第一章
過去
「さて、フォルちゃんにとっては二度目だと思うけど、ルナちゃんには初めての事だろうから色々説明を挟むわよ。 まずギルドの存在意味について。ギルドは素材採取、捜索願い、そして救助依頼と新規開拓、異常調査などを主な活動にしているの。採取と捜索願い、救助依頼は分かるだろうから割愛するけど、新規開拓と異常調査を説明するわ。 まず新規開拓。コレは誰も行ってないところに出向き、調査してレポートを出す事よ。レポートによっては何か作る場合もあるし、危険なら封鎖することもある。 次に異常調査。その名の通り、異常が観測された地域や外部からの情報提供、新たなダンジョンが現れてしまったときに調査する。あと、この世界全体で起きている異常現象を日々集め、調査するのも重要な役割よ。 長くなったけど、こんな物かしら?どちらにせよ二人にはまだ行かせられないから、記憶の片隅にも今の話を覚えておいて」
 入った途端にまさかそんな長話されるとは思ってなかったわ...。フォルさんもこの話を最初に聞いたのかしら...。

「...さて、前振りが長かったけど、こっから重要よ。貴方たちには実験を、兼ねてこのバッチを使って貰うわ。ギルド協会から届いた最新の探検隊バッチよ」
「さい...しん? ...あの、私が最初貰ったのとほぼ変わりないのですけど?」
「そうね。変わったのは重さ位じゃないかしら? このバッチの機能は...使って確かめるべきね。じゃあ二人とも手を繋いで、バッチを天に向けてみて?」
 疑問符を浮かべながらも、フォルさんは言われた通りバッチを天に向けた...けど、何も起きない。
 ...この動作が何を意味するのか、聞いてみようと口を開こうとしたとき、追加が入った。

「そのままギルド帰還と言ってみて。 その後はココに戻ってきて。最後に話あるから」
「戻ってきてって...あの、いったいどういう意味です?」
「フォルちゃん、やってみれば分かるわよ。 さ、繋いで、向けて、言ってみて」
「はぁ....えっと...ぎ、ギルド帰還!」
 そう唱えた途端、周りの風景がグニャッと曲がり、色が抜けて白黒だけになり、真っ暗になる。そして、数秒後に急激な減速感を感じると、無くなった色が戻り始め、視界がクリアになる。

 ...今、経ってる場所って......中央広場?私達さっきまでリーフさんの部屋の中に居たはず...。
 どうやら、フォルさんも状況を理解を出来ていないようで、周りをグルグルと目視確認していた。

「私達は...なんでココに......? さっきまでリーフさんの部屋に...」
「んー、仕組みは分からないけれど、テレポートしたと言った方が速いんじゃないかしら? つまりコレがあれば、危険なときに帰ることも出来るし、救助人を安全に連れ帰ることが出来る...ってところじゃないかしら」
「テレポート...凄い......。 あっ、戻らないと」
「あっ、だったわね。 行きましょ、フォルさん」
 そう言って私たちは走って中へ入り、先程まで私達が居たところへ戻る。するとニコニコした顔で待ち構えたリーフさんの姿が......。

「どう? びっくりした?」
「しましたし、なんか...飛ばされる時に視界がグニャッとして変な感じでした...」
「なるほどね。 取りあえず私が言いたいのは、コレを使えばほぼ一瞬でギルドに帰れること。コレによって目標達成した帰りは安全に帰れるってわけ。 さて、最後に...貴方達のチーム名を決めて貰うわよ」
「チ、チーム名...ですか......。 ルナさん何かありますか?」
「えっ.......ソウルズ、とか? 消え尽きない想いと心、繋がりって意味で。本当の意味は魂... だけど」
「ソウルズ...純粋で良いかもしれませんね」
「じゃ、それで良いわね? ...ソウルズっと」
 って、はやいはやい!?なんか書き込んでハンコ押してるし!?
 ...あれ、フォルさんは平然な顔をしてる...そっか、毎回こんな感じなのね...。...そのうちアタシも驚かなくなるのかしらね......。

「...よし、登録完了よ。実質新規登録みたいな感じだから、フォルちゃんがこなした依頼数はリセット、再スタートよ。 でも、2人で1つクリアすれば直ぐにブロンズランクへ上げられるように申請しておくから安心して」
「あ、ありがとうございます!」
「ありがとうございます」
「お礼は良いわよ。 あ、因みに今日はもう夕方だから依頼は受けられないわよ。明日頑張って頂戴ね」
「「はいっ!!」」
 ...明日、ね。コレから今までと違った生活が始まる...そう思うとやっぱりドキドキとワクワクする。けど、異常調査...コレはちょっと怖いわね。でも、するときはもっと私達は強くなってるはずだから問題無いかもしれない。

「ルナさん?」
「...あっ。では、失礼致しました。 ...ふう、やっぱりギルドの親方だけあって緊張するわね......」
「私は緊張する前に...色々ありましたから、そんな事は無かったですけど、やっぱりそんな感じなのですか?」
「そんな感じと聞かれてもそうしか答えられないわよ...」
「あ、ごめんなさい...」
「謝られても困るわよ...。 ...そうだ、唐突だけどココのギルドを案内してくれない?お世話になる施設はちゃんと知っておきたいから」
「へっ? あ、分かりました。じゃあ...まずは依頼を受ける場所を案内します。玄関を入って直ぐの右側の壁に貼り付けてある紙が依頼書で、受付は直ぐ横に座ってるマリルリのニュークさんに言えば依頼を受けることが出来るようになります。 次に食堂。食堂は玄関入って右奥の部屋。ココで朝と夜のご飯をそろって食べてます。 次に玄関入って左奥は大浴場。注意なのがご飯前は男子女子の区別関係なく入れること。ご飯後は男子禁制になるんです。やっぱり恥ずかしいと思う人が...居るから......///」
 あ、貴方がそうなのね...口走りそうだったけど、なんとか口をゴニョゴニョで済ませられた...。
 男子禁制...たぶん、なんだかの事件が起きちゃったのかしら?それともそんな意見を尊重して?どちらにせよ私は気にしないから良いけど。









 ...いや、慣れさせられたが正しいかもしれない......。










「...あっ、そう思えばルナさんのお部屋...どうするか聞いてなかったですね...。ちょっと聞いてきます」
「あっ、良いわよ。コノハちゃんの家に泊めて貰ってるから。 ...それとも一緒に、1つの布団でくっついて寝る?」
「な、なにいいい言い出すんですかっ!!?/// そんな事出来るわけ無いよ!!///」
「ふふ、じょーうだんよじょうだん。 ところでどう?少しは緊張取れた?」
「えっ? そう...ですね、取れたかと...うん、思います」
「よかった。...そう思えば、フォルさんって何歳? 私は16よ」
「...11です......」
「11才...5才差!? ...ひ、人は見かけによらないってこの事ね...。わたし、同年齢か1個下かと思ってたわよ...。でもなんか、見直しちゃった。11にしてはこんなに大人しくて礼儀いい人、初めてみた。 そっか、守りたいと思ったのはそう見えちゃったのもあるかもしれないわね。それと、改めるとなんかお姉ちゃんになった気分ね」
「...おねぇ...ちゃん...か......ぐすっ...」
 ...えっ、ちょっ、ちょっと待って!?なんか変なこと言った!?何で泣いた!?
 えっーと...と、とにかくなぐさめなきゃ!

「ご、ごめんフォルさん! なんか悪いこと言っちゃったなら謝るわ御免なさい!」
「...いえ、離ればなれになってしまったお姉ちゃんと...くずっ...年齢も一緒と思ったら...なんか涙出てきて...」
「そう...。もしかして、お姉ちゃんは私と同じ色違いブラッキーだったの?」
「はい...正確にはお姉ちゃんなってくれた...私は元々捨て子。しかも、まだ物事が分からない時に拾われたんです。 けど私が11才を迎えて、いつも通りに川へ水をくみに行ったとき...私達の運命は変わってしまった...」
「...なんか、事件があって庇った...そんな感じなのね?」
「はい...いま...どこに居るのかな......。 実は私がギルドに入った理由、お姉ちゃんを探す事の他に、最大の理由でリーフさんのお陰があるんです。さっき言ってた記憶黙読者という物がなければ、私はこの世には存在していなかったかもしれないのですから...」
「色々あったのね...可哀想に...。 ...わかった、ちゃんとなれるか分からないけど、一緒に見つけるまでお姉ちゃんの代わりになってあげる。良いかしら?」
 とっさに考え出たのはフォルさんのお姉ちゃん代わりになるという案。姿も一緒、年齢も一緒、性格は...違うかもだけど、元気になってくれるのは変わらないはず......。

「...お姉ちゃん......お姉ちゃん!」
「ひゃうっ!? えっ!?えっ!!?///」
 急にアタシへ飛び込むフォル...思考が追いつかないで勢いのままに倒れた。周りからの視線がなんとも痛いような気もする...けど、なんか温かい視線も感じる...。
 思考が追いついたとき、アタシの身体は背中が地面に付いていて、フォルの身体はアタシのお腹の上...見事に挟まっていた。動こうとしても、四足歩行の者はひっくり返され、お腹側に乗られると全く身動きできない欠点を持つ。
 ...あれ、コレって...やばいんじゃ......。

「...えっと......フォルちゃん? 退いてくれないと、アタシ動けないんだけど...///」
「.........あっ! ご、御免なさい私ったら! ...ホントに...御免なさい...///」
「い、いいわよ.../// ...ねえ、場所変えない? なんかココに居づらい...///」
 気が付けばみんなじっと私達を見ている...いつの間にかにリーフさんも居るし......///
 そのやりとり後、私達は逃げるように外へ出て人目の付かない場所まで走って向かった。人が居ない場所に来て、改めてフォルちゃんの行動を振り返って、見て、分かったことがある。














 人を思う気持ちはどんなことよりも強く、切なく、苦しいということを......

ティア ( 2015/10/12(月) 15:35 )