ポケットモンスターズファンタジー 彼女の願いと一つの宝石
Chapter 03
恩返しを
Side キノガッサ


「やっぱりこの娘...実験体にされてたのね...。しかもこのギアに遠隔で毒針を突き刺せる奴隷タイプだから、かなり厄介な事に首突っ込んだわよコレ」
「...となると、壊滅したドリームメイカーズに関連した何かにやられた訳か。逃げたとしたら毒針で殺されているだろう辺り、大方は何かをやれってとこか...こんな小さな子に重荷を負わせやがって。っで、どうするんだ主さんよ? 拾っちまったが、なんだかんだ放り出す気はねぇだろ?」
「...ああ」
「なら仕方が無いわね。しばらく私が面倒を見ておくわ。それに...色々と綺麗にしてあげないと...」
「色々やられてた様だしな...すまないが、頼む。別にそんな趣味は無いが、季節的にそろそろアレのサイクルだからな...何があるか分からん」
「あの、それはアタシもなんだけど。まあそれは置いといて、流石にお湯を使って洗い流してあげたいのだけど...駄目かしら?」
「あー、今回は俺から説得してこよう。事の発端は俺が連れてきちまったせいだからな。っで、ガブリアス。そろそろ定期偵察の時間だと思うのだが、忘れてないか?」
「おっと、もうそんな時間か。ちょっくら行って来るかぁ」
「頼んだぞ。さて、俺は説得してくるとするか...。取り敢えず、聞いたら戻ってくるからな」
「ええ、頼んだわ」

 ニューラが出て行ったのを確認して、私は改めてイーブイの娘に向き直った。確かに容姿はまさに闇に飲まれているのと大差が無いけど...どこか、優しさのような温もりを感じる事が出来るは何故かしら。まあ、それに関しては後々分かるかもだから置いといて...荒削りだけど処置は終わったわね。あとはこのギアの毒針をどうにか出来ればだけど...あれ、まさかコレって。

「.........やっぱり。まさかの私が関わってた初期ロットね。ならココにねじ込めば...よし、簡単ね」

 少し空いている隙間にドライバーを差し込んで、本体をこじ開ける。幾つか知らない部品があったけれど、傷は付けないようにするのは簡単で、目的の毒針機構を取り外した。毒は勿体無いからこのまま保存して、成分はあの人に聞いてみましょ。にしても、毒を舐めて成分を見分け...味分け...を、するなんて頭おかしいと思うのよねあの人...って、あれ?

「.........んっ...こ、ここは...?」
「う、うそ...目覚めるの早すぎ。えと...だ、大丈夫...よね?」
「...い、たた...まだ頭が痛い.........あれ、貴方は? 私は...さっきまで...ああ、そっか。倒れたときにフードが...」
「.........一応、問題は無さそうか。えーと、いきなりの質問で悪いけど、貴方の本当の名前は何なの? ニューラが言うには他の名前を言い掛けたようだけど?」
「ニューラ...って事は、貴方はニューラさんのお仲間...で?」
「質問を質問で返さないでちょうだい。まあ、いいわ。私の名前はキノガッサだけど、ホントの名前はダフネよ。貴方は? あ、先に言っとくけどギアは分解したから安心していいわよ」
「ぶ、分解!? え、あ、うそ...」
「し、心配しなくても良いわよ! ここに入っただけで既に信号なんか飛んでないし、それから発せられてた電波はダミー送信してあるわ! アタシこう見えても手先が器用なのと、機械いじりがちょっと好きで...一時期、ライトに弟子入りさせてと言った器ほどだから」
「ラ、ライト...まさか、ピカチュウの、ですか?」
「ええそうよ...って、何であなたが知って.........まさか、いや...あり得ないわ。あーでも、ニュースを見たりあの本を読んでるなら知ってる筈だから...」

 今、あたしの中では二つの思考が巻いている。この娘の言うライトが本やニュースで知った事なのか、はたまた違うルートで知っているのか。前者ならまだ分かるけど、後者は雰囲気と身体の割には落ち着きが過ぎるのと、何だか他人とは違うオーラを持っている...気がするから、もしかしてという予感。
 出来れば前者であってほしい。ただでさえイレギュラーな容姿をしてるのに意思疎通が出来てるところ、実験されたと思われる雑な注射の痕、そもそもにニューラがシェルターと呼んでるココの場所に住む人達は不安がっている。もしアタシが住民側なら不安だし、そんな奴を早く殺すなり、追い出すなり、身動き封じるなり、何かして欲しいと願う。



 けど、彼女が口にした一言は理想とは違う答えだった。そして、その一言には心に深く刻み込まれ、苦しみに満ちた声だった...。その震えた身体と一言だけで、辛い思いをかなり背負っていた事、危険な人じゃない事も一発で判断する事は簡単だった。それよりも、早く気が付いてあげられなかった自分自身に何やってんのと問い掛けたい程に!

「...ううん、私は当事者...本当の名前は...アーシア。今は...仲間を連れて来いって...人質を取られて脅迫されてる.........」
「...そっか、風の噂で聞いた外への脱出方法を聞き回っている謎人物って貴方、アーシアさんだったのね...。でも、中々に教えてくれなかったり、そもそも知らなかったりで.........ごめんなさい。もっと早く知れればそんな連中から、こんな侮辱を受ける事も無かったのに...。しかも、私達の世界を救ってくれたぐすっ、感謝し切れない恩人にっ...!」
「ダフネさん...私なんかの為に、泣いてくれてるのですか...? あり...がとう.........ぐすっ、ありがとう...」

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Side ニューラ


『...し切れない恩人にっ...!』
「.........そう、だったのか。俺達はやってはいけない勘違いをしてしまってたみたいだ...」
「あのイーブイお姉ちゃん、良い人だったんだね。流石ニューラお兄ちゃんだねっ」
「...ともかく、ちょっと代表を集めるぞ。チナ、もちろん手伝ってくれるな?」
「もちろんだよお兄ちゃん。僕はシェルタの中、お兄ちゃんは外?」
「だな。時間に関しては夕日が落ちたら屋上シェルタにと」
「分かった、行ってくるね?」
「頼んだぞ...さて、行くか。恩返しをする為に」

ティア ( 2017/11/06(月) 10:59 )