諦め
Side アーシア
...私はいつまでココに居なきゃならないの。巡回パターンや与えられる僅かの食事と水分からして、もう一週間は経っている気がする。あの一件、サニャさんと私が殴り飛ばされたあの時以来、私はずっと折の中に閉じ込められている。けれど最初の対応とはちょっと違って、殴り飛ばした本人に不本意ながら運ばれて目が冷めた時は、視線の前に私の自由を奪っていた鉄球付きの足かせが転がっていた。しかも吊るされても無くて、檻の中という制約はあるものの動けるようになった。
だけど...
「このままじゃ何も変わらない...それにライトさんやウィアちゃんを助けるために私達は動いてたにも関わらず...」
ほんとに何してるの私は...足手まといしかしてない...。みんな、心配してるよね...一番にライトさんやウィアちゃんが気掛かりで...。今日もこうして無駄な時間を過ごして、大きな物音が鳴るたびに身体を震わせて、美味しくもなく量もない何かを食べて、衛生関係最悪で、シャワーはたまに来る嫌がらせと言うか腹いせと言うかで放たれるハイドロポンプ。痛いし、苦しさもあるけど贅沢は言えなかった...。
「...とに.........つく! なん.........いつはっ!?」
この声は何時ものあの声...だけどなんだか今回は気が立ってる...。何があったか分からないけれど、今日のは覚悟した方が良いかもしれない。けれど、目の前を通り抜けたから問題ない感じかな...。
「...いらねぇ、気に入らねぇ。なんであいつは全てを悟ったような顔して、俺の欲しい物を拐って行きやがって.........ん、ココは。ふふ、丁度いい」
うわっ、足音が戻ってきた...しかも殺る気満々だよねコレ...。やめて、怒りを持ったまま来ないで...怒りを私で発散しようとしないで...お願いだから.........。
「よう。相変わらずな環境だなぁ? ボスの命令が無きゃ連れ出して色々してやったのに。全く不運な女だ」
うわっ、来ちゃった...もう、こうなったらしょうがないよね.........
「べ、別にこうなりたくてなった訳じゃない...」
「くくくっ、その強い素振りは嫌いじゃねぇぜ? にしても捕らえられてもう丸六日辺りか、よく精神を保っていられるなこんなところで。俺なら一日で狂っちまう」
「...狂えるなら、狂ったほうが楽かもしれないですね」
「はははっ、何を言い出したかと思ったら狂いたいと来たか。けどその望み、叶えられる代物なら...あったりするわけだ」
「...そ、それは?」
懐から取り出した小瓶を私の前にちらつかせ、不気味に私ヘ笑い掛けた。液体の色はサニャさんが使ったものと違って黒い、いや真っ黒だった。しかもラベルには一目で分かるドクロマークが描かれていて...まさか、これを私に打たせる気?
「一言で言うなら精神系に作用する薬品だ。まあ、使用するかしないかは自分で決めてくれ。まぁ俺的には今の反抗的が好むが、狂った姿も見てみたいものだなぁ?」
「流石に...使わない、要らない」
「ほーう? まぁいい、置きっぱなしにしておく。精々どっちが楽なのか考えて見るんだなぁ?」
「.........そうね」
そう言い残して今回はそのまま立ち去っていった。助かったというべきか、水浴びできなかったから残念と思うべきか...けど、どちらにせよ状況を打破しないと何れか自我が保てなくなる。
だけど...こんな硬い鉄格子を、しかも触ると強い電流が流れるコレを壊すなんて事は出来る筈はない。それにあの一件からサニャさんとも会えなくなって、心配になってくるけれど、やっぱり一番の気掛かりなのはライトさんとウィアさんがどうなったのか。そしてレイエルさん達について...心配してるのかな、怒ってるのかな、悲しんでるのかな、それとも飽きられてるのかな.........。
ははは...そうだよね。急に消えちゃって、しかも音信不通で、ライトさんとウィアちゃんが居なくなってるって時に。私って...なんだろう。私はやはりココには居るべきじゃ無い存在だったのかな...私が居るせいで、私が残っているせいでこの世界にはまだサニャさんのような親を引き剥がされた人が生まれるのかな...。
そうか、そうだよね...全部私が悪いんだよね...。何もかも、この世界を狂わせたのは私達という存在だ...コレは、その報いだ。だったら私はこれから何をすれば.........あっ、そうか、これを使えば...。
クルクルクル...カパッ...
.........プスッ