発作
Side ???
.........色々な感情が渦巻いて、一時的にとは言え皆に会えるのに、これからしなくちゃいけない事に狂いそう。姿だって不安しか無くて、大きなフードを被りながらじゃないと動き回れない。しかも捉えられていた場所に関しては、目隠しをされて車で運ばれ、ナルトシティのスラム街エリアと呼ばれた場所で降ろされた。この場所はナルトシティ中心部の発展に付いて行けず、家や道路などあらゆる所が寄せ集めの廃材や、建壊しに出た廃材を使って作られている。しかもこの区画は高い壁に囲われて、ナルトシティ中心部に向かうにはゲートを通るか、下水道を抜ける必要ががあるのだとか。
ちなみにこの情報はスラム街に住む男の子から貰った情報で、対価は...酷いもの、最悪で最低な事だった。お陰でまだ身体がフラフラで、とても痛い...何より綺麗な川に飛び込みたい。だけどそれは叶うことではなく、寄り道や道訪ね以外の助けを求めてもならない。全部、あいつらに付けられたギアに記録され、盗聴され続けているから。わたしはあいつらの手駒であり、奴隷であり、犬...逆らえばサニャさんやサニャさんのお母さん、最終的には皆が.........。
「.........きゃっ!? ご、ごめんなさい!!」
「おい、ちゃんと前を見て歩け...見かけねぇ顔だな。しかもフードで身体全体を隠して...いや、そのボロ布は中々使えそうだ。くれないか? 代わりに他を渡す」
「こ、これだけはやめて下さい...。なんでも、しますから...」
「ほーう? その言葉はこの場所でどんなに危険な言葉か知って言っているのか?」
「...もう、身を持って知ってます。払える対価が無かったから...」
あぁ、今度はこの人か...何だかこのまま今日はこの場所を抜けられない気がする、体力的にも、精神的にも、受けた心の痛み的にも...。
「...確かに、知っているようだ。それとお前もか? 話す限り、種族と声質で判断するとかなり子供のように思えるが、大人しすぎる」
「...それには、答えられない」
「思い出したくない、そう言いたげか特別な理由がありそうだ。来い...あー、名前なんだ。因みに俺はニューラだ」
「わ、わたしはア...イーブイ、です」
「イーブイか、通りで珍しい訳だ。このスラム町じゃ、イーブイ系列は見た事はねぇからな。じゃあ付いて来いイーブイ。俺のテリトリーに連れてってやる」
ーーーーー
Side イーブイ
「...ココが、ニューラさんのテリトリーですか?」
「ああ、外よりは安全なところだ。もともとここは計画されていた地下鉄が駅あったのだが、今は封鎖されて無かった事にされてる。ちなみにテリトリーと言うが、ここには俺以外もい...」
「ニュラお兄ちゃん、お帰りなさいっ! ...あれ、その子は?」
「お兄...ちゃん?」
説明を聞いてると、何処からか走り込んでくる音が反響していて、それに気が付いたニューラさんの声が途切れたと同時くらいに明るい声が反響した。唯一はっきりと聞こえたと思う方向へと振り向くと、ポチエナが尻尾を振って居た。見た限りでは帰りを待ってた、みたいな状態。
けどすぐに私が居る事に気が付いて、目の前に歩いてきた。見た限りでは結構若くて、元の世界で言うならば小学一年生になったかな辺りだと思う。
「ああ、ただいま。出鼻を挫かれたが、コイツは俺と住んでいるポチエナ。その他に色々な人がココで生活し、使用している。実際のところ、戦闘で俺が勝ち取り、前の家主が独占していたのを開放したってところだ。条件付きだが、雨風くらいは防いでくれるからな」
「...見かけにより、お優しい心の持ち主なんですね」
「その言い方はやめろ。単に前の家主が気に入らなかったのと、自分もココを使いたかったからだけに過ぎん」
「...ニュラお兄ちゃん、嘘ついてる。ニュラお兄ちゃんが優しい事、僕やココのみんなは知ってるよ?」
「なっ!? ...はぁぁ、ああそうだよ。俺はお節介焼きだ。イーブイ、その布を取ろうとしたのも、何かしらの口述を付けてココへ連れてくる為だ。腕に付いてるギア...盗聴されてるんだろ。それに名前もちゃんとありそうだ」
「へっ? な、なんのこと...ですか?」
「ココの中では安心しろ。ココは通信系統が全く使えないことになってて、何より作りが少々他の駅と変わっている。ココの開発が放棄される前から、治安が悪くて頑丈に作られていてな、その影響で一つフロアを降りると全く繋がらない」
「そう、ですか。...ごめんなさい質問なのですが、先程私に対して放った"お前もか"に関してですが、さっきまで全然分からなかったけど、つまり貴方も...外から来た人なのですよね?」
「...ああ。元々俺は救助隊に所属していた身だ。けど、ここに来る前に降りたがな。ココの救助は出来ないという方針に我慢がならんからな。最近になってあの大企業が他世界から来たやつに潰されてから解禁されたらしいが」
「...やはり、影響は大きかったですか?」
「そうだな。良くない事もあったが、良かった方が多かった。ここの町は前まではもっと酷く、暴力や揉め事に争い事、奴隷など何でもありだった。因みにココを管理していたのはその大企業と噂だ。っと言っても、強制労働させられたり、実験体として使われていただけだがな。でも潰してくれたお陰でそれが無くなって、精神的にかなり助かった。もし会えるならば、ありがとうと心から感謝したい」
「よかった...。野望を止めた後に実感が無かったけど、救われた人がやっぱり居たんだ」
「えっ...イーブイのお姉さん、まさか?」
「...あっ」
まずい、弾みで答えちゃった...コレは、バレた。それに聞かれていないなんて確証が持てるわけじゃないし、私を捉えていた会社の誰かが監視役として紛れていることも否定出来ないっていうのに...。
コレでもし皆に何かあったとしたら...私は...私は.........うっ!?
「流石にそれはないだろ。そうだよなイーブイ...イーブイ?」
「イーブイお姉さん? だいじょ...イーブイお姉さん!?」
「お、おいどうした!? ...ってコイツ闇に飲み込まれてやがる!? チナ! 腕っ節が強いやつ今すぐ呼んで来い!!」
「わ、分かった!!」
あ...れ......なんで、私は...倒れてるの...?
それに、なんでニューラ...さんは私の首元に...爪を.........?
...そっか、倒れた時にはぁ...はぁ...羽織ってたのが...取れたから...はぁはぁ.........。
な...んか、凄く息苦しくて、心臓は圧迫...はぁはぁ...いったい何が.........。
「...変、だ。嫌という程に見てきた闇に飲まれた奴と、全く違う。まさか汚れ過ぎか、色違い...なのか? 意思疎通も出来ていた...もし、仮に実験体にされていた人と考えれば.........」
「ニュラお兄ちゃん連れてきたよ!」
「...コレがそうか。始めて見たが...既に弱ってるじゃないか。ニューラ、お前がもうやったのか?」
「これが噂に聞くやつね。中々に黒いじゃないの」
「ガブリアス、キノガッサ。呼んで来て悪いが...俺は今、凄く迷っている」
「どうした、そいつを殺るのが嫌なのか? なら俺が業火で焼き尽くしてやるが」
「私の神経毒ならすぐに殺せるわよ」
「そういう事じゃない。さっきまでコイツ、イーブイとは普通に話してた。そこらの闇に飲まれた奴とは違い、はっきりと意識があって、意思疎通が出来てた。だが急に苦しみ倒れて、身包みが取れたらこの姿...慌ててお前達を呼んだが、本当に殺って良い物なのかと。なんだか殺ったら、何かが終わりそうな気がしそうでならない...」
「...ニューラがここまで迷うなんて珍しいわね。で、どうしたいわけ? このまま殺すのか、それとも生かすのか。ココの主なんだから、どんな事もアナタに従うわ」
「それは俺もだな」
「.........分かった。しばらく様子見後、襲う事があるならば殺ってくれ。今は取り敢えず、コイツの治療だ」
「治療と言ったって、何すれば良いわけ? 取り敢えずアロマセラピーやら、余ってる木の実汁を飲ませて、安静に寝かすくらいしか出来ないわよ?」
「それで十分だ。やってくれキノガッサ」
「はぁ、じゃあ俺は状況説明に回ってくるぞニューラ。良いな?」
「ああ、頼んだ」