Unknown08A
Side Unknown
.........身体が...重い。しかも...動けない.........。それに寝てる場所は坂になっているみたいで、私の身体は坂下に向けて寝っ転がっている...。そのせいで頭に血が上って意識がぼーっとしてる...長い間この状態で寝っ転がっていたのかもしれない。けど何で私は外で寝っ転がって...だめ、何があったのかが全く持って思い出せない。
ともかくこの状態は長く続くと目眩の誘発や意識が更に遠くなる可能性だってある。けど身体は重りが乗ってるように動かす事が出来ない...いや、まさか挟まってるか乗っかってる?
「.........ミ、ミウっ!? うそ...ぜ、全身が.........」
顔だけ辛うじて動かせる事に気が付いた私は、頑張って顔を自分のお腹が見えるように上げた。そして上げて見えたのはミウが私の上で上半身だけ乗っかるように横たわる姿。そこまでは良かった、けど...その身体は火傷が凄く、そして焦げたような...目を背けたくなる程の怪我を負っていた。
「ミウ! ミウってば!! ...まさか...ミウ.........ん? えっ、コレって...」
何度も問いかけても目覚めてくれない...それに心無しか呼吸も凄い細く感じる。誰から見ても明らかに重傷の状態って分かるほど...どうにかしようとした私は身体をどうにかくねらせて、起きあがれるようにもがいた。
そんな時にミウの腕から何やら球体が落ちてきて、転がり落ちそうなところを私はキャッチした。大きさは自分の片手で掴めるくらい...まさか、コレを見つける為にミウは...となれば!
「...アルセウス様が仰っていた事がそうならば、コレを使えばミウを助けられる。でも、使い方が...」
使い方は私には教えてはくれなかった...っと言うより、使い方はまだアルセウス様でも解らないと仰っていた。けど私はそれを使わずとも法則を無視して叶えることが出来る力を私は知っている。そして、その力を使ってこの世界に止まる事を願って実現させたアーシアさんの事を。
その力の事をそのまま"願いの力"とマスターは名付けていた...願いの力、自分の内にあるイメージを強く願えば具現化できる可能性がある神秘な力と。けどその力の全容は全く分かっていない...導かれし者達のみの固有能力なんじゃないかという指摘だってある。
けど、私はそうとも思えない。たとえば誰かを助けたいと願ったとき、そんな時はいつも出せない力を出せた。みんなに応援されて出来なかった事を成し遂げた。コレは願いの力なんだって私は思ってる...だから、今だってそう。
「ミウ...」
私は...ミウを助けたい、当然だけど生半可な気持ちなんかじゃない。コレほどまで一緒に行動したのは初めてだけれど、最初は不安だった私の心を押してくれたのはミウだった。そして何度も無茶なところを平気な顔で私の事を助けてくれた...けど、私は今まで何も返す事が出来てない。
...だからお願い、使えるのは一回だけで構わない。私はミウを、ミウちゃんを苦しみから救いたい!
私なんてどうなってもいい...ミウちゃんが助かるならば私は何だって差し出す!
お願い...ミウちゃんは...ミウちゃんは私が心から初めて友達...ううん、親友とまで言える大切な人なの!!
「...だから...だからっ!! お願い、ミウを...ミウちゃんを助けてっ!!」
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Side Unknown
Location Unknown
...頭がぼーっとする、あれ...私は今までいったいなにをしてたんだっけ...だめ、思い出せない。けど...この場所は何となく見覚えがある。この場所は確か.........そう、研究室であって実験室でもある場所であり...あれ、誰の...部屋だっけ?
ぐっ...ん、コレは包帯...私、なんか怪我してたの...?
とりあえず動こうとして、まず目に映ったのは全身を包帯でグルグル巻きにされた私だった。とは言ってもとても丁寧に包帯を巻かれているお陰で、特に四肢を動かすのに支障は全く無かった。強いて言うならば違和感すら気が付けなかったくらいで、このやり方はいつもの病院ではない。
となると...一体誰が巻いてくれたのだろう。ギルドの方なら第一に場所でギルドって直ぐに分かるはずで...名前が出ないけど、とある人ならちょっと強めにいつも巻いてくれる。中々に巻かれ慣れてるってのもホントに可笑しい話だけど、今の巻かれ方はそのどれにも当てはまらない。けど...あれ...この妙に落ち着くような気持ちはなんだろう...安心するような、信頼しているような心地の良い気持ち.........。
「...あっ、起きたのですね! どうです? 痛いところとかありません?」
誰が巻いてくれたのだろうと考えていると、不意に部屋のドアが開いた。そのドアを開けて入ってきたのはお盆に注射器などを載せたハピナス...けど、私はこの人の事を全く知らない。だけど怪我の具合を効いてくる辺り、治療をしてくれたのはこの人で間違いなさそうだった。
「は、はい。ちょっと今、記憶が少し飛んでるみたいで思い出せてないのですが...ココは何処です?」
「記憶が? 多分長いこと寝ていたのもあって、まだ頭が起きてないのかもしれませんね。それで場所はナルトシティの東側と申せば分かりますでしょうか?」
「ナルトシティの東側...なるほどです。ところで、貴女のお名前は...」
「エルです。ココで助手として日々研究のお手伝...い...あっ! 起きたら伝えてって言われてたんで、ちょっと行ってきますね!」
「へっ? あっ...行っちゃった」
...なんだか、凄い元気で明るい感じな人みたい。けどちょっとお転婆なような感じの...けど仲良く出来そう。それで誰かを呼びに行くって行ってたけれど...誰だろ、けど自分で助手って言ってたから主治医かな?
でも研究って言ってたから不思議な感じも...って、バタバタと足音が聞こえるけど...あれ、もしか以外と大柄な人だったりす...
「アーシアちゃん!」
「ふにゃっ!? え、え...あっ、ちょっとまっ!?」
ドアをこれでもかと言うほど力強く開け放たれたせいで大きな音がして、私はびっくりして身体全身がビクッとなってしまった。そして落ち着く暇もなく扉を開けはなった本人に跳び付かれる形で抱かれ込んでしまった...急な事に回復したばかりであろう私はもちろん反応が出来なかった。
けど、抱かれた瞬間に徐々に色々と思い出せて、最後の方では私から強く抱き返していた。忘れる分けが無い、大事な友人であり親友でもあるこの人の事を。
「シルクさん...すいません、また心配を掛けてしまいまして...」
「いいの、意識が無事に戻ってくれただけで...。理由は知らないけど、アーシアちゃんはいつもみたいに無茶して、助けようとかしたんでしょ?」
紛れもない、大切な人のシルクさんだった。まさか助手が居たなんてちょっとびっくりしたけれど...。
「いや、ホントに回復して良かったですよ。アーシアさん一週間近くも寝たきりだったんですよ?」
「いっ、一週間!? え、シルクさん...」
「そうよ、アーシアちゃんの治療で完治するまで一週間の間も目を覚まさなかったわ。しかもナルトシティのいつもの病院に連れて行けなくて、ココでどうにかするしかなかったのよ」
まだちょっとだけ記憶が欠落してたけれど、少し考えて何で私が治療を受けたのかを思い出した。そうだった...私は、腹部の強烈な痛みで倒れたんだった。でもどんな理由でそうなったかは覚えてない...けど、どこかのダンジョンに挑んでたような気がする。なんでだっけ...だめだ、コレばかりは全く思い出せそうにない。
「移動させてたら最悪なケースもあって、シルクさんと協力して看護してました。それに痛みがかなりあって辛そうだったので、睡眠導入材も少し多めに...」
「エル!? はぁ...中々に目覚めなかったのは貴方のせいだったのね!?」
「あっ...ご、ごめんなさい.........」
「あはは...」
やっぱりエルさんはお転婆って言葉が似合う気が...いや、お転婆というよりお気楽?
けど、その睡眠なんちゃらのお陰で痛みに苦しまずに居られたのは良かったかも。まあそのせいで一週間も目を覚まさなかったわけですが...痛みに苦しむよりはマシだけど、心配をかけちゃったみたいですね。
「...まあ、結果的にエルがやる事に間違いは無いから良いけど。そうだアーシアちゃん、包帯を取るからそのままベットで立ってて貰っても良いかしら?」
「はい、分かりました。よっと...うん、痛みはないですね」
シルクさんに言われて、私はいつも通りに前足を蹴って二本足で立ち上がった。ベットの上だから少し強めに蹴ったけれど、特に痛みがある分けじゃなかったから、ほぼほぼ完治してるのかもしれない。
だけどそんなことよりも...
「あのエルさん...はっ、恥ずかしいのでじっと見つめないでくれます?///」
「ちょっと、エル?」
「いや、コレが噂の綺麗な立ち姿かーと思っちゃいましてね。確かに綺麗だなーと...あ、私に構わず進めてぎゃっ!?」
エルさんが私の姿を上から下に舐めるかのように見てくる事...流石の私も同姓でもそんな目で見られると恥じらいの一つはある。私の問い掛けに包帯を取るシルクさんは流石に苛立っているのか、いつもよりトーンが低めにエルさんの名前を呼んだ。
けど、エルさんがその後に言い放った言葉に流石にもう恥ずかしくなって両足に戻したけれど、まだ話してるエルさんに対してシルクさんは何かを放ったのが見えた。しかもさっきよりもさらに低く、しかもゆっくりとエルさんに対して訴えてくれた。
因みにゆっくりと話すときは基本シルクさんは怒ってる時に出やすい。何度か一緒に居てまだ二回しか見てない...まさか、こんな所で聞くことになるとは...。
「エル、いい加減に怒るわよ?」
「いったぁ...もう怒ってるじゃないですかぁ...」
「当たり前よ! エルは実力はあるのにそんな性格だから駄目なのよ。いい加減におちょくると言うか、心の間合い関係なくグイグイ行くのはやめなさい」
「は、はーい...」
「はーいって伸ばさない! 私はエルを立派な人にするって決めてるんだから、ちゃんとしてもらわないと困るのよ。というより、そうして欲しいと望んだのはエルよね?」
技を当てられて少し涙目なエルさんを横目に、シルクさんは少しお説教モード。にしてもそうして欲しいと言ったのがエルさんと言うことは、治そうとはしてる...のかな?
確かに、さっきみたいな事が無ければ話しやすいと言うか、打ち解けやすいと言うか、あんまり他人だからって気持ちがして来ない。シルクさんも怒ってくれてるけれど、短い間に感情が豊かなシルクさんを見るのはあまり無かった気もする。
「そ、そうだけど...その、やっぱり癖ってのは抜けなくて.........」
「気持ちは確かに分かるわ。けど、その癖だけは緩急を付けてくれないと駄目。私は慣れちゃってるから良いけど、アーシアちゃんはどう思った?」
「ひゃい!? あ、えーと...わ、私は話しやすいかなと...最初は思いました。だけど、さっきのは...ちょっと///」
まさか私に対して質問が飛んでくると思ってなくて、私は思わず変な声が出てしまった。その後は取り敢えずにエルさんの初対面での印象とさっきの事を話した。
そしてその言葉にシルクさんはやっぱりねと相槌を打ってくる...やっぱりそういう人なんですね。