Chance Des Infinitude〜ムゲンの可能性〜










































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Chapitre Cinq Des Light 〜親友の拠点〜
Quarante et six 阿吽の呼吸
  Sideアーシア



 「…フレア団時代の恨み、そして無礼なその態度の戒めとして、存分にいたぶってあげるわ。覚悟しなさい! 」

  テトラ、アーシアちゃん、くるよ!

 何があったのかは分からないけど、この人、ライトさんに恨みでもあるのかな? まだテトちゃん達の仲間になったばかりだからよく分からないけど、この人は相当その事を根に持っているらしい。感情に身をまかせるっていう感じで、怒鳴りながら、腰にセットしている赤と白のボールを二つ手に取る。その中には誰かが控えているはずなのに、その人は乱暴に二つとも投げていた。
 話の展開からバトルになることは分かっていたから、私達は身構えたままライトさん達の言い合いを聴いていた。すると相手の人が半分ぐらい言い切ったタイミングで、急にライトさんの声が頭の中に響く。一応前に体験した事はあるけど、久しぶりだったから思わず小さく声をあげてしまった。だけどビックリしたままでいる訳にもいかないから、ぶんぶんと頭をふってその考えを端の方に追いやった。
 『アタシの相棒にそんな態度をとるなんて、あんたらのトレーナーも大したものね』
 『まっ、無知が故の言動、だから仕方ないんじゃね? 』
 見慣れてなくてびっくりしちゃったのはここだけの話しだけど、ボールの中からそれぞれ一人ずつが跳び出す。最初に話しかけてきたのは、赤い鬣を持った種族。後でテトちゃんに訊いたら、カエンジシっていう種族らしい。そしてもう一人は、カモネギっていう種族。その人は右の翼でネギみたいな棒を持ち、先の方を首筋にあてながらカエンジシさんに続いていた。
 『見た感じカロスの出身みたいだけど、ここではそんな事、関係ないよ』
 『でももし嫌な気持ちにさせちゃったのなら、申し訳ないです』
 何かの組織みたいだけど、やっぱりその人も一人の人だから、譲れないものがあるのかもしれないね。テトちゃんは警戒を解かないまま、相手の人達に答える。テトちゃんは相手の気迫に負けない様に、声を大きくして言い切っていた。それに対して私は、こんな風に思いながらテトちゃんに続く。理由は分からないけど怒っているみたいだから、二人に目を向けたまま謝った。
 「カモネギは鋼の翼で先制攻撃、カエンジシは火炎放射で援護よ! 」
 『どう思おうと、俺達にゃ知ったこっちゃねぇーな』
 『そうね。立ち話はこのくらいにして、そろそろ始めましょ。火炎放射』
 鋼の翼って事は、最初の狙いは、テトちゃん? 高飛車っぽい感じのトレーナーさんは、威勢よく言い放つ。この一言がきっかけで、街中でのバトルが幕を開けることになった。最初に動き始めたのは、今どきの若者風のカモネギさん。右の翼で持っていた棒を嘴で咥え、空いた翼で思いっきり空気を叩く。体勢を低くした状態で、指示通りテトちゃんの方に滑空し始めた。その後ろを、カエンジシさんが追いかけ始める。ほんの少しだけ右にそれて、口元にエネルギーを溜める。すぐに炎に変換し、カモネギさんと並走するように放ってきた。
 『この世界では、本当に人の指示通りに動くのですね。電光石火っ! 』
 『私達の方が異例だから、相手の方が普通かな。ムーンフォース! 』
 鋼の翼は先制技じゃないから、これならテトちゃんを守れるかな? 相手が動き始めたのとほぼ同じタイミングで、私達も戦闘を開始する。まず私が後ろ足に力を溜め、瞬間的に開放する事で一気に駆け出す。三歩ぐらい走ってから、カモネギさんからテトちゃんを守るために右に飛ぶ。私の後ろをテトちゃんが着いてきてくれているはずだから、私達も縦一直線の陣形。相談した訳じゃないけど、これなら連続攻撃に繋げられるし、次の道を切り開く事も出来る。
 私の後ろでは、テトちゃんが技の準備をしてくれていると思う。本当にそうだったらしく、カモネギさんとの距離が三メートルになったところで、テトちゃんの球が私を追い抜く。それから二歩進むと、前から迫ってきた赤い直線の先端とぶつかる。威力はテトちゃんの方が上だったらしく、何十センチか圧しきってから、ピンク色の球は消滅していた。
 『狙いは違うけど、まぁいっか。鋼の翼! 』
 『それが作戦ですっ! 体当たり! 』
 間隔が二メートルになったところで、カモネギさんは右の翼を硬質化させる。炎を避けるために私が少しだけ右にズレてたから、相手も軌道を修正しながら硬くなった右翼を振りかざしてきた。それに対して私も、次の行動に移る。電光石火では圧し負けすると思うから、走るスピードを維持しながら技を切り替える。使い慣れている物理技を発動させ、頭から思いっきり突っ込んだ。
 『くっ…。初級技の体当たりでここまでの威力を出せるとは、中々やるなぁ。辻切り』
 『バトルに技のレベルは関係ないです! 守る! 』
 結果は、相討ち。カモネギさんの右側に命中した事もあって、私は左側に、カモネギさんは私から見て右に弾かれる。ここで相手は体勢を整えて追撃してくるはずだから、私も左手から着地し、方向転換する。すぐに後ろに跳び下がりながらシールドを張り、相手の攻撃に備えようとした。でも…。
 『引っかかったな。フェイント! 』
 『えっ…、くっ』
 緑の壁が私を包み込んだ瞬間、それは音をあげて崩れ落ちてしまった。相手は私の予想通り追撃してきたけど、それは想像の範囲を超えていた。本当なら、防いですぐにカウンター攻撃を仕掛けるつもりだった。だけど、相手の方が一歩早い…。突っ込んできた拍子に守りが破られ、そのまま私にぶつかってきた。
 『その隙、もらったわ! ワイルドボルト! 』
 『シアちゃん! ギガインパクト! 』
 うっ、後ろから? カモネギさんに集中し過ぎていたから、私はもう一人の相手の事をすっかり忘れてしまっていた。守るが破られてのけ反っている間に、カエンジシさんの接近を許してしまった。まだ距離は離れていたけど、カエンジシさんは電気を身体に纏い、私に狙いを定める。勝ち誇ったように声をあげながら、私めがけて走ってきた。
 距離的にもかわせなくは無さそうだけど、このままだと大ダメージを食らってしまう。カモネギさんも旋回し始めていたから、すぐにでも動き出さないといけない。何とかしないと、そう思った瞬間、テトちゃんが左の端の方から駆けてくる。私とカエンジシさんの間に滑り込み、電気を纏った相手の方に進路を変えた。
 『っ! 』
 『ちっ…、辻切り』
 『そうはさせません! スピードスター! 』
 ドンッと鈍い音と共に、二人はぶつかる。その衝撃でカエンジシさんが纏っていた電気が弾け、辺りに黄色い光をまき散らした。結果は確認していないから分からないけど、この間にもカモネギさんは旋回し終えていた。私の上を飛び越し、テトちゃんを狙って急降下。咥えている棒にエネルギーを送り込んで、テトちゃんに重い一撃を与えようとしていた。
 このままだと、今度はテトちゃんがピンチになってしまう。カエンジシさんとぶつかった直後はどうなってるか分からないけど、少なくとも反動で動けないはず。だから私が、テトちゃんの事を守らないといけない。飛び越していったカモネギさんの後を追いながら、私は右手に技のエネルギーを集中させる。四足で走る体勢のまま右手を少し浮かせ、こけないように注意しながら上に振り上げる。すると白いエネルギー体が私の手元から出現し、斜め上に向けて空気をかき分け始める。かと思うとすぐに弾けて、七つの星として相手の方に飛んでいった。
 『くっ…』
 『守る! 』
 『シアちゃん…、ありがとう』
 『私も助けてもらったから、お互い様だよ』
 色んな方向に飛びはじめた星は、五つがカモネギさんを撃ち落とし、二つがカエンジシさんを狙う。カモネギさんには背中に当たっていたから、結構なダメージを与える事が出来たらしい。その証拠に、落ちた時に受け身がとれていなかった。
 この間に私は、テトちゃんに追いつくことができた。大技の反動のせいかもしれないけど、テトちゃんの息遣いはかなり荒れていた。だから私は今度こそ緑のシールドを張り、相手との間に壁を作る。無事に発動する事が出来、何とかテトちゃんに時間を上げる事に成功した。
 『守る、厄介な技を持ってるのね…』
 『あんただって、さっきのワイルドボルトは効いたよ…』
 テトちゃんがここまでダメージを食らっているから、カエンジシさんの方も相当威力があったらしい。反動とテトちゃんの技で、かなり消耗しているように見えた。この一発以外にもダメージが入っていたみたいで、カエンジシさんは肩で息をしている。緑の壁に包まれている私達に、声を絞り出すように話しかけてきていた。
 『だけどあんた達には、のんびりと話す時間なんて、ないんじゃないかな? 』
 『それはあんたも同じだと思うわ』
 『そうだけどシアちゃん、油断は禁物だよ』
 だってこういう時こそ、相手は何をしてくるか分からないからね。テトちゃんも体力的に追い込まれているはずだけど、私にはまだまだ余裕そうに見えた。横目でチラッとテトちゃんを見ると、何故かうっすらと笑みを浮かべていた。それは相手のカエンジシさんも同じらしく、雰囲気ではその様子が全く見られない。カモネギさんは起き上がらないから、そうじゃないはずだけど…。
 話している最中だから、ここで私は張っていたシールドを解除する。エネルギーを送るのを止めたから、すぐには発動する事が出来ない。そういう訳で私は、自分に言い聞かせる意味も含めてこう言う。気付かないところで何かしている事も考えられるから、いつでも動けるように、私は技のエネルギーを溜め始めた。
 『その通りよ…。…オーバー…ヒート…! 』
 『ムーンフォース! 』
 『しゃっ、シャドーボールっ! 』
 いっ、いきなり大技? ということは、もしかして…。カエンジシさんは何の前触れも無く走りはじめ、同時に技を発動させる。走る足取りが少しだけふらついていたから、私の予想は間違ってはいないと思う。ここまでは良かったけど、カエンジシさんが発動させたのは、威力の高い大技。テトちゃんはすぐに対応していたけど、驚いたせいで少しだけ遅れてしまった。
 咄嗟に右に跳んだテトちゃんは、すぐに両法のリボンにエネルギーを溜め、それを丸く形成する。三センチぐらいの大きさになってから、左右同時に撃ちだす。その間にも炎の塊は私達に迫り、距離は四メートルになっていた。このタイミングで私も慌てて左に大きく跳び、その勢いを利用して二足で立ちあがる。両方の手にエネルギーを蓄え、それをゴーストタイプに変換する。それを丸く形成せずに、右、左の順に解き放った。
 『うそ…、これでも打ち消せ…』
 『テトちゃん! 私が防ぐから、その隙に攻撃して! 守る』
 これだけ命中させても勝てないなら、そうした方が良いかな? 私とテトちゃん、合わせて六つの球が当たり、炎の塊は規模が小さくなる。だけどそれ止まりで、完全に打ち消す事はできなかった。スピードが落ちたとはいえ、それでも威力はかなりあると思う。そこで私は赤い大玉の正面に戻り、二足で立ったまま技を発動させる。緑の壁を出現させ、両手を介して更にエネルギーを送り込む。それと同時に大声をあげ、唖然とするテトちゃんにこう頼んでみた。
 『…うん。フラッシュ』
 『なっ…くっ…』
 壁を張るので精一杯で確認してないけど、たぶんテトちゃんは頷いてくれた。するとテトちゃんは炎の向こうに向けて走りだし、同時にリボンに光球を創りだす。ここからは炎が壁にぶつかって見えなくなったけど、どこからか強い光が漏れてきた気がした。
 『つっ…、強い…』
 全力でエネルギーを注ぎ込んでいたけど、それでも壁にヒビが入りはじめてきた。ミシミシを音をあげながら、それは広がっていく…。
 『でも…』
 ここで負ける訳にはいかないよ! それでも更に送り込み、ヒビの修復に入る。そのお陰で何とか、ヒビの侵食を止める事はできた。
 『負け…、ないっ! 』
 私が防がないと、誰もする人がいない、だから! 威力が強くて押されてきたけど、それでも私はめげずに耐える。重心を落として踏ん張り、後ろに送られているエネルギーも前の方にかき集める。背中の守りがゼロになるけど、その代わりに前の強度を増すことが出来る。その甲斐あって、その場で踏みとどまる事が出来るようになった。そして…。
 『っ! 』
 目の前を遮っていた赤が、急に無くなる。それと同時にヒビが一気に広がり、派手な音をあげて崩れ落ちた。
 『シアちゃん! …良かった、何とか、耐えられたみたいだね』
 『うっ、うん…』
 壁が壊れた衝撃で三メートルぐらい飛ばされちゃったけど、何とか防ぐ事はできたと思う。テトちゃんもふらついていたけど、この様子だとカエンジシさんに勝てたんだと思う。弱々しかったけど、何とかテトちゃんは私に笑いかけてくれた。


  Continue……

Lien ( 2016/09/21(水) 23:29 )