Unknown07A
Side ミウ
データの整理をすると伝えてから早10分以上。ウィアちゃんはずっと画面で巡るまじく情報の仕分けをしつつ、私達を最終フロアに続く吹き抜けを目指して案内してくれる。
にしても凄い...私なんて平行作業なんか出来ないから、できる人を見るとすごく羨ましくなる。因みに何で出来るかと聞いてみたら一言でデータだった時の名残とだけ答えてくれた。素っ気ないと思ったけれど受け答えは辛いらしくて、理由はその時だけ手の動きが一瞬止まったところを見たから。
因みにこの状況においてフランちゃんはと言うと...
「...敵に会わない」
「そうね。それより戦いたい気持ちがあるのは分かったけど、今接触すると面倒よ? それに無駄な危険は避けたいのもあるわ」
「ん...分かった、戦いたかったけど我慢する」
「やっぱり戦いたかったのね...」
なんというか...凄いわねフランちゃん。
さっきはだいぶ辛かった筈なのに辛い顔一つもせずに、次への闘志を燃やしてる。それは心を読まなくても顔付きだけで簡単に理解することができる。
にしても...初めて会った時から直感したけれど、やっぱり物覚えや考える力が凄い。今までの戦闘の中で敵がどう避けるかを観察して、次の攻撃は当てるかギリギリ回避されるかの動きをした時は流石の私も身震いがした。
もし仮にこのまま戦うことを続けて行ったならば、確実にフランちゃんは名を残す人物まで成長する。正直なところ影響力が強くて離れる時が大丈夫かどうか不安さえ出てくるけど...
「...うん、中々にデータ量が多いけれどなんとか捌ききれた」
「お、お疲れ様。それで、どう? やっぱりこの下が最下層?」
「はい、この下が最下層で間違いなさそう。探していた物の反応も微弱ながら検出できました」
「微弱ながら?」
不意にウィアちゃんがデータの整理が終わったと私達に教えてくれて、今まで先行して歩き進めていた歩を止めて振り返った。そしてこの下、最下層にあることは間違いなさそうとの事を教えてくれた。
だけどその時に微弱ながらという言葉に反応して聞き返すと、ウィアちゃんは急に困ったような顔になってしまった。基本的にウィアが良くない顔をしている時はその通り良くない事が起きるか、起きてるかの二択しかない。気のせいだったって事もちょっとくらいあって欲しいけれど、今のところそうなった試しが無い。言うならば本当にハイかイイエで基本的に答えるか、どちらか一方と分かる受け答えをしてくる。
やっぱりウィアちゃんは元々この世界には実態を持ってなかった存在。それを私の力やライトさん、創造様のお力添えも頂いたりもしてピカチュウとして現実の身体を持った。方法はもちろん簡単な事でも無く、ただ私の力が半年近く失われる程の力を使っただけもあってほぼノーリスクと順応するまで速かった。ただ二年経った今でも昔なら当たり前に出来ていた事が出来なくなったり、またその逆もあったりしてたどたどしくなる事もあったりしていた。
「突っ込まれしまうと返しに困りますが...反応はあるにはある、けど弱すぎるんです」
「...まあ要するに行けば分かるって事ね?」
「そう、ですね...ごめんなさい。ハッキリとした答えを提示できず」
「謝る場面じゃないわよ。それに候補としてもう一箇所あるんでしょ?」
「はい、パラドシスタウンの中間に位置する隠れた遺跡である"潜水の遺跡"ですね」
「...えっ? まさかだけど、いま"潜水の遺跡"って言った?」
「へっ? あ、はい。言いましたが...えっと、知ってる理由ですよね?」
「ええ。その遺跡に関しての情報は全て処分済みのはずで、知り得ない情報のはずなのだけれど?」
「え、えぇーっと...とある探検隊のレポートが残っていたのもありますが、一番の情報元はアルセウス様ですね。知っていたほうが良いと仰らられて、ある程度は教えて頂きましたが、何を祀ったかまでは...。それと、一応詳しく知りたかったらミウちゃんからと...」
なるほど...それで知ってたのね。ただ聞いた感じは詳しい事までは聞かされていないと。にしても創造様...重要なことは私に投げ渡しですか...。まあ祀ったのが何か、何があったかなど関しては私が主軸で関わってるのが多いからってのもあるけど。
「...そう、なのね。その遺跡に祀られてるのは潜水ポケモンの"ルギア"よ。かなり気性が荒い性格で、危ない奴よ。ただし戦闘の勝ち負けに関しては律儀だから、言うこと聞かせたかったら倒すしか無いわ。ただ今まではアルタイんルがディフェンダーで私がアタッカーとして押さえ込んでたから...ちょっと不安が残るわね」
「アルタイルさんと二人でですか...? てっきりアルタイルさんとベガさんも居れた四人でかと思ってましたが...」
「あー...それは三人揃えると卑怯と暴れそうだったのが要因よ。だから二人までだったら.........しまった、今は三人だからまずい」
今居るのは私とウィアちゃん、そしてフランちゃんの三人。このまま挑めば確実に機嫌を損ねる...とは言いつつも、流石に三人のうちの誰かしらを呼ぶわけには行かない。だとしてもウィアちゃんかフランちゃんとなると...かなり危険な思いをさせてしまうのも確実。
いったいどうしたら.........
「っ.........」
「ミウさん...?」
「ミウー?」
「...いや、ちょっと考え事を。けど、細かいことを考えるのは後にするわ。とにかく今は下に向かって確かめてから考える事にするわ」
「わ、分かりました。それじゃあ下へ向かう場所は.........コッチですね、付いてきてください。ただ敵が少ないだけで居ない訳でも無かったので、警戒しながら進みます」
「敵倒して強くなる」
「あ、相変わらずねフランちゃん.........」
ーーーーー
Side フラン
ウィアが腕時計みたいなのを触って暫くした後、ルギアって言うとても強い人が居るって聞いた。でもすぐ怒るし、下に向かうとこに向かう途中で聞いたら、暴れると津波でまわりが大変なことになるとも聞いた。
戦ってみたいけれど今の私で勝てるかな...ミウの話を聞いた感じはもの凄く強い。ココの敵に苦戦してるなら敵わない程に、きっと。
「...ん、敵がこの通路の右突き当たりで接触します。どうしますか? 少し下がって広いところにおびき寄せてから戦いますか?」
「可能ならそうしたいけど...後ろにも、もう」
「えっ...ほ、本当ですね.........」
「挟み撃ち...」
前からも後ろからも敵が来てるとウィアが知らせてくれた。どうしよう、こんな狭い通路で戦うのは凄く辛い。ん...でもこの壁、うまく使えば高い場所から攻撃できるかも。敵がもう近い、考えるくらいなら...!
「...いくっ!」
「フランちゃんっ!? っう...エナジーボール!」
「こんな狭いところで...エレキボール!」
けど私は考える事を捨てて身体に力を溜め、狭い壁を何度か蹴り返して敵に突っ込んだ。だけど敵は私に気が付いて後ろに飛びのけて回避された。だけどめげずに私は着地した後、追い打ちを掛けるように敵へ飛び付いて行った。もちろん突っ込みながら右手と左手に攻撃をするイメージを載せながら…流石の敵もそうすると思っていなかったらしくて、避けられないと思ったのか両腕で顔とお腹を守った。
「無駄っ!」
『グガァァッァァッァアアアッ!?』
両腕で隠してたけど脇腹が全く守れてなかったから、上から斬りつける予定だった攻撃を横腹に斬り付けるように真横から攻撃を仕掛けた。その攻撃は外れる事も無く当たって敵が大声で悲鳴を上げた。その大きさに一瞬だけ意識がふわっとしたけどなんとか耐えて、私は最後に攻撃した敵を蹴飛ばしてミウとウィアの近くまで戻った。そのまま後ろを確認しないで、攻撃したばかりの敵が倒せたかどうか確認したけれど…流石に一撃じゃ倒れてくててなかった。
けど今の攻撃でかなりフラフラになるほどに攻撃できたから、もうひと押しで倒すことが出来そうな気がする。にしてもこの敵…なんで木の枝を手に持って戦うのか分からない。しかも先っぽは燃えてるのにその先が燃えそうな感じが全くない…不思議な木の枝だし、不思議な敵。変わってウィアが戦ってる敵は貝みたいなのを振り回して攻撃してる。
「こらっ、フランちゃん突っ込みすぎよっ!! 一体何度言えばフランちゃんは…って、マズイ! ウィアちゃんすぐに後ろに飛び避けて!! シャドーボールッ!!」
「は、はい! っと…電光石火!! くぅ…エレキネットッ!」
ミウが戻ってきた私に対してちょっと怖い口調で怒ってきたけれど、ウィアが危ないと気が付いてミウは直ぐに指示と援護に入った。それを聞いたウィアは直ぐに飛びのけて、追撃としてウィアは足止めをする技を使って反撃した。
私も援護しようとしたけど、ふと後ろの物音に気が付いて見てみればまだ立ち上がろうとしてた...コッチを倒さないとミウ達が安心して戦えない。それに今まで結局はミウかウィアの援護を貰って倒してた...だから今回は絶対に私の力だけで倒す。
「...しぶとい。だけど次で倒す」
心の中で身体から力が沸くようなイメージで集中して、相手の動きがよく聞こえるようにもっと集中して感覚を研ぎ澄ます。そして何となく行けると思った私はその感覚のままに駆け出しつつ、両爪に力を込めながら.........
「...むぅっ、やぁっ!!」
「グァッ!? ガァァアアアアァアアアアア...」
突っ込んできた私に気が付いた敵がまた両手で守ろうとしてた。だから私は直前で右に飛びのけた後、すぐ蹴り返してがら空きの首と背中に両爪に溜めた攻撃を食らわせてやった。その後にまた大声出されてふらっとしちゃったけれど、なんとか耐えて立ち上がると攻撃した敵がバタっと倒れた。
それからちょっとだけ倒せたか周りを歩いたけど、動く気配が無いから倒せたはず...うん、軽く突ついてみたけど反応無い。
「...一人の力で倒せた」
何とか力を借りずに自分の力で倒せた、嬉しい。けどまだミウとウィアは貝を振り回して戦ってる奴とまだ戦ってるから助けないと。私はそう思いながら二人のところに走り込んだ.........