Unknown04C
Side ウィア
「...さて、まさか極秘で島の調査をしていたなんて思って無かったですが」
「そうね...けど、どうにか口止めと若干権力で本島には連絡を入れ無いで黙認してほしいとか、普通言えないわよ?」
「でも言わなかったら、今頃パニックですよ? 自分がもう一人も居るなんて」
「そ、そうだけど...」
「私ならパニックですね...。あの、ところでコチラのニューラさんは?」
「そう思えば説明してなかったですね...この娘はフランちゃん。色々あって保護している感じです」
「この娘、結構適正があってね。何故か爪を使った攻撃に特化して、後は移動技を駆使。ちょっと私が力を分け与えたら、まるでミミアンちゃんみたいに、素早い近接攻撃型になったのよ」
「それで、相性の良いあしらいスカーフを...?」
「はい、私が付けていたのを渡しました。私はどちらかと言えば遠距離主体なので、渡すならフランさんかなと」
「これもスゴいけど、ミウも凄い。ううん、全員凄い人」
「わ、私はすごくなんて無いですよ...確かに、私は皆さんと違って技数制限が無い事や、技を使いすぎてもう使えないがありませんが、それだけの事ですから...」
「ふふ、やっぱりいつも通りのアーシアちゃんね」
いつも通りの...確かに、控えめに自分を言ってしまうところのある、いつも通りのアーシアさん。でもアーシアさん、それだけの事ですからと言ってるけれど、割と気にしてる人もココに居るのですよ?
しかもフランちゃんは力を分けてもらったら、電光石火 高速移動、研ぎ澄ます、剣の舞、しかも爪を使う攻撃なら何でも出せるクローマスターなんてある。一応で自分も、電気技なら何でも出せるエレクトロニクスがあるけれど、あくまで電気技だけで、フランちゃんのように色々な属性は扱えない。
「ちょっと似てる」
「技が色々使えるっという意味では似てるの...かも? それで私とフランちゃんやミウさん、ウィアさんと協力して、何をすれば?」
「一言で言うならば捜し物であり、だけどその捜し物が見つからないと助けられない。良いアーシアさん、落ち着いて聞いて。まず私達は未来から来てるの」
「み、未来...そうなりますと、セレビィなどのお力をお借りしたのですか?」
「いえ、違うわ。お力を借りしたのは創造様。分かるように言うと"アルセウス"様よ。私とウィアちゃんは未来でスイレンちゃんに会ってるの。理由はアーシアちゃん、アナタを呼び戻すためよ」
「スイレンちゃん...し、しかも呼び戻しに来たって.........で、でも! もう来られないはずなんじゃ!」
「そこが不思議だったのですが、実際に来ています。ですがその時に一緒に来るはずだったマコトさんが来れず、アーシアさんの世界と私達の世界の間に囚われ、助ける為には何処かにある光石を見つけるを見つける必要があるのです。ですが、その場所と思われる反応、とても運良く本島にある"テヌラのダンジョン"最奥地に存在する事が確認出来ました。ただし、環境が劣悪であり、敵の強さ、天候、気温、層の広さ、全てがぐちゃぐちゃであり、二人で挑んだところ、15層までしか踏破不可能でした。しかも、最奥地階層は25層目だったり、場所によっては時空断裂や乱れてたり...なので、私達以外に一人か二人の強い人を探してたのです。そしてフランさんという強力な助っ人が見つかった例外が有りましたが、最初の目的はアーシアさんとの接触でした」
「頑張る」
「...で、でもフランさんは戦闘が経験無いか浅いのでは? そのような方が一緒で、不安が...」
「いえ、私が見た限りはかなり素質が有るわ。ここの諸島はイレギュラーが混ざってるって、調査してたアーシアにちゃんなら知ってるでしょ。かなりの安全マージンをして挑ませたら、苦戦しながらも見事に倒したわ。中でもスピードと瞬間判断力はズバ抜けて高い」
「...そこまでミウさんが言うなら大丈夫ですね。では改めてフランちゃん、よろしくです!」
「ん」
「...さて、では目的のテヌラ神殿へと挑む前に、突入準備としてまる一日の準備をし、二日後の朝から移動して籠もります。多分、丸三日ほどダンジョンに居ますので、それを考えた上で準備ね」
「...分かりました」
「後はフランちゃんは...まずお風呂は決定。女の子として先ずは土まみれな毛並みはダメ。しかも綺麗な黒色で華奢で。もー、勿体無いわ! それに、小さくて可愛いし、ナニコレって感じで!」
「んー!? んー!?」
「.........そこまでです、ミウちゃん。フランちゃんが困っちゃってるし、しかも軽く息苦しそうにしてるから離してあげて...」
「あっ、フランちゃんごめんなさい...。にしても、まさか私から生まれた子がこんなに可愛いのが居るなんて、嬉しい限りね」
「...うま、れた?」
「...ミウさん、説明を省き過ぎです。確かに大枠で見ますと合っていますが、細かく言うとミウさんが居たからこそ、私達のような様々な種族が存在している。ですよね原初様さん?」
「?」
「っ!? ...今の首をコテンとした傾げ、流石に不意を付かれました...うん、可愛い。落ち着いた性格も相まって、破壊力が...」
「せ、説明したアーシアさんまで! もうっ! 時間が無くなりますよ!!」
ーーーーー
Side フラン
なんだか今日は色々あった。ミウとウィアに助けられた後、ちょっとした町みたいなところでイーブイのアーシアって人と会った。どうやらこの人、三年くらい前の異変を解決した人みたいで、ミウやウィアも関係者と聞いて驚いた。その時もあんまり驚いてる風に見えないって言われたけど、本当に驚いてた。その後のミウが抱きついて来た事にも驚いて、抜け出せなくてジタバタしてたけど、あんまり悪かったとは思ってない。なんだか安心したような、そんな感じもするし、まるでお母さんに抱かれたような心地良さだった。
そして今はテレポートという技で、さっきまでいた島を離れて他の何処かの部屋に居た。でもなんだか凄い部屋、こんな部屋なんて見た事が無い。
「...到着っと」
「えーと、ココは?」
「ココは現在私達が拠点としている町の宿ですね。三人部屋として使ってますが...詰めれば四人で寝れるかと」
「そ、それって大丈夫なのですか? 宿などって部屋代の他に、人数代も払う様な気がしますが...」
「もしかしたら変わるかもと言ったら、支払の時に言ってくれれば大丈夫と言われてるから、多分問題無し。それに今、詰めればとか言ってたけれど、布団一式をもう一つ借りれば良い話よ」
「ん、私の為なら必要ない。その代わりに、出来るならニューラに変身した状態で寝てほしい」
「え...そ、そうしたいなら良いけど...どうして?」
「ミウに抱かれた時、お母さんに抱かれた時と同じ感覚がした。ダメ?」
「...分かった。参考までに特徴とかあれば、聞いていい?」
「特徴は、耳のコレが私と逆。後は目が鋭くない、私より...多分まだ少し大きい。このくらい」
お母さんの特徴、それくらいしか無かった。もっと昔なら色々と特徴を言えたかもしれないけど、細かいところまでは流石に覚えきれてない。でもそうミウに伝えると、少し考えてから分かったと言いながら目を瞑って、ミウの身体が光に包まれる。変身している時のミウは、まるで進化している時のような光で、改めてミウが私やみんなのお母さんなんだって、実感が出来た。
それから少しして、光が収まりながらシルエットがニューラの形になって、完全に変身し終えたミウがゆっくりと目を開ける。その顔を途端、私は無意識にミウに走って抱きついてた。この感じ、この感覚、そして言った特徴、やっぱりちょっとだけ違うけれど、お母さんを感じるにはそれだけでも充分だった。正直ここまでだなんて、全くも思ってなかった...
「...ちょっと不安だったけど、この様子なら問題が無さそうね」
「うん、ありがと」
「さ、流石、ミウさんの変身能力ですね...」
「ミウちゃんの変身はメタモンやゾロアのような変身できる人と比べてかなり...いえ、そのままな変身が出来ますからね。しかも、アレンジも出来る事と、ミウちゃん以外の変身が出来る種族は、本人が目の前に居ないと変身できなくて、一言で言うならばもう一人のそっくりな自分が居ると言う事ですから」
「...ん、ありがと。元気出た」
「それは良かった。さてと、アーシアちゃんとフランちゃんにはこの町が何処なのか、説明して無かったわね。今、私達がいる町...と言っても島なんだけど、パラドシス島のパラドシスタウンにある宿よ。一応探検隊や救助隊に向けた宿だけど、ウィアちゃんの特例を使わせてもらって借りたわ」
「と、特例ってわけでも無いですが、コレでもギルド本部の関係者なので、少しだけ交渉した感じです」
「...そう思えばそうでしたね。ところで何故にパラドシス島へ? 道具を買い集めるのならば、本島の方が良かったのでは?」
「アーシアさん、忘れたのですか? 私とミウちゃんは今の時間軸に存在しちゃいけないんです。本島で行動をしていたら、鉢合わせも十分ありえるわけで、だからこそ離れたこの島に居る訳です。しかもパラドシスは三つの遺跡があって、伝説のポケモンを祀っているとされる遺跡の調査の為に探検隊がよくやって来るんです。その他にも"月光の泉"と呼ばれる泉があって、そこには透明度の高い水が溜まり、そこで占いをすると未来の事が見えるという噂がある泉を求めて人が来るので、そのお陰で流通量がそこそこに多いんです」
「一応で住宅地みたいのもあるわ。あんまり広くないけれど、図書館や病院、銀行、郵便局、救助と探検隊向けのアイテムショップもちゃんとあるのよ?」
「へぇー、先程まで居たヴィシリア島より栄えているのですね」
「栄えていると言いますか、あの島で住みたくはないですね...。一応安全としているエリアは確保されてますが、低確率で闇に捕われし者がその辺りを徘徊する場合がある事はアーシアさんでもご存知ですよね?」
「そ、そうでした...」
闇に捕われし者...それって心持たぬ者かな。あんなのが居るのに安心して寝れるわけが無い。姿を見たのは今日が初めてだったけど、夜に押し込まれる倉庫の外から雄叫びが聞こえたりすると、怖くて堪らなかった...。
でも今は皆が居る。探し者が終わるまで限定だけど、少し力だって分けて貰えた。だから力を返すまでに、力を分けてもらう前よりも強くなって、困ってる人を助けられるようにしたいから。
「それはともかく、行動開始よ。最初は道具やアイテムだけれども、それは明日に考えるということで、問題は食料ね。安全エリアに関しては五フロアごとに休憩と脱出ポイントのところだから、本当に食糧問題だけどうにかしないといけない」
「ミウさんのテレポートじゃ駄目なのです?」
「当然試したけど無理だったわ。しかもダンジョン関連は脱出は出来ても、外からのテレポート系を弾くのよ。本当に都合が良いように出来てるんだからイラッとする」
「弾かれると言いますか、ダンジョンは一言で言うならば異世界なわけで、通常の理が幾つか通用しないんです。アーシアさんが付けるギアや、私のギアだってダンジョンに籠もってる間は通信系がほぼシャットアウトされますし、使えてもローカルで動くマッピング、メモ、同じフロアに居る限定のみチーム内で通話が出来たり、その程度なんです」
「割と万能だと思ったら、やっぱり欠点はあるのね」
「コレでも克服しようとしてますけど。それで...食糧問題でしたっけ、確かアーシアさんってプラチナランクですよね? バッグのストレージ...空いてます?」
「...空いてるには空いてますが、四人分の食料を詰めるほどには空いてないかと。私も色々と入ってますし...お二人のバックは?」
「コレは探検隊バックじゃなくて普通のスポーツバッグで容量は見た目通り...しかも衝撃がそのまま伝わるので、食べ物や割れ物はちょっと。探検隊バックを一時期借りた事もありますが、例外的に借りていたので最低容量になり、足らなかったんです」
「そうしたら.........えい。あっ...コレは見なかったことにして頂けると...///」
「...いっぱい出て来た。凄いそのバック、どんな仕組みなの?」
アーシアがバックをひっくり返すと、バックの大きさに合わずに色々なものがゴロゴロと出てきた。リンゴやグミ、木の実や、見た事もない道具や...歯ブラシや石鹸、ブラシ、タオル...うん、メガネとか完全に個人物まで出てきてる。
「仕組み的には謎しかないのですよね。ギルドの上層部に属す者としても仕組みが良く分からなく、但し複製と破棄は簡単で、複製しても必ずギルドの登録をしないと先程言った通りにただのバッグであり、登録する事によって本来機能が引き出されるんです」
「ん、もうちょっとだけ詳しく」
「詳しく...ごめんなさい、出来るならばしたいのですが、無理です。でも新しくなったギアとバッジの事なら」
「それは後で知りたい。今はバックの事を知りたかった」
「理解が出来るか分からないけれど、私も良い?」
「うん、構わない。アーシアさんは?」
「私は...一応聞いておきます。もしかしかしたら知らなかった事があるかもですし」
「じゃあ今日の夜にちょっとだけお話しますね。それで会話を戻しますが...アーシアさん、今回に限り必要ない物を部屋に置いて必要物だけにする事は可能ですか? 装備品に関しては...挑む場所の状況がぐちゃぐちゃなので、汎用的に使える道具だけにしたりして」
「えーと、元々ソロを想定して道具やアイテムを揃えていたので、そこそこ開くかなとは」
「なら、お願いしても宜しいです?」
「分かりました。では少し整理をしてくるので...」
「見ないで、よね?」
「はい」
「分かったわ。さてコレで食糧系に関してはアーシアちゃんのおかげで一応クリアね。そうしたら...ん、フランちゃんお風呂を先に入っちゃう? 外出るにも、やっぱり綺麗にしてから歩かせたいし」
「お風呂行く!」
お風呂...もうかなり長く入れてなかったから凄く嬉しい。ずっと川や泉で水浴びくらいしか出来なかったし、出来ても満足に浴びる事が無かった。それに夏なら良いけど、今の時期は逆に風邪になったり熱を出した事もあって、とても辛かった...。だけど、それは今日でサヨナラ!
いつぶりから分からない水じゃないお風呂...凄く楽しみ!
「決まりですね。ところでミウちゃんは変身したままにします?」
「あー、変身は解いちゃうわ。その方が...フランちゃん?」
「そのままで居て欲しい。出来れば今日寝るまでは」
「そう、よね。うん.........フラン、お風呂に行きましょ? ワタシが洗って上げる。耳の周り洗うの、苦手でしょー?」
「っ!? ...うん、おねがい」
...何だろう、ミウに少し長めに手を握られた後の言葉、急にミウがまるでお母さんになったみたいな気がして、身体が何故かビクッとした。頭ではお母さんじゃないって分かってる、分かってるつもりなのに...今の話し方や仕草がお母さんそのままだった。
それに、言った筈も無い耳周りを洗う事が苦手って事を知ってる事も含めて、ミウがお母さん何じゃないかって、本当にそう思えて...
「喜んでっ。じゃあ二人共、ちょっと行って来るわね」
「任せました!」
「私は...ギアの調整をしてますね。一部機能は感知を避ける為に幾つか弄れない項目があるので、それらを使えるように変更を入れたり...あとフランさん用のギア設定などしなきゃですね。そのくらいにアーシアさんも整理が終わるかなと」
「10分強は掛かりますね。装備品も分類すれば、もしかしたら人によっては有能な装備品もあるかもですし。にしても...ダンジョンで何か見つけて仕舞ってたらこうもなりますよね...はぁ.........」
確かにコレだけ、たぶん私と同じくらいの量を仕舞ってたら整理なんか大変。本当に不思議なバック...もし入ってみたらどうなるのかな?
「挑まない所だとかなり落ちてたりしてますよね。二人で挑んだダンジョン、と言いましても今回目標のテヌラ神殿ダンジョンでも、アイテムに関しては落ちてます。ですが大体がガラクタか、詳細不明な道具、木の実らしき何か...うっかりでも食べないで下さいね?」
「お腹壊したくない」
「まぁそうね。さてと、なんだかんだで話しちゃったけど、行ってくるわ。 ...さあ、行くわよフラン」
「ん!」
変な木の実って、たまに出された本物そっくりの不味いやつの事な気がする。辛かったり、痛かったり、身体がビリビリしたり、クラクラしたり、もし大丈夫だとたまに取り上げられて、辛い思いをしながら不味いやつでお腹を満たすこともあった。考えると、まず不安なご飯から離れられる、安心して寝る事が出来る、一番にお風呂に入る事が出来る...こんな贅沢、一生に出来ないで死ぬのかもと思ってた.........ううん、今は考えるのをやめよ。
せっかくミウや皆が私の事を気に掛けてくれてるのに、暗いままじゃ駄目だよね。だから今日は...ミウに甘えてもいいよね?
それで元気な姿を見せる。お空の何処かで見てくれてるお母さんやお父さんに向けて。私は色々あったけど生きてるよ、元気にしてるよって、明日はアピールする為に。