繋がり - 前編
Side フィリア
「...ん? あ、シルク」
「そろそろ時間よって、大丈夫? だいぶダラーっとしてるけど」
「あれ、今はシルクだけしかいない?」
「え、ええ。現時点では私だけしか部屋に居ないわ。じゃなくて、そろそろ会議始まるから呼びに来たのよ」
「も、もうそんな時間なのね。結局、しっかりと休め無かった訳ね...」
「...一体何があったのよ? 全くフィリアらしくないわよ」
「私らしくない...確かにそうかも知れないわね、この姿じゃ。一応こんな事になってるのは、これから説明するだろうライトに帰宅早々に頭を使う事をやらされたって感じよ。コッチはラスカ諸島でギアを使える様に連盟へアピールして、契約を交わして、その日のうちに使える様にしてきたってのに...」
「そ、それはお疲れ様でしたって感じね...。それでクタクタに帰ってきたらコレやってと...断れば良かったじゃない」
「ええ、最初は断ったわよー...。けど内容が内容だったから、断らなかったって感じ。それで会議が始ま...それって、私が渡したイヤリング、よね?」
「そうよ。今も大事にして付けてるわ。それに、なんだかコレを付けてると、不思議とフィリアを近くで感じられる。しかも技を出す時に後押しされてるようで、いつも以上に力を出せてる気がするのよね」
「...一言で言うと私の一部だった物よ。まあ詳しくは言わないけれども。それはさておき、みんなを待たせちゃってるわね。行きましょシルク」
「ええ、そうね」
重い腰を上げようとするとシルクは右手を差し出してきた。私はその手に捕まって立ち上がると、そのままシルクは私の手を掴んだままで会議をする大広間まで移動する。大広間はライト家の地下基地に併設されてる広間で、地下二階に設置されてる。私達が居た地下一階は研究施設や発電施設にデータベース、後は生活スペース、必要な設備等は全て揃っている。一応で地上一階は生活設備やパソコンはあるけれども、どっちかと言うとそこらにもある普通の家で、特別変わった所はない。二階に関しても個室で別れて、何も無いだけの空部屋...だったけれど、今は私とリーフ、ギラファが個人の部屋として使ってる。そもそもに皆集まりが特殊なのよね。
リーフに関しては元々に家は合ったらしいけど、ドリームメイカーズの研究員として使われてからは戻る事は出来なかったし、料金滞納で差し押さえされたらしい。ギラファに関しても同じような感じで、研究施設の一室が家であり、自分の部屋でもあったみたい。私に関してはリファルとギルド契約しているから困らなかったけれども、除隊届けを出しているから使えない。一応は残してくれてるって言ってくれたけれど、新しい子の為に使わせて上げてと断ってる。
「フィリア?」
「...えっ、あ、ごめん。ちょっと考え事をしてたのよ」
「それなら別にいいけど...疲れてるなら、ライトさんとかに説明してくるわよ? 連れてくる途中でそんな感じだったら、自分だけでどうにかするからって」
「いえ、問題は無いわ。私達の出会いと言うか集まりって、結構特殊よねと思っただけよ」
「...確かに、そうね。私とウォルター君がこの諸島に訪れたのも、今は亡きシュエリさんの一通で来たわけだし、それが無ければアーシアちゃん達や、もちろんフィリアともここまで仲良く慣れなかったと思うわ。ありがとフィリア」
「そ、そう言われるとむず痒いわね.../// だけど、私からもありがと。シルクが居なきゃ、私はここまで立ち直れなかったわ。悲しみのどん底と、リファルを意地でも絶対に見つけるんだと躍起になってた私が」
「...確かに、あの時は怖いくらいに探し回ってたわね。それに寝る間やご飯も食べずに探し回って、病院に救急搬送された事もあったり」
「あったあった。確か.........」
ーーーーー
『...フィリア! よかった...救急搬送されたって聞いて、心配したのよ!』
『...シルク、か。あはは...まさか、こんな姿を...見られちゃうなんて.........』
『見られちゃうなんてじゃないわよ! 院長に聞いたけど、飲まず食わずの寝ずにを動き回ったようじゃない! たぶんリファルさんって分かるけれど、自分の体も心配しなさいよ!』
『...ふふふ、なんかシルクに言われると...変な感じがする...』
『わ、笑い事じゃないわよ! もしかしたら死んでたかも知れないのよ!?』
『...死んでたかも、ね。けど、いっその事に死ねればリファルに会えたか...』
バシンっ!!
『痛った!? な、何するのよシル...ク...』
『死ねれば良かった、ですって? 親友が運ばれて焦って来て、わたしぐすっ...わたしっ! 心配したのよっ!!』
『...ご、ごめんなさい』
『ぐすっ...許さないわよっ! 元気に回復するまでぐすっ、アタシは許さないんだからっ!!』
ーーーーー
「うん、痛いビンタ食らって、それから退院までずっと付き添ってくれたのよね。もう一度言うけど、結構あれは痛かったわよ...」
「それはあんな事を言うからよ。さて長話はこの辺にして、着いたわね。色々と集まってるわよ.........みんな、お待たせ。ちょっとお話して遅くなっちゃったわ」
「やっと来たか...丁度様子を見に行くかと考えてたところだぞ」
「ギラファが行くと面倒な事になるから駄目だよ」
「おいライト、それはどういう事だ?」
「まぁともかく、これで会議が始められるね。軽く点呼がてら確認だけど、まずはポートタウンからシルクとウォルタにレイエルとモルクに親方のルドオルさん。次にエルドシティからホノンと親方のセネルさん。グレイスタウンから副親方のスウさん。そしてナルトシティから親方のリンネさん。そしてギラファにフィリアとリーフ...じゃなくて、ソープ、後はミウの一応代わりとしてアルタイルを入れて、全員居るね」
な、なんだか凄い人の量ね...最初に聞いた時は親方が居るって聞いてなかったはずなんだけど。
「...一応って、なんか私で悪かったわね」
「まーたライトの一言余計が入ったわね。いい加減それ直したら?」
「レイ、多分それは無理だと思うよ」
「...はいはい僕は毎回一言余計ですよと。ともかく...あーもう! 忘れちゃったじゃないか!」
「はぁ...やっぱりあなたには任せられません。では、まず私から言えることを話します。改めてアタシの名前は三神のアルタイル。今日は原初さ...皆が知る名前でミウ様の代理で来ているわ。早速だけれども、ココ最近になってから妙な動きが増してきているわ。まずはアーシアさんを襲った謎の組織、これに関してはどうやら大手の薬品会社、しかも点滴を製造しているメーカーだと判明したわ」
「大手の点滴を製造しているメーカー...それって、グリーン薬品会社だよな? 種族にあった点滴を製造して急成長したっていう」
「流石はポートタウンの若手親方のルドオルさんね。その通り、グリーン薬品会社、略してグリーンは種族に一番合った調合をした点滴を製造して伸びた若手会社って聞いてるわ。しかもそこは元々ドリームメイカーズの傘下に入っていた会社らしくて、その他にも傘下だったのが独立、中には倒産もあるって話よ。それで...」
「まあ、そろそろ変わるよ。思い出したからね。補足としてグリーンは色々な会社に自社薬品を売り付けているんだけれども、これがまた品質が良いものでね...証拠が無い今は手出し不可能なんだ。後はその他の傘下っての話だけど、どうやらそいつらは独自のネットワークを持っているらしく、更にはブラックマーケットに通じる事が分かってる。だけどそれだけじゃ証拠が不十分」
「つまり、私達には証拠を集めてほしいと。ですが私達はギルドの親方...っと言っても私は副親方ですが、色々なギルドが一斉に動いたら相手も警戒するのでは? それに親方としての仕事もあると思いますし、第一にそんな危ない事を弟子にさせられないですよ?」
「...無茶は承知だよ。けれどDM事件のように大きな被害が出る前に、動いたほうが得策とは思わない?」
「まあ、確かにそうね...あ、ならこんなのどうかしら? たしかに一斉に動くと相手が警戒するのは確かだわ。かと言って慎重すぎても尻尾を掴むまで時間が掛かる。さっき薬品会社って言ったわよね? なら、そこからどんどん内部に内通者を通して探りを入れればいいと思うわ。もちろん、探りを入れる人に対しては何かあった時の保険を付けて、ね。どうかしら?」
「...確かに、セネルさんの言う方法なら短時間且つ比較的安全に探りを入れられそうだよ。それで内通者は?」
「...案を出したけれど、流石に医療関係の知り合いは居ないわ。けどナルトシティの病院なら導かれし者達の専門医師が居るって聞いてたけど」
「専門医と言うより担当医師、だね。確かにその人ならよく知ってるし、どうにかなるかも知れない」
担当医師...私もお世話になったザルーアさんね。確かにあの人は中々に顔が広いし、階級的にもかなり高い位置に居るらしいから、色々なことを知ってそうな気がする。
「話を進めるのはいいけど、まずはザルーアさんに聞かなきゃナノ」
「じゃあそれは僕が連絡を取っとくよ。さて、それじゃあ次のお話。一応で急に言うと誰かが殴って来そうだから初めから言うよ」
「...ライト? 殴りかかってきそうってアタシの事かしら?」
「ま、まあまあレイ落ち着いて...」
「えーと、事の経緯は約三日前ほど前にピジョットが訪ねてきてね。その連れとしてとある子を連れてきたんだよ。でもその子は闇に見た目が飲まれててね。僕とソープとフィリアとギラファでちょっと調整をしたわけ」
「...ねえ、その子ってアーシアちゃんの事じゃないわよね?」
「...まあ、近い者だね。もしかしたら本人かも知れないけれど、そのときは確信が持てなかった」
「そ、それはどういう事なのですか? その感じですと見た目から性格まで似せた何か、となりますけど?」
「スウさんの言う通り、その時は疑ってたよ。本人に似せて送り込んできたスパイかも知れないってね。だって命からがら逃げ出してきたって感じでは無かったしね」
「...で? アンタは、いや今回はアンタ達は何を隠してるのよ。大方に予想は付いてるけれど、話している子ってアーシアちゃんかマコト君の事よね? でしょ。そうなんでしょ!?」
うわっ、完全にレイエルさんキレてる。しかもアルタイルさんまで私達の事を睨み付けてる...。黙ってたのは同罪だけれども、この空気...とても耐えられない。リーフも縮こまっちゃってるし...言う気が無いなら、アタシが言うしか無いわね。
「...ええ、そうよ。ライトが言わないから変わりに言うけど、確かにレイエルの言う通り、話している娘に関してはアーシアちゃんよ。しかも姿はイーブイにらしき姿に戻ってる」
「ちょ、ちょっとフィリア!?」
「アンタが言わないからでしょ。んで、アーシアちゃんは前に話した"自我はあるけれど見た目は闇に飲まれし者"の状態なのよ。それで今日はそのアーシアが本人かどうか、確かめて貰おうとしたの。けれど発作が起きることがあって、原因を調べる為に生命液体水で満たしたポッドにずっと監視して、状況を見ている状態よ。 それでどうする? 見たいなら連れて行くわ。私的には苦痛だから、出来れば連れて行きたくはない」
苦痛と私が言った途端、上げていた手が全て一旦下がった。そりゃそうよね、本音で苦痛と言っちゃったし、連れて行きたくないとも言ったから。でも様々なコードが繋がった装置に入れて、言うならば"闇に飲まれし者を閉じ込めて検査観察する部屋"なんかを理解することは不可能。
それよりも、たまに苦しむアーシアちゃんの顔を見たくないし、声を聴きたくはない。