Chance Des Infinitude〜ムゲンの可能性〜 - Chapitre Cinq Des Light 〜親友の拠点〜
Quarante et sept 敵勢の情報
  Sideラグナ



 『…悪の波動! スーナ! 』
 『くっ…』
 『ハイドロポンプ♪ 』
 話始めると長くなるが、メンバーの中では最初にセンターに着いた俺は、そこで偶々スワンナのスーナと再会した。彼女達がエクワイル、それも最高位のオーリックという事を知っていたので、世間話ついでにここまでの調査報告。だがその途中にプライズの一行を見かけたので、途中で切り上げて追跡。ライト達との合流の事もあるので、捜査範囲を広げる意味を含めて分身を一体、そこに待たせてきている。
 残りの四体と俺達は、散った団員を追いながらの戦闘。俺自身はスーナと共闘し、それなりの数を殲滅してきている。追っている間に海岸付近まで移動しているが、それにつれて戦闘位の数が増加してきていた。
 そういう訳で俺達は、駆ける足を止めずに敵勢を蹴散らしていた。地上では俺が漆黒のエネルギー波でまんべんなくダメージを与え、空からスーナが確実に仕留める。スーナが用いる技はどれもエネルギー消費が多いものなので、時々遠近の分担を変えながら…。スーナはアクアリングを発動させているので、多少のダメージも問題ないだろう。
 「ちっ…、あのポケモンは一体何なんだ。人の駒なら分からなくもないが、よりによって野生如きに…。まぁいい、勝てないのなら数で勝負だ、総動員でひっ捕らえろ! 」
 「了解! 」
 『残念だが、俺達はトレーナー就きだ。フッ…、俺達ポケモンを駒呼ばわりするのは、相変わらずだな』
 『グリースの残党も編成されてるって聴いてたけど、プライズになっても変わらなかったんだね♪ 』
 腹立たしいのには変わりないが、ある意味予想通りか…。スーナの一撃で路地の一団を突破した俺達は、コガネの海岸に抜ける事が出来た。どこかの施設で管理されているらしく、かなり整備されているように見えた。通常ならそうと思われるが、今はプライズとの戦闘の場になってしまっているようだ。おまけに蹴散らす俺達を待ち構えていたらしく、十人ほどの団員が壁の様に立ち並んでいた。
 その中の一人が、残りの団員に荒々しく指示を飛ばす。その団員だけユニフォームが異なるので、恐らく地佐だろう。指示を受けた一団は各々にボールを手にとり、戦闘態勢に入っていた。
 『久々に暴れたかったんだ、野郎共、いくぞ! 』
 『おぅ! 』
 『なるほど、実質の群れバトルで俺達を仕留めるという作戦か』
 『密猟組織らしい作戦だね♪ ラグナさん、ウチはこっちの七にんを相手するから、向こうの五にんを頼んでいい? 』
 技構成、実力的に考えると、その配分が良さそうだな。跳び出した十二ひきのうち、リーダー格と思われるクロバットがこう声をあげる。事情は知らないが、相当何かが溜まっていたらしい、荒々しく号令をかけ、先陣を切って俺達に向かってくる。それに対し俺達は、敵勢の数、種族を確認しながら短く声を交わし合う。俺が多く相手しようと思ったが、僅かな差でスーナに先を越されてしまった。俺は俺で考えて結論を出したのだが、やはり経験の差だろう。彼女の作戦の方が、成功率が高いような気がした。
 『ああ』
 なので俺は、彼女の提案を受理する事にした。彼女の方をチラッと見、頷くことで工程の意を示した。
 『スーナ、いくぞ! 』
 『うん♪ アクリング』
 『影分身』
 スーナ、そっちは頼んだぞ! 俺がこう呼びかけると、スーナは大きく頷く。その後すぐに水のベールを纏い、力強く翼を羽ばたかせた。なので俺は、彼女が羽ばたいた風を感じながら、一体の分身を出現させる。別の場所に向かわせていた分身の殆どが既に消滅させられているので、更に出す事は可能だが…。
 『…待たせたな。さぁ、始めようか』
 『独りのクセに余裕じゃねぇか』
 『その長っ鼻、へし折ってやるよ』
 見たところ全員戦闘位のメンバーといったところか…。相性的にも、問題なさそうだな。俺が対峙する軍勢に向き直りこう言うと、一番近くにいたゴルダックが真っ先に食いついてきた。更にミルホッグが便乗し、敵意むき出しで言い放った。
 『やれるものならやってみろ。まぁ、所詮…』

      “夢”

 『戦闘…!? 位に俺が倒せると…』
 こっ、この声は! かつ気満々の相手に対し、俺は言葉の罠で相手の調子を狂わそうとした。技の威張るを発動させ、混乱状態にさせようとセリフを並べ始めた丁度その時、俺の頭の中に誰かの声が短く響く。エコーがかかったように反響しているので、この声はテレパシーによるものだろう。驚きで僅かに言葉が詰まってしまったが、そのセリフですぐに何者なのか察する事が出来た。なので俺は何事も無く語りはじめ、技を発動させることにした。
 『…は思えないがな。…さぁ来いよ、俺が“現実”を教えてやるよ! 悪の波動! 』
 この合言葉を知っているという事は、この中にアイツらが紛れ込んでいるんだな? 自然な流れでこう言い切り、中に答えとなる単語を紛れ込ませる。すぐにでも彼からの報告を聞きたいところだが、今はのんびりと待てるような状況ではない。即行で全身にエネルギーを行き渡らせ、それを悪タイプに変換する。この状態で思いっきり解放し、弧を描く様に黒い波を発生させた。

  ラグナさん、答えなくてもいいので、聴いてください。

 『っく…』
 『自信がある割には、投げやりじゃねぇか? アクアジェット! 』
 『そういうお前らも、真正面から突っ込んでいいのか? 』
 あぁ、トレーナー側には訊かれないとはいえ、そのメンバーには会話が筒抜けになるからな。頭の中に語りかけてくる声、潜入中のヒイラギは、手短に俺に頼んでくる。俺は始めからそのつもりだったので、心の中だけで頷いた。
 一方戦闘の方はというと、対峙する五匹のうち、三匹に俺の黒波が命中する。ゴルダックには先制技で回避されてしまったが、この様子なら俺の技にかかっていると思われる。何も考えずに水を纏い、俺の波を回避する。その状態を維持したまま、真っ直ぐ俺の方に突っ込んできた。

  戦っている五にんのうち、見切りで回避したミルホッグがヘイスです。

 『貴様こそ突っ立てると、痛い目に遭うぜ? 草結び』
 『フッ…、その程度の技で、俺が倒せると思っているのか…。哀れだな』
 そうか、どうりで他の四匹とは動きが違った訳だ。手始めという感じで、変装しているヒイラギは、俺にとって有益とも言える情報をもたらしてくれた。敵側に味方がいるのなら、このバトルを有利に展開させることが出来るだろう。そんな事を考えていると、さっきのゴルダックが迫ってきたので、俺は左に、分身は右に跳んで回避する。先回りしていたらしく、オオタチが手元にエネルギーを集中させ、地面を力の限り叩く。すると俺の足元に蔓が生えはじめ、自由を奪おうとしてくる。俺自身に纏わりついてしまったが、構わずに威張るを仕掛ける事にした。
 『足元がガラ空きだぜ? 居合い切り』
 『それは俺様のセリフだ! アクアジェット! 』
 とりあえず、これで三にんか。自由を奪われた俺を狙い、正常な思考が働いていないゴルダックが引き返してきた。奴は周りの味方には目もくれず、右側から距離を詰めてくる。そのゴルダックと結託するかのように、ミルホッグが反対側から迫る。彼は挑発するようにこう言い、右の手刀で切り上げてきた。
 『っ! 雷の牙』
 『なっ…』

  それからもう一つ、プライズのアジトの場所が分かりました!

 ヘイス、助かった! 不意を突いて接近してきたミルホッグは、拘束された俺の左前足に斬撃を命中させる。そのために俺もダメージを食らったが、怒りで威力が増しているアクアジェットよりはマシだろう。敵側だと装って俺を解放してくれたヘイスは、すぐに身を屈めて走り抜ける。そのお陰で俺は完全に自由になったので、牙に電気を纏わせ、迫る水弾に噛みかかった。
 『俺を忘れるな! かわらわ…』
 『っ…、忘れてなんかいないさ』
 技と技がぶつかり合い、俺の口元から一筋の雷光が駆け抜ける。相手の威力が増しているために俺もダメージを食らったが、それ以上に俺は相手に大きな一撃を与える事に成功する。しかし一喜一憂する間もなく、分身が対峙していたニョロゾが俺に迫る。なので俺は咥えた状態のゴルダックを放り投げ、ニョロゾの進行を食い止めた。

  プライズのアジトは、チョウジタウンの北にある怒りの湖です。移動式の建屋らしく、そこに停泊させて活動しているようです。

 『悪の波動! 』
 『たたきつぅッ…! 』
 『これでどう…くっ…』
 なるほど、チョウジか…。ゴルダックはとりあえず倒したが、それでもまだ三…、いや、ヘイスを除くとふたりか…。少し離れた場所で様子を伺っていたオオタチが迫ってきたので、俺は咄嗟に全身に技のイメージを行き渡らせる。右側に敵が集中しているので、俺は波の範囲を狭めてそれを解き放つ。それはちょうど体を鞭のように撓らせて攻撃しようとしていた敵を捉え、数メートルほど吹き飛ばした。この波はヘイスにも達していたが、彼は上手く対処していた。見切りでタイミングを見極め、スレスレのところで跳んでかわす。俺が見た感じでは完全に避けていたが、彼はわざと唸り声を上げる。ここで引き上げるつもりらしく、身を翻し、背中から倒れるフリをしていた。
 『おいおいお前ら、独り相手にやられる…』

 今のところ、これだけです。ラグナさん、ライトにも伝えておいてください。

 『だから言っただろぅ? お前らに現実を教えてやる、と。雷の牙! 』
 あぁ、任せろ。ヘイスがやられたフリをしたという事は、おそらくヒイラギは持っている情報を伝え終えたのだろう。本当にそうだったらしく、彼はテレパシーでこう締めくくる。なので俺は、残り一体になった相手との距離を一気に詰める。バチバチと音をあげながらニョロゾを狙い、躊躇なく噛み砕く。分身にある程度ダメージを与えさせていたので、この一撃でニョロゾは意識を手放すことになった。


  Continue……

Lien ( 2016/09/24(土) 16:58 )