Chapter 04
手探り
Side スカイ


「...アーシア! くそっ...」
『ふふふ、願い叶わずだなぁスカイ。さてと.........うがっ! け、結構痛いな...コレは.........』

 アーシアが付けたギアからヤツの痛みに耐える声が響く。まさか向こうでも同じことを...いや、ちょっと待てよ。ここで俺がギアのバンドを食い千切るか、本体を壊したらアーシアはどうなる?
 もしかすれば助けられるのでは...いや、もしも同じような成分があったら俺までアウトだ。どうする、どうすれば良い.........いや、迷ってる暇なんかねぇ!

「...やったろうじゃねぇか。うぐっ!」
『なっ!? や、やめろ! シェルターの奴らがどうなっても良いのか!?』
「いや、あいつらは強い! お前の手先など捻り潰す強さを持ってるはずだ! それに、アーシアの事であのスラム町は一つに纏まりつつある!」

 そうだ。俺は集まりに参加しなかったが、スラム町の奴らをニューラは集めてアーシアの事について、シェルターにて説明をしていたらしい。集めた奴らって言うのは他のシェルターを収める長、廃マンションを収める長...アーシアが来た事により、スラムの状況を変えて助けてくれるかもしれない、その期待で纏まった。なんたってドロドロのドリームメイカーズを、大企業を潰した中の一人。そんな奴が居るだけでも、俺達にとっては大きな心の拠り所であり、抑止力だ。
 そして俺が今すべき事...それは、アーシアを守る事だ!

「くそっ、固え...だが、俺はコイツを守る事と恩返しの義務がある! それがたかがギアぐらい、食いちぎってやるわぁ!」
『や、やめろ! 壊すんじ.........』

 痛みに耐え、俺は火事場の馬鹿力とやらと同等だろう力を使って強く噛み直す。途端にかなりの痛みが来たが、嘴の先で鳴る筈の無い音が鳴り、聞こえていた声がブツリと切れた。まさか...壊せたのか?
 俺は咥えたまま、少し動けなくなった。毒でやられた訳でも無く、痛みで動かせないと言うわけでもない。多分は出来た事が、頭は理解が出来ているが、身体が理解しきれてないからだろう。

「.........うぅ...こ、ここは...」
「...アーシア、なのか? それとも、ヤツか?」
「ヤツ...そうだ、私はギアに仕込まれた...って、スカイさん口から血が!?」

 そんな事をしていると呻き声が聞こえて、声の主がフラフラと立ち上がる。俺はそれを見てやっと身体が動き、少し体制を低くして軽く構えた。だが警戒せずとも、目の前に居るのはアイツとはとても思えない、人を心配してくれる優しい素振りのアーシア...だと思われる者。まだ確証は持てた訳じゃないが、多分はアーシアの筈だ。

「ああ、俺が嘴で挟み込んで壊したからだ。にしても痛てぇ...金物を齧るとか、普通の考えなら起きねぇぞコレ...。 取り敢えず、アーシア...で良いんだよな? アイツじゃなくて、本物の...俺達の世界を救ってくれた人の一人であるアーシア...なんだよな?」
「...はい。こんな姿にされたけど...私はアーシアで、間違いないです。改めてはじめまして...スカイ、さん」
「あ、あぁ...。その、危険な目に合わせて...本当に申し訳なかった。お詫びに俺に叶えられる願いなら何だって叶えるから...」

 俺はそう言って頭を深く下ろす。俺はそれだけの事を騙されていたと言え、危険なところまで追い込んだ。その報いは当然に受けるべきだ。叶えられる願いなら何だって叶える...寧ろコレでも足りないと思える程だ。なんせ相手は世界を救ってくれた恩人なのだから。

「お、お詫びだなんて...スカイさんは騙されてた、知らなかっただけですし.........だ、だから顔を上げて下さい」
「.........本当に、優しいんだなお前は。どうやら、本当のアーシア本人で間違い無さそうだ。だけど助言を一つしておくと、人をあんまり信じると痛い目に遭うとは心の片隅にも覚えておく事だ」
「は、はい...そう、ですね.........。今の一件で、そう思うようになりました...」

 ...どうやら、本物のアーシアらしい。少し探りを入れてみたが、怪しいと思える言動が何一つ無かった。コレが奴なら絶対に何処かで怪しい場面が出る筈だからな。

「あー、でも。行動する身として、俺は少し信用はして欲しい。酷い事をして、今の話の後に信じろは矛盾してるが...」
「...いえ、信じます。だって、私の名前を初めて聞いた時のスカイさんの顔、演技だなんてとても思えない顔をしてましたし、騙したけれど助けてくれましたし」
「やっぱり根に持ってるな...すまん。まぁ、冗談と信じるとして...目的地はウォッズだったな。俺の背中に乗ってくれ、安全に連れてってやる。色々あったが、改めて俺はアーシアの足として、護衛として一緒に居るから」
「...じゃあ、お願いします。けど、今の時間は...流石に今向かっても空いてないですし、他に向かって下さっても宜しいですか?」
「それは構わないが...何処だ?」
「えーと、その場所は.........」

ーーーーー
Side ???


 ...う、うぅ.........寒い。それに起きるまで一時間も早く目が冷めちゃうなんて...二度寝しようにも、完全に目が覚めて寝れそうにない。しょうが無いから、起きようかな...あ、その前に。

「すぅ...すぅ.........」

 ...完全に寝てるから、起こさないように注意しなきゃだね。そっと、そっと.........良し、抜け出せた。後はこのまま上に行ければ、起こさないように色々と物事が出来る。
 そう思えば、ウィアがミウと居なくなってから三日目たったのか...。なにやらアルセウスの力が力を使って、今の未来を変える為に送り飛ばしたらしい。それは良い事なんだけど、それが後日談なのが少し気になった。二人に頑張ってとせめて言いたかったのに。まあ過ぎたことは水に流すとして、取り敢えずは今は簡単に朝ごはんを作って、起きてくる時間に間に合いそうなら追加で何か作ろう。ん、そう思えばパンやご飯は...パンが無いけどご飯あるから、ご飯に合うおかずになる。

 僕は上に戻って台所周りを右往左往、何があるか、残っているか調べる。倉庫にはそこそこ備蓄してある様々な木の実、冷蔵庫には長持ちさせたい牛乳やそれらからなる食べ物や調味料、万能食材大豆からなる豆腐、後は苦手な野菜に、美味しかった昨日の作り置きが入ってる。
 んー、何を作ろう...お、キノコがある。じゃあ甘辛木の実のキノコ炒めにでもしよう。で、野菜も無いと怒るから...簡単にドレッシングでも作ってチーズ入り木の実サラダにすれば、僕も食べやすいし良い感じのバランスになるかな。よし、それで行こう。

「さてまずは貯蔵庫から木の実を選んでこなきゃね。それにしても、中から直通にしようとリフォーム計画してるけど、なんだかんだでやってなって寒っ!? うぅ、この時間だとこんなに外寒いのか...毛並みが長い種族や氷タイプだと嬉しい季節ってこういう事を言うのかな...。そうだ、今日くらいは温まり早い薪ストーブ使っても良いよね。色んな物を電気化や便利にするのは良いけど、頼りすぎるのもなんだかねっと思うし...って、今日凄く僕喋る。寒すぎて頭でもおかしくしたかな...」

 自分でツッコミを入れつつ、寒さに足早に家の裏に建てた貯蔵庫を開けて中に入る。けど、貯蔵庫の方が当然ながら寒く、長く居たら冬眠が出来てしまう程だった。だから僕は手っ取り早く木の実を見定めて、必要なものだけ持ってきた籠に入れて、途中で少し寄り道で薪を数本持って家に戻った。入ってからは薪ストーブの中に持ってきた薪を投げ入れて、新聞にマッチで火を付けた物をそこに投げ入れる。途端に薪へ火が燃え移り、ある程度燃え始めたのを確認して、飛び散り防止用の扉を締める。扉には小窓が付いてるけれど、燃えてるか燃えてないかの確認しか出来なかったりする。

 さて、暖房は入れたから次は朝ご飯づくり。大丈夫な筈だけど、簡単に全ての木の実を水洗いして、手頃な大きさまでに雑切りしていく。選んだ木の実はそこそこ固めな木の実だから、一番最初に傷めないといけないけれど、元々そのまま食べれるものだし、少しみずみずしさを残す為に、最初はキノコを炒めなきゃね。それで、痛めてる間にドレッシングを作って、サラダをまた手頃な程にカットして.........ん?


 トントン...トントン...


 ...あれ、なんか玄関をノックされた。まだこんな早い時間に誰だろう...新聞屋さんにしては早いし...まぁいいや、出てみよう。流石にイタズラってわけじゃ無い筈だし、もしそうだとしてもカメラでバッチリ写ってるしね。

「はーい.........。え、どなた?」
「あー、朝早くし申し訳ない。ちょっと会わせたい奴が居てだな.........コイツ、なんだが」

 ドアを開けると、そこに居たのは割りと小柄なピジョット、大きさ的にピジョンがドアの前に立っていた。僕に気が付くと、そのピジョットは申し訳無さそうな顔で会わせたい人が居ると言い、その後ろから白のフード...いや、シーツをフードのように纏った人を前に出してきた。その瞬間、僕はなんだか初めてあったとは思えない感覚に襲われ、少しの間だけフリーズしてしまった。だけど、そのフリーズはシーツを纏った子の声に砕ける事になった。

「え、えっと...その、な、何から話せば宜しいのか.........」
「そ、その声...まさか、だよね?」

 聞いた声は少し高くなっていたけれど、喋り方や口調で誰なのか直ぐに判断する事は容易だった。この子は、この娘は...紛れもなく、あの娘だ。行方不明になって、かれこれ二週間近く経とうとしている、あの娘...でも、まだ確証は取れてない。その人に見せかけて、送り込んできた相手の秘策かもしれない。このピジョットもその仲間...なにか、確証が持てる事。腕の印は証明にならないから、何か他の事.........。

「...証拠が無いから、信用が出来ないのですね。生憎に私は所持品を全て奪われて、リストバンドすら守った時に切り落とされ、ZギアのExperienceModelも没収されたので...」
「...え、情報の無いExperienceModelを知ってると言う事は...まさか、本当にアーシアなの? 君で、間違いないの?」
「はい。私はアーシア、別名は柴咲弥生。あの本にも、ライトさんやウィアさん等の身の回りにしか知らない事です」
「し、柴咲弥生? それが、お前の本来世界での名前なのか?」
「はい、そうです。それで、ライトさん...信じてくれますか?」

 柴咲弥生...確かにこの名前は本にも記載していない情報なのは間違いない。けれど、拷問なので聞き出したって可能性もな聞き出したって可能性も無い訳じゃない。なにか、他に決定的な証拠は.........いや、待てよ。

「...じゃあ、今日の一日は僕と行動してよ。もし君がアーシアでは無くて、偽物なら何処かでボロを出すだろうしね。ピジョットの君は...申し訳ないけど、何処かに行ってて貰えるかな?」
「まぁ、妥当な考えだな。それじゃアーシア、会えるならば明日にでも会おう」
「は、はい。短い間でしたがスカイさん有難う御座いました。ニューラさんには宜しくとお伝え下さい」
「おう。あの野郎の一件もニューラやシェルターの奴らに知らせないとな。それと、ライトがどうアーシアを確認するか分からんが、救ってくれた英雄に対して変なことをするんじゃねぇぞ? じゃあな!」
「ちょ、それってどういう意味な.........はぁ、なんかバカにされた気がする。まぁいいや、取り敢えず寒いから中へ入って。丁度御飯を作るところだったけど、食べる?」

ティア ( 2017/12/14(木) 18:08 )