家族
Side シルク
「...ら、次はそっちをお願い! 私はこっちの救助をするから!」
「わ、分かりました!」
「シルク! 早くこっちにも来てくれ!」
「まって! コッチには取り残された親子が要るのよ!」
私はサイコキネシスを発動して、瓦礫を急いで取り除きながら、バランスが乱れて危ない時にサイコキネシスを重ね掛けをして押さえ込む。それを何度も繰り返して、私は声の発生源、下敷きになって身動きが出来なくなっている住人を探し続けた。
かれこれ一時間はずっとサイコキネシスを使いっぱなしだから体力不足と、この緊張状態が続く為の気力減少、正直この状態で保って動けているのが分からない。けれど、私がココに居なければ救える命が救えなくなる可能性が増える事は明白...息切れする事も、休憩する時間があったら一人でも多くの人を!
「...見つけたわ! 待てて、もう少しの辛抱よ!」
「それよりまず...こ、この子を! 私なんか良いから早くし...」
「...良くなんかないわよ! 子供だけ助かって、取り残された子供の気持ちを考えれば分かるでしょ!? うぐっ...あともうちょっと、もうちょっとだから...が、頑張って!!」
瓦礫から抱えて守っていた子供を私の方に無理に差し出したのを急いで受け取った後に、私はそう叫んだ。その後により一層、サイコキネシスを念じて限界の三乗掛けで瓦礫に埋もれた母親のスペースを作り出そうとした。けれど、思ったより隙間が開かないどころか、母親の現在状況を見て一瞬だけ力が乱れたのを感じた。けど、すぐにその状況を奥に追いやって、助け出す事だけを考える。
それに三乗掛けした今、どのタイミングで集中が切れて技が止まるか分からない。そして止まれば、支えている破損した家屋が母親を押し潰すことになる...それだけは、助け出した子供の為に何とかして避けないといけない!
「う...ぐ.........」
「も、もうやめて頂戴! このままじゃ、貴方までぐあっ...」
「っ!? ...こ、ここまで来て.........諦めて、たまるかぁぁぁぁぁぁぁあっ!!」
一瞬だけ感じた青白いオーラをバネに、私はそれに答えるように力を一気に流しこんだ。なんだか良く分からないけれど、コレなら助け出せる!
母親の上にある大きな瓦礫塊を浮かび上がらせて、その下の小さな瓦礫を大急ぎで掻き分けて、身体を完全に視認し、母親を瓦礫の山からゆっくりと引っ張り...
「...はあっ! はぁ...はぁ...はぁ...ぎ、ぎりぎり.........間に合った...」
安全な場所まで運び出したところで技が出せなくなって、持ち上げていた塊がまさに母親が居た場所にメキメキっと大きな音で落下...本当にギリギリだった。それにしても今感じた力...冷たいようで温かい不思議な感覚...確か何処かで.........。
「...あ、あの! 本当に、ありがとうございました! それと、子供だけなんて言ってごめんなさい...。私、どうかしてた...まだ物心付く前の息子を...」
「...顔を上げて頂戴。二人共こうして助かった...今はコレだけで良いと思うの。それよりも、あなたは子供と一緒に避難所へ! 助かったと言っても、いつまた大きな揺れが来るか分からないわ!」
「そうね、ありがとう.........えーと...」
「シルクよ。エーフィのシルク」
「シルク...ありがとうシルクさん。だけど...あなたも自分の両親の為にも無茶をしない程度で町の皆を、救って下さい」
「...ええ、そのつもりよ。さあ、はやく行って...」
お辞儀をして、子供を抱えながら私にそう告げて母親は避難所へ走っていった。だけど、今私の感情は助けられてよかったと思う反面、悪意がないって分かってても最後に言われた一言を気にしてしまう。私には両親は居ない...居たけれど、殆ど物心が付く前に震災で失ってる.........。
最初は死んでいるなんて、思わなかった。寝ているだけだと思ってた。でも半日経っても起きなくて、冷たくなっている事に気が付いて、それに気が付いた日は丸一日泣いてた...。
泣き疲れて起きたらドッキリで二人共起こしてくれるのではと期待したけど、目を冷ませば夜風で更に冷たくなった二人...現実は非情だった。それに震災で逃げていた事もあって、それから全く物を口にして無くて、空腹でフラフラ...あまりにも空腹で彷徨ってた時に、私はユウキと.........
「...ルク! 良かった...無事だったか。大きな音がしたから何事かと思ったぞ...シルク? どうした?」
「.........いえ、何でも無いわ。ごめんなさい。次は何処を助けに行けば?」
「...今、泣いてたな。何があったか分からんが、一回休んでこい。それに、お前は一時間もぶっ通しは動きすぎだ。少しは自分の身体を労れ」
「...泣いてなんか、ない」
「...じゃあ、今の頬を伝っているのは何だ? それは涙とは違うのか?」
「...あれ...どうして.........」
「だから、休んでこい。その分は俺達が助け出す。それにもうじき他ギルドの応援が到着する。事態は収束し、もっと早く救い出せるだろう」
「.........」
「はぁぁ...手の掛かる副親方なこった。よっと、動く気が無いならこのまま担いで連れて行くからな.........」