世界線
Side リファル
「...嘘でしょ? .........成る程、ね。確かにそれならこの状況を変えられるかもしれないわ。けど、ホントにそんな物が.........そう、分かったわ。だけど一つ、弟子達にはなんて伝えれば.........分かった、そう伝える事にするわ。それじゃあ切るわね」
「.........どうだ?」
「どうもなんも、かなり大事になってるわよ。どうやら"創造"神とされるアルセウスが、状況を変える為にウィアさんとミュウさんを過去に送り飛ばしたと。目的は何処かにあるとされる光石を探し出す事。因みに今私たちが探して見つけたとしてもマコト君は助からないって...」
「やはり、時間が掛かりすぎたのが原因か?」
「そうね。なんだかんだでそろそろ二週間を迎えようとしている。アーシアさんに至っても何も進歩が無い。けど他ギルトを巻き込むのは出来ないし、元々はライト君達だけでどうにかしようとしてたみたいだし」
「みたいだな。それに俺達のギルドはそこまで大きく無かったから動き回れる利点があるが、他のギルドはそうも出来ない。別に悪口を言っているわけじゃないからな」
「そんなことは分かってるわよ。それはともかく、今はこの情報をどう弟子に説明するか、ね。ただ探す必要は無くなりましたなんか言えないし、ホノンちゃんが実質な指揮を取ってるのもあるし...ホントにどうしようかしらコレ」
「...誤魔化しはせずに、ちゃんと説明するべきだな。そうすれば納得してくれるだろう」
「...やっぱり、それしか無いわよね。じゃあ今日の報告会に説明で良いわよね?」
「だな。 ...っと思ったが、どうやらその説明は要らなそうだ。入って来ていいぞ」
「えっ? ...ホ、ホノンちゃん.........」
意見に相槌を打ったが、ドアの目の前に誰かが聞き耳を立てていたのが分かり、俺はそう言って通した。すると予測通り聞き耳立てていたのはホノン。最初こそ驚いた顔をしていたが、すぐに不安な顔になって...
「.........探す必要が無くなったって、どういうことなの...?」
「包み隠す必要が無いから話すけど、全員が集まる報告会の時でも良い? それとも、今聞いて自分の口からも言う?」
「いえ、今聞きます。聞かせて下さい」
「.........分かったわ。その前に、来たのはホノンちゃんだけ?」
「はい。皆さんから貰ったの情報捜索結果を纏めて、渡しに来たところでした」
「そう。じゃあ話すけど...この前ホノンちゃんは"創造"様こと、アルセウス様に会ったから知ってるわね? その御方がウィアさんとミュウさんを約半年以上前の世界に飛ばしたの。時渡りでは無くて、少し特殊な方法を使った時渡りを使って」
「特殊な時渡り...?」
「ええ、私もそれに関しての詳細は知らないの。ともかくそれは置いといて、二人の目的はこの世界の何処かに存在すると言われる光石を見つけ出す事。ちなみに過去に飛ばした理由は...少し察したと思うけど、マコト君に関してタイムオーバー。時間が掛かり過ぎて助かる見込みが無いそうよ」
「そ、それじゃあ...」
「待って、話はまだ終わってないわ。最初に過去へ飛ばしたって言うのは、それを見つけた状態にして、運命を書き換える予定よ。つまりマコト君を助ける事が出来て、アーシアさんだって見つけ出す事が出来るかも知れないの」
「ほ、ホントに!? ...あれ、ちょっと待って。じゃあウィアちゃんとミウちゃんは見つけないといけない重圧を背負って...」
「そうね、確かに重圧よ。それも報告は関わった人達だけに送った極秘事項。そうペラペラ喋るなとは言われてるけど、ここのギルドは例外で話して良いって。だけど広げ過ぎてしまうと、戻って来る時に影響が出るらしくて、最悪二人は世界の線に拒まれて消滅してしまうらしいわ」
「しょ、消滅...」
「水を差す感じすまんが、世界の線ってなんだ?」
消滅の言葉に、ホノンが後ずさって尻餅を付く。だが俺はそんな事より、親方が言った世界の線とやらに疑問符を浮かべた。話の内容的にはたぶん世界軸のことだろうが、わざわざ分けて言ったと言う事は、たぶん違うのだろう。
「世界の線、世界線は元から決まっている線。ややこしいからあんまり説明したくないのだけど、一言で言うならこの世界が初めから終わりまでを出来事や運命を指し示す、回避不可能な決まりみたいなもの。例えば、遙か昔にあった隕石落下、時の停止、世界の反対側にある諸島で起きた氷山事件とか、それは世界線のプロセスに組み込まれていた事」
「...マジかよ。じゃあそれが分かっていながら、時の停止に至っては闇に飲まれたと?」
「推測だとそうなるわ。少し考えてみれば分かるけれど、星は破滅と繁栄がサイクルしているの。そのたびに新しいものが生まれ、古いものが消え、場合によっては新たな大地を築いて新たな命が芽生え、消え去っていく...コレが世界の理であり、世界線なのよ」
「じゃ、じゃあ私たち人間がこの世界に来ることも?」
「...それに関しては想定外らしいわ。だから、急な出来事に世界がイレギュラーを引き起こして、それに対応や適応をしようとして多大な影響をもたらした。そもそもにダークライが何故に存在したというか、現れた事も分からなくて、それが狂いだした根本原因と、今は亡きナルトシティの親方だったシュエリさんから聞いてたわ」
「...そ、そこまで知ってて何で話さなかった!? 話していれば運命は変わっていたし、余計な被害者も出たかっただろう...がっ!!」
「くっ!?」
「し、ししょひゃっあ!?」
「.........はぁ、すまん。ついカッとなっちまった。怪我は無いか?」
「...ええ、軽く爪が欠けたのと爪元が痛むけど、問題ないわ。にしても流石の力ね...力の加え方を間違えてたら、今頃流血してるところだったわ。それと...やっぱりリーフブレードは真っ黒なのね。まるで炭を練り込んだみたい」
「はは、冗談言えるなら問題無さそうだ」
リーフブレードを突き付けた手を降ろして、俺はそう言われたブレードを見る。昔のエメラルドグリーンで光を放っていたブレードはそこには無く、比喩された通りの真っ黒なブレードが黒いオーラを放って光っていた。
「そっちこそ。あー...ホノンちゃん? 腰が抜けてるけど、大丈夫?」
「ちょ、ちょっと足に力が入らない...。それに音も凄かったし、衝撃波みたいのが...」
「おいおい、それは無いだろ。ほら、手を貸すから...立てるか?」
「う、うん...ありがと、ししょー」
「例には及ばん。さてと、今の出来事でみんな来ちまったみたいだ。コレは早めに提示しなきゃ駄目そうだなこりゃ...」
「ふふ、誰かの怒鳴り声が大きかったせいかしら?」
「おいおい、誰のせいだと思ってるんだ...。まあ、そんなところ嫌いじゃ無いがな。さて、行くとするか」
「そうね。ホノンちゃん行くわよ」
「は、はい」