それでも僕は
Side ???
「...さてと、そろそろ始めようか。一応全ての通信はカットしておいたから漏れる事もない筈」
「そうですが...あの、本当にやるのですか? もし失敗が起きるならば大爆発が起きて、最悪のケースはブラックホールが発生してこの惑星丸ごと飲み込むことになる。しかも最大被害範囲は計測不可能で、しかもシュミレーション下での成功も無し...はっきり言って無謀です」
「無茶は分かってるし、無謀なのはもっと分かってる。けどね、コレに掛ってるんだ。それに僕が居なくても、君なら皆を引っ張ることが出来る。その為に僕の知識も全部あげたんだもん」
「.........バカ。バカバカバカ! そんな事になるなら私はあのままプログラムの藻屑で良かった!! そんな事を言われるくらいなら、私の元から遠いところに行ってしまうなら、私も連れてってくださいよ!! こんなの...あんまりですよ...こんなのって酷すぎますよぉ!!」
装置に手を掛けて後ろを向いた男の人に、女の人は涙でグチャグチャな顔で強く握りしめた。男の人の衣服が千切れるほど、とても強い力で、もう話さないと言いたげに震え、顔を押し付けて。
すると流石にこの行動に無視出来なくなったのか、男の人は大きなため息と共に、装置から手を離して女の人に振り返った。そして今まで装置においていた右手を女の人の頭に置いて、ゆっくりと撫でた。撫でる時の男の表情は先程の張りつめた感じと表情ではなく、微笑んだ感じになっていた。
「マスター...」
「...そこまで僕の事を思ってくれてたんだね。正直びっくり、かな」
「びっくりって...私は本気ですよ...。 昔こそ触れることなんて出来なかったけど、今はこうして触れる事ができる。マスターの温もりを、鼓動を感じる事ができる。そんな毎日が新鮮で、楽しくて、失いたくなくて、いつまでも一緒に居たいんです...」
「...そっか、なんか思った以上に僕の事を思ってたみたいでびっくりしたけど、僕も同じような感情なんだよ。けどね、これをやり遂げなきゃ、幾ら成功率が低いと言っても0パーセントは無いんだ。時間もない事は知ってるでしょ?」
「分かってます...けど、けどわたしは.........ふぇ?」
何度ものお願いに男の人は折れ、膝を付いて泣き続ける女の人を強く抱きしめて、左手で後頭部を優しく、ゆっくりと何度も撫でた。急にしてきた事に女の人はびっくりして、身体を跳ねさせ頬を赤く染めたが、事を理解して身を委ねた。その間ずっと男の人は泣き止むまでずっと、撫で続け、抱き続けていた。そしてだいぶ落ち着いたくらいに、男の人は口を開けた。
「もう、しょうがないなぁ...今回の機会は逃すとして、次のチャンスは何が何でも行くからね? それまでは何処も行かないから、一緒に居るから」
「っ! ...うん。でも、次の機会までにマスターが安全に行けるように、私も行けるように頑張るからね.........」
「あはは...一緒に、か。そうしたら僕達が居なくなってからの事の対処もしておかないとね。まぁ、ともかく...宜しくねウィア」
「...はい、マスター!」