Chance Des Infinitude〜ムゲンの可能性〜










































小説トップ
Chapitre Trois Des Light 〜出逢う者達〜
Trente et un 笛が呼ぶヒカリ
 Sideライト



  ライトちゃん、今すぐ来て!

 『っ! 』
 『ん? ライト、どうかした? 』
 回復技の癒しの波動を使い終わったタイミングで、わたしの頭の中に、突然声が響き渡った。心の準備が出来てなかったから、わたしは思わず言葉にならない声をあげてしまった。何とか小さい声に抑える事が出来たけど、一番近くにいたティルには聞こえちゃったらしい。わたしの方に振りかえり、不思議そうにこう尋ねてきた。
 
  新人トレーナーを護りながらだから!

 『ユウカちゃんが、“笛”を吹いたみたい』
 『ふえ…? そんなおときこえ…』
 『昨日渡していた、“夢幻の笛”か? 』
 『うん! 』
 この声の感じ、間違いないよ! ティルの問いかけに、わたしは確信と共にこう言い放つ。テレパシーとは違った感じなので、すぐにそれが誰なのか、わたしには分かった。
 このわたしに対して、シキジカの姿に変えているエレン君は、こくりと首を捻る。だけど春色の彼は、言い切る間もなくラグナに遮られてしまっていた。わたしにしか聞こえていないけど、事情を知っているラグナはこう訊いてくる。渡した時にはいなかったけど、ラグナはもちろん、ティルにラフも事情は知っている。案の定彼は、これだけでわたしが言った事の意味を察してくれた
 ちなみに補足説明を入れると、“夢幻の笛”には、ラティアスかラティオスを呼ぶ以外に、別の効果がある。さっきみたいに、笛の持ち主は笛を吹いている間、相手に声を伝える事が出来る。だけど、声を伝えられるのは笛を吹いている間だけ。わたし達、ラティアスとラティオスは伝える事が出来ない。その代わりに、わたし達はどこで笛が吹かれたのか、察知する事が出来る。
 『って事は、ユウカさんに何かあったんじゃないかな』
 『新人トレーナーを護りながら、って言ってたから、たぶんどっちかと戦ってる最中だと思う。この感じだと…、えっ、繋がりの洞窟? 』
 『あのクズ達と? それに繋がりの洞窟って、すぐ近くだよね? 』
 うん! その洞窟までの距離は正確には分からないけど、キキョウシティから歩いてきた時間を考えると、そのはずだよ! テトラも分かってくれたらしく、予想を交えながらこう訊いてきた。それにわたしは、伝わってきた情報を基に、こう答える。今日の空みたいにモヤモヤとしている部分もあるけど、たぶん間違いじゃないと思う。なので声が聞こえた時の感覚を思い出し、わたしは正確な位置をもう一度探った。だけどその場所は予想以上に近かったので、わたしは思わず声をあげてしまった。そのせいでヤライちゃんとニド君、それからルギアの彼を驚かせちゃったけど…。
 『うん。だからラフ、呼ばれてるから行ってくるよ! 』
 『行ってくるって…、ライトひとりだけで? 』
 『もちろんそのつもりだよ。洞窟とはそんなに離れてないから…』
 『だがライト、お前が行くとお前が…』
 『それは分かってるよ! 』
 『ならライト、俺達はここに残って、エレン君達に就いていればいいね』
 ティル、その通りだよ。本当は皆にも来てもらいたいところだけど、今のわたしは、ラティアスとして呼ばれている。だからラグナの言う通り、わたしが行くとわたしが狙われる。だけどそんな事、最初から分かっている…。だからわたしは、反対するラグナの主張に重ねるようにこう声を荒らげた。続けてみんなに指示を出そうとしたけど、それよりも先にティルが」口を開く。エスパータイプらしく、彼は鋭い勘でわたしの指示を言い当てる。その通りだよ、そう思いながら聴いていると、彼はだよね、と目で聴いてきた。
 『うん。わたしだけ先に行くから…、ティル、ヒワダのセンターで合流しよう』

  もしもの時のために、ユウカちゃんにも話を通しておくから。

  うん。ラグナ達は俺が説得しておくから、行ってきて。…無理だけはしないように。

 それと、エレン君達への事情説明もね。議論の味方に就いてくれたのは今のところティルだけだから、わたしはとりあえず、彼にこう指示を出しておいた。今日の最終目的地はそこだから、言わなくても良かった気がするけど…。だけど、相手が誰なのか、どの組織なのか分からない以上、どうなるか分からない。慎重なテトラじゃないけど、わたしは念のため、彼だけにこう伝えておく。すると彼も同じ方法で、声を伝えてきた。最後に念を押すような声が、わたしの中に響き渡った。
 『行く…? ライト、相手が分からない…』
 『じゃあティル、あとは頼んだよ』
 『うん、任せて』
 『らっ、ライト、待て…! 』
 相変わらずラグナは納得してないけど、わたしは構わずに頷く。エレン君達への説明も含めて、わたしはこの場を頼れるパートナーに任せる事にした。ラグナはまだ何か言いたそうだけど、わたしだってのんびりしていられない。ユウカちゃんを待たせているから、ティルが頷くのを確認してから、わたしは目を閉じる。すぐに光を纏い、“ステルス”を発動させる。その状態で、わたしは呼び出した親友が待つ洞窟に向け、一気に加速し始めた。


―――


 Sideライト



 「…ほう、四年前よりは腕が立つようだなぁ」
 「あの時はまだ新人だった…。四年も経ってるんですから、当然じゃないですか! ツバキは跳んでかわして、クロムは地震で牽制して! 」
 ティル達と別れて飛ぶこと、大体三分。わたしはユウカちゃんがいるらしい、繋がりの洞窟に突入していた。明かりが無いと暗くて見えないけど、それは人間だったらの話し…。ラティアスのわたしは、ハッキリとまではいかないけど、一応見る事はできる。道幅は洞窟らしく、細くて入り組んでいる。ヒワダへは入り口から真っ直ぐ進むと抜けられる、って聞いていたから、たぶんわたしは本道からそれた道を進んでいるんだと思う。洞窟だからズバットとかイシツブテがいるはずだけど、そういうひと達の姿を全く見かけなかった…。そんな違和感を感じながら飛び続けると、入ってから五分ぐらいで開けた場所に抜ける事が出来た。湖…、だと思うけど、壁面の亀裂から差し込む光に、幻想的に照らされている。何もなければゆっくり見ていきたいところだけど、今はそれはできない。わたしを呼んだユウカちゃんは、何者かとの戦闘に入っているみたいだから…。

  ユウカちゃん、お待たせ。

 あぁ、だからわたしを呼んだんだね。姿を消したままのわたしは、壁際の陸地の近くで、辺りをキョロキョロ見渡す。パッと見た感じユウカちゃんは、トレーナー三人を相手にボスゴドラのクロムと、わたしの親友のツバキで応戦しているらしい。丁度わたしが見た時には、クロムが地面を力いっぱい踏み鳴らし、ツバキは三角跳びで跳躍したところだった。
 そこでわたしは、彼女達のトレーナーであるユウカちゃんにこう呼びかける。“ステルス”している状態だから声は出せないけど、その代わりに直接頭の中に語りかけた。
 「あっ、うん。案外早かったね。…ツバキ、クロム、一端退いて」
 『ドラゴンクロー』
 『くぅっ』
 『って事は、ライトが着いたんだね! 』
 『まぁ、それしかないよね』
 もちろん彼女はすぐに気づき、応戦しているメンバーに指示を飛ばす。その間にツバキは、壁を蹴った勢いを利用し、空中で羽ばたくゴルバットに一撃を与えていた。着地したタイミングで振り返り、ユウカちゃんに向けてこう声をあげる。そこにクロム君も加わり、揃ってバックステップで相手との距離をとっていた。

  ツバキ、ユウカちゃん、今はどんな状況?

 『見ての通り、戦闘中だよ! 簡単に説明すると、一緒にいた新人トレーナーと野生のひとが逃げる時間を稼いでいるところ』

  時間稼ぎ、って事かな?

 「ツバキから聴いたね? うん、そういうこと。相手は…、四年前に戦ったグリース、覚えてる? 今は見ての通り、相手はプロテージだけど、その中の一人が幹部。その人が、元グリースのデルタなんだよ」
 グリース…、解散したって聞いてたけど、まだ活動は続いてるってこと? わたしが言葉を念じてこう訊くと、すぐにツバキがこう返してくれた。着地した場所が悪くて足が濡れてたけど、彼女は手短にこう説明してくれた。ユウカちゃんにはツバキの言葉は聞こえてないけど、彼女も追加で話し始める。きっと彼女はわたし達が出逢った頃の事を思い出しながら、相手の事を説明してくれた。

  グリースのデルタかー…。…ユウカちゃん、ツバキにクロムも、手を貸すよ?

 後の二人は普通の戦闘員みたいだけど、相手が幹部だと、厄介だもんね…。だからわたしを呼んだんだと思うし。
 「さっきから何を独りでブツブツと…」
 「じゃあ、お願い! ツバキ、クロム、ここから攻勢に移るよ! 」
 『ライトとの共闘って、いつ以来だっけ』

  ミナモでの任務が最後だったから…

 『三ヵ月ぐらいだね』
 「なっ…、ラティアス? 」
 ツバキ達なら苦戦するはずはない、って思ってたから、やっぱりそういう事だったんだね。ツバキとクロム君を一度下がらせたユウカちゃんは、大きく頷いてから、こう声を張り上げる。それを合図にしたかのように、クロム君はこう呟きながら身構える。体勢を低くしながら、身構えていた。ツバキの状態から何となく想像はできたけど、やっぱり彼女達は本気で戦っていなかったらしい。その証拠に、さっきツバキが一撃を与えていたゴルバットは、若干ふらつきながらも再び羽ばたいていた。
 そこでわたしは、意識を集中させ、羽毛で光を屈折させるのを止める。その瞬間に差し込む光のベールよりも強い閃光が、わたしから放たれる。数秒も経たないうちに雲散すると、わたしは目で見て認識されるようになる。その証拠に、わたしの種族を知っている密猟組織の幹部は、驚きで声を荒らげていた。
 「ツバキ、今のうちに、あれ、いくよ! 」
 『幹部相手なんだから、当然でしょ! ユウカ、頼んだよ! 』
 あれって事は、ユウカちゃん、これから本気で戦うみたいだね。相手が驚き慄いている間に、ユウカちゃんはこう声を張り上げる。彼女はこう言いながら、左の手首に身につけている青いブレスレットをいじり始める。さり気ない行動だったから、多分相手のトレーナーは気づいていないと思う。それにツバキは振りかえり、活発な声で大きく首を縦にふる。信頼した眼差しで彼女に訴えかけると、ツバキは相手の方に向き直る。これからする事のために、目を閉じて精神を統一し始めた。
 「グリ―ス…、いや、プロテージのデルタ、ここからが本番です」
 「そうだとは思ったが、幹部の俺相手に、ナメた口をききやがって…」
 「エクワイルのアージェント、ユウカが、全力で相手します! 」
 そこでユウカちゃんは、目と言葉に力を込める…。相手の幹部は何かを言っていたけど、そんな事は気にせずに彼女は言い続ける。最後は力強く言い放ち、相手に宣戦布告する。そのタイミングで彼女は、いじっていた右手を放し、白い石がはめ込まれた青いブレスレット…、“キーストーン”を高らかに掲げる。するとそこからは、まるで本当の戦闘の幕開けを知らせるかのように、強い光を放って輝き始めた。


  Continue……

■筆者メッセージ
シルク『皆さん、こんばんわ。あるいはこんにちわね。七十回目を迎えた“絆のささやき”、今日も始めるわね。今回のラインナップは、Lienからの告知をお送りするわね。

まだ計画段階らしいけど、Lienは近いうちにちょっとしたクイズ大会を催すつもりでいるらしいわ。問題は、とあるシリーズ、絆の軌跡シリーズ、それからこのCDIかららしいわ。いつになるかはまだ決まってないんだけど、こののチャットを使うかもしれない、って言ってたわ。この機会を期に、Lienの過去の作品を読み直してみるのもいいかもしれないわね。

今回の放送は、ここまでね。また次回、お会いしましょう!
Lien ( 2016/05/28(土) 13:33 )