繋がり - 後編
Side ソープ
「むむむぅ...やはり病院だけあってセキュリティが硬いですね...」
『それは当然ですよ。なんたって命に関わるデータも入っているかも知れないから。僕もネットワーク探査してて凄く怖いですし』
「確かに少しでも間違えたらロックダウンで何も出来なくなりますからね...」
『そ、それもそうだけど...うーん』
「あれ、なんか間違ったことを言いました?」
『い、いえ、間違っては無いのですが....って、うん? あれ、ここのルートって...あれ、アクセスが出来た?』
「ぎ、疑問系って事は...どういう事です? 見せて下さい」
シャインさんの出来たけど、疑問系で、不思議そうな言葉に、キーボードから手を離して結果を見せてもらう。すると画面にはログが表示されて、最後の文字は"Access success"と認証成功との文字。普通だったのなら素直に喜んでいましまけれど、やはり疑問系な言い回しに私は疑問を抱いていた。そう思ってログを辿ると、確かに制限が緩くてすんなり行けたようなログがあって、周りはガチガチなのにここだけスンナリだと疑問もそうだけど不安も出てくる。
ありそうな事と思えば、今アクセスできたルートは罠で、そこから処理をすると検知されるとか。ライトさんの自宅に巡らされてるセキュリティネットワークにも同じようなものがあって、しかも中枢とも言える最深部にあるものだからタチが悪い。うっかり辛い防御は超えたんだと思って抜けたら袋のネズミ...うん、そんなことを考えるとココのルートは避けた方が得策ですね。
「シャインさん、やはり他のルートで...って、あれ?」
『ソープさん、どうやらこのルートは誰かが仕掛けたバックドアだったみたい。だからこんなにすんなりと中枢まで行けちゃいました』
「...えっと、じゃあ用が済んだら封じておかなきゃですね。それと、もしかしてビデオログはダウンロードし終えた感じです?」
『いえ、あと少しで.........はい、指定日時の指定エリアまでとカウセリングルームの防犯カメラ映像をダウンロード完了。フォーマットの書き換えを実行後、対象者シルクさんだけの映像を抽出して連結を開始っと。早く終わらせる為にリソースを9割近く使いますので確認を』
「えーと...許可っと。では任せますね?」
『はい! 後は向かったウォルタさんとフィリアさんに報告をするだけかなと。だいぶ絞ったデータなので、すぐ終わりますので』
「ならそれは私がしておきます。 ...フィリアさん、聞こえますか?」
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Side フィリア
「駄目ねぇ...最近に入った人も分からないなんて」
「ここまで大きいとスタッフ...この場合は医師と看護師だけど、ともかく多いから把握が難しいんだろうね。でもシルクを考えると薬剤系統に割り振りされてるか、志願していると思うんだけど...」
「そうよね...ん、リーフから着信が来たわね」
到着早々にカウンターで昔に所属していたギルドバッジとウォッズの名刺の出して事情を話し、調べてもらったけれど分からないとの回答。ウォルタ君に言われて納得はしたけれど、管理部は何してんのよ。こうなったら自分の足で調べようと思った矢先、リーフからの通話が来て、私は少し人が居ないところに移動して通話に出た。
『フィリアさん、聞こえますか?』
「ええ、バッチリとね。通話して来たってことは何か進展でもあった?」
『はい、ありました。っと言っても今解析中で...あ、終わりました? どうやら終わったようなので、確認して下さい。私も今から見ます』
「えーと、ああ、そこそこ大きいのね。じゃあ読み込ませて.........良いわよ」
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Time xxxx年xx月xx日 20時11分
『...ん、来たみたいです』
『そのようじゃな。入っていいぞ!』
『...失礼します。アナタがお噂のザルーアさんですね。お話は伺っています』
『おぉ、これはご丁寧に...確かにワシはザルーアじゃ。ライトから聞いてるとは思うが、ライトが運ばれてからかなり長く関係があっての。まぁそれはともかくじゃ、立ち話もあれじゃから座ったらどうじゃ?』
『では、失礼します』
「なんか...あんまり見ない感じのシルクね」
「確かに。もしかして緊張しているのですかね?」
「いや、シルクに限ってそんなことはないと思うよ」
「そうよねぇ...」
『...それで、私に用があるとありましたが、アーシアちゃんの事でしょうか? 話す内容は伺っていませんでしたので』
『聞いてない、じゃと? ライトどういう事じゃ』
『今から私がお話を。単刀直入で言うけど、シルクはアーシアの為に医学を学んでくれないかな。君はその手の事が独学で長けてる。もし君が協力してくれるなら、アーシアの症状をどうにかできるかもしれないんだ。ザルーアさんと協力して、ね』
『アーシアちゃんを救えるなら是非とも。ザルーアさん、よろしくお願い致します』
『こちらこそじゃ』
「んー、見た目的に違和感は全く無いわね」
「シルクがここまで落ち着いた話し方をするとは思わなかったけれど、それ以外は無いね」
「っとなりますと、本当にシルクさんは自分の意志でアーシアさんを助ける為に研究に没頭してい...あれ?」
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Side ウォルタ
「っとなりますと、本当にシルクさんは自分の意志でアーシアさんを助ける為に研究に没頭してい...あれ?」
あれ、なんか急に録画してる動画が乱れ始めた?
なんかすごい砂嵐になって、聞こえる音はノイズが掛かってて、映像は上下を違う方向に引っ張られたような感じで乱れて、何が起きているのかが理解が出来ない。オマケに映像もノイズが乗って、辛うじて何となく分かるような感じになっていた。
『ちょ、ちょっとシャインさん?』
『いま原因を解析中.........どうやら、ここの録画データは意図的に破壊されてる? この後の場面はマスターだけ帰っていくところだけど...』
「は、破壊されてるって...つまり誰かが弄ったってこと? なんの為に?」
『分からないけれど、普通に考えるなら見られたくない所を隠した感じ。マスターに聞いてみますか? それなら今すぐにでもできますけど...』
「いや、駄目よ。シャインが動いてる事はライトには知られたくないんだから。だから寝静まったことを確認してからシャインのコアベースをアップデートしてるし、探ってる事をライト本人に聞いてどうするのよ」
『そ、そうでした...』
「どちらにせよ、そこの壊れたところに真相がありそうだね。どうにか復元出来ればいいけど...」
『...時間は掛かっちゃうけど、ゆっくり処理をすればキレイになるかも。あとは歪みを調整処理もしないと』
『えっとー、どのくらいで終わります? 流石に私は動画編集は管轄外でして...』
「アタシも流石に動画編集は辛いわね」
「僕に関しては全く...」
動画編集...たぶん今見た動画を治すって事だよね。理屈では何となく分かるような気もするけど、やったところで更にグチャグチャにしちゃいそう。
『やるしかないね...では、該当部分の処理を開始。終了予定時刻は一時間程は掛かるかと』
「一時間程...だとしたらそのままアタシ達はコッチに居るわ。じゃあその他に何か分かったらまた連絡して頂戴」
『はい、分かりました』
「.........さてと、一時間程どうしょうかしらねぇ。取り敢えず、歩いて探してみる?」
「ですね。何もしないよりかは」
フィリアさんの案に僕は頷いた。一時間もあればもしかしたら何かしら見つけることが出来るかもしれないし、そもそも僕達はセントラル病院にまだ着いたばかり。少し歩いて情報収集するくらいの時間ならたっぷりあるわね。
「じゃあ手分けして探しませんか? 何かあったら連絡で、50分くらい経ったらエントランスに集まるって事で」
「そうね。病院と言えど諸島最大級の病院だものね。じゃあアタシは奥の方を探すから、手前側を任せたわ。また会いましょウォルタ君」
「はい。さてと...じゃあ先ずは薬学部に行ってみようかな」
僕はフィリアさんと別れ、先ずは有り得そうな薬学部に向かう。シルクと言えば薬学ってイメージがあるし。DM事件や、その他でもかなりお世話になったしね...。