Chance Des Infinitude〜ムゲンの可能性〜










































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Autre Trois 
Des Pluie Troisieme 盗っ人狐
Sideエレン



 「ジョウトにあんなバトルがあったなんてしらなかったよ」
 『トライバトルなんて、カントーには無かったもんねぇー』
 カナちゃん達とのバトルが引き分けに終わった後、オイラ達は一度キキョウの街に戻っていた。だけど、トライバトルで頑張ってくれたニドを回復してもらっただけで、すぐに街を出た。ニアロに乗せてもらって先に進もうかとも考えたけど、それだとやっぱり味気ない気がする…。だからオイラは、そうはせずにまた陸路で進むことにした。
 初めてのルールでしたバトルだったから、何十分も経ってるのにまだドキドキしてる…。バトルの興奮がまだ冷めないオイラは、控えてもらっていたニドとユリンを出してあげた。すぐに野生とかトレーナーとバトルしても良かったんだけど、オイラ達はユリンに友達との激戦を語っていた。歩きながら話していたから、思った以上に先に進むことになっていた。
 『カントーにも? シンオウにも無かったから、私も知らなかったよ』
 『ユリンもぉー? 』
 『うん。エレン、聴いた感じだとマルチバトルみたいだけど、あってる? 』
 「なんかすこしちがうみたいだけどたぶんそうだとおもうよ」
 本当はもっと詳しいルールがあるみたいだけど、カナちゃんのコットが言うには、そうらしいもんね。直接バトルを観ていなかったユリンは、カナちゃんのイグリーと同じ質問をしてきた。確かめるように訊いてきた彼女は、こくりと首を傾げながらオイラに尋ねる。オイラも全部は知らないけど、そうなんじゃないかな、っていう感じで、とりあえずこう答えた。
 『コット君もそう言ってたもんねぇー。あっ、そうだ。折角だから、ニアロも誘って…』
 『へぇー、あんたらも他の地方の出身なんだー』
 あっ、ニドはもう一回トライバトルをしたいんだね? 実際に戦ってくれたニドは、うん、って頷き、オイラに続いてくれた。さっきは引き分けだったから、もしかしたら特訓も兼ねて、ちゃんとした決着をつけたいのかもしれない。ニドに訊かないと分からないけど、オイラはこんな風に予想した。それからニドは、何かを思い出したようにこう声をあげる。オイラの予想は当たっていたらしく、彼はきっと、三にんでやってみようよぉー、って言おうとしていた。だけどそれは、不意にオイラの後ろから割り込んできた声に遮られてしまっていた。
 『ええっと…、きみは? 』
 あまりに急な事だったから、オイラは思わず変な声をあげてしまった。ビクッ、と驚きながらそっちに振り返る。その間に先に気付いていたらしいユリンが、例の声の主にこう尋ねていた。
 『アタイも他の地方の出身でね、訳あってここに来てるって訳さ』
 声がした方に振りかえってみたけど、そこには誰もいなかった。なら何だったんだろう、そう思いながら元々見ていた方に向き直ると、そこにはニドとユリン以外に、もう一つ影が増えていた。彼ら以外のそれは、全体的に黒を基調とした種族…。カントーにはいなかったけど、悪タイプの中では結構人気の種族、ゾロア…。声的に彼女が、すれ違った勢いを弱めながら、明るくこう言ってるところだった。
 『そうなんだぁー。ぼくとトレーナーはカントーの出身なんだけど、このパチリスはシンオウの出身なんだよぉー』
 『カントーとシンオウね。ニドランのあんたの感じからすると、あんた達はまだ新人ね』
 『なんかそうらしいね』
 野生ならバトルを挑んできてもおかしくないけど、このゾロアは違うのかな? 人に慣れてる感じだし…。オイラはゾロアの彼女に対してこう感じながら、ニド達の世間話を聞いていた。ユリンはまだ警戒してるみたいだけど、ニドはもう打ち解けたらしい。野生と思われるゾロアの彼女と楽しげに話している。ニドの口角が上がってるからきっとそう、オイラはこう感じていた。
 『…でもあんたらのトレーナー、鈍感すぎるにも程があると思うわ。新人だから仕方ないと思うけど、アタイがしたみたいに、大切なものをスられても知らないわよ』
 「あっ、それは…」
 えっ、いっ、いつの間に? 和気藹々と話していたかと思ったけど、ゾロアは急に、はぁー、とため息を一つつく。ため息なんかついて、どうしたんだろう、そう思っていると、彼女は呆れたように隠し持っていたそれを取り出す。彼女が右の前足で持っていたのは、野生のひと…、いや、ポケモンが持っていることがあり得ない代物…。プラスチックで四角いケースが握られていた。
 『エレンのバッチケース! 何か怪しいなって思ってたけど、やっぱり騙してたんだね? 私達を騙したなんて…、許さないんだから! スパーク! 』
 『影分身。騙すことなんて、悪タイプの特権じゃない! 悔しかったらアタイから取り返してみな』
 あぁ、これはやられたなぁ…。ゾロアの彼女が取り出したそれが何なのか、オイラには一目で分かった。当然昨日直接見たユリン、ニドも、気がついているはず。本当にそうだったらしく、ユリンがオイラより一歩早く声を荒らげる。警戒していたみたいだけど、そのせいか彼女の中で何かがプツリと切れたらしい。怒りに身を任せて電気を纏い、事の発端のゾロアに突っ込んでいった。
 ユリンに対し、ゾロアの方は、にやりと黒い笑みを浮かべる。正面から向かってきたユリンを、まるで嘲笑うかのように挑発する。ぶつかる寸前で技を発動させ、悪タイプらしく癪に障る言い回しで、こう言っていた。
 『ユリン、ぼくも騙されて悔しいけど、もうちょっと落ち着い…』
 『ニドは黙ってて! 電光石火』
 ニドは怒り狂うユリンを宥めようとしてくれていたけど、どうやら彼女にはその声が届いていないらしい。こう吐き捨てて、怒りの矛先をゾロアに向け直していた。
 『そんなんじゃ、アタイからいつまで経っても取り返せやしないわよ。引っ掻く』
 『きゃあっ』
 だけど、ゾロアは冷静に一歩下がり、右の前足に力を込める。爪を立ててそれを降り下ろし、突っ込んできたユリンを叩き落としていた。
 うーん、オイラもこのまま黙ってるわけにはいかないけど、このままじゃどうにもならないかなぁ…。ユリンのスピードならこのゾロアに勝ってるけど、今のユリンはまともに戦える状態じゃない。ニドは落ち着いてくれてるけど、厳しいかな…。ニドはどちらかというと待ちのバトル。二度蹴りは効果抜群だけど、ニドのスピードではついていけないからなぁ…。…ってことは、オイラの選択肢は一つしかないよね。
 ユリンが戦ってる間に、オイラはこんな風に分析していた。これ以外にもいくつか考えたけど、それも上手くいかなさそう。だからオイラは、最終的にある結論に行き着いた。それを実行するために、オイラは腰にセットしている二つ目のボールを手に取った。
 「ニアロあのゾロアをおさえて」
 『ゾロアを? あぁ、あのゾロアだね? 』
 ニアロの方が相性的には不利だけど、そもそもニアロはオイラ達と身体の大きさが違いすぎるから、あまり関係ないかな? 手元のそれを投げ、オイラはその中のメンバーに出場してもらう。するとすぐに建物でいうとニ〜三階ぐらいの大きな影が飛び出す。戦っているユリン達の上を飛び越しながら、納得したようにこう言ってくれた。
 『えっ、ええっ? うん』
 『なっ、何? まだあんな大きな仲間がいたなんt…』
 『エレン、思いきったことしたねぇー』
 『はっ、放して! あっ、アタイなんか不味いから、食べないで!』
 彼女達を飛び越した白い影は、旋回しながらユリンに言葉を伝えたらしい。テレパシーだと思うけど、その証拠に、ユリンだけが驚きで声をあげていた。それから彼女は、慌てて攻撃の手を止め、すぐにしゃがむ。この時ようやく気がついたらしく、ゾロアは嘘でしょ、と言いたそうに声を荒らげる。当然だと思うけど、いきなり真っ正面から滑空してきた、体の大きいニアロに腰を抜かしていた。そのままニアロは、呆然とするゾロアの彼女の首根っこを口先で軽く咥える。傍から見ると、獲物を捕らえた大型の鳥…。正確にはニアロは飛行タイプを持ってるけど、見た目的に鳥って言えるのか怪しいけど…。文字通り捕らえられたゾロアは、彼? が咥える口元でじたばたしていた。
 『やっぱりニアロって、凄く大きいよね』
 「れきだいのなかではちいさいほうみたいだけどそれでもごめーとるはあるからね…。ニアロありがとう。いつオイラからぬすんだのかしらないけどかえしてもらうよ」
 まぁ、ニアロは元々大きい種族だもんね。ゾロアの彼女を咥えたニアロは、軽く翼を羽ばたかせ、地上に降り立つ。見上げるように高い彼は、かなり低く身を屈め、更に首を下げる。その状態でようやく、彼は咥えていたゾロアを放す。その頃には、彼女は抵抗するのを止め、されるがままになっていた。ニアロが丁度オイラの真上に来るように降りてきてくれたから、オイラが位置を調節しなくても良かった。一メートルぐらい高い位置から落ちてくる彼女を両手で受け止める。すぐに彼女が前足で握っていたカードケースを取り返し、更にこう続ける。抱えたままにする訳にもいかないから、すぐにしゃがみ、彼女を降ろしてあげた。
 『そっ、そんなの、あんたらが無防備でいるから、いけないじゃない。あんたにゃ恨みは無いが…。そっ、そんな事より、ルギアがいるなんて、聞いてないよ! 』
 『カントーとジョウト出身じゃないきみも知ってるなんて、やっぱりニアロの種族って、有名なんだね』
 『だってニアロって、伝説の種族だもんねぇー』
 『だけど、君達よりも大きいだけで自分も一匹のポケモンに変わりないんだから、いいでしょ? 』
 ニアロに捕まってから少し経ったけど、まだ彼女は落ち着きを取り戻してないらしい。衝撃が大きすぎて、肩で荒く息をしている。それでも何とかオイラの問いに答えてくれたけど、それでもまだ、彼女は取り乱していた。だけどやっぱり、彼女にとってはそんな事、どうでもいいらしい。声を荒らげながらニアロの方を見上げ、こう問いただしていた。その彼女が見上げている彼は、全体的に白で、目元とお腹のあたりが青い…。背中と尻尾の先にも青いものがあって、背はオイラが見た感じでは五メートルぐらい。ジョウトだけでなくて、他の地方でも知られている伝説の種族。オイラより二歳年上のルギアが、落ち着いた様子で、彼女にこう返していた。
 正確に言うとニアロには性別は無いんだけど、彼とは三年前からのつき合い。彼と出会う前からチカラは使えたけど、ニアロと出逢ってから、オイラの運命は変わったのかもしれない。ニアロが出てきた時点で分かったかもしれないけど、オイラはカントーの伝説の当事者。四鳥伝説、っていう伝説で、天気に関係がある伝説。オイラ四人…、オイラ達の代は一人欠けてるんだけど、その中では、オイラは雨水の防人っていう位置づけ…。言うまでもないと思うけど、オイラとニアロは雨を司ってる。その関係で、オイラには色んな能力がある。後天的みたいなんだけど、オイラはポケモンの声を言葉として聴くことが出来る。それにただ話せるだけじゃなくて、ブイゼルになる事も出来る。他にも、シキジカに姿を変えれる。…その代わりに、それぞれで二つずつしか技が使えなかったり、制限がかかってる事が多いけど…。でも、ポケモンになれるだけで十分かな。
 「それにニアロもオイラたちのなかまだから」
 『えっ、あっ、あんた、今、ルギアの声に応えた? 』
 『やっぱり君も、始めてだからビックリするよね?』
 オイラ達は伝説の当事者っていう以前に、友達同士だから。年だって近いし。ニアロの言葉にこう答えると、やっぱりゾロアの彼女は凄くビックリして、声を荒らげる。オイラとニアロ、両方の間で視点を行き来させながら、こう問いただしてきた。そこにユリンが加わり、だよね、って感じで言葉を繋げる。この頃には、取り乱していた彼女は落ち着きを取り戻していた。
 「だってポケモンのことばがわかるひとってすごくすくないもんね。…そんなことよりひとのものをとるのはちょっといけないかな」
 『そっ、そんなの、ぼーっとしてるあんたらがいけないじゃない。普段から警戒してないから、アタイに盗まれるんだ。だけど、あんたこそ、すり替えに関しちゃ最強のアタイから取り返すとは、なかなかやるじゃない。…ただ、他人のバトルに首を突っ込むとは、聞き捨てならないね』
 うん、そこは謝るけど、流石にバッチケースは盗まれるわけにはいかないからね。オイラは最初にこう言ってから、逸れていた話を元に戻す。これにゾロアの彼女も、真っ向から対抗してくる。確かにその通りだとも思ったけど、オイラにだって譲れないものがある。それに構わず、彼女もオイラの事を棚にあげる。目には目を歯には歯を…、っていう感じで、こう言い返してきた。
 「ならそのけっちゃくをつけよっか。オイラもわるいことをしちゃったからね」
 『でも、感情的なパチリスのあんたに…』
 「いやオイラがあいてになるよ」
 『えっ、人間のあんたが、アタイに? 』
 「すりかえだとおもうけどゾロアのきみがさいしょにわざをつかったあいてはオイラでしょ」
 バトルではユリンになるけど、ケースを盗んだことを考えると、そうなるよね。少しだけ後ろめたい気持ちになりながらも、オイラは彼女にこう提案する。表情的に彼女はのってくれたみたい。…だけど、ついさっき一戦を交えたユリンを見るなり、こういい始める。彼女は何かを言いかけていたけど、その前にオイラがそれを遮ったから叶わなかった。当然彼女は嘘でしょ、って言いたそうに返す。だからオイラは、彼女が最初にしたと思われることを挙げ、こう訊き返した。
 『それはそうだけど、あんたは一体何を…』
 『これならたたかえるでしょ』
 そういってくると思ってたから、オイラはすぐに目を閉じ、意識を集中させる。この間にも彼女は何か言ってたけど、構わずそれを続ける。ポケモンとしての姿の一つを強くイメージすると、オイラの身に変化が現れはじめる。レンズのピントがずれるように、姿が歪む。ほとんど時間がかからずに、それが収まる。それからオイラはゆっくりと目を開け、ブイゼルとしての姿でこう話しかけた。
 『うそ…、あんた、一体何者…? 』
 『そういえばバトルなのにまだなのってなかったね。オイラはカントーとジョウトの“四鳥伝説”のにじゅうさんだいめ“雨水の防人”のエレン。きみは? 』
 『あっ、アタイはゾロアのヤライ。ここらで化け狐たぁ、アタイの事さ! 』
 化け狐かぁ…。そういえばゾロアの特性って、味方の誰かに化けて戦う事があるんだっけ?
 『ゾロアのヤライだね? わるいけどオイラにじょうしきはつうようしないからかくごしてよね』
 『アタイだって、あんたが人間だからって手加減するつもりなんて、微塵もないわ! 影分身』
 『アクアジェット』
 だってオイラは、二つの種族に姿を変えることができる。他の当事者にもポケモンに姿を変えれる人はいるけど、ユウキさんに聞いた感じだと、二種類なのはオイラだけ…。それにオイラは、片方の姿でそれぞれ二つずつしか技が使えないけど、そのうちの一つずつは、飛行タイプとエスパータイプを使える。ヤライって言ったっけ? ヤライとのバトルではエスパータイプは使わないと思うけど、それでも、全力でいくよ!
 オイラ達はこんな風に簡単に自己紹介してから、互いに睨みあう。それから宣戦布告とも言える台詞を言いあげ、ほぼ同時に動き出す。これがきっかけで、オイラ達のバトルが開戦した。


  Continue…

■筆者メッセージ
シルク『みなさん、お久しぶりね。“絆のささやき”第六十三回目の放送を始めるわね。今回はゲストとのトーク、今回初登場の、ヤライちゃんに来てもらってるわ。ヤライちゃん、今回はよろしくお願いしますわね
ヤライ『まっ、よろしくね! それにしても…、アタイらポケモンになれる人、いたんだね
シルク『ええ。ヤライちゃん、私が知る限りではエレン君以外に、ポケモンになれる人はあと三人いるのよ
ヤライ『そっ、そんなにも?
シルク『そうよ。…ヤライちゃん、あの後の事を教えてもらってもいいかしら
ヤライ『わかったわ。あのバトル、結局決着はつかなかったわ。人間なのに、大したものだわ。勝ってスズカに報告したかったけど…
シルク『そうだったのね。

文字数が迫ってるから、また次回お会いしましょう!
ヤライ『もちろん、アタイとエレンの決着もね!
Lien ( 2016/04/16(土) 23:06 )