序章
日々のお礼
 ココはとある場所にある、渓谷で四方を守られた小さな町。この町は約50人ほど住み、申し訳ない程度のギルドに行くための通りを挟んでお店が4軒ほど建ち並んでいる。それぞれ説明すると、カクレオンが営む道具屋、デンリュウが営む食べ物屋、個人のお手紙やギルドのお手紙を担当している郵便屋、そして主にギルドメンバーがお世話になるガルーラおばちゃんの倉庫屋。

 後は家が建ち並ぶだけの簡素な町...けど、私はココが好きになった。





 好きになったというより、私は元々ココの住人ではなく、他所から逃げてきた。逃げてきた理由...それは私が冤罪で追われていたから。

 内容は殺人...けど私はやってない。っと言っても、ギルド会には私は殺人の罪として『お尋ね者』扱い...だから、どんなこと言っても信じて貰えることは無く、どこの町に行っても追われ、攻撃され、自分のランク上げの為、自分の評判上げの為、鬼の形相で捕らえようとし、犯罪者、お尋ね者呼ばわりをする。

 もう限界だった、心身共に。一度身投げを考えたほど私は追い込まれていた。そんな時だった、ココの町にたどり着いたのは。

 隠れるように私は町の中にゆっくりと入っていった。通りには当然のごとく人が居て、子供が友達と共に走り回ってたり、木陰で昼寝してる人が居たり、談話してたりして、どこの町でも同じだった。

 因みに私は怖くて結局隠れて様子を覗っていた。もう何度も襲われているから、足が固まって動けなくて、怖くて... 出ようと思っても隠れて見ていた。

 そして、そんな時だった。私の運命が変わるきっかけになったのは。



「...貴方、どうしたの? その傷といい、汚れといい...」



 そう、私の後ろから現れたベイリーフのリーフ...現、私が所属してるギルドの親方だった。リーフさんはこの日、忘れ物を取りに家に戻ってきたけど、その家の角で砂埃と毛並みに血が混じった私を見つけ、話しかけてきた。

 因みにこの時点で私がお尋ね者リストに入ってる事は知っていたが、気づかない振りをしていたらしい。そして逃げる素振りや、仕掛けてくるよな仕草をしたら即刻に蔓のムチで縛り上げる予定だったと聞いた。

 でも、当の私はそんなことを思っていると思っているはずは無く、やっと純粋に話しを聞いてくれそうな人が現れたと思っていた。



「...色々あったんです。 貴方こそ...この、犯罪者呼ばわりしてる私に何か...用があるのですか?」



 この時、まさか私の口から出た言葉がこの言葉だとは自分でびっくりした。それはリーフさんも同じようだったようで、声に出さないものの「どうして?」と思ったらしい。あと、私はゆっくりと両手を前に突き出して、手錠を付けるときに要求される事も一緒にしていたから、リーフさんは私に他のことが絡み付いてると早急に判断したとも教えてくれた。

 つまり、その読みが無ければ普通に捉えられ、死を待つだけの存在になっていた...本当に感謝しきれない。



 長い沈黙の後、リーフさんから出た言葉と行動もまるで昨日のように覚えてる。ツタを出して、私の腕を掴み、逃げれないようにすると思ってけど、突き出した私の手を下ろさせた。私は困惑しながら「...どうして?」と尋ねると、何も答えずに私に近寄って抱き寄せてくれた。

 とても...暖かった......私はその中で数分間泣き続けた。辛さを全部受け止めてくれたようで、言葉無くても伝えられたような気がして、嬉しくて...。







 その事もあって私はこの町のギルドに所属している。リーフさんやギルドのみんな、そして温かく迎え入れてくれた町のみんなに恩返しするように。

 みんなのお陰で私が居る、そう日々感謝しながら私は日々の依頼をこなしている。本当の犯人が捕まること、殺されてしまった人の冥福を祈りながら......。

■筆者メッセージ
単発で投稿していた物を移動させただけです
ティア ( 2015/10/05(月) 19:42 )