ポケットモンスターズファンタジー 彼女の願いと一つの宝石
Chapter 04±01
Unknown04B
Side Unknown


 ...蹴られた跡が痛い。いつもなら踏ん張りというか、痒いとか、ヒリヒリする程度でどうにかなるけれど、何故か今日はいつまで経ってもズキズキと痛み続ける。それも動かす毎に痛みがあって、なんだか凄く熱を持ってる...水なんか無いから舐めて息を吹き掛けて冷やしても、全く効果なんてない。
 でも、もうすぐでまた荷物を運び出さないといけないから、その時までに痛みが引いてればどうでもいい。持てないでお仕置きを受けるのは面倒。それで他の人もとばっちりなんか受けて同じようにお仕置きを受けるなんて事をさせたくない。こう思うけれど、実際の私は弱い...力なんて無い。気持ちだけは強いと思っているけれど、気持ちだけでどうにかなる世界なんかじゃない。夢なんてとっくに諦めて.........なっ!?

「や、やべぇ! まだ追いかけてきやがる!」
「おい! もっとスピードを出しやがれ!!」
「だめだ! これ以上スピードを出すと...うおっ!?」

 出来事は一瞬。なにかに追いかけられたようで、速度を上げた途端に何かに乗り上げ、私達が乗ってる荷台がひっくり返り、外へと放り出された。その事が何故かすんなりと理解できた私は痛い所を庇うように受け身を取り、素早く深めの茂みに飛び込ると、何があったのか確認する。
 見て分かるのはひっくり返った荷台、逃げていく牽引していたギャロップが二匹、そして私や皆をいたぶった奴が腰を抜かし、一人は逃げたギャロップを追う。だけどそれよりも...

「リ、リングマ...?」

 お腹に丸が描かれたリングマらしき何かが、息を荒くして立っていた。いや、身体の色が知っているリングマより黒く、そして獰猛そうな姿...もしかしてあれが、噂の"心持たぬ者"...。非情かつ獰猛、敵だろうが味方であろうが襲い、殺す生物.........

「た、助けてくれぇぇぇ!!!」
「く、くるな!! こっちく...うぎゃぁぁあああ!!」
「に、逃げるなっ! お前らこいつに食われて時間を稼げ!!」

 ...くっ! 私の体も...やっぱり、私達はこの腕輪による強制力には敵わない。私はコイツの肉壁になって、死ぬだけなんだ...。
 ...私は、本当にここで死ななきゃならないの?










 こんなのとこで...?










 私の人生、もう終わり.........?

ーーーーー
Side ミウ


 ...今の叫び声、まさしくこの方向!
 やっぱり、この胸騒ぎは間違いなかった。血の匂いに何かが釣られて、追いかけて、襲って.........一つ、また一つと気力が消滅して行ってる。でもおかしい、強い恐怖があるのにも関わらず、逃げようとしている気はあるのに逃げてない。しかも一人は...笑ってる?

 まさかコイツ...何かしらで操って、囮にしてる!?

「...見えた! くっ、もう何人かやられてる!」

 見えた時にはもう二人くらいしか残っていなかった。そして暴れてるのは...リングマに近い何か。見た感じは闇に捕われし者だけど、なんだかちょっと違うような気もする。いや、そんな事よりザングースとニューラ、まだ生き残ってる二人を助けなければ!
 私は気絶したウィアちゃんを背負い、全速力で走りながら、チャーレムからミミロップに変身する。変身後は種族を活かして高くジャンプ、そこからリングマに向かって空中から奇襲をかけた。空中からの加速も加えて蹴り落とす、正式な技では無い攻撃...外しても、外さなくても自分にダメージがあるであろう技。だからこそ、狙う場所は...頭よ!

「...はあぁぁあ! ドロップ、キック!!」
「ほがぁぁあああ!!?? ...く、かか.........」

 空中からの両足蹴り落としがクリーンヒットし、相手のリングマからグシャっと嫌な音が辺りに響き渡った後に、崩れ落ちて動かなくなった。だけどそれよりも、蹴り落とすまでが若干遅く、ザングースが切りつけられて倒れた直後になってしまって、助けられたのが結局一人だけだったのが悔やまれる。もう少しは早くたどり着ければ...そう思いながら私は地面に着地すると、

「...くっ!? あ、あしが...」

 急激な左足の激痛に、私は踏ん張りが出来ずに地面へと転がり込んだ。その衝撃で背負ってたウィアちゃんまでも地面に転がってしまって、私は慌ててサイコキネシスで浮かべ、戦闘する為に綺麗そうな草の上に静かに寝かす。その後に確認した足のダメージから見て、やっぱり足の痛みは間違いが無くさっきの蹴りと分かり、変身を元のミュウへと戻して浮遊した。その途端に驚きの声が二つ、間に合ったニューラと明らかに性格が悪そうなヤミラミ、本当にコイツから性格という意味でくさい臭いしかしない。

「ミュウ...ほんとに居たんだ...」
「ケケケ、これは良いものを拝めたなぁ...? いや、もし捕まえられれば...サイコキネシス!」
「...やっぱり貴方が一人だけ雰囲気が違った奴ね。貴方、まさか奴隷商人か何か?」
「...ケケケ、だったらなんだ? この溝臭い奴隷と同じようになるか?」
「...こっ、こんのぉ! 電磁波っ!」

 コイツ...やっぱり思った通り。コイツがこの人達を...許さない。私は身体に電気を貯めてから直ぐに腕から打ち出して、浮かれ顔の腐ったヤミラミに目かげて放つ。だけどヤミラミはヒョイっと後ろにバックステップするように避けられた。だから私は直ぐに両手で青いエネルギー弾を生成、着地前のヤミラミに急接近して...

「ケケケ、だったら...なっ!?」
「ゼロ距離...波動弾っ!」

 目の前でお互いが届く間合いに入った瞬間にヤミラミの真後ろへ短距離テレポート、そして後ろで最大に溜めた波動弾を無防備の背中に押し当てるように容赦無く放った。流石にゼロ距離なんて防ぎようもないわけで、小爆発をして私の身体とヤミラミの身体が吹っ飛ぶ。吹っ飛んだ後はその加速を使ってふわっと空中に浮かんで、後はいつも通りに浮遊で元通り。
 まあ今はふっ飛ばして砂煙の立ってる方向のヤミラミを睨みつつ、小癪な手を使うのでは無いかと思って、生き残ってるニューラと寝かしたウィアちゃんに対してサイコキネシスを掛けられる状態でだけど...

「.........動き無し? まさか、あれ一発で伸びた?」

 いつまで経ってもそのような動きや砂煙の乱れが無くて、逆に不安が募っていく。この場合の最適解は...砂煙を吹き飛ばす、コレしか無い。そう思って私は警戒を続けながらも砂煙を吹き飛ばすと.........

「...あ、ほんとに伸びてた」

 そこには明らかに私の一発だけで伸びたヤミラミの姿が...なんだか警戒してた私が馬鹿みたい。じゃあそうしたら、まずはウィアちゃんをサイコキネシスで浮かべて近付けさせつつ、固まってるニューラの元にフワフワと飛ぶ。それにしても、足をプラプラさせるだけで痛い...確実に折れてるかヒビを入れたかもしれない。
 そんな事を考えつつ、

「えーと、ニューラさん? 大丈夫?」
「...大丈夫」
「ホントに? にしてはかなりアッサリしていると言うか、落ち着いていると言うか...」
「充分に驚いてる。神様に会えるなんて、びっくりしてる」
「...そんなに驚いて無さそうだけど、そう言うのならそうなのね。いえ、それよりもココは離れましょ。さっき逃げたギャロップを追い掛けた奴が戻ってくるかもしれな...え?」

 手を引こうとして、ニューラの手を掴もうとした瞬間、その手を払われた。一瞬なんでと聞こうとしたけれど、払った側の手に赤と紫を混ざらない程度にかき混ぜたような色合いの手錠が目に入った。いや、それよりも...

「その手錠、外せないの?」
「無理。無理やり外そうとしたら、それを検知して猛毒が打たれる。前にそれで死んだ人が居た」
「電子手錠...ならウィアちゃんが起きれば外せるかも。それより、ひとまずはココを離れましょ。外すのはその後にでも」
「逃げたらどっちにしても殺される。それにコイツから離れても位置が分かる」
「形はゴツいけれど、物は違法改造ギアには変わりないて。そうしたら...いやいや、流石に駄目ね」

 そう思いながらまだ気絶しているウィアちゃんを見る。やっぱりまだ気絶したままで、ちょっと水でも掛けて起こそうかなとも考えたけれど、流石にそれは酷いので頭から考えを消す。

「うーん、そうしたら治癒だけ。流石にそれだけなら問題ない筈だから」
「こわい。やめて」
「...はぁ、じゃあ自分自身の治癒をさせてもらうわ。自己再生!」
「ん、自己再生なんて使えるんだ」
「ええ、一応全ての技と種族に変身可能よ。流石に同じような分類...クラス? ともかく同じような地位の人達にも変身が出来るけれど、やったら騒ぎになるから」
「ミュウって種族だけでも充分に騒ぎ」
「...否定は出来ないわね。ところで貴方、お名前は?」
「無い。奴隷になった時に取られた」
「と、取られたって...じゃ、じゃあ取られる前の名前は?」
「...フラン」
「フランちゃんか...宜しくね」
「ん」

 フランちゃんか...なんだか不思議な女の子。大人しすぎるというか、肝が座っているというか、あんまり語らないという言うか。とりあえず、簡単な回復あいだの質問だったけれど、内容的にしながら質問したのは間違いだったような気がする。しちゃったものは最後までは流れで続けちゃうけれど。

「えっと、フランちゃんは...どうして今こんなところに? 話したくないなら当然構わないわ」
「ん、話す。私は元々この島には居なくて、大きな街から外れたハルに居た。でも気が付いたらコンテナの中で、この島に居た」
「ず、随分とざっくりした説明ね。それでハルって...まさかスラムの事? 発展に追い付けずに、そのまま隔離された町の」
「四方は高い壁に囲われてる」
「ああ、じゃあそこね。それで、気が付いたら居たって言うのは...」
「...たぶん、寝てる時に何かされてコンテナごと船に載せられてココに来た。そのコンテナには他の人も居た。私より年上も、年下も居たと思う」
「コンテナ、そうなのね、分かった。話してくれてありが...なにか来た。一旦、私とウィアちゃんは隠れるわね」
「ん...分かった」

 詳細を聞き終わり、一応メモでもと思った矢先、何かが近付いてくるような気配がして、私はフランちゃんに断ってからウィアちゃんを浮かべせて、私は近くの高い木の枝の上に座る。その後にウィアちゃんを安全そうな場所に寝かせて、気配を殺して上から様子を伺う。
 それから暫く待っていると、ギャロップを連れたドクロックが現れ、周りをキョロキョロと確認していた。そりゃそう、一人だけ生きていて、近くには伸びた仲間であろうヤミラミ、数人の死体、変な方向に首が曲がったリングマ。この状態を見て挙動不審にならない人がもし居たら、実際に見てみたい程。
 ...うん、それより何故こんな場所で色々聞いてたのは色々と駄目だったと思う。

「...くそ、残ったのは一匹か。それよりも、ココで何があった? 怪我はしているようだが、まさかお前がこのリングマを倒したなど抜かさないだろうな?」
「...知らない人が助けてくれて、何も言わずに消えた」
「...まあいい、身体が無事なら早く転がった荷物を持て。物が無事な奴だけ、持てる分だけ持て」
「ん...」

 あれも奴隷に命令する奴ね。さっきのやつに比べればだいぶマシに見えるけど...いや、結局は一緒。問題はどうやってフランちゃんを助けるかだけど.........

「...ぅん? わ、わわわっ!? 痛った!!」
「なっ!? ...う、上から落ちてきた、だと? お、おいお前、何者だ!」
「いたた...な、何者かって言われても、ウォッズのウィアしか.........あれ、ココは何処ですか? って、な...何この状況は...」

 ...嘘でしょ? このタイミングで起きる?
 しかもフラグもしっかり回収までしてくれて...あーもう、だったらヤケクソよヤケクソ!

「そんなのは俺が聞きて...ミ、ミュウだと!? いや、疲れすぎてるだけか...」
「充分な言いようね奴隷商人さん、とでも言うべきかしら。いや、それよりも一言。この子を解放しなさい。さもなければ、貴方もリングマのように死ぬ事になりますが」
「...脅しか。そしてリングマを殺ったのはミュウと、そこに居るウォッズの責任者クラスの奴と。おいおい、一体コレは何処からどう突っ込めば良い訳だ?」
「話を逸らさないで。私の要件は一つ、この子を開放しなさいって言ってるの!」
「おうおうこえーな。残念だが俺にはそんな権限はないぜ。俺も一応奴隷の部類なんでね」
「そんな証拠が何処にあ...っ!?」

 何処にあるのか、そう叫ぼうとした瞬間、ドクロックは左足のズボンをめくり上げた。するとそこにはフランちゃんと同じ物が足首に付いていた。いや、騙すための偽物かもしれない!

「そんな偽物なんて信じないわよ! もっとちゃんとし...」
「いえミウさん、どうやら間違いは無いようです。装着されているデバイスは違法改造されたギアであり、若干の違いはありますが同様な物。ですが使われているモデルとバージョンがかなり型古く、予測ですがコレを実行すれば.........よし、権限奪取。システムコントロール、管理者権限によりギアのロックを解除。更にシステムコントロール、使用されていたギアのマスターとログを検索開始.........マスターはノーヒット、ログはそもそも生成されないと。うーん、流石に尻尾までは掴ませてもらえないようです」
「外れた!」
「マジかよ...こんなにあっさりと外れるものなのかコ...なんだ?」
「いえ、まだ疑いが晴れてません。確かにアナタはフランさん?とそこらに倒れてる人達より上の権限を持っていた。ならば、多少なりともその組織について、知ってるという事ですよね?」
「ああ知ってる。それに自由の身だ、知ってる事ならなんだって話すぞ」


ティア ( 2018/05/09(水) 20:22 )