ち上がる前に、渾身の力を込めて叩きつけた。
 『今度…こそ…! 』
 『っ…! 』
 僕の蔓は、起き上がろうとしとった相手の頭にヒット。そのまま押し切って、立つのを阻止することになった。僕自身も予想以上の威力にビックリしてまったから、相手は相当驚いとると思う。おまけにこの技が決め手になったっぽくて、相手は気を失ってまったらしい。何かを喋る事も、起き上がる事も無かった。



  Continue……

Lien ( 2016/09/26(月) 21:37 )