消滅 - 後編
Side シルク
ぐがぁぁぁぁぁぁ...
明らかにハッキリ聞こえた呻き声に私は恐る恐る、下を向いている頭を上に上げた。そこに居たのは全身を黒く染めて、目はルビーのように真っ赤な目の色をした何か...。侵食が進みすぎて元々なんの種族だったか識別が不可能で、言える事は危険と言う二文字。しかも声を出そうとしても恐怖で声が出ずに、自分でも驚くほどに体の力が抜けて行く...もしかして、頭では早くどうにかしなきゃと思っているけれど、身体は諦めているのかもしれない...。
「ひっ!? や、やめて...うがぁ.........」
闇に飲まれし者は身動きの取れない私にゆっくりと手のような物を伸ばして私に触れた。途端に触れられた所から体温が奪われて行くような冷たい感覚が私を覆っていく...まさかこれが侵食。この感じ、スカーフを取られた時と全く同じ感覚...こんな、感じなんだ......。
「エレキボール!」
「シャドーボール! ...シルク大丈夫!?」
「な、なんとか...ありか、と...」
私のスレスレを黄色と紫色の球体が掠め、身動きが取れない事を良い事にしてた闇に飲まれし者へと直撃し、反対側の壁に叩き付けられて伸びていた。その隙きにレイエルが挟まった前足を自由にしてくれて、私はフラフラと立ち上がった...本当に間一髪ってところね。
「とりあえず意識があって何よりよ。なんか凄く嫌な予感というか、感覚がして空から確認したら...遅くなってごめんなさい」
「いえ、助かったわレイエル...。もう少しで侵食される...ところだったから...。ところで、アーシア...ちゃん、は?」
「だめ、見つからないんだ。連絡も届かないし...」
「そんな...じゃあどこに...」
「分からないわ。けど...シルク、一旦戻るわよ。一応で検査やら治療した方が良いわ。モルク、テレポート準備」
「で、でも...」
「モルクの言いたい事は分かるけど、特別権限で指定座標飛べるんだから問題ないわ。だってすぐに戻ればいい訳だから。それに...アタシだってアーシアちゃんの事が心配なんだから...」
「...ごめんレイエル。じゃあ、起動するよ...テレポート」
ーーーーー
Side ???
...ココは、どこ。僕は確か.........ダメだ、思い出そうとすると凄い頭痛がする。コレは考えない方が身の為かもしれない。さてと、それよりも場所を把握しなくちゃ...っと思いつつも目の前が真っ暗というか真っ暗のせいで何も分からないか...何か持ち物とか、身に付けてるのは...ギア。電源ボタンを押しても光らないし、目の前まで近づけても駄目。はぁ、上や下、右や左も分からなく、場所も確認出来ない状況は凄まじく不味いね...。
本当に何処に何だろうココは...なんだか、凄く不安というか嫌な空気。ずっとココに居たら精神が変な事になりそうだ。なんでこんな場所に居るか思い出せれば良いのだけれど...やっぱり考えようとすると頭が割れそうな程に強い頭痛。記憶障害で良くあるやつだね、厄介だ。
「さて、どうしたものか.........おっと!?」
とりあえず適当に僕は歩いている...のかよく分からないけど、とりあえず進むと何かに引っかかって倒れ込んだ。目が見えないから分からないけれど、なんだか柔らかい感じなのがお腹の下にあって...あれ、なんか上下してる。まるで誰かのお腹の上に乗っかっているような...。
僕はゆっくりと手を躓いたものに這わせて、何なのかを認識しようとする。そこそこの温度があり、輪郭は丸みを帯びた感じで、左手方向に細長い何かが二本、右手方向に輪郭がギザギザしていて先端が丸みを帯び、そしてコレは倒れ込んだ何かに繋がってて.........うーん?
「あれ、この感じ...種族はピカチュウ。そして女の子でこの感じは...あっ!?」
頭痛が無く、僕は一気に全てを思い出した。お腹の下にいるのが誰なのか、ココは粗方何処なのか、何でココに居るのかを全て、何もかも。この状況の把握と安全確保をしたいけれど、それよりも大事な事は...
「ねえ、起きて! 起きてウィア!」
倒れていた人物、まずはウィアを起こす事。ウィアなら僕が使えない技である電気技に属する技を全て扱う事が出来る、通称エレキマスタリーを会得してる。だからフラッシュを使って周りを照らし出すことは可能なはず!
いや、そんな事より安否!
「ねぇ、ウィア! ウィアってば!!」
「.........うぅ、耳がギンギンしますぅ...」
「寝ぼけてないで起きてよウィア。大変なこと起きてるんだから」
「...はっ! ご、ごめんなさいマスター! 私ったら足を広げて、なんてはしたないお姿を...///」
「は、はしたない姿? とりあえずそれは置いといて、ウィアは記憶障害とか無い?」
「えっ、あー...はい。自分の名前や昔の記憶もバッチリと。ところでマスター...ココは何処ですか?」
「分からないけど、取り敢えずフラッシュ使ってもらっても良い? 辺りが真っ黒でなんにも見えないんだ。お願い出来る?」
「真っ黒...ですか? 確かに暗いですが真っ黒と言うほどではありませんが...」
「えっ? ウィア、見えてるの? 僕の姿も?」
「はい、ぼんやりとですが視認が出来ます。あの、もしかしてマスター...私の事が見えて、いない?」
うそ、どういう事...僕は見えなくて、なんでウィアは見えるの?
記憶だって僕は一時的な障害があったのにも関わらず、ウィアは何事も無かった。考えられることは一つ、転送時に何かしらのエラーが何かで身体的にダメージを受けた事。目を開けている感覚と、瞬きをしている感覚や手足の感覚は問題無い、そしてウィアが驚きもしないとなれば眼球もしっかりある。
となると見た物を脳へと伝える信号系や神経系のダメージが入ってるのか。期待薄だけどウィアに電撃でも流してもらったら治ったり...する、かな?
「ウィア、頼みがあるんだけど」
「何でしょうかマスター?」
「あのー、僕に対して1000ボルト位の電流を頭から三秒間流してくれないかな?」
「...はい? 1000ボルト位の電流を...頭から、です...か?」
「うん、雷落としてよ。遠慮しなくて良いし怒らないから」
「えーっと...多少の誤差がありますが宜しいでしょうか? なるべくならやりたく無いですが、何か考えがあってこそかと思うので否定はしませんけど...」
「別に問題無いよ。普通に10万ボルト落としてくれたって良いし」
「そうしないように精進します...。えーと、頭から...ですね? 外すかもしれないのでお手を乗せても...」
「やり方は問わないからお願い。どう反応しようが三秒間は流し続けてね」
「は、はい。では...だいたい1000ボルトっ!!」
「うわぁぁぁぁぁぁぁあっ!!!! .........はぁ...はぁ...はぁ...上出来、だよ...」
流石ウィア...本当に大体1000ボルトの電流を流したよ...。ちょっと身体に力が入りにくいけど...目は、なんとか見えた。まさか見えなくなるとは...全くの予想外だよコレ...。
「マスター...大丈夫、ですか?」
「うん、ちょっとまだ痺れてるけどもう少しで.........よし、良いよ。無理難題ありがとうね」
「い、いえいえ! けど、何故電撃を?」
「あー、若干視界が良くなくてね。多分神経系に何かあったと思って粗治療を...って、ウィア?」
「...マスター! そんな事を平然で頼むのやめて頂けますっ!?」
「わぁっ!? ご、ごめんて!! 咄嗟に思い付いてコレしか現状でやれる事が無かったから!!」
「もうっ!! はぁ...ともかく、盲目から見えるようになったのですね? 誤魔化しても分かりますよ」
「あはは...知ってたかぁ.........」
「知ってたかぁ...じゃないです!! それに私はマスターと共にあるのですから、マスターの異変や誤魔化すトコロは全てお見通しです!!」
「あ、有り難い限りだよ...。えーと、取り敢えずココは何処だろ? 予測が正しければ、この灰色の感じは次元の狭間内部に入れたとは思うのだけど...」
あんまり見えないから見える範囲で簡単に見回して、僕はそう判断する。ウィアも僕の一言に相槌を打ったから同じように見えてるって確信が付いた。にしても、まさか本当に入れるとは...それに侵食による身体の異常も全く感じない。侵食軽減の注射ははっきり言って保険程度で、役に何か立たないとは思ってたりしたけど。それとも...狭間のゲートが最大原因?
もしそうだとして、薬が切れるのはだいたい約三時間後...その時間以上に侵食が始まらなきゃそういう事になる。後は...何かしらへの接触。年間かなりの人数が吸い込まれていたのだから、少なからずに環境へ対応ができた人物が居るはず。その調査と嫌という程に出会う事になる闇に飲まれし者の調査...半殺しに捕まえて、持ってきた抑制薬を投与して様子を見る事。こんな事は現実世界じゃ出来ないからね...。
「さてと、こんな開けた場所は危ないから、何処か見を隠せるところを探そっか。実験するのにも閉じ込める場所が無いとやりにくいし」
「そ、そうですね...。一先ず、こっち向きを地形スキャン開始するので、マスターは私の背中側のスキャンお願い出来ますか?」
「うん、そうしよっか。それじゃ、スキャンスタート」
ー後書きー
だいぶお久しぶりになってしまいました、ティアです。最近とても忙しくなり、他方で色々あってやる気ガン落ちになってます(多分暑さでもやられてる)。ですが、コラボもしていて更新を待っている方も少なからずいらっしゃると思うので、その方達の期待を裏切るのはどうかと思ってどうにか執筆は続けております。
とりあえずの目標としては、あと半年間は小説執筆を続けて、その半年が過ぎた辺りに本職のプログラマとなり、ここだけの話しめめさん(副管理人)やわたぬけさん(管理人)と共にポケノベルを、ポケモン小説を後押し出来ればなと思ってたりしています。
中学から執筆を開始して既に七年...生きていた殆どの半生を執筆や読書に費やして、ココまで良く続けられていたなってアタシ自身思っております。実言うとアタシは面倒くさがり屋で、自分からコミュニケーションを取るのが苦手だったりするです。
が、それなのに小説を企画を立ち上げていたりする理由は一つ...皆と楽しみたいから、昔よりどんどんアクティブユーザーが減るのを見て、小説執筆の楽しさを改めて知って、執筆者が増えて欲しいと願っての事だったんです。どんな事も楽しいと思うと、自分もその立場でやってみたいと思うのは人間と言うもの。その心理を逆手に取った小説企画だった。
けど、アタシは管理者でもなく『執筆者側』であり、企画をやろうとも『データが取れない』から人が増えた事に関しては分からないわけです。だからアタシから思うのは『楽しんで小説執筆が出来る環境や普段なら味わえない事』を軸にして企画を立ち上げていたのかもしれません。
かなり長々となってしまいましたが、一言で締めるならば『小説があってこそのアタシが居る』という感じでしょうか。執筆する前、現実世界でのアタシはいつも一人で虐められてた。友達と呼べる人なんか一人も居なかった。
けど今は友達と言う仲間が居て、交流が出来て、他愛のないお話や相談、色々な事を話せて楽しかった。が、やはり私の年齢とだいぶ差が開いている事を実感して来て、身体は大人でも心は子供のままなんだと思う事も。何というか取り残されたような感覚です。
ここまで読んでくれる人は多分居ないでしょうが、もし呼んでいたのなら有難う御座いました。多分これを読む前と呼んだ後では、アタシの印象なんかクソ見たいな奴だと思うかもしれませんが、どう思うのは勝手で私が気にする事じゃないです。ただ『こんな人も居るんだよ』と思って頂ければ幸いです。