Unknown03
Side ミウ
Location ???
TimeLimit 約六ヶ月
「エレキボールッ!」
「気合玉ッ!」
ウィアちゃんの攻撃に合わせ、手の中で真紅のエネルギー弾を作って対象へ一撃を放つ。その二つの球体は狂いも無く直撃して、相手は片膝を思わず付く。けれど、まだ完全に倒れる様子は全くと言って良い程に無い。やっぱりこいつは化物...
『ぐががぁ...』
でも、痛みというものを感じる感情はまだ残っている。もしコレで痛みを感じずに突っ込んで来たら、勝算は無かったかもしれない。後は情報を前もって知っていたからどうにかなっているけど、ウィアちゃんはあまり戦闘慣れをしているとは言えないから、何かあった時の余力を残して戦う必要がある。
にしてもこの場にもう一人程が入れば安定するだろうけれど、コレの相手が出来る人が居ない。いや、居ないって事も無いけれど呼ぶのに時間が掛かるのと、移動に支障が出る。アタシの場合は変身で姿を隠せるけれど、その人は出来ない。そもそも知人じゃなくて民衆の前に出るのは、彼にとってあんまり良く無いというか、目線がやっぱり気になるらしい。あとは一番に細かく時間を渡れないのが...
「ミウちゃん!!」
「...あっ」
ウィアちゃんの一言に今の状況を思い出し、前を向くと途端に私の目の前に相手の拳が迫っていた。ウィアちゃんから見ると絶体絶命だけど、この距離ならまだ間に合うし、カウンターを狙えるかもしれない。そう思った私はギリギリまでその拳を引き寄せて、その間に自分も拳に力を溜める。そして当たる前に"見切り"を発動で回避し、一気に相手の懐に飛び込んだ。
当たると思っていたのが外れ、対応するには遅すぎるほどに踏みこんだ私に対処できず、相手は反射的に後ろへ飛び退く。けれど逆にそれは私にとっては大チャンスで、空中にいる間は自由に動けない。そんな敵に私は引き絞ってから相手のお腹に気合いパンチを叩き込んだ。
『ぐがっ!!?』
当たった感覚と、その指先の痛みに少し自分の顔が歪んだのが分かった。だけど相手は化物...何があるか分からないから、すぐに距離を取らないといけない。
駄目押しでの相手へ蹴りを一発、壁を蹴るように入れて、心配顔のウィアちゃんの横に並んで、見えるように頷く。言葉無くても意味を理解したらしく、ウィアちゃんは手に電気をバチバチと纏わせて、少し経ってから私が蹴り飛ばした敵に対して"カミナリ"を頭上から落として、倒した。その間に私は肩で大きく息を吸いながら、殴りによる痛む右手をさすり、変身もチャーレムから元のミュウに戻す。
「はぁはぁ...はぁはぁ...」
いまので思った以上のスタミナが持って行かれたのは容易に理解できた。少し抑えないとこのダンジョンの突破は難し過ぎる。何故なら敵のレベルがイレギュラーに高すぎる。だけどココならあのイレギュラーなバンギラスが現れ、レイドが必要なやばい奴が現れる理由も分からなくもない。ココに来た理由は何か特別な、法則を捻じ曲げるような何かが存在するのではと突入したのだから。
「ミ、ミウちゃん...大丈夫ですか!?」
「...ええ、問題ないわ」
大出力のカミナリによる反動で、身体にまだビリビリと帯電させながら、ウィアちゃんは私の事を心配してくる。私は心配させようにと、大丈夫とばかりにクルッと目の前で回り見せた。危なかったけれど、攻撃を受けた訳じゃないから目立った外傷はないけれど、やっぱり殴った右手が鼓動のリズムで痛む。
「そ、そうですか...たぶん、そろそろ中間地点の筈なので、そこで休まなきゃですね...私もミウさんもダメージよりスタミナ消費が.........」
「そう...ね。調べては居たけれど、ちょっと...舐めてた。アイテムも意外と足りなくなって来てる...」
隠し置いたバッグを私は回収して、バックの中身を確認する。すると沢山に入っていた回復アイテムや道具などが半分程になっていた。この減りなら、最深部に付くまでにアイテムが底を尽く...横で覗き見るウィアちゃんも難しい顔をしていた。
「...まずい、ですね」
「うん...取り敢えず、早く下に行く為の穴を見つけるか、戦闘を控えないと...」
「それが一番ですが、大体のマッピングは終わっても、まだ下への穴は見つかりません...フロアが広すぎるのも、辛いところですね」
「でも、そのギアのお陰で同じところグルグルする必要がないのが大きい所。無かったらとっくに力尽きていた」
「そう...ですね。更に言えばMギアじゃなくてZギアAdministratorModelにしていたので、特に制限が無しに使える事ですね」
「あ、あどみにすとれーたもでる...?」
「あ、えっーと...管理者権限を持つ、この世に三台しかない特別なギアの事です。Zギア...長いのでZAMとして、このZAMは下に属するギアを遠隔操作可能で、ロックダウン等も可能なのです。しかもZAMは初期型のPギアも操作可能で、同じように遠隔操作とロックダウンが可能なのです。だけど、クランに所属すると貰えるCギアは親方が持つMギアを仲介させなきゃ駄目にしているのです」
「...本当にウィアちゃんは機械が好きなんだ。何を言っているか、全くと言って良い程に分からなかった...」
「あ、ご、ごめんなさい! えーっと、ギアの親玉と思って下されば大丈夫で...ん、ありました次への穴が。時間にしまして...40分もこのフロアに居たようです」
40分...このフロアに随分長く捕まってたわね。確か突入前は朝方の9時だから...うわ、もう13時手前になっている。現在の到達フロア数は13で、全フロア数は30フロア程で、ダンジョンでは珍しい途中脱出が5フロア毎に存在している。だけど途中脱出したからって、ゲームのようにそこから始められる訳じゃないのが辛いところ。
「えっと、今はフロア13なのよね...。このままじゃ効率が悪いし、仲間を引き入れるしかなさそう。確かアーシアちゃんかホノンちゃん達で、且つ記憶を消せば問題ないって言ってたわよね?」
「で、ですね。そうしましたら...ホノンさん達ですと、処理をする時に人数的に面倒なのと、申し訳ない所、このダンジョンに連れて来るのは危険ですので、ココはアーシアさんになるかと」
「まあ、そうよね。そうしたら...15階で途中脱出して、アーシアちゃんを探さないと」
「あ、探す事に関しましては私に任せて下さい。未来の世界ではアーシアさんのギア破損で追跡不可能でしたけど、この世界のアーシアさんなら肌見放さずに付けている筈ですから」
胸に手を当てて、任せてと言いたげに言ってくる。その姿にライトさんを重ねてクスッと笑いそうになる。でも、この手に関して、現状で頼りになるのはウィアちゃんだけ。確かに"創造"様が仰っておられた通り、私一人では解決は不可能だったと実感する。この場所だってウィアちゃんが見つけなければ調査は不可能だった。そして、自分から言うのも変だと思うけれど、ウィアちゃんも私が居なければココまで来れなかったと思う。
そう思うと、やはり"創造"様は凄いお方だと実感が出来る。それに怖いところもあるけれど、私の母であり、父なのだから。
「...ミウちゃん?」
「あー、うん。じゃあ捜索に関してはウィアちゃんお願いね? 私も手伝えそうな事があれば、手伝わせて」
「はい。にしても...さっきから考え込んだりしているようですが、大丈夫ですか? 考え過ぎて、先程みたいな自体が起こるのは、見ていて持たないので...」
「そ、それに関しては...精進します.........」