Quarante et neuf 仲間達との合流
Sideコット
『…鋼の翼! ネージュ! 』
『うっ、うん! 凍える風』
『イグリー、ネージュ! 遅れてごめん! スピードスター』
よかった。イグリーとネージュ、まだ持ちこたえてるみたいだね。ピカチュウさんからもらった雷の石をもらった僕は、その彼の指示で一端戦闘を離脱。バトルからは離れたけど、それは別の戦闘に参加するため…。五十メートルぐらい離れていたから、僕はその距離を駆け抜けていた。途中で何にんかと戦いはしたけど、進化してサンダースになったからかな? イーブイの時よりもかなり楽に敵を倒せている。その中でもズバットとかゴルバットは、フィフさんから教えてもらった目覚めるパワーで確実に倒せている。そうじゃなくても結構なダメージを与えているはずだから、僕は足を止めずに駆け抜けれていた。
そんな感じで突き進んでいた僕は、あまり時間をかけずに仲間の元に辿りつくことができた。向こうは大分減ってたけど、こっちはその倍ぐらいは残っているらしい。色んな種族のひと達に、何時間かぶりに会う仲間が囲まれていた。その中でイグリーは両方の翼を硬質化させ、近くを飛んでいたホーホーに打ちつける。ここまででダメージが溜まっていたらしく、ホーホーは耐え切れず落ちてきていた。さっきのホーホー以外にも、気絶寸前のひとが沢山いた。イグリーが撃ち落としてから分かった事だけど、これは多分、ネージュがしているんだと思う。彼女は多分体全体にエネルギーを行き渡らせて、それをすぐに開放する。するとどこからか冷たい風が吹いてきたかと思うと、それに乗せられたように白い粒が飛んできていた。
だから僕はそのふたりをアシストするために、口元にエネルギーを凝縮させる。八センチぐらいの大きさになってから撃ちだし、その弾を弾けさせる。するとそれは五つに分裂し、星を模る。それぞれが全く異なる動きをし、僕が狙った通りの相手を撃ち落とした。
『サンダース…? って事は、コット? 』
『コット君、なの? でっ、でもコット君って、イーブイ…、水鉄砲! 』
『そうだよ。…手助け』
ピカチュウさんから貰った時は、まだイグリー達はいなかったから、仕方ないかなぁ。イグリーには前に言った事があるから、すぐに僕がぼくであることに気付いてくれた。硬質化させた翼をホーホーに叩きつけた後だったから、こっちに向けて旋回した直後だったけど…。だけどそのせいで、彼は後ろから迫る炎に気付いていなかった。それには僕も気づいてはいたけど、彼の真正面にいたネージュには敵わなかった。彼女は進化した僕に戸惑いながらも、すぐに炎に反応する。僕の事をイグリーに訊こうとしていたけど、途中で切り上げる。口の中に沢山の水を溜め、それを瞬間的に解き放つ。その甲斐あって、イグリーに迫る火の玉を消火するのに成功していた。
その間に僕は、ふたりを無視するわけにはいかないから、小さく肯定する。だけどすぐに頭をバトルに切り替え、彼らのサポートをする事にする。二人の事を強く意識しながら右の前足にエネルギーを集中させ、それを軽く振り上げる。そうする事で、ふたりの次の技の威力の増幅を試みた。
『ふたりが着く前に、雷の石をもらえたんだよ! …そんな事より、ふたりは大丈夫? 』
『おれ達? ここに来るまでに結構戦ったから、結構ダメージは食らったかな。んだけど、カナに回復してもらってるから、もう少しはいけるかな』
やっぱり、はぐれてからイグリー達も戦ってたんだね?
『だっ、だけど、エネルギーの方は、限界が近いかな…。私達、街に着いてからまだまだセンターに行ってないから』
そっか。それなら、僕と同じような感じだね。ふたりに淡い光が一瞬纏わりついたタイミングで、僕はこんな風に彼らに言う。本当はあの時の事を詳しく話したいけど、今はそんな場合じゃない。だから僕は、何時間かぶりに会ったふたりに、それぞれの状態を訊ねる。結構な時間が経ってるから、てっきり僕は前が霞み始めるギリギリぐらいまで、ふたりとも攻撃を食らっているのかと思っていた。だけどそれは僕の思い込みだったらしく、まだそれなりに動けそう。チームではリーダーの僕が積極的に攻めれば、何とかなりそうだった。
『それなら僕と同じかな。…ありがとう。ここからは僕が…』
『敵に背を向けるなんて、俺達もなめられたものだな。電撃波! 』
『しっ、しまっ…』
『いっ、イグリー! 』
ここからは僕が闘うよ、そう言おうとしたけど、別の方から誰かが割り込んできた。その声の主は話す僕達の方に走ってきながら、体中の電気をかき集める。それを手元に凝縮させると、ボールを投げるように飛ばしてくる。その電塊が空気をかき分ける先にいたのは、完全に敵に背を向けているイグリー…。彼は完全に油断していたらしく、突然の事に頓狂な声をあげてしまっていた。
『電光石火! 君の方こそ、僕がいるのに電気タイプの技は使わない方が良かったんじゃないの? 』
「こっ、コット…? 」
『ほぉー、わざわざ盾になる…』
『余裕でいられるのも、今のうちだよ、目覚めるパワー! 』
まさかとは思うけど、僕の特性、知らないのかな? このままだと、弱点であるわっざがイグリーに当たってしまう。だから僕は、咄嗟に足に力を込め、一気に駆け出す。最短ルートで電塊とイグリーの間に入り、そこで技を解除する。案の定、不意打ちを仕掛けてきた相手、エレブーの電撃が僕に命中…。だけどそれは僕の体力は削らず、ここまでの戦闘のダメージを癒してくれた。
相手のお蔭で完全に回復する事が出来た僕は、続けて別の技を発動させる。回復してもまだ電撃が吸収されずに残ってたから、その隙に薄水色の弾丸を発射した。
『なっ…、俺の電げ…くっ…』
『お前の相手は俺じゃねえーのかよ…! 噛みつく! コット! 』
『ヘクト! 』
ヘクト、完璧なタイミングだよ! 僕の氷弾が相手に被弾した直後、そのさらに後ろから荒々しい声が響いてくる。途中から別の場所で戦っていたヘクトが、かなり怒りながらこっちに走ってきた。たぶんヘクトの事だから、バトルを途中で放棄されたのが頭にきてるんだと思う。相手が相手だから最善とは言えないけど、感情のままに思いっきり腕に牙を向けていた。
『丁度良かった! ヘクト、あの技を発動させて! 』
『あの技…、おぅ、任せろ! 』
『イグリーとネージュも、僕に続いて! 』
『おっ、おれ達も? 』
『うっ、うん』
ヘクトが来てくれたなら、あのエレブーも一気に倒せそうだね! ヘクトが相手を解放したタイミングで、僕は彼に対してこう指示を飛ばす。何の前触れもなく声をあげたから、いまいちパッと来なかったみたいだけど、それでも何とか分かってくれたらしい。ほんの一瞬だけ間があったけど、二つ返事で頷いてくれた。
それから僕は後ろに振り返り、動き出そうとしていたイグリーとネージュにも声をかける。ヘクトとふたりはまだ面識はないけど、これから仲間同士になる関係にある。ヘクトも味方だって認識していないはずだから、半ば賭けだけど…。
『ちっ…、まだ居やがったか…、雷パンチ』
『袋叩き! コット! 』
よし、これなら、勝ったね! 僕がふたりに声をかけている間に、ヘクトはバックステップで三回分、距離にして三メートル分ぐらい跳び下がっていた。その三歩目が終わる頃に、エレブーも握り拳をつくって駆けだす。相手はヘクトを狙ってるみたいだけど、距離的には僕の方が近い。だから僕は、ヘクトに追いつかれるより早く、攻撃を仕掛けた。
『うん! ヘクトには、当てさせないよ! 』
『またお前か…』
『コットだけじゃねぇーぜ、二発目! 』
ヘクトの技の効果で急接近した僕は、帯電した相手の拳に狙いを定める。進化して体が大きくなったから、斜め上に跳ばずにそのまま突っ込む。結果ヘクトの技で悪タイプを帯びた僕と拳がぶつかり、後者が派手に弾かれた。
そこへ更に、発動主であるヘクトが接近する。彼は僕に弾かれた事で隙だらけのエレブーを狙い、走る速度を増していく。スピードが最高点に達したところで、相手の腹の辺りに思いっきり突っ込んだ。
『くっ…』
『誰なのか知らないけど、おれ達も忘れるなよ! 追討ち』
『凍える風! 』
僕の賭けは、失敗。イグリーとネージュが、技を発動させずに攻撃する事は無かった。だけどその代わりに、彼らは一気に攻める、そういう意味で僕の指示を受けとったらしい。イグリーは低空飛行で僕と入れ違い、相手の足元辺りに狙いを定める。ネージュは鰭を使って前進しながら、冷たい風を発生させていた。
『なっ…ぐぁっ…』
『俺も知らねぇーけど、味方みてぇーだな。トドメの火の粉! 』
ふたりの行動で察してくれたらしく、ヘクトも技を発動させる。イグリーは一撃を与えてから上空に避難し、その跡にネージュの氷粒の風が襲いかかる。さらにその反対側から、ヘクトの炎片が降りかかる。結果的に挟み込むことになってたから、相手のエレブーは回避する事が出来なかったらしい。立て続けに技が命中し、何かを言う間もなく意識を手放していた。
Chapitre Cinq 〜ジョウト一の大都市で〜 Finit