接触 - 中編
Side ???
「.........っという事なの」
「...そっか。自分を鬼にして、早く終えるためにやっているだけの事で、しかも立案者は???さんなんだ。つまり、騙す側を騙したって事だね。それで、ついでに探りを入れてみても何も無かったと...」
「ええ。でも、その事より...」
「言わないで、でしょ。分かってるよそのくらい。誰の影響か、悪化したのか分からないけど、ちゃんと自分の体力やスタミナを考えるならね。でも、一つだけ答えてくれないかな」
「なに?」
「どうして.........のに、正常で居られるかを」
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Side フィリア
...おかしい。ココまで何も無いなんて、怪しすぎる。それに、かれこれ五分くらい歩いても終わりが見えないのはいくら何でも大き過ぎる。ループしてるなんて考えにくいし、そうだとしたらリアンにも合いそうな気がするし。
「なんか、急に不安になってきたわね。ちょっとリアンに電話でも.........リアン? そっちは大丈夫?」
『ん? 大丈夫って何かあったん? コッチは何もあらへんね...ココまで何も無いと記憶違いな気がしてきたで...』
「そっちもなのね、じゃあ一回合流しましょ。そうしたら.........待って、なんでもう居るのよ」
『居るって、どういう...えっ? ど、どうなっとるん?』
待って待って待って、だいぶ歩いた筈なのに少し向こうにリアンが見えてるわけ?
「...まさか、進んでるつもりが全く進んで無かった? いや、確かに歩いた感覚は...」
『僕も全く分からへん...なんだか狐につままれたような感じやなぁ...』
「.........リーフ、ちょっとシャインを転送して欲しいんだけど」
『えっ、転送ってまさか...』
「ええ、まさかよ。ウィアちゃんのようにギアのコアシステムとして管理させる。そうする事で壊れるギリギリまでスキャンを強められるから、周辺の全体スキャンが強力に出来る」
『で、でも僕はまだコアプログラムの分離が...』
「ああそうだ...やろうとしたら急用で止めたんだったわね。そしたらシャイン、そっちでアタシのギアを遠隔操作って...出来る?」
『か、確認してみる.........うん、一秒以内のディレイがあるけど、行ける! デベロッパーパッケージを読み取って、カスタマーサービスの通信を二つだけ専有すれば! 因みに一つはネットワークバーストの切り替え、もう一つは僕が送受信する操作通信用だよ』
「ぐぬぬ...使いたくないけど、仕方が無いわね」
「うーん、途中から聞いてたけど、何言っとるかまったく分からんかったわ...」
狐につままれたよう...その言葉にアタシはギアでリーフを呼び出す。呼び終えて少し話していたら、いつの間に苦笑いしながらリアンが私の目の前に立っていた。まあ、内容についてはそこまで難しい言葉は含んで無かったりするけど専門内容が混じったから、分からなくなるのは仕方ないわね。
「いや、逆に専門用語まで理解が出来て、意見あったら驚くところよ。気を使わせちゃって御免なさいね」
「別に謝らんでもええよ。それで...なにか決まった感じなん?」
「ええ。一言で言うとギアをギリギリまで強化して、この辺り周辺をスキャンするつもりよ。まあ、もしかしたら使った後にギアが壊れるかもしれないけど」
「え、それって大丈夫なん...?」
『それは僕が調整するから大丈夫...だと思う』
「ん? えっと、君は誰や? 声だけしか入っとらんみたいやけど...」
「声の主はプログラムだった時のウィアちゃんと同じようなAIで、シャイン君って言うのよ。だけどウィアちゃんのような汎用的過ぎる機能はバッサリ切られて、オペレート専門になってるけど」
『専門と言うより特化したと、言ったところでは? 改めて、オペレーターのシャインです!』
「へぇ...えっと、宜しく? やで!」
『よ、宜しくお願いします!』
「さてと、自己紹介も住んだところだし...シャイン、頼んだわ」
『はい、ではまずは.........システムコントロールズ、アクティブラインチェンジ、カスタマーサービス。アクションポート...クリア。キャリブレーション.........クリア。現在フィリアさんのギアは僕の一部になりました』
「それじゃ任せたわよシャイン」
端末に点滅するボタンをタップして、操作を全てシャインに委ねる。すると途端にスキャンモードが発動して、進行度を示すプログレスバーと断片的なスキャン結果を表示してくれた。
「さて、たぶんアタシは動けないからリアンは二人のところ戻ってて。場所は覚えてるわよね?」
「覚えとるで。じゃあまた後でやな」
「ええ」
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Side リアン
さてと...間違いが無ければコッチやね。元々曲がるところは一つしかないんやし、間違える事はありえへんね。確かもう少しくらい歩けば.........ココやね。あとはこのまま道なりに進んで歩いていけば.........。
「...ん、おかえりなさい。あれ、フィリアさんは?」
「フィリアさんなら、スキャンで動けんらしいから、先戻っといてと言われたんや」
「そうですか...」
「ところで、僕らが居ない間ってなんか話とかしたん?」
「な、何でですか? 何もしてないですよ」
「そうなんか...学者の感ってやつがな、どうも二人が合ってるようにしか思えへんのや」
「な、なるほど...」
「ん? なんか、変な気ぃーするな。エルザさんは会ったままの様子やけど、ちょっとホッとしているような顔をしとるような気もするわ」
「...何が言いたいわけ」
んー、なんか反応がおかしい。考えすぎかもしれへんけど。まあええか、なんだかあんまり探りを入れん方がええかもしれんな。
「いや、ただ単に会話しとったんかなって聞いただけやで? 話したなら、僕も混ざって会話したいと思っただけやで? それに僕は本の情報じゃなくて、直接聞きたいんよ。やっぱり気になるやん」
「本以外の情報? ん、一部だけ故意的に隠したところはありますけど、それ以外は隠さずに、なるべく記載してますよ」
「一部って、なんや?」
「一言で言えば個人情報や、凄い人達の事...て感じでしょうか。流石にそれを書き入れるのはどうかと話になって、止めておこうと至ったわけです」
「あー、それはアカンやつやね。でもかなりの強力な助っ人みたいに感じに表現されとったり、理由があったりとか、色々あったみたいやね」
「色々あって、予想より太くなったのが悩みだったけど...うん、みんな読んでくれたし、初めて置かせてもらった場所なんて、一ヶ月近く誰かしらが読んでたくらいだし、そこの店長がok出さなきゃ、みんなが手にとって見るのは相当先になってただろうし」
「へぇー、やっぱ色々あったんやなぁ...。やっぱり、本を出すとなったら、認めてもらったりせーへんと駄目やなぁ...」
「うん? その言い方だと出したかった本があったみたいな感じだけど?」
「そうなんやけど、どうしても専門的になりすぎて、その手の人じゃないと読めへんのよ。僕はどうしても誰でも読めるように纏めるのが苦手なんや.........」
「見せて」
「...えっ、えぇ?」
知り合いに見せた事があったけど、専門的過ぎて良く分からない言われてもうたし、何を伝えたいのかがフワフワしてるとも言われたこともあったしなぁ...。
そんな当時の状況を思っていたら、エルザさんが動かしてる手を止め、僕の前まで歩いてきた。何かと思ったら見せての一言...え、見てくれるの?
「もう一度だけ言う。あるなら見せて」
「う、ううん。ちょっと待ってな.........コ、コレなんやけど?」
最初は冗談かと思ったんやけど、もう一歩前にグイッと言われて、持ってきたバックから資料を手渡した。そして手渡した資料を開いてる机に並べて、すごい真剣に読んでくれた。なんだろう、すごく嬉しいんやけど、なんだかくすぐったいような気もする。読んでもらうってこういう事なんやろか...。
それからどのくらいだったくらいやろか。エルザさんは小さなため息のような声を出して、渡した資料を返してきた。しかも新しい紙に添削済みで.........えっ!?
「ま、纏まってとる!? この短時間で、しかも伝えたいところしっかり伝えてくれながら、読みやすくて...エ、エルザさんこれは一体どういうことなん...」
「...読んでて、どうしたいかなんとなく分かったから、要点だけ書き加えて変えただけ。にしても属性を纏った石...やりようによっては抽出する手段さえあれば純石に出来たり、大きさによっては進化に使う進化石や、イーブイなどの種族なら種族を変えたり、あとはめざめるパワーの属性を変えられるかもしれないわ。なかなか面白いし、書籍化されたらもっと詳しく読んだり、知りたいわね。ありがとうリアンさん」
「.........君って、そんなに話せたんやね。びっくりしてもうたわ」
「あっ...」
な、なんか別人のように語りだしたからびっくりしたけど、そういう人なの...かな?
割と研究者ってそういう人が多いみたいやし...だけど、エルザさんはそんな雰囲気じゃない気がしてきた。それに話してる間はツーンとした顔じゃなくて、優しそうな感じで話しやすそうな感じになっとるし…。
「...今のは忘れて」
「えっ、あー...研究者としてあるあるのやつやな? 僕もそうなったりするから、気にしてへんよ」
「.........」
「さてと...だいぶ休んでもうたから、僕達は奥の部屋で続きをやって来るで。ウォルタさんは申し訳が無いんやけど、ここで待っとるかフィリアさんのとこに行ってて貰ってもええか?」
「あ、うん。なら...フィリアさんのところ行ってくるよ。じゃあまた後で...かな」
「うん。すまへんな.........さて、やり始めよう。この薬が作れれば色んな人が救われるのだから」
ーーーーー
Side フィリア
『.........スキャン終了。レポートエクスポート』
「ん、やっと終わったようね。まさか立ちっぱなしで、身動きが出来ないとは...」
『ごめんなさい...フィリアさんを軸としてマップを作成開始してちゃったから、動いちゃうとマップがズレちゃって.........』
「謝らなくてもいいわよ。それで、説明をしてもらえる?」
『は、はい。スキャンの結果だけど、確かに怪しい空洞というか、通路のような物を発見しました。方角も間違ってなかった、けど...』
「けど?」
『な、なんというか...違和感が.........ごめんなさい、なんだかうまく言い表せなくて...』
「言い表せない...その箇所は?」
『突き当りから先の、通路のような物の先...どこに繋がってるんだろうって』
「ん? 言い表せてるじゃない。もしかして、疲れた?」
『疲労感などが存在するなら...そうなの、かも。ともかく、えっと...その違和感の先に何があるか、調べなきゃかな...』
「そうね。...ん、ウォルタ君どうしたのよ?」
「研究するから、ちょっと追い出されたような感じ...ですね。それで、何か分かりました?」
「ええ。やっぱり通路のようなものがあったから、今からそこに突撃するつもりよ」
「そっか...じゃあ早く調べて、流石にそろそろ戻らないとね。ギルドに話を通してもらってるけど、戻らないと」
「ええ...。アタシも流石に長く拘束は出来ないわ。そっちギルドも色々と大変だろうし」
「所属というか、活動拠点にさせて貰ってるが正しいですね。だからその恩返しとして依頼とかをクリアしないと」
「.........ウォルタ君。やっぱり、調べるのはアタシがやるわ。説明も兼ねて、ウォルタ君はギルドに戻って」
「え、でも...」
「アタシは現状は基本フリーなの。だけどウォルタ君はそうも言ってられないんでしょ?」
「そ、そうだけど…」
「アタシは潜入捜査は慣れてるから、ね。ウォルタ君を決して弱いだとか、足手まといとか思ってなんか居ないけれど、これ以上に拘束しちゃうと流石にギルドから連絡が来るし。ああそうだ.........シャイン、リアンに渡したギアをパーソナルセッティングとファーストキャリブレーションをやって、アタシのアドレスを入れて、もしリアンが上に戻って自分のギアが操作範囲内になったら設定を吸って、付けさせたギアに設定して元のギアは初期化。っで、リアンのギアは監視対象に設定と常時カスタマーの回線を一つ割り振っといて。もし何か言われたらフィリアにやれと言われたと」
『あわわわ...』
「それとウォルタ君のギアに、サービスエリア外でギアを使用する場合、ウォルタ君のギアを親機として接続する機能をアンロックしといたわ。ちょっとしたトランシーバーに近いかも知らないわね。スキャンモードも引続き使えるから、上手く活用して」
「う、うん...」
「ばーっと話しちゃったけど、以上よ。じゃあ各自解散ってこと...あー、シャイン。悪いけどウォルタ君を地上までナビゲート宜しく頼むわね。一気にお願いしちゃったお返しに、なりたいと言ってたウィアちゃんみたいに汎用的で動けるよう、拡張してあげるから」
『い、いえ! 僕は元々そのような設計で作られてるし、それは開発が大変だと思うし...』
「良いから良いから。それにお礼は快く受け取っておく物よ。じゃあウォルタ君、連れ回しちゃって...悪かったわ」
「あっ...」
なんかこのままだとずっと話しちゃいそうな気がしたから、ちょっとだけ強引に話を切って、アタシは駆け出した。なんだかウォルタ君ってすごく話しやすいのよね...一緒に居て、なんだか楽しいし、居心地が良い、みたいな.........なんだろ、このモヤモヤ。リファルと初めてあった時のような...