ファイル_01 ストーリー
出会い
 まだ人が動き始めぬ、太陽の光が差さない時間。けど、この時間からすでに起きて何かしている人、寝ないで夜中中に何かをしていた人、色々ところで人々は一日を始めている。布団の中でモコモコと動いている、この女性もそうだ。
 名前は『ルテア・シャトルテ』と言い、 26才のサーナイト。職は無職だが、働いたことが無いわけでも無く、止めたくてやめたわけでも無い。ちゃんとした理由があって、長年続けていた仕事を辞めたのだ。

 その理由とは...


「......んっ...どうしたのニアちゃん...寒いから中に入りなさい」
 扉を開けて入ってきたチョロネコのラシャニアで、年齢は11才。今はこうして一緒の布団に潜り込む程までになったが、初めて会ったときはそこまで近い関係では無かった。寧ろ無かったと言うべきかもしれない。
 改めてそう思いながらシャトルテは自分の布団の中へ誘い、寒い空気を遮断する。

「どうしたの?」
「...怖い夢...見たから......」
「...そう......」
 少々震えて、冷たくて小さな身体を包み込むように抱き、ラシャニアの震えが収まるまで頭のてっぺんと耳の間を撫でながら抱き続ける。どうやらそうされるのが好きで気持ちいいらしく、気が付けば小さな寝息を立てて眠りの世界に入っていた。やっぱりまだ幼い子供だ。因みに女の子なら、自分の年齢プラス3才精神年齢が高いというデータが出ていて、それが本当なら精神年齢は14才。中学生の2年生か3年生と言うとこだろうか?
 けどラシャニアはそんな事は無い。寧ろマイナス3才だろう。何故ならこの子は、最初に述べた通りに孤児院に居た子で、孤児院とは両親が居なくて身寄りが無い人が引き取られる場所であるからだ。

 何故居ないか...それは5年ほど前まで遡る必要がある。


 とある某所にあるラシャニアの家で火災事故があった。原因は放火...しかも未だにその犯人は捕まっていなく、未だのうのうと生きているだ。火が放たれたときに家の中に居たのはラシャニアとその両親が居た。
 普通なら直ぐ逃げれたであろう。けど、放たれた時間が運命の分かれ道だった。放たれた時間...それは太陽が昇り始めて徐々に明るくなる早朝だったから。つまり、3人とも寝てたのだ。
 更に早朝だったせいで近隣の住人も起きていなくて発見が遅れた、消防隊が直ぐに駆け付けられなかった等が重なり、全焼したからだ。全員死亡...最悪な放火事件かと思われたが、この家には地下室があったのだ。物を払いのけ、なんとか中に入って見ると、そこには死んでしまった両親を抱いて泣きじゃくるラシャニアの姿があった...。地面の焼けた跡を見る限り、両親は『守る』や『サイコキネシス』を使かって、ラシャニアを火から必死に守るために力を使い果たして死亡した判断された。しかも地下室は閉鎖空間であったため、火が回れば...3人とも焼け死ぬか二酸化炭素中毒で死んでいるからだ。けど、不幸はこれだけじゃなかった。
 救助された後、ラシャニアが待っていたのは両親が居ないという現実と身元情報の喪失による孤独。身元情報は各自自分で保管し、病院などの医療関係に行く場合に必ず必要な物だった。しかも発行は生まれたときの一回のみで、その身元証明書は両親の情報と自分に関する全てが書き記されている。
 両親の名前、現住所、そしてラシャニアの血液型、体質、アレルギー...なにより両親の手形判子と字である。それ以外にも両親の形見やら『何か他の物があるのでは?』っと思うだろうが、火事で全焼し、辛うじて残ってたのは地下室...しかも、基本的にどの家庭でも食料庫として使っているのが普通だった為、それ以外の物は置いていないのだ。

 つまりラシャニアは両親を無くし、形見もなく、自分という社会的存在と居場所を失ったのである。

 では、行き場も居場所も無い子供はどうなるのか。そう、上で言っていた孤児院という場所に連れて行かれる。孤児院は親が居ない子供に変わって学校の授業を受けさせたり、なによりメンタルヘルスの安定を優先させる。けど、そんな事は出来るはず無い。心の声に直接語りかけられないし、受けた傷は簡単に修復など出来ないからだ。


 けれどたまに、そのような心の叫びを強く感じて読み取れる人が居るときが居る。そして語りかけられる人が。それが偶然にも孤児院の横を通り掛かったシャトルテが持っていて、とても大きな悲しみと恨みに引かれ、訪れた。
 用件を話して中へ通して貰い、想いのオーラを辿ってドアを開けると...大粒の涙を流し、声が漏れないように口元を抑えて泣いているラシャニアが居た。そして、次に私がした行動...

「...こんなにツラいこと...耐えれるわけないよね......。 ...両親と身元を証明する物も火事と共に無くされ、名前も違う名前を付けさせられた...ラシャニア......」
 っと、強く抱きしめながら言った。ラシャニアっと言う名前は戸籍上の本当の名前で、今の名前はクリスタと言う違う名前を付けさせられていた。当然そんな事を普通知ってるわけじゃなく、全くの初対面。
 自分の身に起きたことを理解してくれた、これだけでもラシャニアは大きな衝撃と感情が爆発した。包まった布団をはぎ、正面から抱き付いてシャトルテの胸の中で泣き始めたのだ。
 そして、一言...










「...この子を、私の手で育てても良いですか?」
 ラシャニアの運命が明るい方へと傾いた瞬間だった。

ティア ( 2015/10/20(火) 14:01 )