Chance Des Infinitude〜ムゲンの可能性〜










































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Chapitre Trois Des Light 〜出逢う者達〜
Vingt et quatre ジム戦という名の予備試験
 Sideテトラ



 『じゃあ、そろそろ始めよっか』
 『そう来ないとな! さぁ、楽しいひと時を過ごそうじゃないか』
 ざっくりとここでのルールを聴いた私は、待ってくれていたバルジーナの彼にこう声をあげる。三年ぶりに感じる高揚感を纏ったそれは、広いバトルフィールドに幾多にも響いていく。音とか声は空気が振動して伝わる、ってトリ姉から聞いた事があるけど、訊いてなくても、今回はそれを感じられたと思う。独特な緊張感が私を張りつめさせ、感覚を敏感に機能させていた。
 それに相手は、待ってましたと言わんばかりに翼を羽ばたかせる。威勢よく言い放った彼は、ニ、三度力強く空気を打つ。そうする事で体を浮かせ、士気を高めていた。
 『悪いけど、先手は俺がもらうよ。悪の波動』
 私から見て十メートルぐらい先で羽ばたく彼は、こういう途中で行動を開始する。身体を待っすぐにし、私をの距離を詰めはじめる。同時にエネルギーを全身に集中させ、それを属性に変換する。溜まったらしく、斜め下に滑空しながら、解き放ってきた。
 『戦闘の一発目はやっぱり牽制…。そう来ると思ったよ』
 対して私は、限られた足場の中で、助走し始める。五、六歩走ったところで四肢に力を込め、前、後ろの順に開放する。中でも特に左側に力を集中させ、床を思いっきり押し込む。そうする事で私は斜め右に向けて跳び、別の足場に跳び移る。着地と同時に前脚を屈め、衝撃を逃がす事でしなやかに着地した。
 『流石、エクワイルのメンバーだね。動きに無駄が無いよ』
 『…褒めても何も出ないよ』
 『それなら、意地でも引っ張り出すだけさ』
 何のつもりかは知らないけど、彼はたかが動き一つに称賛の声をあげてくる。標的を無くした黒い波を横目に、彼は反時計回りに旋回。私の追撃を試みようとしてきた。
 その間にも私は、着いていた前足のうち左だけを放し、彼と同じ方向に反転する。彼の正面に向き直り、技の準備を始めながらこう呟いた。
 『どうせ無理だと思うけど、出来たら凄いと思うよ。フラッシュ』
 そんな事を言いながら、彼は足場スレスレまで高度を落とし、滑空してくる。本当はどうなのかは分からないけど、多分相手は、咄嗟にかわさせてリングアウトを狙っているのかもしれない。…なら、相手の思っている事と別のかわし方をすればいいよね。そう悟った私は、予め溜めていたエネルギーを左の触手に集中させる。相手との距離が二メートルまで迫ったタイミングで、それを発光させた。
 『なっ、しまっ…、くっ』
 『おまけのムーンフォース』
 『ぐぁッ…』
 撃ちださずに発光させた私は、すぐに一メートルぐらい跳び下がる。今度は右に妖艶なエネルギー塊をつくりだし、丸く形成し始めた。
 当然相手は、私の予想外の行動に短く声をあげる。私は閉じたから分からないけど、この様子だと、多分激しい光を直視したと思う。その強さのあまり、たぶん彼は咄嗟に目を閉じる。結果的に彼は、敵が目の前にいるにもかかわらず、間接的に目を逸らしてしまっていた。
 だけど、一度スピードに乗ってしまえば、すぐにはそれを押さえる事は出来ない。おそらく彼は、咄嗟に体を反らし、浮上しようとしていたのかもしれない。だけどその前に私に先を越されたので、それは叶わなかった。私の触手で維持されている薄桃色の球体を下の嘴に叩きつけられ、真上に飛ばされていたから…。
 『もう一発ムーンフォース』
 手ごたえはあったけど、ちょっと早すぎたかなぁ…。本当は彼の腹に命中させるつもりだったので、十分にはダメージを与える事ができなかった。それでも多分、七分の一ぐらいは削れたと思う。だけど、このチャンスを生かさない手は無い。本当は触手に溜めて撃ちだそうと思ったけど、それは出来なかった。何故なら、立て続けに二つの技を連発したばかり。右側を振り上げ、意識を遮断したばかりだから、そこではする事ができない。だから私は、その代わりに口元に凝縮させる。五センチぐらいの大きさになるまで溜めてから、それを真上に撃ちあげる。もちろん狙うのは、私に飛ばされた相手…。ガラ空きになった背中めがけて、撃ちだした。
 『そうは、させない。悪の波動…、くっ』
 だけど彼は、タダで受けてはくれなかった。当然と言えば当然だけど、彼はすぐに体勢を立て直す。まずは天井と床との高さのちょうど真ん中ぐらいの位置で、彼は大きな翼を広げる。そうする事で体勢を立て直し、咄嗟に身を翻す。地面と平行に向きを変えながらエネルギーを溜め、すぐに解き放つ。慌てて羽ばたいて逃げたけど、ギリギリ間に合わない。エネルギーの溜めも中途半端だったので、ほとんど空気をかき分けずに雲散する。足にまともに命中していたけど、その甲斐あって多少はダメージを軽減する事に成功していた。
 『まっ…、まさかフラッシュで晦まされるとは…、思わなかったよ。それにこれだけのエネルギーを…、あんな短時間に溜められるなんて…、大したものだよ』
 『それはどうも…』
 本当に、何を考えてるんだろう。…確かに褒めてくれるのは嬉しいけど、戦闘中にする事かなぁ…。思った以上にムーンフォースが効いてるみたいだし…。若干ふらつき始めた彼は、相変わらず私をべた褒めしてくる…。話す声も途切れ始めてきたけど、構わずに称賛を浴びせてくる。無視するわけにはいかないから、私はとりあえずこう返事しておく。相手の様子からすると、たぶんバトルは後半にさしかかっている。勝機が見えてきたから、適当に受け流した。
 『…だけど、俺も負ける訳にはいかないからね…。折角色違いと戦えてるんだ…。滅多にない機会…、だから、思う存分…、楽しませてもらうよ』
 『あんたにそんな余裕があればね』
 ああ言ってるけど、きっとハッタリだね。そんな余裕なんてないはずなのに、彼はペラペラと喋り倒している。昔の癖で色違い、っていう言葉には反応しちゃったけど、すぐに芽生えた想いを押し留める。その間に彼は急降下してきたので、私もすぐに身構える。次にしてくる行動を予想しながら、回避行動に移り始めた。
 『正面から向かってくるなんて、本当に余裕が無くなったみたいだね』
 あのスピードなら、多分相手は物理技を仕掛けてくる…。その証拠に、真っ直ぐ私を見てきている。だからここでかわしてギガインパクトを当てれば、勝てるね、きっと。
 そう悟った私は、すぐに足に力を込める。正面の足場に跳び移り、すぐに向き直る。相手は焦り始めてるはずだから、きっとこのまま足場にぶつかるはず。だからその間に準備すれば、すぐに決着がつく。なので私は意識を集中させ、念のため願い事を発動…
 『さぁ…、本当にそうかな…、ブレイブバード』
 『えっ、うそ…きゃぁッ』
させることは出来なかった。私の予想に反して、相手は弧を描いて追いかけてくる。そのまま技を発動させ、全身に力を込める…。すると相手に淡い光が纏わりつき、更に速度を増していく。さっきの急降下が加速するためだと気付いた時には、もう手遅れだった。
 本当はかわしたかったけど、私は願い事を発動させるために意識を集中させていた。だからそれを途中で止め、足に力を入れるまでにかなりの時間がかかってしまった。そのせいで、私は相手の一撃をまともに食らってしまう。フィールドの真ん中ぐらいを陣取っていたけど、端の方まで飛ばされてしまった。
 『くぅっ…、ムーンフォース』
 『形勢逆転…、だね。悪の波動…』
 『嘘でしょ…? っくぅッ…』
 さらい相手は、追撃してくる。低空飛行しながら、飛ばされる私の後ろを追いかけてくる。その間に地面に叩き付けられた私は、何とか立ち上がり、妖艶な弾丸で牽制を試みる。それに対し、相手もエネルギーを溜め、黒い波紋を飛ばしてくる。これで何とか連続攻撃を避けられた…、そう思った矢先、思ってもいなかった事が起きてしまった。相性では有利なはずのムーンフォースが、悪の波動に撃ち負けてしまう。そのまま黒は消える事なく、私をも巻き込んでいった。
 フェアリータイプと悪タイプでは、私の方が有利なのに…、何で…。衝撃で真上に飛ばされながら考えたけど、その理由が全く分からなかった。おまけに、牽制とはいえ一発目とは比べ物にならないくらい威力が上がっていたので、尚更私を困惑させた。
 『なっ、何で…、悪タイプなのに、何で…! ムーンフォース』
 『ブレイブバード』
 『っ! 』
 どうして…、どうして悪タイプの技が…、こんなにも効くの? あり得ない事の連続で、わたしはもう訳が分からなくなってしまっていた。守りには自信があるから何とか耐えれているけど、さすがにこのままではマズい気がする…。そこで慌てて薄桃色の弾丸で牽制したけど、あっさり突破されてしまう。飛行タイプの中でも上位の技で防がれ、そのまま大ダメージを食らってしまった。
 何で、何で…、なんで…、悪の波動に勝てないの…! フェアリータイプは、悪タイプに強いはず…。一体どうして、ムーンフォースで防げないの?

  テトラ、落ち着いて!

 おっ、落ち着くって、何を…! 私は十分、落ち着いてるよ!!

 今は何も考えずに、回復する事だけに集中して! 相手の罠にはまってるから!

 えっ、ライト? 罠って、どういうこと? とっ、兎に角、このままだと試験云々(うんぬん)の前に、ジム戦の時点で負けてしまう…。それだけは避けたい、絶対に! だから…!
 突然私の頭の中に、ライトの声が響き渡る。その声はいつもの彼女とは異なり、かなり焦っているように感じられた。だけどそのお陰で、冷静に考えられていない事に気がつく。相変わらず足場に向けて落ちてるけど、その後の彼女の指示を認識する事ができた。
 回復に専念するって事は、願い事を発動して欲しい、ってこと、かな。何とか冷静さを取り戻した私は、そう言う結論に至る。足場まで一メートル半の高さまで落ちたタイミングで、私は意識を集中させ始める。叩きつけられて意識がそれそうになったけど、そこは意地でも堪える…。その甲斐あって、祈りのイメージが私を満たし始めた。

  確信は無いけど、たぶんバルジーナはおだてるを発動させてたと思う。その後で自己暗示をかけて、特殊技の威力を底上げしたんじゃないかな?

 おだてる…? おだてるって確か…。…そっか、そういう事だったんだね! ライトに言われて、ようやく謎の現象の原因が分かった気がした。まともな考えが出来ていなかったのは、きっとおだてるの効果のせい…。混乱状態になってたから、ああなってたんだと思う。立ち上がりながらこう結論を出し、私はすぐに上を見上げる。連続で大技をくらったせいで前が霞んできたけど、何とか相手の様子を捉える事ができた。また私に向けて急降下してきているから、たぶん相手はブレイブバードでトドメを刺すつもりなんだと思う。だから私は、咄嗟に四肢に力を込め、近くの足場に跳び移る。危うく落ちそうになったけど、間一髪のところで渡り切る。そこで祈りを天に届け、相手の方に向き直った。
 『ぅっ…! まさか…、かわされるなんて…』
 『ちゃんと考えれば…、すぐに、分かるよ…、追撃してくる事ぐらい…』
 本当に仕留めるつもりだったらしく、相手は頭から足場に突っ込んでいた。もしあの時かわしてなかったら…、絶対に耐えられなかった。内心ホッとしながら、彼のセリフにこう返事した。
 『私を混乱状態にして…、ミスを狙うつもりみたいだったけど…、もう通用しないよ! 』
 立て続けにこう言っている間に、どこからか光が差し込んできた。それは私を優しく照らし、つかの間の安らぎを与えてくれる。心なしか重かった体が、何となく軽くなったような気がした。
 『くっ…、バレた…、か…』
 ふらつきながらも立ち上がった彼は、チーゴの実を噛んだ時みたいな表情をしていた。悔しそうに私に目を向ける。肩で息をしながら、こう呟いていた。
 『だけど…、きみももう限界のはず。だから、これで…、決めさせて、もらうよ。…ブレイブ…、バード』
 『私だってそのつもりだよ。…ギガインパクト』
 この時、私と相手との距離は、大体五メートル。彼は最後の賭け、っていう感じで、私よりも先に行動を始める。動き始める、って言って言うよりは、技で無理やり動かした、って例えたほうが正しいかもしれない。技の勢いに、全然力がこもっていなかった。
 それに対し、私も大技を発動させる。全身に力を溜め、タイミングを伺う。目で距離を測りながら、射程に入るのを待つことにする。本当は助走をつけた方が勢いを乗せれるけど、その分反動が大きくなる。あいにく今の私は、完全な状態じゃない。我が儘を言うと、もう一回願い事を発動したかったけど、その前に相手が勝負をかけてきた。だから私は、走らずにギリギリまで引き付ける事にした。
 『これで…きめる! 』
 『うっ…』
 『っぐぅっ…』
 五十センチのところまで迫ってから、溜めていた力を爆発させる。後ろ足で」
思いっきり足場を蹴り、前に跳びだす。頭も低くし、衝撃に備える。ちょうど両足が離れたタイミングで、それぞれに標的を捉える事になった。その結果、私達は反対方向に飛ばされる。一瞬目眩がしたけど、そこは何とか堪える。何とか耐えれたけど、着地には失敗してしまった。受け身さえ取る事ができなかったので、思わずむせ返りそうなる。足場に叩きつけられることになったけど、辛うじて意識は保つことができた。
 『なっ…、何とか…、耐えられた…、かな』
 正直言って意識を保つだけでも辛いけど、まだバトルは終わっていない。相手の状況がまだ分からないから、何としてでも立ち上がららないと…! そう自分に言い聞かせ、必死に足に力を込める。上手く力が入らなかったけど、とりあえず、立つことだけは、出来た。
 薄れる意識の中で辺りを探ったけど、相手の姿を見つける事ができなかった。視界がぼやけているせいで、見つけられなかっただけかもしれないけど…。
 「バルジーナ、戦闘不能。…よって勝者、ニンフィア。これにより、ホウエン支部、キュリーブのライトを合格とする」
 「やった。テトラ、ありがとう。お疲れ様」
 『終わったん…、だね…』
 って事は、勝ったんだね、私って…。朦朧とする意識の中で、それだけは聞き取る事ができた。その瞬間、安心したせいで体の力が抜けてしまう。意識を失う事は無かったけど、こんな風に、力なく言う事しか出来なかった。

 …だけど、何とか勝てて、良かった…。




 Continue……

■筆者メッセージ
シルク『みなさん、こんにちは。あるいは、こんばんわね。“絆のささやき”、記念すべき五十回目の放送を始めるわよ!思い返すと早いわね。主人公がふたりっていうのもあるけど、三章の序盤で五十話にいくなんて、かなりだと思うわ。

さて、今回の内容は一つ。バトルの後であった事を話すわね。

ええっと、私が行った時にはもうライト達はいなかったんだけど、あの後でちょっとした書類に記名したらしいわ。ハヤトさんが言うには、その記名以外にも必要事項を書いてもらって、データとして管理するらしいのよ。それをID化する事で、他のジムでの試験結果と照合するらしいわ。戦う側も大変だけど、情報を管理する側も大変なのね。

…あっ、そうそう。これはちょっとした余談なんだけど、ジムリーダーのハヤトさん、スクールの教師も兼任しているそうよ?

今回はこの辺りで終了ね。また次回、お会いしましょう!
Lien ( 2016/04/16(土) 16:14 )