様々な時間
Side シルク
さてと...これで粗方は問題解決ってところね。地震が起きてから約一ヶ月、そしてアーシアちゃんが居なくなってから約三週間...とても時間が経つのが早かった。しかもその間にもスイレンちゃんはアーシアちゃんを連れ戻す為に戻ってきちゃったり、マコト君に至っては同じく来ようとしたけれど来れなく、その解決にウィアちゃんとミウちゃんがアルセウスの力を使って過去へ飛んでる...色々と起きすぎと、疲労や心配でまともに寝られてない。
親方のルドオルさんやサニャちゃん、同じギルドに居るレイエルやモルク君にちゃんと休めてるのと聞かれるけれど、誤魔化し誤魔化しで大丈夫と言い続けてる状態...。動き過ぎ、確かに言われる理由は分かるけれど、何かしていないと何かに押し潰されそうな気がしてならない。
「...え、ねえシルクってば」
「あっ、レ、レイエル...どうしたのよ?」
「どうしたのじゃ無いわよ。やっぱり最近、シルクは疲れ過ぎよ。いい加減に休んで貰わないと、見てるこっちが不安よ」
「そ、そんな事は無いわ。調べたり、みんなの為に回復薬を作ってたりするのは好きでやってる訳のよ? それで疲れたりなんかはしないわ」
「...はぁ、なんかシルクもアーシアと同じで無茶しがちよね。なんだか見ていると姉妹みたいな感じがしてくるわね。そう思わない?」
「確かにねー。それにしてもアーシアが行方不明からもう三週間近く...長いようで、色々あって経つのが早い...無事、なのかな...」
「ぶ、無事に決まってるわよ! それにモルクが悔やんでも何も変わらないわ。私達だって、ギルドの事をやりながら合間を縫って探したりしてるわけだし、駄目だ駄目だって思ってたら駄目じゃない事も駄目になりそうじゃない。要は希望は捨てないって言いたいだけよ。それにアーシアちゃんよ? 前みたいに何事も無く帰ってくるんじゃないかって、アタシはそんな感じするのよね」
「...確かに、レイエルの言葉は分からなく無いわね。もしかして、もうライトさんの所に居たりし...ちょっと待って、誰かから通話が来たから」
不意の着信に少し驚いたけれど、私は一度会話を切ってZギアの通知画面を確認する。すると最近はかなり見慣れた名前になっているリーフさんの名前と顔が表示されていた。着信に出た後、更に指先で操作して表示を空中に映し出す設定にして、音声も拡声モードに切り替えているうちに、レイエルとモルク君が私の後ろに回り込んでいた。
『...えっと、聞こえてます?』
「ええ、バッチリ聞こえてるわよリーフさん。今日はいつもより通話が早いわね」
「あれ、何時もはライトも居るのに今日は居ないの?」
『今は色々と準備中でして。あの、急で申し訳ないのですが今日の四時頃にライトさんの家に来て下さりませんか? 事情はコチラから親方に通しておきますので』
「ん? そうなると結構重要な感じなのね? それで皆を集めてると」
「それとも、また何か事件が...?」
『いえ、シルクさんが言った事の方ですね。確かに事件...でもあるかもしれないですが。ともかく、今日の午後四時にライトさんの家に来て下さい』
『分かったわ...って、もう切れてる』
いつの間にかに消えてた画面を見ながら、何だかいつもと違う雰囲気だったと私は思った。説明するならば慌ててるような、急いでるような気がした。だとしたらなぜ明日なのかが気になる所だけれど...たぶん折り返しで電話掛けたり、今から行っても明日でって突き返されるのは容易に浮かぶわね。
「...なんか、焦った感じだったね。ライトさんに関わるならギアの調整で気が散るからとかじゃないかな。前に一度あったしね」
「あったあった。けれどあの時はウォッズへ呼ばれる前で、更にアタシ達が付けてるZギアの作成中だったから、色々な気持ちがあったんじゃなかしら。まあ、それをアタシ達に当たるのはどうかとは思ったけど」
「んー、しょうがない事じゃないかしら。私も真剣に研究している所でドタバタされたら、出来るものも出来なくなるわね」
「そう? 僕は別にそんな事は...」
「アンタは鈍感で、そんなメンタルや性格じゃないから論外」
「...レイ、その言い方は流石に悲しくなるんだけど!」
「いや、言い返す元気はあるじゃない。それよりも取り敢えず、今日もちゃっちゃとアタシ達の町を復刻させるわよ。あとは人里離れた神殿に向かう道だけなんだから」
「そうね。ところで疑問に思ってるのだけど、そのテヌラ神殿って何なの? 簡単に調べたらギルドから侵入を禁止されてるし、仮に侵入しようとしても不可視のバリアで入れないみたいだし」
「進入禁止なのは、ずばり謎だらけ過ぎて危険だから禁止。一応ダンジョンだってことは知ってるけれど、敵の強さがバラバラ、フロアの広さもバラバラ、そして天候もバラバラというトリプルパンチなのよ」
「て、天候がバラバラってどういう事よ?」
「その言葉通りよ。例えば一層目が温かいなら、二層目が寒くなってたり、或いは砂嵐、猛暑と層が変わる毎に環境の変化が起きるって事。最悪なのは吹雪の後に猛暑とか、急な気温変化に身体が付いて行けなくて、どうやら乱状態になるらしいわ」
錯乱状態は厄介ね...しかもそんな極限環境じゃ私の作った薬品でも対処は不可能そう。にしてもなんでそんな場所が極限環境になっているのかが、逆に気になるところね。何というか、探究心をくすぐられるような感じ。
「うわっ、僕ならそんな場所に挑みたくないなぁ」
「アタシも同感よ。まあ、そもそもに入れない訳だから意味も無いけれど。さてと、だいぶ立ち話をしちゃったわね。そろそろに向かいましょうか」
「そうね。話は通しておくって言われても、まだお昼ごはん入れても五時間近くあるから」
「だね。じゃあ向かって、取りあえずは僕達が抜けても問題がないほどには終えちゃわなきゃね」
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Side フィリア
「...ん、そろそろ時間やな。いやぁ、やっぱり話して楽しかったわ。にしても機械じゃなく、科学もちょっと嗜んでるなんて恐れ入ったわ」
「それはこっちも一緒よ。案外、貴方も機械の事を知ってるじゃない。ラスカ諸島じゃ、そもそもに機械を触ったり、興味ある人なんて居ないって思ってたから」
「まあ、せやね。でも、やっとギルド連盟がルデラ諸島のZギアに目を付けたり、旅行というか休暇で向かったラスカ諸島の救助隊や探検隊が口コミで広がって、使うようになったから、昔よりは興味が無いって人はおらんようやで。最近は"デアナ諸島"もルデラ諸島がラスカ諸島に協力と援助、貿易の契約を結んだって嗅ぎ付けて、動き出したようやで?」
「デ、デアナも? 確かデアナはルデラより技術発展が凄い事になってるのよね。ルデラはどちらがと言うと救助隊や探検隊に向けたデバイス、ホログラム、ネットワーク、皮肉にも整体関連技術ね。デアナに至っては医療や機械産業、どちらかと言うと生活に関わる事が強い話だったわね」
「へぇー、同じ技術系統の諸島かと思ったら案外違うんやね?」
「確かにそうね。後はデアナ諸島に関して、あんまりいい気分じゃないらしいのよね。たぶん、無意識に競争相手と思っているらしく、貿易や救助提携は拒否してるから」
「そんなんか...感じ的には姉妹諸島って感じやのにね」
私は水の大陸では幅広く飲まれているビアーコーヒーを啜りながら、高速船で知り合ったエーフィのリアンさんと、会議が始まるのまでの時間潰しとしてカフェに入店していた。ビアーコーヒーは水の大陸では幅広く飲まれている、香ばしい香りが特徴的なコーヒーで、細かく砕いて熱湯で抽出するとより一層香りが引き立つらしい。確かにその通りで、鼻を通り抜ける匂いがとてもいい感じで、他の客に目を向ければ殆ど飲んでいた。
それに、どうやら多少のカフェインが入っているらしくて、朝の一杯に人気。確かに少しだけ眠かったけれど、眠気が冷めた気がする。
「姉妹諸島...まあ、確かにそれは言えるわね。さてと、居心地の良さに負けてこのままの気がするから行くわよ。さてと会計は...ちょっと?」
「いや、会計は僕が払うで。誘ったのは僕やしね」
「...分かったわ。その代わり、次は絶対に私が奢らせて貰うわよ。流石に貸しを付けたままは嫌だし」
「あはは...分かった、やっぱりフィリアさんにはかなへんわ。じゃあすぐに終わらせるから先に出てて貰ってもええ?」
「分かったわ」
私が会計表を取るよりも早く、リアンさんはサイコキネシスで会計表を自分の手元に引き寄せ、会計は全額払うと言ってきた。私は最初、否定して払おうとしたけれど、何となくで直ぐにまた会えるような気がして手を引いた。だけど頼んだのはビアーコーヒーを二つにトースト二枚、そして木の実のバターサラダで、中々に良いお値段が行ったから、少し罪悪感が残る。まあ、次にあった時に昼食代か夜食代、はたまた同じくココの朝食代、それか今日の会議後にでも誘って奢るのもありかもしれないわね。
ともかく私はそんな事を考えながら、店員にご馳走様でしたと言ってから店舗の外へ出る。さてと、今の時刻は...九時ちょっと過ぎだから、会議開始まで三十分以上。けれど移動と最終確認を考えると丁度いい感じね。