物知りと
Side ライト
「...あの、もう予定時刻になりそうなのですが」
「あー、もうそんな時間か...。一応、ある程度はどうにか出来たけれど、まだちょっと見た目がなぁ...。けど、どうにかして見た目は戻してあげたい」
「...そう言いますが、やってる事はマッドサイエンティストですね。もう、あと二時間ですよ...中から出して拭いてあげないと行けなかったりする訳で...」
「あのさ、そう言うなら手を動かしてくれないかしら!? こちとらギアの受諾を取って帰ってきて、そ
うしたら面倒な調整計算をやらされてるのよ!?」
「ご、ごめんなさい...」
「そうだね...ごめん」
うわ、目が完全に殺る側の人の目だ。これは余計なことを言うと、次は命が無いかもしれない。確かにフィリアはラスカ諸島でギア、ギアと言っても高性能のZギアの初期型であるPギアをしっかりと使えるようにと、ラスカ側のギルド上層部と、複数の偉い人にプレゼンをし、有用性や安全性に簡易性などを発表し、見事に運用が出来るようにと契約を結んできた。
そしてその日のうちに貨物船に積んでいた電波塔を、プレゼンをした"水の大陸"メインとし、遅いながらも全大陸でも使えるようにセットアップも終わらせてきた。ご丁寧にその町を拠点として行動するギルドに挨拶回りと、僕らか住むルデラ諸島に訪れて買っていった人向けに"ラスカ諸島でのプレテストサービス開始お知らせ"の通知まで入れて。
ちなみにその通知後に大量のコネクションで処理落ちはしたけれど、今はリーフがやってくれた処理関連のパフォーマンス調整でサーバーラグと処理落ちは完全に消えてる。そもそもに二桁くらいしかいないと思ってたら、その予測を上回る200人近い使用者が居たことだけど...。
「...にしても、流石はこの娘って感じね。何だかんだでこの娘は帰ってくるのだから。それに比べてリファルと来たら...同じようにころっと帰ってこれたなら死ぬ程に締め付けてやるんだから...生きてたら、だけど.........」
「フィ、フィリアさん...」
「...これは予測なんだけど、たぶんリファルは生きてると思う」
「えっ? それは一体どういうことよ?」
「だから、多分って言ったでしょ。近頃に自我を持ちつつ、ダーク化した存在が確認されるようになって、ダーク化に適用する遺伝子を持つ個体が現れたって、少し前に話したでしょ? その関係でリファルも...って、少し考えちゃった訳だよ」
「でも自我を持った闇に飲まれし者、ラスカ諸島では"ビースト"とか呼ばれてるらしいけど、それが確認されたのは最近なんでしょ? 出来ればそうであって欲しいけれど、その望みは薄いんじゃないかしら?」
「ビースト? なんか古典的な呼び方するんだね」
「突っ込みどころ、そこ? まあ、それはともかく。早く終わらせてあげましょ。幾ら麻酔で寝てるとしても、やっぱり可愛そうだわ」
モニター越しの、液体が満たされたカプセルに居る娘を見ながら、私は自分にも言い聞かせるような感じで自分のパソコンの前に座り、キーボードを叩き始める。私の後ろ姿を見てか、ライトやリーフ、ギラファもパソコンを操作する音が聴こえた...
ーーーーー
Side シルク
うーん、なんだかそわそわする。たしかに今日は予定があるからって、お休みを頂いたけれども...まさか三日も休んで来いって言われるなんて。それに、軽く無理やりな感じで...たぶん、救助活動で無茶しすぎたせいで休ませようとしてたみたいだし、申請に合わせて無理やりつけられた感じ。それに、予定時刻よりかなり早く出されちゃったから、何処かで時間を潰さないといけないわけだけれど...ライトさんの家の近くで時間を潰せる場所としたら、やっぱり"セントラルパーク"よね。
「...っで、結局どうするのシルク?」
「無難にセントラルパークで時間を潰しましょ。かなり色々な物があるから、結構に時間が潰せると思うわ。それに、ゆっくりと見たことが無かったし、行ったとしても中に入ってる書物屋くらいしか行かなかったし」
「...言われてみれば僕もだ。あそこの書物量は他に比較が出来ない程に多いからね。気がついたら一日調べ続けてたとか、稀じゃなかったよ」
「そうね。今思えばアレを書き上げ終えて、最初に置いて貰ったのもその場所だったわね。私達が書いた書物、あの"導かれし者達の軌跡"を」
「懐かしね。作成は中々に難しかったけれど、完成して、皆が手に取って読んでくれて、口コミで広まって、安心した気持ちが大きかったのがあるかな。せっかく書いたのに読んでくれないのが一番辛いから」
「まあそ...ん、そろそろ到着しそうね。にしてもやっぱり乗り物って早くて楽ね。バスだけは無理だけど...」
「あはは、まだバスは駄目なんだ〜」
「当たり前よ、あんなに揺れる乗り物なんて。私が居た時代の大きな街でもあったけど、あそこまでグラグラと揺れなかったわ。何でこっちのバスはこんなに揺れるのかしら...」
「さあね...よいしょっと。まあバスに関して積もる話はあるとは思うけれど、取り敢えず降りる用意しとこ?」
ウォルタ君の意見に頷きながら、私はサイコキネシスで浮かべていた書類と、テーブルに並べた書類をを手早くバインダーに戻し挟んだ。今私たちが使っていた号車は最終号車で、最終号車は基本的にギルドに属する人達が使える専用車両。一応ギルドに属す人は"テレポートステーション"と呼ばれる、ポケモンが使う技の一種である"テレポート"を応用化した転送装置を使える。けれどコレは適正ギルドランクを持たなければ使えず、ランクを超えてなければ一般人のように並ばないと使えなく、しかもお値段が電車より三倍近く掛かる。だけど人によっては早く着きたい、言うならば時間をお金を買うような感覚で使ったり、色々な事があるみたい。
因みに私達みたいなDM事件に関わった人達は全員テレポートステーションを使う権限を永久的に持ってるけれど、今日はそれを使うと流石に時間が余り過ぎる...っという事で、ゆったりと電車で待ち合わせをしているナルトシティへと向かった感じ。
『お待たせしました。間もなくこの電車は終点のナルトシティへと到着致し...』
「着いたわね。さてと、久しぶりに羽を休ませるとしますかぁー...ふう」
「そうだね。けど、やっぱり何事も無い時に貰えれば良かったなって思っちゃうよ...。でも、現状で僕達は何も出来ないし、ウィアさんとミウさんが無事に目的を達成して、戻ってきてくれる事を願うしかないけど...」
「そうね...この、力になりたいけれどなれない感じ、やっぱり嫌い...って、やっぱり考えちゃってあんまり安めなさそうねって、あれ? あそこに居るのって...スイレンちゃんとヨーテルちゃんじゃない?」
駅の改札に向かう途中に季節と合わない姿をしているシキジカ、そのシキジカと笑いながら話すリザードを見つけて、私は反射的にウォルタ君に尋ねた。すると、少し間が開けた後に「そうかも」と相槌を打って、少し駆け足でその二人組に近づく。
近づいてみると、やっぱり私達が知っている声で、内容は聞き取れないけれど、見た目的には暗い話をしている様子はなかった。
「...それでね、あっ、こんにちはシルクさん、ウォルタさん。そしてお久しぶりです!」
「えっ? あれ、なんで二人がここに? もしかして時間潰しとか?」
「うん、そんな感じ。っという事は二人もですか?」
「そうナノ。家に居たけれど、ヨーテルのお母さんが会いに行くならついでに何か買って持っていったらどうって。でも、うん、時間潰しもあるけど。シルクさん達は...って、同じ理由って言ってたね」
「そうね。でも、来たのは良いけれどどうしようかとちょっと迷ってたのよ。一緒に同行してもいいかしら?」
「もちろんナノ!」
「私も大丈夫です!」
「決まりかな? ところで何を買うか決まってたりする?」
「いえ、まだ決まってません。ですが無難にお菓子とかが良いかなっと...どうでしょう?」
「悪くないと思うわ。それにしても、ココって色々あるのね?」
「あれ、もしかして初めて?」
「いや、中に入ってる書物屋は常連だよ。だけどその他のお店とかは...」
「で、では私に案内させて下さいっ。色んなお店、お母様と回って見てるので!」
「ふふ、頼もしいわね。じゃあお願いするわねヨーテルちゃん」
「はい!」