諦めない
Side スイレン
...予測はしてたけど、やっぱり全員凄い。知らない人はまずいない人達ばかりだし、前半の会話は全然理解出来なかった。そして何故かとても空気が重たい...重たいというより息苦しくて、気的なものに心臓が圧迫されてる気がする。それもホノンさんも同じみたいで、なんか難しそうな顔をしてた。だけど、それを見て、何度かは遅れて隣りに居来てくれたミウさんが説明を入れてくれて、なんとか理解は出来ていた。
『...そんなところだ。引き続きの調査を頼みましたぞウォルタ殿』
「うん、なるべく早く調査結果を提示が出来るように頑張るよー」
『ああ、頼みましたぞ。 ...さてと、だいぶ長くなってしまったが客人の件について会合を始めるぞ。では"原初"よ、説明を頼みましたぞ』
「は、はい! えー、この度は急な呼び出しをしてしまい、大変申し訳ございませんでした。ですが、今からお話致します事に関し、私だけではどうも出来ないと予測しての結果です。後は内容に関してですが、ココに居ります導かれし者のスイレン、そしてホノンからも意見がある事にご了承を。では前置きはこの位として始めさせて頂きます」
どのくらい待ったか分からないけれど、アタシ達にとってやっと本題に入ってくれた。元素と呼ばれたミウさんはフワッとアタシ達の横から離れて、会合をしている真ん中に移動して話し始めた。それにミウさんはアタシ達が話せるようにアプローチまでしてくれた...このままじゃ何も言えないような雰囲気だったから、本当に助かったナノ...。
「まずは私の予想からお話しますが、スイレンがこの世界に戻って来たのは昨日か一昨日に掛けて。そしてもう一人、マコトと言うマリルの男の子もこの世界に来る筈だった。ですが来られたのはスイレンだけ...しかも、訪れた時は手足や目が見えなかったそうで。あとは、お馴染みのライトの言葉ですが訪れる事は不可能なのにという事だそうで」
『...何が言いたいのだ"原初"よ。もしや"空間"の私が何かしたとでも言いたいのか?』
「い、いえ...そういう事では...。ですが三年前の導かれし者達をこの世界に導いた時はそのような事が無く、その後に対応をしたと仰っていたので...」
『うん? その対処って何なのよ"空間"様』
『...相変わらずの態度だなエムリットよ。非常席員な癖に』
『今はそんなことを言ってる場合じゃないでしょ!? 一人の命、子供の命が掛かってるかもしれないのよっ!』
【静粛に。ここは争う場ではない】
『そ、"創造"様...申し訳ございません...』
【謝らなくてもいい。だがエムリットの言う通り、一人の子供の生死が関わるかもしれないことだ。優しいエムリットが声を上げるのは分かる。さてミュウとディアルガよ、続けるが良い】
「は、はい!」
凄い...たった一言で...。それに"創造"の神だけあって、なんだか怖いところもあるけど優しいところもある。やっぱり神と言いつつ、やっぱり普通に人何だと思えると何故だか安心出来る...。
『出鼻をくじかれたが、行った対処についてだ。私は他世界からの大勢干渉に気が付いた後、この世界がまた外部干渉を受けないように障壁を作った。まあ、その障壁すらあの科学者は通してしまったがな。しかも最近に次元の狭間に侵入したようじゃないか』
『...科学者ってそこに居るピカチュウ、ウィアさんの事かしら?』
『半分は合ってるが違う。ウィアはその科学者、ピカチュウのライトによって作らされたものだ。ああ、気を悪くしないでくれウィアよ』
「い、いえ。説明をして下さって、そして知って頂いていて光栄です」
『それは良かった。では少しずれたから戻すが、その障壁は二段構造でな、しかも一枚目と二枚目には空間を設けてある。私の力を注入し、一応に保険として"刻限"にも介入して貰っている』
『その事ならコッチも一言じゃな。確かに"空間"が言うように介入をしておる。わしがやったのはその空間での時間軸作成で、この世界とは全く違う時間が流れておる。どのくらい違うのか説明するとじゃの、大体は1/4でゆっくりと流れておる。遅くなれば干渉するのが容易いからの。じゃが...スイレン殿、そなたはほぼ影響なく突き抜けたようじゃ。ただ、少なからず何かしら影響はあった筈じゃ』
「は、はい。目も見えなくて、手足も辛うじてしか...」
『それは"刻限"の影響が残ってたからじゃ。だから意外と直ぐに治ったじゃろうが、少し怖い思いをさせてしまったようじゃ。それと関係し、そなたと来たとされるマコトという少年に関してじゃが...ちょっと厄介な場所に居ての。少し干渉が難しそうなんじゃ』
「む、難しい?」
「えっ、二人でも難しいの? そうしたら打つ手が...」
【...そうだな。スイレンとウォルタよ、一先ずここからは私が話そう】
『まさか"創造"様が直々にとは、ありがたい限りじゃの。わしらじゃ、ちと荷が重すぎる...』
【まあそうだな。実言うと私からも少し言いにくいが...いや、単刀直入に言う。マコトに関してはだが、救出は困難を極める。どうやら私が管理出来る領域外に居るようだ。しかもこの世界とソナタらの世界の間に...つまり、両方の領域外にだ】
「...じゃあ、マコトにもう会えない...そう言う...こと...? うそ...だよね? 冗談で、しょ...?」
嘘であってほしい。私は本気でそう思った、そして冗談である事を願った。けど...アルセウスは首を縦に振らず、そればかりか目を逸らしたのを見て、私の中で何かが弾けた。
「やだ、やだよ...そんな事、認めたくないっ! アーちゃんの行方も分からなくて、今度はマコトにも会えなくなったなんて...信じられるわけ無いよ! それならこんな世界に来なきゃ良かった! 助けきゃよかったっ!!」
【なっ!? ぐぅぅぅぅぅ!!】
『そ、"創造"様!?』
『"創造"殿!?』
「ちょっとスイレン何やってるの...って、スイレンの身体の色が変わってきてる!? 一体どういうこと!?」
「ま、まさかスイレンちゃん...シルクさん! スイレンちゃんをサイコキネシスで押さえ込んで! 早く! ウォルタさんも押さえ込んで! 早くしないとダーク化しちゃう!」
「だ、ダーク化っ!?」
『...全員その場を離れるのじゃ。すまぬスイレン殿...亜空切断!!』
「ぎゃあぁぁぁぁあ!!? ...う、あ.........」
そんな...認めない...
認めナイ...
二人ヲ、カエセ.........
ーーーーー
Side ホノン
「.........パルキア様は急所は外したって言ったけど、やっぱりかなりの重症ね」
「...しょうがないよ。だって、会える人に会えると思ったら会えなくて、そしてもう一人も立て続けに失った...こんなコト、私もスイレンちゃんみたいに耐えられないよ...」
私はスイレンさんへ痛々しく巻かれた包帯に少し目を逸らしながら、私はポツリと呟いた。確かに、同じことが起きれば私だって...。
「...一先ずは処置は終えといたわ。怪我の度合いから言うと二日は必要な感じよ。それと...動けるようになる前に様子見をしなきゃだけど。そう思えばウィアさんは?」
「ウィアさんはまだあっちに居るみたい。ダメ元で何か出来ないか三神とシードさんとウォルタさん、あとはウィアさんが話してくるって言ってたよ」
「そのことに関し、ホントは私も行かなきゃだけど、何かあった時に直ぐに対処が出来るようにと任されてここに居る関じ。だけどスイレンちゃんが心配だったし、当然にマコト君が心配だし、未だに行方掴めずのアーシアちゃんも...」
「...あの、こんな事を聞くのはどうかなってちょっと思っちゃうんだけど...何で戻ったはずのアーシアさんがまだココに?」
「そっか、ホノンちゃんは私達とは別行動だったから何も知らないのよね。まずにアーシアちゃんに関しては、戻る前についてはなんとなく分かるわよね?」
「うん、分かる。あの事件に関わってた、私と同じ導かれし者の一人だった。ココで寝てるスイレンちゃん、そして何処かに居るはずのマコト君も」
「そうね。だけどアーシアちゃんに関してはもう違う存在になってるらしいの。しかも帰ってない理由は自らの意志だって」
「...つまり、アーシアさんはこの世界にとどまる事を望んだって事? なんの為に? 私はタイミングを逃したというか、今が好きだから残ってる訳だけど」
「そ、それは...」
「シルクさん、その事に関しては私が聞いてるから話すわ。アーシアちゃんはみんなと元の世界に帰るとき、自らの強い意志でこの世界に留まる事を選んだ。理由はドリームメイカーズはどうにかしたけど、自分達が来た事による次元の歪みや、それに飲まれた人達、増えるダンジョンに放ったらかしに出来ないって。その願いの思いにライトさんが作った装置が壊れた...大体はこんな感じですね」
そ、装置が壊れたって...攻撃でもしたの?
でもそんな事をするような人には思えないし...
「壊れたって言ったけど、攻撃したの?」
「攻撃はしてない。けれどアーシアさんの強い意志に装置が答えちゃった結果なのかしら。その辺は良く分からないからライトさんかウィアさんにで...」
「...それ、ホントなの?」
「ス、スイレンちゃん...き、気が付いたの? っと、まだ動いちゃダメだよっ!」
不意に声がして、私は振り返ると眩しそうに目を瞑るスイレンちゃん。起き上がろうとしたから私はまだ寝てるようにと、起こした体をもう一度寝かしつけようとしたけど、スイレンちゃんはお構い無しに身体を起こして、私達を見た後に辺りを見渡して、
「そうよスイレンちゃん。行ったのは応急処置的なものだし...あれ、もしかして本当に痛くない?」
「うん、平気。忘れてると思うけどアタシは治癒力に関して凄く高い事を忘れてるでしょ。っと言っても、こんなにも早いのはシルクさんの手当のおかげナノ。 それは良いとして...アーちゃん自らこの世界に戻る事を願ったって、ホント?」
「...ホントです。事柄を見ていた訳じゃないので聞いた話になっちゃいますが」
「そう、なんだ...。じゃあさ...アタシとマコト、無理してまでくる必要なんか無かったんだ...。 あっちでまた会おうねって言ってたあの笑顔くずっ...笑顔は...嘘だったんだ...」
「そ、そんなわけ無いわ! 理由があったから、この世界をまだ救い切れてないから、たぶん...そうなんじゃないかって、優しいアーシアちゃんだから私は思ってるわ」
「...じゃあ、じゃあなんで私達に何も相談をくれなかったの!?」
「スイレンちゃん落ち着いて下さい! それに傷口も開いちゃいます!」
...まただ、さっきよりはまだ薄いけど黒みが掛かってきてる。しかもその事に二人共が分かってない?
思い返してみれば、私がダーク化しちゃうって言ってから皆が気が付いたみたいだったし、前も同じような感じでダーク化する前の人を止めた事がある...もしかして私、ダーク化する前の見分けが出来る...?
「傷口なんて関係ない! だったら心の傷を癒やしてよ! 裏切られて、大切な人を失った悲しみを、癒やしてよ!!」
「...スイレンちゃん」
「なにんーっ!!?/// .........ホ、ホノン...ちゃん?///」
「ちょ、ちょっと何やってんの...よ?/// っというかホノンちゃん...大胆...ね///」
「あの、その...コメントに困るのですが...///」
「あっえーと...また、スイレンちゃんがダーク化しそうだったから、何か落ち着くというか、一瞬でもそれを忘れられることが無いかなって思ったらこれで...。一先ずはスイレンちゃん、私はアーシアちゃんと話したことがないから予測しか言えないけど、アーシアちゃんは裏切りたくて裏切ったんじゃないと思うよ。本で読んだ話と直近を混ぜ込むけど、一度アーシアちゃんは飛び出ていちゃった事や、一人で無茶する事があるんでしょ? たぶんに、帰れるタイミングがその日しかなくて、でも問題はまだ一杯あって、それを残して帰りたくない。だから自分だけでも残って片付けようとしてたんじゃないかな。皆に悪い、ごめんなさいと思いながら。私ならそうしてるよ?」
アーシアちゃんがどんな人か知らないけど、なんだかそんな感じがする。一人無茶で怪我をして、だけど頼れるリーダー的な存在であって居なくちゃならない者...。
「...そっか。そうだよね、アーちゃんが適当な理由でこの場に残るなんてありえない事ナノ! ありがとホノンちゃん、ちょっと目が覚めたよ。けど...恥ずかしかったぁ...///」
「あっ、ごめん...っと、取り敢えずそんな事だと思うからスイレンちゃん、あんまり自分を責めちゃ駄目。マコト君だって絶対に助ける方法はある筈だよ!」
「そうよ、運命は絶対なんか無いわ! アーシアちゃんに関しては思いの力で世界法則を捻じ曲げられたんだから!」