Chance Des Infinitude〜ムゲンの可能性〜










































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Chapitre Trois De Cot 〜繋がる者達〜
Trente et quatre 不利なバトル
 Sideコット



 「ちっ、ガキのクセに…。エアカッターで応戦しろ」
 「まだ新人だからって、甘く見ないでください! スピードスターで決めるよ」
 『くっ…、エアー、カッター』
 『プライズみたいに強いかと思ったけど、それほどでもないね。スピードスター』
 正直言って、拍子抜けしたかな…。湖の方から脱出してきたぼく達は、一応順調に出口に向かっていた。…向かってはいるんだけど、途中で追いつかれちゃっている。出口はもう百メートルぐらい先に見えてるけど、少し前からバトルが始まっている。フィルト君とニトル君は、いかにも強そうな飛行タイプのひとと、その部下のメンバーと戦っている。だからぼくは、余った、って言ったらいいのかな、一番若そうなトレーナーのメンバーと戦ってる。今のぼくの相手はゴルバットなんだけど、この感じだともうすぐ決着がつくと思う。向こうは飛んでるから、必中技のスピードスターで攻めて、近づいて来た時は電光石火で先手を取る…。こんな感じで、ぼくは相手を追い込んでいた。
 話に戻ると、相手のトレーナーは一度舌打ちをすると、少し焦った様子で指示を出す。それに対してトレーナー戦の経験があまりないカナは、たぶん今までにない高揚感を感じながら、こう声をあげる。こんな事を思う時じゃないけど、ぼく自身もバトルに手ごたえを感じていた。気分的にも余裕ができてきてるから、こう言いながら黄色い星を四つ解き放った。
 「電光石火でかわして! 」
 『なっ、防がれ…』
 『真下がガラ空きだよ、電光石火』
 『ぅっ、っく…』
 ぼくの流星と相手の空気の刃は、丁度真ん中ぐらいでぶつかる。だけど完全には防ぎきれなかったから、斜め上から飛んでくるそれを、技を使ってかわす。だけどそれでだけだとチャンスを生かせない気がしたから、そのまま相手に狙いを定める。技を維持したまま後ろ足に力を込め、一気に解放する。そうする事で斜め上に跳び、勢いを弱めずに思いっき突っ込んだ。その甲斐あって、意識が薄れかけていたゴルバットを倒すことに成功した。
 「くっ…、嘘だろ…。デスマス、お前が頼りだ」
 『うん。…でっ、でも、イーブイが相手で勝てるの? 』
 えっ、あっ、あのひとの種族、初めて見た…。相手の密猟者は、この様子だと本当に追い込まれているらしい。悔しそうに声をあげながら、気を失ったゴルバットをボールに戻していた。その後彼は、すぐに次のメンバーを出場させる。腰にセットしているボールの数からすると、多分このひとが最後だと思う。どんな種族なのか、種族名も属性も分からないけど…。
 「どんなポケモンかは分かんないけど、とりあえず電光石火で先制攻撃して」
 「鬼火で迎え撃つんだ」
 『うん。先制技だし、一歩リードできるもんね。電光石火! 』
 『えっ…、うん。それなら』
 カナも、この種族は知らないはず…。だから彼女も、とりあえずいつも通りの戦法で攻めようと思ったらしい。ぼくもそのつもりだったから、何のためらいも無く、頷いた。いつもの様に、まずは大地を駆け抜けるイメージを膨らませる。それをもとに前足、後ろ足にも力を溜める。そして最後に、溜めた後ろ足で思いっきり地面を蹴り、駆けだす。この時、ぼくと相手との距離は大体五メートルぐらい。その距離を、発動からたった二秒ぐらいで駆け抜けた。よし、先制攻撃は成功した。この瞬間、ぼくはこう確信した。でも…。
 『えっ、うそでし…』
 『もしかして、僕の種族を知らない感じ? 鬼火』
 『あっ…つぅッ…』
 勢いよく跳びかかった、けど、当たった感じが全くなかった。確かに相手を捉えたはずだけど、何故かぶつかった時の衝撃が無かった。まるで最初からそこに相手がいなかったような…、そんな感じ。ぼくは技を当てたはずなのに、相手の体をすり抜けてしまった。
 ぼくの技が外れたその隙に、相手はすぐに反撃に出る。たぶんぼくの方に向きを変え、エネルギーを溜める。無防備なぼくの背中に、弱い炎を打ち込む。当然ぼくはかわす事ができず、まともに食らってしまった。
 「えっ、外れた? なら今度はスピードスター」
 『いたぁッ…、うっ、うん。スピードスター! 』
 背中がヒリヒリしてきたけど…、今はそんな事、気にしてる暇はないよね。全然想像いてなかった事だったから、カナは当然びっくりしたような声をあげていた。だけど彼女は、それでもすぐに指示を出してくれた。スピードスターは必中技だから、今度こそは命中するはず、カナは多分こう思ったんだと思う。ちょっと取り乱してはいるけど、何とか立ち直っていたみたいだった。
 だからぼくは、少しだけ顔を歪めながらもエネルギーを溜める。背中がヒリヒリしてあまり集中できないけど、そこは無理やり技を準備する。幸い相手は何も仕掛けてこないから、何とか発動させる事はできた。だけど…。
 『まさかとは思ったけど、キミって本当に僕の種族の事を知らないんだね』
 『えっ、絶対に当たるはずなのに、外れた? 』
 嘘でしょ? スピードスターまで当たらないなんて…。ぼくの口元から離れ、四つに分かれた黄色い流星は、真っ直ぐ相手の方に飛んでいった。やった、今度こそ当たった、そう思ったんだけど、その思いもすぐにかき消されてしまう。洞窟の空気をかき分ける星は、そこに何も無かったかのように通り過ぎる。対象を無くした四つの星は、相手の一メートルぐらい後ろでぶつかり合い、跡形も無く消えてしまった。
 「うそ…、スピードスターも当たらないなんて…」
 「どうだ? ゴーストタイプのデスマス相手では、お前のイーブイでは手も足もでないだろう」
 『ゴーストタイプ…、だから、電光石火もスピードスターも当たらなかったんだね』
 『まぁそう言う事だよ。その分、僕も手も足も出ないのには変わりないんだけど』
 そっか、ゴーストタイプはノーマルタイプの攻撃が効かない。逆にノーマルタイプもゴースト技ではダメージをうけないから…。ぼくの技が立て続けに外れた事に満足したらしく、相手のトレーナーは急に上から目線でこう言ってくる。悪役らしい笑みを浮かべながら、ぼくたちの事を嘲笑う。ちょっとイラッとしたけど、そのお陰で何で攻撃できないのか、分かった気がした。
 そう分かった時、ぼくはある事に気がついた。もしかすると、相手もぼくと同じ状況なのかもしれない。って事は、相手が使える技はゴーストタイプだけ…? だから、攻撃してこないんだね。でもそれは、ぼくも同じだよね。だって今ぼくが使える技は、ノーマルタイプの電光石火とスピードスター。他の属性は砂かけが使えるけど、これは補助技…。ぼくも相手も、攻撃したくても出来ないもんね…。
 ん、でも待って? もしかすると、攻撃できるかもしれない! 向こうも攻撃が出来ないんなら、溜める時間は十分ある。ニド君達と戦った時は失敗しちゃったけど、もしかすると、今度は完成させられるかも! 相手が攻撃してこない、って分かってるんだから!
 あれからバトルが停滞していたけど、その時間のお陰で、ぼくはこの状況を変える案を思いつくことが出来た。成功する保証はないけど、ものは試し…。こうしないと話は進まないから、ダメ元で試してみる事にした。
 『ええっと、確か…』
 ぼくはあのフィフさんの従兄弟なんだ…。従兄弟のフィフさんが使ってるんだから、ぼくにも出来るはず。いや、フィフさんも進化する前はイーブイなんだから、ぼくにだって絶対に出来る! ぼくはこう自分に言い聞かせながら、技のイメージを膨らませていく。フィフさんからは概念? みたいなものしか教えてもらってないけど、その通りにしていく…。イメージするのは、ぼくの奥の方にある、潜在的な何か…。それと合わせてエネルギーを蓄える事で、技に変換する。
 『…この感じ、いける! 』
 スピードスターと同じような感じで口元にを集めると、その通りにエネルギーが集中し始める。薄い水色のエネルギー体が、ぼくの口元に現れる。前に試した時はここで失敗したけど、今はエネルギー体が弾ける様子もなさそう。それどころか丸い形で安定し、透き通った青い輝きを放つ…。今いる場所が洞窟だから、この輝きがより一層際立っているような気がした。
 「コット、それってもしかして…。…きっとそうだね! コット、そのまま相手に当てて! 」
 『うん! 』
 この薄い青の輝きに気付いたらしく、カナは嬉しそうにこう言ってくれた。ぼくもまさか出来るとは思ってなかったから、こんな状況だけどかなり沸き立ってきた。だから彼女の声にこう答え、相手に狙いを定める。そして…。
 『フィフさんに教えてもらったこの技で、きめる! 目覚めるパワー』
 技を維持した状態で、ぼくは相手に向けて駆けだす。この瞬間、相手は一瞬狼狽えたような気がしたけど、ぼくは構わずに距離を詰める。二メートルまで近づいたところで、喉に力を入れる。咳をするような感じで、薄水色の球体を撃ちだした。
 『そんな近…、くっ…! 嘘…』
 「よし、当たった。ならもう一発、目覚めるパワーをお願い」
 『やった、できた! もちろん、目覚めるパワー』
 「なっ、そんな技を隠し持ってたのか」
 ぼくのは何タイプかは分からないけど、少なくとも格闘タイプではなさそうだね。目の前まで近づいたから、ぼくの攻撃は今度こそ命中、そこそこのダメージを与える事に成功した。まさか成功するとは思ってなかったから、命中した事よりも成功した事への喜びの方が大きかった。これでまた一歩、フィフさんとニトルさんに近づいたかな、そう思えたような気がした。
 『目覚めるパワーを使えるなんて…、聴いてないよ』
 『だってこの技は、ついさっき出来るようになったばかりだから! もう一発』
 『うぅっ…、これは、やられたな…』
 ここまで来たら、もう勝ったも同然だね! ぼくがこんな風に攻勢に移っても、相手は何もしてこない。だから本当に、相手はゴーストタイプの攻撃技しか使えなかったのかもしれない。そうぼくに思わせるほど、相手は無抵抗。技を出す事もかわす事もしようとしない…。それが本当であるかのように、相手のトレーナーも頭を抱え、やられた、って言いたそうな表情をしていた。


  Continue……

Lien ( 2016/05/30(月) 22:03 )