Chance Des Infinitude〜ムゲンの可能性〜










































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Chapitre Trois De Cot 〜繋がる者達〜
Trente et cinq 氷華の主張
  Sideコット



 『コット、大…、丈夫そうだなぁ』
 『うん。新しい技、使えるようになったから、そのお陰でね。ニトルさんとフィルト君は? 』
 『僕も問題なく倒せたね』
 フィフさんから教えてもらった目覚めるパワーが完成したことで勝利したぼくは、戦っていた相手がボールに収まったタイミングで、ホッと一息つく。目覚めるパワーは使うひとによってタイプが変わる、ってフィフさんがいってたから、ぼくのはなにになるんどだろう…。そう考えていると、通路の少し奥の方からフィルト君が話しかけてくる。きっと彼は、属性相性が悪いけど、上手く戦っているだろうか、そう思っていたのかもしれない。だからぼくはこくりと頷き、だから心配しないで、っていう感じでこう答えた。それからぼくは、フィルト君とはまた別で戦っていたニトルさんにも、こう話しかける。ニトルさんだからやられることはないって思ってたけど、相手がいかにも強そうな種族だったから、すごく気になっていた。だけど僕の心配は杞憂だったらしく、彼は明るく答えてくれた。どこか物足りなさもあったような気がしたけど、彼はそれなりに、バトルに満足している様子だった。
 「ふぅ。何とか倒せたし、先に外に出ていよっか」
 『先に出る、っていうよりは、脱出の方が正しいと思うんだけど…』
 後半の方はほとんどぼくの独断だったけど、カナも安心したように息を一つはく。戦っていた密猟者達が逃げていくのを横目で見てから、目線で出口の方を指す。今回はさすがに、目的を忘れてなかったらしい。だけどそこはカナ…、若干方向がずれた発言に、ぼくは思わずため息をついてしまった。
 『まぁどっちも出ることには変わりねぇーんだし、気にする事は無いんじゃねぇ―の? 』
 『そうだね。じゃあフィルト、コット君も、カナさんはもう歩きはじめてるし、僕達も行こっか』
 『あっ、はい』
 いつもの癖だけど、やっぱり考えすぎだったかな…。こう言ったぼくに対して、フィルト君はあっけらかんとした様子で声をあげる。体の大きさの違いのせいかもしれないけど、彼の声はこの洞窟の中に響き渡っていったような気がした。そんな彼はぼく、それからニトルさんにこう訊くと、ぼくよりも先に彼が口を開く。一人で先走っているカナ、それからぼく達の方に視線を泳がせながら、こう促す。もう一度カナの方に視線を向けてから、彼はねっ、って付け加えていた。
 それにぼくは、ちょっと考え事をしてたから反応が遅れちゃったけど、とりあえずこう頷く。この間に二トルさんは三歩ぐらい進んでいたから、慌てて彼らを追いかけた。
 『そういえばコット君、さっき新しい技を使えるようになった、って言ってたよね』
 『うん。従兄弟に教えてもらったんですけど、さっき使えるようになったんです』
 『従兄弟って、確かエーフィだったよな』
 うん、教えてくれたのって、エーフィのフィフさんだし。ぼくが追いついてから大体五、六歩、出口まで四十メートルぐらいのところまで来たタイミングで、二トルさんは思い出したように、あっ、ってこう声をあげる。隣で走るぼくに、徐にこう尋ねてきた。それにぼくは首を縦にふり、そうだよ、って感じで答える。するとフィルト君が、二トルさんに続いてぼくに質問してきた。
 『うん。まだ属性は分からないんですけど、目覚めるパワーです。あの色からすると多分水か氷タイプのどっちかだと思うんですけど、ひとによって属性が違うんですよね』
 『まぁな』
 『目覚めるパワーかー。目覚めるパワーといえば、シルクさんとフライさんを思い出すよ』
 『確かフライさんは…』
 「うぅ…。やっぱり、ずっと暗い所にいたから、眩しいや…」
 そうこうしているうちに、ぼく達は薄暗い洞窟から曇り空の屋外に出てきていた。ぼくはそれまでに、予想を交えて目覚めるパワーについて話し始める。フィフさんに教えてもらう前から知ってたけど、とりあえずぼくはふたりにこう訊いてみた。するとふたりは、それぞれこんな感じで答えてくれた。目覚めるパワーっていう技で何かを思い出したらしく、二トルさんは少し上を見上げ、そのひとの事を思い浮かべているらしい。シルクさんってことは、まさか…。彼の一言によって、ぼくの中にあった何かがピッタリとはまったような気がした。やっぱり、ぼくの従兄弟のエーフィと、二トルさん達の師匠のエーフィは同じひとだったんだ! 電流にも似た何かが頭の中を駆け抜け、思わず声を上げそうになったけど、それが声になって出ることは無かった。カナの間の抜けた声によって、ぼくとフィルト君は遮られちゃったから…。
 「プロ…、何だったっけ? まぁいっか。洞窟から出れたし、もう出しても大丈夫だよね。イグリー、お待たせ。ラプラスも」
 あぁやっぱり、プロテージの事も忘れてる…。そんな気はしてたけど。眩しそうに右手で目を覆っていた彼女は、その手を腰のボールに手をのばす。イグリーが控えるそれと、一時的だからまだ野生の扱いだけど、ラプラスの彼女が入ったそれ…。二つのボールを、器用にも右手だけで握っていた。そしてそれを前に投擲し、中の彼らを出してあげていた。
 『結構かかってたみたいだけど…、あれ、君は? 』
 『えっ…、イーブイ君、これって…』
 『洞窟の中で色々あってね、訳は後で話すよ。それからラプラスさん、このピジョンはぼくの仲間。二トルさんとフィルトさんはもう一人のトレーナーのメンバーなんだけど、一緒に旅をしてるんだよ』
 あっ、そういえば、イグリーは洞窟であった事、知らないんだよね。ほぼ同時に飛び出したふたりのうち、イグリーは不思議そうに首を傾げていた。洞窟に入ってからはボールの中だったから、ラプラスのこの子のことは知らないのも無理はない。彼女が目に入ると、不思議そうにこう尋ねていた。
 それに対してラプラスの彼女も、イグリーと似たような反応をしていた。洞窟の中では見覚えのないピジョンが同時に出てきて、結構戸惑っている様子…。若干オロオロしながら、ぼくにこう訊いてきた。
 だからぼくは、初対面のふたりを簡単に紹介する。いつでも話せるイグリーへは後回しにして、先にラプラスの彼女に、こう説明してあげた。
 『えっ、まぁ、そう言う事だね。おれは見ての通りピジョンのイグリー、よろしく。コット、ボールから出てきたって事は、このラプラスも仲間になったんだよね』
 『あっ、よっ、よろ…、しく? 』
 『ううん、ラプラスさんはまだ違うよ』
 イグリー、急に話しかけるからラプラスさん、戸惑ってるよ…。ぼくの簡単な説明で分かってくれたらしく、彼はなるほどね、って感じで彼女を見上げる。するとそのまま、砕けた笑いを浮かべながら話しかける。本当に急だったから、ラプラスの彼女はどうしたらいいかわからないみたいで、目をあちこちに泳がせている。まだ野生って事になってるけど、スルーする訳にはいかないからこう答えた、彼女の様子が、僕にはこう見えた気がした。だからぼくは首を左右に振り、まだそうじゃない事を教える事にした。
 『えっ、違うの? でっ、でも…、おれと一緒に出てきたよね』
 『そうだけど、一時的だから。さっきも言ったけど、訳は後で話すから。…ごめんね、驚かせちゃったね』
 『ううん、わたし、気が小さいから…、気にしないで』
 まだ会ってからほとんど時間が経ってないけど、そんな気がしてたよ。相変わらず、イグリーはビックリし過ぎだけど…。
 『そっか…。ねぇラプラスさん? 一応洞窟から出れたけど、これからどうするの? ヒワダタウン側に出て来ちゃったから、海までは結構距離があるけど…』
 ラプラスさん、群れからはぐれたって言ってたから、もう一回キキョウ側に出たほうが良いよね?
 『だから、カナに頼んで洞窟の反対側に行ってみる? 向こうに出てからは一匹になるかもしれないけど』
 はぐれたのは四日前って言ってたから、いる可能性は少ないと思うけど…。イグリーの事は置いとくとして、ぼくは気になる事があったから、恐る恐る彼女に声をかけてみた。この場所だと海までは遠いと思うけど、きっと彼女にとってはこれがいいはず…。そう考えながら、ぼくはこう提案してみた。提案してみた、けど…。
 『折角四日ぶりに誰かと会えたのに、もう独りにはなりたくないよ!
 『えっ? 』
 『いっ、今、何て』
 ぼくの予想とは、全く逆の答えが返ってきた。大声で答えた、っていうのもそうだけど、ぼく、それからイグリーも、思わず変な声をあげてしまう。聞き違いじゃないよね、そう心の中で問いただしながら、彼女の方をハッと見た。あまりにも大声だったから、二トルさんとフィルト君もびっくりしてたけど…。
 『あっ、でっ、でも、別にずっとここにいて、っていう意味じゃないからね!』
 彼女自身もびっくりしたらしく、そわそわした、そして必死な様子でこう取り繕おうとしていた。
 『…それなら、ぼく達と一緒に来ない? きみのこと、もっと知りたいし…。それと、ぼく達と一緒に旅をしていたら、いつかきみがいた群れともまた会えるかもしれないでしょ』
 …えっ?
 正直言って、こう言ったぼくが一番驚いていた。こう思ったのは嘘じゃないけど、本当は言うつもりは無かった。だけど、ぼくの口からは、気がつくとこんな風に言の葉が解き放たれていた。
 『…いいの? 』
 『うん! 同じ探すなら、一匹よりもみんなの方が、楽しいでしょ? イグリーも、いいよね』
 『もちろん! 歓迎するよ』
 『じゃあ…、よろしくね』
 『こちらこそ! 』
 イグリーもこう言ってくれたから、決まりだね! 彼はにこっ、と笑顔を浮かべ、こう答える。それに彼女も、直ぐに応える。にっこり笑いながら、明るく答えてくれた。これは後で気づいたことだったけど、これが、ぼくが初めて見た彼女の笑顔だったかもしれない…。当然ぼくも朗らかに返事する。そのすぐ後で、ぼくの右前足、イグリーの右脚、彼女の右の前鰭…、三つの色が一つに重なった。


 …こういう出会いも、あるんだね。
























―――

  Side???



 「───様、試作段階ですが、例のモノが完成しました」
 「でかした。これさえ完成すれば、ついに────が手に入る。ここまで下衆共を蹴散らしてきたこの私も、とうとう頂点に立てるのね…。…お前ら、実験体の居場所は突き止めているわね? 」
 「はい。邪魔が入り捕獲は失敗しましたが、自然公園にて存在は確認出来ました」
 「ならお前ら、明日、作戦に移るわよ! 」
 「御意」




     Chapitre Trois 〜繋がる者達〜 Finit

■筆者メッセージ
シルク『皆さん、こんばんわ。あるいは、こんにちわね。“絆のささやき”今回も始めるわね。七十三回目の今回は、本編の補足をお送りするわね。

コット君がゴルバットとデスマスと戦っている裏で、ニトル君は幹部のドンカラスと、フィルト君はイノムーと戦っていたそうよ? ニトル君は冷凍ビームを中心に使って戦った、って言ってたわ。フィルト君は相性が不利だけど、火炎放射とかドラゴンクロー、だったかしら? 兎に角威力で圧してかったそうよ。フィルト君のドラゴンタイプは氷が弱点だから、もしかすると適度な距離をとりながら、だったかもしれないわね。彼は近接戦が得意みたいだから、ちょっと苦戦した、って言ってたわ。

ええっと、今回はこんな感じかしら? また次回、お会いしましょう!
Lien ( 2016/06/04(土) 20:41 )