第一章
悲劇の後に
 ...ここは...どこだろう......死んだ...の、かな...。......でも、柔らかい何かの上に乗っていて...暖かくて......気持ち良くて...。

 ...あれ...あたし...なにしてたんだっけ......だめ、思い出せない...。


「......お......な...」


 ...あれ...今何か聞こえた気がする......気のせいよね...。


「...ね...て......が...」


 ...やっぱり...なにか......聞こえる...?
 ...それにコレは...すすり泣く...声?
 ...いったい何に...泣いているのかしら...?身体を動かせれば...良いけど......生憎感覚が無い...麻痺...かしら...


「.........さ...ねこ...る...ち...。 ......ル...ど...」
「...と......ぼ...よか...。 ...と.........ね...」


 ...なんか......色々声が...。どうにかして...気が付けさせられれば......けど、動けない身体に何が出来る?動かせない口や目で何が出来る?
 ...意識はハッキリしてきた...と思う。耳はダメだけど...。


「...た...そろ......きま...。 ...ル......こと...ま......」


 ...なんだろ、この声...どこかで......。なんか、記憶が...うん、まるでバラバラになったパズルみたいで、ちゃんと思い出せない...。
 ...この声は...確か......。


「......たわ...。 ...きお......え......このは...」


 ...この...は...?
 ......なんだろ...なにかが.........あっ!!
 そうだ、この言葉...いや、この名前はあたしが知ってる人の名前!!
 

 ...全部思い出した。あたしは最深部にあると噂があった深緑のダンジョンに行った。そして、間違えてモンスターハウスに足を踏み入れて...追われたんだ。
 ...あっ!じゃああの子は!?あの子はどうなったの!!?


「っ!? ......し...が...!! ...らて!!すい...ちゅ...い!!」


 ...なんか、凄いバタバタし始めた!?それに、あたしの身体を揺らすのは誰!?
 ...よく分からないけど、気付かせるなら今しかない!


「.........この...は...」
「っ!? ...い...たし...だ!!」
「......らて!! ...か...ほう......きて!!」


 呼吸で無理矢理声を出した。その時ふと出た言葉はコノハ...それは私の友達の名前...。
 揺らしているのは誰か分からないけど、何故かそんな感じがした...。
 でも結果、あたしの意識がある事には気が付いてはくれたみたい。たぶん...慌てようがちょっと違うような気がしたから...。


「...か......やく...しゃ...ます!」


 私の首が横に曲げて、何かしている。何故か一瞬痛みがあったから、多分コレは注射...果たして何を打ち込んだというの?
 ......あれ、急に身体の感覚が戻り始めた?...指先がだんだん動かせるように...。まさか、強心剤とか打たれた...?


「......だ...しょう。 ...れば...の女は...覚ま......う」
「...とに? ほ...ルナは...るの?」


 この声...やっぱりコノハちゃんだ!っと言うことは...私、助かったんだ......。


「......ほぼ...題ない...しょう。 ...分でルナさ...は目を...でしょう」


 さっきよりは聞き取れる。それにびっくりする速度で身体の感覚が戻ってる。起きようと思えば起きれるはず...なら......。


「...コノっ!?...ハ。...そこに...はぁ...はぁ...居るの...?」


 起き上がろうとした瞬間に凄まじい痛みの稲妻が駆け巡ったけど、お構いなしに私は身体を起こす。ゆっくりと目を開けていくと、涙で顔をグチャグチャにした親友...いや、家族とも言うべきリーフィアのコノハの姿があった。


「ル...ルナちゃん...。 くずっ、るなちゃぁぁぁんうぁぁぁぁん!!!!」
「...ごめんね。心配かけて...ホントに...ごめんね......。 もう、一人でダンジョンなんかに行こうなんてしないから...」
「いいっの...ぐすっ...ルナちゃんが...ひっくっ...生きててくれただけで...ぐすっ...」
「ありがと...ほんとにごめんね...。 ...あの、私を助けに来た女の子のピカチュウさんは...?」
「フォルちゃんね。大丈夫。 ...確かに傷は多かったけど、ちょっと早めに回復したわ」
「...会わせて下さい。わたし、あの子にお礼を言いたいから...」
「......あの子軽くトラウマ状態なのよ。 ...それでも、良いかしら?」
「はい」
「...分かったわ。 あっ!まだ動いちゃダメよ。まだ全然完治してないし、強心剤とその他混合薬で動けてるんだから」
「無理しちゃダメ...」

 私の手をぎゅっと握って、起きようとするアタシを制止した。それもまた涙を流しながら言われた物だから...

「...分かったわ。 でも、私のせいでピカチュウさんがそうなったなら、謝りに行きたくて......」
「え、どういうこと? 聞かせて貰っても良いかしら?」
「はい...。 実はアタシ...モンスターハウスに足を踏み入れちゃったんです...。対処せずに逃げたところに、ピカチュウさんが来たようで......。悲鳴を聞こえたときには倒れてて......だから私のせい...」

 私が行かなきゃこんな事も無かった...自分の目的で周りを巻き込むなんて...最低な人だ......。
 そして、あの時と何も進歩してない...自分のことを優先して、後で周りに大きな迷惑と不幸を振りかける...。

「...そう。 じゃあルナちゃん、一つ質問させて。何故一人で深緑のダンジョンに乗り込んだのかを」
「...えっ、あ、はい。 理由は...」



ばんっ!!



 話そうとしたとき、とある子が入ってきた。息を切らし、けど呆然とした様子で私のことを見る人物。
 それは私が一番会いたかった人物、そして会いに行こうとした人物......



「ピカチュウさん...」

ティア ( 2015/10/06(火) 16:44 )